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4章
(14)ハウラ
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そういえばレオハニーはどこに行ったのだろうか。
バルド村で先に行くと言っておいて、結局どこで落ち合うか決めていなかった。そのせいでレオハニーの行方は夕方になっても知れないままだ。
エラムラの里はバルド村と同じように日暮れが早い。山で夕日を遮られた西側の街が一斉に明かりを灯し、刻々と時が過ぎるたびに人工的な光が東へ波及していく。
食べ歩きをしながら、ハウラと様々な世間話をした。ヤツカバネ討伐のことや、バルド村の暮らしぶり、自分の失敗談、村の人々の面白い出来事など。代わりにハウラからは、薄明の塔で毎日行う祭事や、結界の感覚、暇つぶしの方法などを話してもらった。家族についての話題が出てこなかったのは、お互いにタブーであると確信していたからだろう。
俺はハウラがNoDの娘であると知っている。
ハウラもきっと、鍵者がどういうものなのかミカルラから聞かされているはずだ。
ハウラの境遇にはまったく憧れないが、出自だけは彼女が羨ましい。なぜなら彼女は、完全な人造人間ではなく、人間と交わって生まれた人のはずだから。普通の人間と同じく、ハウラの代わりはどこにもいないのだろう。
「ふふ、たくさん食べ過ぎてしまいました。みんなで一緒に食べるだけでも楽しいものですね」
「ええ。俺も楽しかったです。巫女さんが意外と食べるので驚きましたよ」
「初めて見るものばかりだったのでつい。本当はもっと食べてみたかったんですけど、これ以上はシュイナのご飯が食べられなくなってしまいますからね」
「また機会があれば一緒に行きましょう。俺とでよければ」
「ぜひお願いします!」
すっかり甘え上手になったハウラに俺も破顔する。それからハッと理性を取り戻してぺちりと自分の頬を挟んだ。
いかんいかん。美少女に靡いてしまうところだった。恋愛で勘違いすることほどみっともないことはない。自制しろ。
いつもの自分を取り戻そうと素数を数え始めたところで、ふと俺たちのところに風船が飛んできた。反射的にハウラは風船を取ろうとしたが、すぐに自分の能力に気づいてさっと手を引っ込める。代わりに俺が紐をキャッチすると、道の向こうから三人組の子供が走ってきた。
「わたしの風船ー!」
真ん中を走っていた女の子に風船を差し出すと、泣きそうになっていた子供たちの顔がぱぁっと明るくなった。
「ありがとう!」
「あ、兄ちゃんの髪の毛まっくろだ! もしかしてエーユーって人じゃない!?」
「巫女さまもいっしょだー! おかあさんの言った通りだよ!」
「お、おお?」
まるで俺とハウラが一緒にいるのが当たり前のような発言だ。詳しく話を聞こうとしたが、子供たちは風船を振り回しながらきゃーきゃーと走り去ってしまった。
「じゃあな! エーユー! 巫女さま!」
「あー、うん……前見て走れよー!」
口の横に手を添えながら声を張って、俺は何とも言えぬ羞恥心に襲われた。滅多に街中に降りてこない巫女が食べ歩きなんてしていれば里の噂になるのは分かり切っていたことなのに、改めて子供から言われるとクるものがある。しかしそれと同時に、ハウラのことを真っすぐ見上げてきた子供たちの目に感慨深い気持ちにもなった。
「あの子たち、巫女さんのこと怖がってませんでしたね」
「きっとあなたがいるからですよ。あなたはエラムラの恩人ですから」
「いいえ。俺だけじゃありませんよ」
「どうしてそう思うのですか?」
純粋なハウラの疑問に、俺は歯切れ悪く口を動かした。
「あーっと……なんとなくですが、ベアルドルフと戦っていた貴方の姿を、誰かが見ていたとか」
実は食べ歩きの最中、立ち寄った店や他の客からいろいろと肯定的な言葉をかけてもらったのだ。例えば、ハウラをベアルドルフから守り切った俺への感謝だったり、先の防衛線でハウラは怪我をしていないかという心配だったり、ハウラとはどういう関係なのかという隠れファンの鬼の剣幕だったり。
そのすべてをハウラに言うべきなのかもしれないが、わざわざ俺に対して話したことを本人に伝えるのは野暮である。
だから俺は遠回しにでも、彼らの善意を伝えようと四苦八苦していた。
「なんだかんだ言って、エラムラの人たちは巫女さんが好きなんですよ」
「でも……」
「嘘だと思うなら、さっきの子供達でも、今日巡ったお店の人たちでもいい。直接聞いてみてください。きっと俺がいなくても答えてくれますよ」
少し触るだけでこちらが死んでしまうという恐怖は、どんなにハウラが真面目で美しい少女だろうと完全に拭いきることはできない。それでも、ハウラは毎日寝る間も惜しんで結界の維持に努めてくれる、エラムラの一員だ。そしてミカルラが残した大切な忘れ形見でもある。
里の人々がただハウラに恐怖しているだけであったなら、薄明の塔に縛り付けて最低限の世話をするだけで良かったはずだ。なのに今日までハウラが人間らしく生きてきたのなら、里の本心は言わずもがな。
もちろん、今までのハウラに対する扱いが冷たかったのは否めない。それでも長期間の外出が許され、人づてだとしてもハウラを心配してくれる人が大勢現れたのは大きな変化だ。
「エラムラ防衛線で俺たちはたくさんの仲間を失いましたが、悪い事ばかりじゃなかったと思います。部外者の俺が言っても説得力がないかもしれませんが、エラムラの里は変わってきてます。それも、良い方向に」
素直な気持ちを伝えると、ハウラは赤い瞳を丸く見開き、噛みしめるように瞼を降ろした。
「……んとうに、自惚れても良いのですか」
消え入りそうな声が律の風に乗って聞こえてくる。胸元で握りしめられた両手は寒そうに震えていた。
「わたしは……報われても良いのですか。母の代わりにもなれず、勇ましい狩人にも成れない、出来損ないのわたしを……里の皆が好きでいると、信じていいのですか」
再び開かれた双眸は涙なしに泣いているようだった。俺は次々に浮かび上がってくる陳腐な慰めの中から、できるだけ本心に近いものを選び、拙く言葉を紡いだ。
「少なくとも、今日一緒にいた俺たちは好きだと思ってる。お店で笑ってくれた人も、さっきの子たちだって、巫女さんが好きだよ」
「……そうですか。そうだったんですね……!」
ハウラは胸を押さえながらいっぱいに息を吐ききって、解放されたように目じりを緩めた。希望に満ちたその表情に、俺も目頭からこみ上げてくるものがあった。
嫌われて、化け物だと言われ、殺されかける。かつて死んでいった俺たちが身をもって体験した孤独だ。化け物には幸せなんて訪れないと思っていたが、ハウラの笑顔を見ていると、俺の中に堆積した憎悪の化石が溶けていくような気がした。
やはり俺は、ハウラが羨ましかった。
「あ、あの……リョーホさん」
「うん?」
「えっと……わたしのこと、巫女ではなくて、ハウラって呼んでくれませんか」
祈るように両手を握りながらねだるハウラ。その頬は夕日で片付けるには赤すぎる。無自覚でこれをやっているとしたら魔性の女だ。
俺は数秒ほど息を止めた後、口を押さえながら声を絞り出した。
「じゃあ……ハウラさん」
「……ふふ、うふふ! は、恥ずかしいですね、エトロに読んでもらった恋愛小説みたいで、なんだかとっても……」
ぽろ、とハウラの目から大粒の涙が零れ落ち、俺は思わずぎょっとした。ハウラも不思議そうに涙を拭ってから驚いて、袖で顔を隠しながら俺に背を向けた。
「わたしったら、ごめんなさい。我儘ばっかりで。これでは天国のお母様に怒られてしまいますね」
時間をかけて涙腺を引き締め直した後、ハウラは深呼吸をしてから俺に向き直った。
「リョーホさん。わたしは、あなたに謝らなければなりません」
「どうしてですか?」
「エラムラの里がベアルドルフに襲撃されたあの日、私は自分の力だけで決着をつけようと焦ってしまいました。そのせいで里を滅ぼしかけて、あなたをボロボロになるまで戦わせてしまいました。本当にごめんなさい。それと……あの時は、助けてくださってありがとうございます」
深々と、腰から折り曲げる最大級のお辞儀に俺は慌てふためいた。
「あ、頭を上げてください。俺はできることをしただけで、そこまで感謝されるほどでは」
「……本当に、優しいお方ですね」
ハウラはゆっくりと顔を上げると、眩しそうに目を細めた。どことなくその瞳の意思が、これまでの箱入り娘のような柔和さではなく、芯の通った武人のものへと切り替わった気がした。
「リョーホさん。もしよろしければ、この後……」
ハウラが何かを言いかけた瞬間、バロック山岳の方向で凄まじい爆炎が解き放たれた。即座にレブナがハウラの傍に駆け寄り、遅れて砦に駐屯していた狩人たちが慌ただしく走っていく。
「うわ、なんだあれ」
ミッサの『爆焔』よりも煌々とした爆炎は、やがて火柱をやせ細らせて淡く消滅していった。それを黙ってみていたエトロは、遠くからのんびりと断言した。
「あれは師匠だな。間違いなく」
「えぇ、オーバーキルすぎる」
「人騒がせだね、レオハニー様は」
アンリはやれやれと肩をすくめながら、物珍しい光景を見に行こうと飛び出さんとするシャルの首根っこを引っ掴んだ。ナイス保護者ムーヴだ。
俺はアンリにナイスと手を振った後、固まったまま動かないハウラへ声をかけた。
「あれがレオハニーさんなら危険はないでしょう。ハウラさん。安心していいですよ。……ハウラさん?」
話しかけても反応がなく、俺はそっとハウラの顔を覗き込んだ。するとそこには、爆炎の消えた空を熱心に見上げながら勇ましく口を引き結ぶ武人の顔があった。
なんだか嫌な予感がする。
俺が頬を引きつかせた瞬間、その予感は見事に的中した。
「私、レオハニー様に弟子入りします!」
「「「はぁ!?」」」
俺とアンリ、レブナは顎が外れんばかりに驚愕した。
「待てハウラ、考え直すんだ。危険すぎるぞ」
唯一エトロだけが冷静に宥めに入ったが、ハウラの勇ましい表情はますます強くなり、即座に反論してみせた。
「でも、わたしが弱いままではエラムラの里を守り切れません! 自分の能力を制御できずに、何が巫女ですか! 強くなるにはレオハニー様が帰ってきた今、この瞬間しかないのです!」
ハウラは着物の襟元をギュッと握りしめながら叫ぶと、迫り上がってくる感情に耐えるように続けた。
「エトロ……私は自分の足で外に出て、お母様のように立派な巫女になりたいのです。塔に閉じこもるだけでは、私は成長できないままではありませんか」
エラムラが襲撃された時、ハウラはニヴィの『支配』を受けてしまい、危うく自らの手でエラムラの里を消滅させるところだった。ハウラが本気で弟子入りを望んでいるのも、おそらくあの時の屈辱を二度と味わわないためでもあり、ミカルラが残してくれた里を傷つけてしまった贖罪でもあるのかも知れない。
エトロはぐっと口を引き結びながら目を伏せ、それから目尻を和らげた。
「……そこまで言うなら、私からも口添えする」
「ありがとう。エトロ」
ハウラは花が開くような笑顔を浮かべると、真剣な面持ちでギルドの方を振り返った。その横顔はまるでギルド長に宣戦布告でもするかのように覚悟で満ち満ちていた。
・・・───・・・
俺たちがギルドの前まで来ると、レオハニーに討伐されたばかりのドラゴンが広場の方に丸ごと持ち込まれていた。
俺は聳え立つドラゴンの顔を見上げながら、思わず感嘆のため息を漏らした。
「これは……上位ドラゴンのランガロスだ」
ランガロスは全身が大理石で覆われており、体内も岩石で構成されている珍しいドラゴンだ。心臓部には貴重な鉱石が集められており、一体持ち帰るだけでも一等地を買えるほどの換金価値がある。
当然、それだけの価格をつけられるドラゴンが弱いわけもない。ランガロスは禁忌種であるクラトネールには劣るが、ソウゲンカに比べればはるかに強敵だ。経験の浅い狩人が単独で遭遇してしまったなら確実に死ぬ。
しかしそれほど危険なランガロスであっても、レオハニーの前では雑魚同然だったようだ。レオハニーの大剣によって両断された首の断面はガラス化し、他に傷がないことから一撃で仕留められたことが窺える。流石に短時間で血抜きまでは終えられなかったらしく、ギルド職員が血吸い花を大量に抱えて鱗の隙間に突き刺していた。
血吸い花は簡単に言うと渡り花の亜種である。渡り花が生物の菌糸に反応するのに対し、血吸い花は直に血に触れることで動き出す。うっかり傷を負ったまま血吸い花に触れると人間まで寄生されてしまうので、使う際にはゴム手袋が必要不可欠だ。
血吸い花の白い花弁が血に染まっていくのを眺めていると、俺の横でランガロスを眺めていたアンリが訝しげに眉を寄せた。
「こいつは活火山にしか現れないのに、なんでエラムラの里にまで……」
「ディアノックスが近くまで来てるんだと思うよー。あいつ自体が火山みたいなものだしー」
あのレブナが真面目に回答している。俺はささやかな感動を覚えながらもこう指摘した。
「けどディアノックスはビーニャ砂漠を縄張りにしてるだろ? わざわざこっちに来ると思えない」
「あいつは五年に一度だけ、縄張りの目印を付け直すために砂漠から出るんだよー。ロッシュ様が言ってたけど、ヤツカバネが縄張りの近くまで来たから触発されたんじゃないかーって」
「そう言われると、それとしか思えないな」
炎の王ディアノックスにとって、同じ竜王であるヤツカバネはかなりの脅威だ。人間だって家の近くに不審者が出たらそれなりの対策をするのだから、ディアノックスも縄張りを主張したくなるのも当然である。
だがディアノックスはかなり気性が荒いことで有名だ。ヤツカバネが目についたもの全てを喰らおうとするのなら、ディアノックスは近づくもの全てを燃やし尽くす。殺しきれなかった獲物がいればどんなに小さな生物でも執拗に追いかけるため、その被害はスタンピードに匹敵すると言われている。
そのため、もし今回の縄張り更新の時に、ディアノックスから逃げ出したドラゴンがエラムラの里近くまで来ようものなら……。
「ここら一帯が、砂漠に沈むかもしれないな」
つい漏れてしまった思考に、ハウラがごくりと喉を鳴らした。いくらハウラの結界でも、ディアノックスの溶岩を止められるかは確証がない。ディアノックスの持つ熱は、時に大河を蒸発させてしまうほどの威力を発揮するのだから。
と、緊迫した空気の流れを、デカデカと文字が書かれたメモ帳が切り裂いた。
『こっちに来たら みんなでぶっとばす』
「……はは、そうだな! また討伐隊を編成して倒すだけだ」
シャルの頭を撫でながら俺が笑うと、エトロが呆れたように肩をすくめた。
「簡単に言ってくれるな。ディアノックスは師匠でも手こずる相手だというのに」
「でもエトロは一緒に来るだろ?」
「当然だ。お前は敵の攻撃に突っ込んでばかりだからな。私が代わりに守ってやろう」
「おう、頼りにしてる」
エトロと冗談混じりに言葉を交わすと、アンリから生ぬるい視線を向けられた。
「なんだが随分と仲良くなったんだね。お兄ちゃんは嬉しいよ」
「いきなり兄貴面すんな」
「辛辣だなぁ」
「いつもの仕返しだ」
べ、とアンリを小馬鹿にしていると、
「おっさんおっさん、レオハニー様の方も終わったみたいだよ」
「だから、おっさんじゃないっての!」
レブナの目配せに応じてギルドの方を見やれば、シュイナと換金交渉を終えたレオハニーがこちらに歩いてくるところだった。
エトロは表情を引き締めると、服越しにハウラの背中を軽く押した。
「ほら、ハウラ」
「い、いってきます……!」
ハウラはカチコチな足取りで、レオハニーの前へと進み出た。
しかしハウラは次第に近づいてくるレオハニーの威圧感に気圧されて、ついに足を止めてしまった。
レオハニーは女性にしては高身長で、美しすぎる目鼻立ちや背中の巨大な大剣のせいで威圧感が凄まじい。非戦闘員のエラムラの住民が遠巻きでも顔色が悪くなっているのだから、至近距離のハウラが怯えてしまうのも当たり前のことだった。
それでもハウラは生唾ごと恐怖心を飲み込むと、レオハニーの顔を凝視しながら一生懸命に口を動かした。
「レ、レオハニー様、あの! わ、私に、戦い方を教えてください!」
がばっと頭を下げると、住民たちの方からどよめきが起こった。仮にも里長に並ぶ地位の巫女が、人前で頭を下げるのは異例の事態だ。ギルドの二階を見上げれば、窓から様子を見ていたロッシュが頭を抱えているのが見えた。
「私からもお願いします。師匠」
硬い沈黙を破ったのはエトロだった。
「ハウラの才能が開花したなら、エラムラの里だけでなく最前線を支えることができるかもしれません。そうなればヨルドの里の奪還も果たせるはず」
その言葉に、初めてレオハニーの目が見開かれた。
エトロはまだ自分の故郷を諦めていない。彼女が自分の武術を磨き続けたのは、ベアルドルフの復讐だけでなく、自分の故郷のためでもあったのだろう。
しかし、レオハニーはヨルドの里をどうこうしたいと思っていない可能性がある。以前、俺が真夜中にヨルドの里を訪れた時、レオハニーはマリヴァロンを殺せたはずなのにそうしなかった。もっと言えば、レオハニー一人でヨルドの里一帯のドラゴンをいつでも全滅させられたのに、ずっと放置していた。
つまりレオハニーは、ヨルドの里よりも優先すべきことがある。故に、エトロのアプローチがレオハニーの心を動かせるとは思えない。
周囲が固唾を飲んでいる中、レオハニーは無表情のままハウラのつむじを眺めて、一言。
「いいよ」
あまりにもあっさり返事がきて、ハウラも俺たちも咄嗟に反応できなかった。しかし一番弟子のエトロだけは真っ先に子供のように目を輝かせた。
「ありがとうございます! 師匠!」
「時間があるなら、今日のうちに打ち合い稽古もしよう。他の弟子たちと一緒に」
レオハニーはそう言いながら、長いまつ毛ごしにじっと俺を見つめた。まるで俺の反応を探るような目つきだった。
彼女の選択にはきっと裏がある。99を殺したレオハニーが、完全な善意でハウラの申し出を受け入れるはずがない。ハウラはNoDと人間の狭間にいる存在なのだから、きっと何かに利用しようとしているはずだ。
だが、ハウラの利用価値とは一体……。
俺は嫌な予感に背筋を泡立たせながら、レオハニーを睨みつけることしかできなかった。
バルド村で先に行くと言っておいて、結局どこで落ち合うか決めていなかった。そのせいでレオハニーの行方は夕方になっても知れないままだ。
エラムラの里はバルド村と同じように日暮れが早い。山で夕日を遮られた西側の街が一斉に明かりを灯し、刻々と時が過ぎるたびに人工的な光が東へ波及していく。
食べ歩きをしながら、ハウラと様々な世間話をした。ヤツカバネ討伐のことや、バルド村の暮らしぶり、自分の失敗談、村の人々の面白い出来事など。代わりにハウラからは、薄明の塔で毎日行う祭事や、結界の感覚、暇つぶしの方法などを話してもらった。家族についての話題が出てこなかったのは、お互いにタブーであると確信していたからだろう。
俺はハウラがNoDの娘であると知っている。
ハウラもきっと、鍵者がどういうものなのかミカルラから聞かされているはずだ。
ハウラの境遇にはまったく憧れないが、出自だけは彼女が羨ましい。なぜなら彼女は、完全な人造人間ではなく、人間と交わって生まれた人のはずだから。普通の人間と同じく、ハウラの代わりはどこにもいないのだろう。
「ふふ、たくさん食べ過ぎてしまいました。みんなで一緒に食べるだけでも楽しいものですね」
「ええ。俺も楽しかったです。巫女さんが意外と食べるので驚きましたよ」
「初めて見るものばかりだったのでつい。本当はもっと食べてみたかったんですけど、これ以上はシュイナのご飯が食べられなくなってしまいますからね」
「また機会があれば一緒に行きましょう。俺とでよければ」
「ぜひお願いします!」
すっかり甘え上手になったハウラに俺も破顔する。それからハッと理性を取り戻してぺちりと自分の頬を挟んだ。
いかんいかん。美少女に靡いてしまうところだった。恋愛で勘違いすることほどみっともないことはない。自制しろ。
いつもの自分を取り戻そうと素数を数え始めたところで、ふと俺たちのところに風船が飛んできた。反射的にハウラは風船を取ろうとしたが、すぐに自分の能力に気づいてさっと手を引っ込める。代わりに俺が紐をキャッチすると、道の向こうから三人組の子供が走ってきた。
「わたしの風船ー!」
真ん中を走っていた女の子に風船を差し出すと、泣きそうになっていた子供たちの顔がぱぁっと明るくなった。
「ありがとう!」
「あ、兄ちゃんの髪の毛まっくろだ! もしかしてエーユーって人じゃない!?」
「巫女さまもいっしょだー! おかあさんの言った通りだよ!」
「お、おお?」
まるで俺とハウラが一緒にいるのが当たり前のような発言だ。詳しく話を聞こうとしたが、子供たちは風船を振り回しながらきゃーきゃーと走り去ってしまった。
「じゃあな! エーユー! 巫女さま!」
「あー、うん……前見て走れよー!」
口の横に手を添えながら声を張って、俺は何とも言えぬ羞恥心に襲われた。滅多に街中に降りてこない巫女が食べ歩きなんてしていれば里の噂になるのは分かり切っていたことなのに、改めて子供から言われるとクるものがある。しかしそれと同時に、ハウラのことを真っすぐ見上げてきた子供たちの目に感慨深い気持ちにもなった。
「あの子たち、巫女さんのこと怖がってませんでしたね」
「きっとあなたがいるからですよ。あなたはエラムラの恩人ですから」
「いいえ。俺だけじゃありませんよ」
「どうしてそう思うのですか?」
純粋なハウラの疑問に、俺は歯切れ悪く口を動かした。
「あーっと……なんとなくですが、ベアルドルフと戦っていた貴方の姿を、誰かが見ていたとか」
実は食べ歩きの最中、立ち寄った店や他の客からいろいろと肯定的な言葉をかけてもらったのだ。例えば、ハウラをベアルドルフから守り切った俺への感謝だったり、先の防衛線でハウラは怪我をしていないかという心配だったり、ハウラとはどういう関係なのかという隠れファンの鬼の剣幕だったり。
そのすべてをハウラに言うべきなのかもしれないが、わざわざ俺に対して話したことを本人に伝えるのは野暮である。
だから俺は遠回しにでも、彼らの善意を伝えようと四苦八苦していた。
「なんだかんだ言って、エラムラの人たちは巫女さんが好きなんですよ」
「でも……」
「嘘だと思うなら、さっきの子供達でも、今日巡ったお店の人たちでもいい。直接聞いてみてください。きっと俺がいなくても答えてくれますよ」
少し触るだけでこちらが死んでしまうという恐怖は、どんなにハウラが真面目で美しい少女だろうと完全に拭いきることはできない。それでも、ハウラは毎日寝る間も惜しんで結界の維持に努めてくれる、エラムラの一員だ。そしてミカルラが残した大切な忘れ形見でもある。
里の人々がただハウラに恐怖しているだけであったなら、薄明の塔に縛り付けて最低限の世話をするだけで良かったはずだ。なのに今日までハウラが人間らしく生きてきたのなら、里の本心は言わずもがな。
もちろん、今までのハウラに対する扱いが冷たかったのは否めない。それでも長期間の外出が許され、人づてだとしてもハウラを心配してくれる人が大勢現れたのは大きな変化だ。
「エラムラ防衛線で俺たちはたくさんの仲間を失いましたが、悪い事ばかりじゃなかったと思います。部外者の俺が言っても説得力がないかもしれませんが、エラムラの里は変わってきてます。それも、良い方向に」
素直な気持ちを伝えると、ハウラは赤い瞳を丸く見開き、噛みしめるように瞼を降ろした。
「……んとうに、自惚れても良いのですか」
消え入りそうな声が律の風に乗って聞こえてくる。胸元で握りしめられた両手は寒そうに震えていた。
「わたしは……報われても良いのですか。母の代わりにもなれず、勇ましい狩人にも成れない、出来損ないのわたしを……里の皆が好きでいると、信じていいのですか」
再び開かれた双眸は涙なしに泣いているようだった。俺は次々に浮かび上がってくる陳腐な慰めの中から、できるだけ本心に近いものを選び、拙く言葉を紡いだ。
「少なくとも、今日一緒にいた俺たちは好きだと思ってる。お店で笑ってくれた人も、さっきの子たちだって、巫女さんが好きだよ」
「……そうですか。そうだったんですね……!」
ハウラは胸を押さえながらいっぱいに息を吐ききって、解放されたように目じりを緩めた。希望に満ちたその表情に、俺も目頭からこみ上げてくるものがあった。
嫌われて、化け物だと言われ、殺されかける。かつて死んでいった俺たちが身をもって体験した孤独だ。化け物には幸せなんて訪れないと思っていたが、ハウラの笑顔を見ていると、俺の中に堆積した憎悪の化石が溶けていくような気がした。
やはり俺は、ハウラが羨ましかった。
「あ、あの……リョーホさん」
「うん?」
「えっと……わたしのこと、巫女ではなくて、ハウラって呼んでくれませんか」
祈るように両手を握りながらねだるハウラ。その頬は夕日で片付けるには赤すぎる。無自覚でこれをやっているとしたら魔性の女だ。
俺は数秒ほど息を止めた後、口を押さえながら声を絞り出した。
「じゃあ……ハウラさん」
「……ふふ、うふふ! は、恥ずかしいですね、エトロに読んでもらった恋愛小説みたいで、なんだかとっても……」
ぽろ、とハウラの目から大粒の涙が零れ落ち、俺は思わずぎょっとした。ハウラも不思議そうに涙を拭ってから驚いて、袖で顔を隠しながら俺に背を向けた。
「わたしったら、ごめんなさい。我儘ばっかりで。これでは天国のお母様に怒られてしまいますね」
時間をかけて涙腺を引き締め直した後、ハウラは深呼吸をしてから俺に向き直った。
「リョーホさん。わたしは、あなたに謝らなければなりません」
「どうしてですか?」
「エラムラの里がベアルドルフに襲撃されたあの日、私は自分の力だけで決着をつけようと焦ってしまいました。そのせいで里を滅ぼしかけて、あなたをボロボロになるまで戦わせてしまいました。本当にごめんなさい。それと……あの時は、助けてくださってありがとうございます」
深々と、腰から折り曲げる最大級のお辞儀に俺は慌てふためいた。
「あ、頭を上げてください。俺はできることをしただけで、そこまで感謝されるほどでは」
「……本当に、優しいお方ですね」
ハウラはゆっくりと顔を上げると、眩しそうに目を細めた。どことなくその瞳の意思が、これまでの箱入り娘のような柔和さではなく、芯の通った武人のものへと切り替わった気がした。
「リョーホさん。もしよろしければ、この後……」
ハウラが何かを言いかけた瞬間、バロック山岳の方向で凄まじい爆炎が解き放たれた。即座にレブナがハウラの傍に駆け寄り、遅れて砦に駐屯していた狩人たちが慌ただしく走っていく。
「うわ、なんだあれ」
ミッサの『爆焔』よりも煌々とした爆炎は、やがて火柱をやせ細らせて淡く消滅していった。それを黙ってみていたエトロは、遠くからのんびりと断言した。
「あれは師匠だな。間違いなく」
「えぇ、オーバーキルすぎる」
「人騒がせだね、レオハニー様は」
アンリはやれやれと肩をすくめながら、物珍しい光景を見に行こうと飛び出さんとするシャルの首根っこを引っ掴んだ。ナイス保護者ムーヴだ。
俺はアンリにナイスと手を振った後、固まったまま動かないハウラへ声をかけた。
「あれがレオハニーさんなら危険はないでしょう。ハウラさん。安心していいですよ。……ハウラさん?」
話しかけても反応がなく、俺はそっとハウラの顔を覗き込んだ。するとそこには、爆炎の消えた空を熱心に見上げながら勇ましく口を引き結ぶ武人の顔があった。
なんだか嫌な予感がする。
俺が頬を引きつかせた瞬間、その予感は見事に的中した。
「私、レオハニー様に弟子入りします!」
「「「はぁ!?」」」
俺とアンリ、レブナは顎が外れんばかりに驚愕した。
「待てハウラ、考え直すんだ。危険すぎるぞ」
唯一エトロだけが冷静に宥めに入ったが、ハウラの勇ましい表情はますます強くなり、即座に反論してみせた。
「でも、わたしが弱いままではエラムラの里を守り切れません! 自分の能力を制御できずに、何が巫女ですか! 強くなるにはレオハニー様が帰ってきた今、この瞬間しかないのです!」
ハウラは着物の襟元をギュッと握りしめながら叫ぶと、迫り上がってくる感情に耐えるように続けた。
「エトロ……私は自分の足で外に出て、お母様のように立派な巫女になりたいのです。塔に閉じこもるだけでは、私は成長できないままではありませんか」
エラムラが襲撃された時、ハウラはニヴィの『支配』を受けてしまい、危うく自らの手でエラムラの里を消滅させるところだった。ハウラが本気で弟子入りを望んでいるのも、おそらくあの時の屈辱を二度と味わわないためでもあり、ミカルラが残してくれた里を傷つけてしまった贖罪でもあるのかも知れない。
エトロはぐっと口を引き結びながら目を伏せ、それから目尻を和らげた。
「……そこまで言うなら、私からも口添えする」
「ありがとう。エトロ」
ハウラは花が開くような笑顔を浮かべると、真剣な面持ちでギルドの方を振り返った。その横顔はまるでギルド長に宣戦布告でもするかのように覚悟で満ち満ちていた。
・・・───・・・
俺たちがギルドの前まで来ると、レオハニーに討伐されたばかりのドラゴンが広場の方に丸ごと持ち込まれていた。
俺は聳え立つドラゴンの顔を見上げながら、思わず感嘆のため息を漏らした。
「これは……上位ドラゴンのランガロスだ」
ランガロスは全身が大理石で覆われており、体内も岩石で構成されている珍しいドラゴンだ。心臓部には貴重な鉱石が集められており、一体持ち帰るだけでも一等地を買えるほどの換金価値がある。
当然、それだけの価格をつけられるドラゴンが弱いわけもない。ランガロスは禁忌種であるクラトネールには劣るが、ソウゲンカに比べればはるかに強敵だ。経験の浅い狩人が単独で遭遇してしまったなら確実に死ぬ。
しかしそれほど危険なランガロスであっても、レオハニーの前では雑魚同然だったようだ。レオハニーの大剣によって両断された首の断面はガラス化し、他に傷がないことから一撃で仕留められたことが窺える。流石に短時間で血抜きまでは終えられなかったらしく、ギルド職員が血吸い花を大量に抱えて鱗の隙間に突き刺していた。
血吸い花は簡単に言うと渡り花の亜種である。渡り花が生物の菌糸に反応するのに対し、血吸い花は直に血に触れることで動き出す。うっかり傷を負ったまま血吸い花に触れると人間まで寄生されてしまうので、使う際にはゴム手袋が必要不可欠だ。
血吸い花の白い花弁が血に染まっていくのを眺めていると、俺の横でランガロスを眺めていたアンリが訝しげに眉を寄せた。
「こいつは活火山にしか現れないのに、なんでエラムラの里にまで……」
「ディアノックスが近くまで来てるんだと思うよー。あいつ自体が火山みたいなものだしー」
あのレブナが真面目に回答している。俺はささやかな感動を覚えながらもこう指摘した。
「けどディアノックスはビーニャ砂漠を縄張りにしてるだろ? わざわざこっちに来ると思えない」
「あいつは五年に一度だけ、縄張りの目印を付け直すために砂漠から出るんだよー。ロッシュ様が言ってたけど、ヤツカバネが縄張りの近くまで来たから触発されたんじゃないかーって」
「そう言われると、それとしか思えないな」
炎の王ディアノックスにとって、同じ竜王であるヤツカバネはかなりの脅威だ。人間だって家の近くに不審者が出たらそれなりの対策をするのだから、ディアノックスも縄張りを主張したくなるのも当然である。
だがディアノックスはかなり気性が荒いことで有名だ。ヤツカバネが目についたもの全てを喰らおうとするのなら、ディアノックスは近づくもの全てを燃やし尽くす。殺しきれなかった獲物がいればどんなに小さな生物でも執拗に追いかけるため、その被害はスタンピードに匹敵すると言われている。
そのため、もし今回の縄張り更新の時に、ディアノックスから逃げ出したドラゴンがエラムラの里近くまで来ようものなら……。
「ここら一帯が、砂漠に沈むかもしれないな」
つい漏れてしまった思考に、ハウラがごくりと喉を鳴らした。いくらハウラの結界でも、ディアノックスの溶岩を止められるかは確証がない。ディアノックスの持つ熱は、時に大河を蒸発させてしまうほどの威力を発揮するのだから。
と、緊迫した空気の流れを、デカデカと文字が書かれたメモ帳が切り裂いた。
『こっちに来たら みんなでぶっとばす』
「……はは、そうだな! また討伐隊を編成して倒すだけだ」
シャルの頭を撫でながら俺が笑うと、エトロが呆れたように肩をすくめた。
「簡単に言ってくれるな。ディアノックスは師匠でも手こずる相手だというのに」
「でもエトロは一緒に来るだろ?」
「当然だ。お前は敵の攻撃に突っ込んでばかりだからな。私が代わりに守ってやろう」
「おう、頼りにしてる」
エトロと冗談混じりに言葉を交わすと、アンリから生ぬるい視線を向けられた。
「なんだが随分と仲良くなったんだね。お兄ちゃんは嬉しいよ」
「いきなり兄貴面すんな」
「辛辣だなぁ」
「いつもの仕返しだ」
べ、とアンリを小馬鹿にしていると、
「おっさんおっさん、レオハニー様の方も終わったみたいだよ」
「だから、おっさんじゃないっての!」
レブナの目配せに応じてギルドの方を見やれば、シュイナと換金交渉を終えたレオハニーがこちらに歩いてくるところだった。
エトロは表情を引き締めると、服越しにハウラの背中を軽く押した。
「ほら、ハウラ」
「い、いってきます……!」
ハウラはカチコチな足取りで、レオハニーの前へと進み出た。
しかしハウラは次第に近づいてくるレオハニーの威圧感に気圧されて、ついに足を止めてしまった。
レオハニーは女性にしては高身長で、美しすぎる目鼻立ちや背中の巨大な大剣のせいで威圧感が凄まじい。非戦闘員のエラムラの住民が遠巻きでも顔色が悪くなっているのだから、至近距離のハウラが怯えてしまうのも当たり前のことだった。
それでもハウラは生唾ごと恐怖心を飲み込むと、レオハニーの顔を凝視しながら一生懸命に口を動かした。
「レ、レオハニー様、あの! わ、私に、戦い方を教えてください!」
がばっと頭を下げると、住民たちの方からどよめきが起こった。仮にも里長に並ぶ地位の巫女が、人前で頭を下げるのは異例の事態だ。ギルドの二階を見上げれば、窓から様子を見ていたロッシュが頭を抱えているのが見えた。
「私からもお願いします。師匠」
硬い沈黙を破ったのはエトロだった。
「ハウラの才能が開花したなら、エラムラの里だけでなく最前線を支えることができるかもしれません。そうなればヨルドの里の奪還も果たせるはず」
その言葉に、初めてレオハニーの目が見開かれた。
エトロはまだ自分の故郷を諦めていない。彼女が自分の武術を磨き続けたのは、ベアルドルフの復讐だけでなく、自分の故郷のためでもあったのだろう。
しかし、レオハニーはヨルドの里をどうこうしたいと思っていない可能性がある。以前、俺が真夜中にヨルドの里を訪れた時、レオハニーはマリヴァロンを殺せたはずなのにそうしなかった。もっと言えば、レオハニー一人でヨルドの里一帯のドラゴンをいつでも全滅させられたのに、ずっと放置していた。
つまりレオハニーは、ヨルドの里よりも優先すべきことがある。故に、エトロのアプローチがレオハニーの心を動かせるとは思えない。
周囲が固唾を飲んでいる中、レオハニーは無表情のままハウラのつむじを眺めて、一言。
「いいよ」
あまりにもあっさり返事がきて、ハウラも俺たちも咄嗟に反応できなかった。しかし一番弟子のエトロだけは真っ先に子供のように目を輝かせた。
「ありがとうございます! 師匠!」
「時間があるなら、今日のうちに打ち合い稽古もしよう。他の弟子たちと一緒に」
レオハニーはそう言いながら、長いまつ毛ごしにじっと俺を見つめた。まるで俺の反応を探るような目つきだった。
彼女の選択にはきっと裏がある。99を殺したレオハニーが、完全な善意でハウラの申し出を受け入れるはずがない。ハウラはNoDと人間の狭間にいる存在なのだから、きっと何かに利用しようとしているはずだ。
だが、ハウラの利用価値とは一体……。
俺は嫌な予感に背筋を泡立たせながら、レオハニーを睨みつけることしかできなかった。
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