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3章
(30)雑兵、英雄
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カーヌマが雨粒を切り分けて真東の塔へ辿り着くと、そこにはすでに第二班が待機していた。固唾を飲んでヤツカバネの動向を見守っていた班の面々は、近づいてくるカーヌマの足音に気づいて一斉にこちらを振り返り、再会を喜ぶように軽くどよめいた。
「カーヌマ! もう平気なのか!?」
「リョーホ兄ちゃんのおかげで、どうにか!」
真っ先にカーヌマを助けようとしてくれた狩人が両腕を広げて出迎えてくれる。カーヌマは彼と強く抱擁を交わしながら、他の狩人によくやったと頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。皆にもみくちゃにされているうちにようやっと生きている実感が湧いてきて、カーヌマの目頭がじんわりと熱くなる。
すると、急に狩人たちがカーヌマから離れ、代わりにアークがゆっくりと進み出てきた。
「カーヌマ、すまねぇな。無理させた挙句、見捨てちまって」
この通りだ、と頭を深く下げるアークに度肝を抜かれたが、カーヌマは大きく深呼吸してから肩を叩いて顔を上げさせた。
「謝る必要はありません。狩人なら当たり前で、的確な判断でした。アーク班長」
アークは渋い顔で口を引き締めると、カーヌマを抱き寄せて力強く背を叩いた。
「次は守る」
最後にもう一発叩いてから、アークはカーヌマから離れていった。短い激励の間にアークの気力が流れ込み、自然と活力が湧いてくる。次はきっと失敗しない。期待に応えて見せる。
カーヌマはふうっと息を吐き、セスタスを装着し直しながら隊列の中に混じった。
そして、アークは鋭い目で顔触れを眺めながら声を張った。
「カーヌマが復帰したところで、もう一度復習するぞ!」
これから始まる作戦は以下の通りだ。
まず、リョーホがヤツカバネを真東の塔まで誘導し、当初の予定通りに斜め上に向けて捕食攻撃を誘発させる。その後に魂凝結晶を総叩きし、さらに背面から別の班がヤツカバネの翼の付け根に猛襲を掛け、スタンを取る。最後はもう一つの北西の塔で二度目の捕食攻撃を行わせ、魂凝結晶を破壊し決着をつけるというものだった。
アークたち率いる第二班は、戦闘中に飛んでくるヤツカバネの攻撃から真東の塔を死守するのが役目となる。
「……と、これ以上の詳しい説明は無理そうだ。野郎ども、武器を構えろ!」
合図が終わった瞬間、塔の反対側で大量の樹木が薙ぎ倒され、純白の飛膜が風船のように膨れ上がるのが見えた。ヤツカバネの首付近には群青色と紫の閃光が入り乱れ、足元では第三班の遠隔能力が弾け続けている。誰もヤツカバネから距離を取ろうとしていないようだ。
「く、喰われるんじゃ……!」
「いんや、ゼンが上手くやるさ」
アークがニヤリと笑うのと示し合わせたように、レブナの笑い声がした方から、鮮血色の巨大な大鎌が出現した。『狂戦士』で溜め込んだ敵の血液をすべて刃に抽出した大技だ。
「おりゃああああああ!」
ぐるん、と半回転した大鎌は周りの木々を輪切りにした後、真っ赤な斬撃を空間に刻むようにしてヤツカバネの首とすれ違った。一拍置いて、ヤツカバネの切り裂かれた傷口から壊れたバルブのように血が吹き出した。レブナの攻撃によって首の角度を無理矢理変えられたヤツカバネは、不協和音の悲鳴を上げながら五百メートル程度の樹海を溶かし、飛膜を虚空に散らした。
「やった!」
カーヌマが思わずガッツポーズをした瞬間、ヤツカバネは長い首をくねらせながら、滅多矢鱈にブレスをまき散らし始めた。
「来るぞ、塔を守れ!」
粘っこくどす黒いブレスが、樹海を横なぎに溶解させながら物凄いスピードでカーヌマ達に迫ってくる。防げと言われても、触れたら死んでしまう攻撃をどうやって防げと言うのだ。
「どけ!」
不意に上からエトロの声が降ってきたと思えば、カーヌマの目の前に巨大な氷が群れを成して降ってきた。氷周辺は肌を刺すほどの冷気に包まれ、雨粒が氷を掠めるたびに雹となって地面に転がり落ちる。だがブレスを凌ぎきるには氷の大きさがまだ足りない。
すると、アークが突然バトルアックスを大地に突き立て、シーソーのように地面を一メートルほど切り出した。
「なんでもいい、ブレスにぶつけてやれ!」
言いながらアークが切り出した地面をバトルアックスで無理やり投擲するのを見て、カーヌマは素早く付近に眼を走らせる。そして、木材を切り出すときにできた無数の廃材の山を見つけ、すぐにその背後に飛び込んだ。セスタスを腰だめに構え、ブレスが接近するタイミングを見計らい、気合の掛け声を上げながら拳を打ち出す。
「せぇい!」
廃材の山の中心部に拳が吸い込まれた瞬間、中で複数の『誘爆』が引き起こされ、木材の破片がすべて弾丸に代わってブレスへ突っ込んでいく。廃材にエネルギーを吸収されたブレスはスカスカになり、規模を小さくしながら氷の壁に衝突した。
ごう! と髪の毛が根こそぎ持っていかれそうなほどの強風が衝突面から発生し、大量の水蒸気がカーヌマ達を包み込んだ。極寒と熱風が渦巻き体感温度がおかしくなりそうだったが、すぐに冷気が高音を掌握し、水蒸気がダイヤモンドダストとなって薄れていく。
「塔はどうなった!」
「無事だ! 一部欠けていますが問題ない!」
状況把握の早い先輩狩人の声にカーヌマは思わず塔を振り仰ぐ。確かに右上部が虫に食われたように欠けているが、倒壊するほどの被害ではない。
「まさか本当に止められるなんて……」
「ぼさっとするな! まだ終わっていない!」
知り合い狩人に怒鳴られ、カーヌマは飛び跳ねながら正面に顔を向けた。ヤツカバネはダイヤモンドダストが煌めく塔の足元を睨みつけると、濁った笛のような威嚇をしながら突っ込んできた。八足が馬のように大地を駆り、巨木を軽々と押しのけて、大地震じみた軍靴が響き渡る。
雷雲を背負い、光を吸い込むほどの黒はまさしく死神だ。抑え込んでいたはずの恐れがカーヌマを縛り付けようとするが、思い切り舌に歯を立てながら前後に両足を広げ、重心を低くした。
それとほぼ同じタイミングで、ヤツカバネは胴体がのけ反るほどに高く前足を持ち上げると、地面を割り砕き、大量の大岩を弾き飛ばしてきた。
上から落ちてくる大岩をアークの斬撃が砕き、咄嗟にカーヌマもセスタスで割り砕く。腕に伝わる衝撃はすべて『誘爆』で相手に返還されるため、カーヌマは飴細工を砕く様な速度で次々に大岩を迎撃した。
「いいぞカーヌマ! 大きい攻撃はお前が砕け! あとは後ろが勝手に捌く!」
「はい!」
アークに褒められて気分が浮かれそうになったが、拳を強く握り込んで砕くことに集中する。
気づけばヤツカバネはもう目の前だ。遠くにいたリョーホ達の姿が、地面にいるカーヌマからでもはっきり見えるようになる。菌糸を煌めかせながら飛翔するリョーホは流星のようで、常にぎりぎりの間合いでヤツカバネの爪や牙を回避し、受け流し、時に的確に鱗の隙間に刃を突き立てる。リョーホが回避しきれずとも、シャルが即座にフォローに回るため前線の均衡は保たれていた。
目が回りそうな激闘を何分、何十分と続けるリョーホの集中力にカーヌマは舌を巻く。そして一時間以上も多彩な『幻惑』でヤツカバネを翻弄するゼンの規格外さも際立っていた。
『グオオオオオオオオオオオ!』
ヤツカバネと全く違う、洞窟に反響する悪魔のような絶叫が雷雲の向こうから轟く。ゼンが生み出した幻の闖入者は、大気を無理やり押しのけるような音と共に蝙蝠の翼をばさりと広げた。落雷の逆光に浮かび上がる、宵闇を内包したような美しい純黒の鱗や、角まで裂けた巨大な口から見える真っ青な舌がチロチロと空気を舐める。
上位ドラゴン、黒竜メンディヴィアだ。ヤツカバネと同系統の捕食能力を持ち、竜王の縄張りを堂々と練り歩く傍若無人の存在である。メンディヴィアは幻と思えぬほど滑らかに旋回すると、自分の縄張りを誇示するかのように塔の天辺に四肢を降ろした。
狩りの最中に乱入者が現れるだけでも目障りだと言うのに、目の前で堂々とくつろぎ始めたらプライドの高い竜王にとって計り知れぬ屈辱だ。
ヤツカバネは無数の歯を鳴らして震えると、喉の奥を大きく広げ、猛々しく吠えながら四つの足を持ち上げた。萎んでた純白のベールが間欠泉のごとく一瞬で膨れ上がり、待ち望んだ捕食攻撃の体勢に入る。
「来たぞ! 退避!」
全員が塔から離れた瞬間、バシャア! と飛膜が高速展開され、塔とメンディヴィアの幻影が純白に飲み込まれる。本来なら滑空するはずの捕食攻撃は、無理な体勢で発動したため後ろ足を地面に突けたまま、ただの固定砲台と化していた。
そしてヤツカバネの真下は捕食範囲に入っておらず、開かれた腹部から急所の魂凝結晶が丸出しになっていた。結晶越しにヤツカバネの巨大な心臓が赤く点滅しているのが見え、その禍々しい形状に畏怖と破壊衝動が臨界点に触れる。
「総攻撃!」
ゼンの大喝が溜まりに溜まった闘志を爆発させ、狩人たちの荒々しい鬨の声がヤツカバネの咆哮を塗りつぶした。巨大な魂凝結晶を囲うように破壊的力を内包した菌糸能力が怒涛となって渦動し、地上で花火をぶちまけたような凄まじい火花が打ちあがる。後先考えず、最後の一滴まで絞りつくすような猛攻は魂凝結晶を撃砕し、内側に隠された心臓が徐々に露になっていく。
しかしあと一歩火力が足りない。臓物を削り取られたヤツカバネは痛ましい絶叫を上げ、浮かせていた四つ足をばたつかせて起き上がり始めた。左右に分かれていた腹の肉が閉じていき、魂凝結晶が上空へ遠ざかって行ってしまう。
「最後に一発、喰らいやがれ!」
寸前、アークの振り下ろしたバトルアックスの先端から斬撃が飛翔し、魂凝結晶を激しく打ち据えた。真っ赤な破片が飛び散り、薄く心臓を守っていた最後の結晶が塵と化す。
「ヒュルアアアアアアアアアア!」
効いている。
「もう一本! 三班!」
「あいあいさー!」
リョーホとレブナの掛け声が交互に響き、
「発射ー!」
北西の塔からヤツカバネのがら空きの背中に向けて、朝焼けを切り取ったような巨大な火球が飛来した。完全な死角から手痛い一撃を食らったヤツカバネは、木枯らしじみた唸り声を上げながら耐えたものの、爆炎に紛れて接近したシャルが、氷の錨を重力操作しながらぶん回し、巨人の鉄槌と同程度の破砕力を叩きつけた。
「ヒュグゥ!?」
ヤツカバネは二度目の不意打ちに失神し、八足を大きく揺らしてスタンに入る。
「一班、飛び乗れ!」
アンリの鋭い命令に合わせ、中距離特化の第一班が巨木の上から弓矢を発射する。アンリの『陣風』で統率を取った矢の雨は、超急角度の曲射を経てヤツカバネの背中を上から叩き潰した。
失神から激痛で叩き起こされたヤツカバネは項垂れていた首をもたげ、ぎょろぎょろと眼球を回しながら咢を広げた。そしてスタン中であるにも関わらず、ヤツカバネは鱗の隙間に紫色の光を巡らせ、口内に眩い破壊粒子を収束させ始める。
「ブレスだ、避けろ!」
誰が叫んだか、アンリ達が回避行動を取った時には極細のブレスが発射されていた。ヤツカバネはブレスの威力を絞ることで、極限状態にいながら反撃する余力を生み出したのだ。
完全に予想外だった反撃に、なすすべもなく第一班の狩人たちがどす黒い紫に飲み込まれていく──。
だが、ブレスが一人の狩人に当たる直前、鏡のような銀色の壁が間に割り込み、すべての攻撃を吸収してしまった。
「な……!?」
どんな物質も黒い粘液へ変えてしまうブレスを受けてもなお、銀色の壁は平然とその場に残っている。と思いきや、自ら糸のようにほどけていき、巨木の枝から流れ落ちてあっという間に消えてしまった。
直後、今度はヤツカバネの鼻先に赤い弾丸が連続で着弾した。
「あれは……ミッサさんの!」
「まあまあ無茶するじゃないか、若造どもが」
重傷を負い、意識不明だったはずのミッサがどん、とカーヌマの肩に腕を乗せる。筋肉質な胸から普段のミッサらしい高い体温が伝わってきて、カーヌマはぶわっと涙を溢れさせた。
「み、ミッサさん! 無事でよかった! 意識が戻らないって聞いて、俺……俺……っ!」
「心配かけたねぇ。けどもう大丈夫だ。こっから先はわたしも戦うよ」
ミッサはカーヌマの頬をうりうりと指でつまんだ後、ショットガンを肩に担ぎながらヤツカバネの方へ歩き出した。
「ゼン! わたしにも線をつけな!」
ゼンは一瞬だけミッサを一瞥すると、紺色の菌糸模様を光らせ幻の線でミッサとヤツカバネの額を繋げて見せた。その光はすぐにカーヌマの目に映らなくなったが、ミッサは線を辿るように顔を上げ、ついさっきまで瀕死だったと思えぬほど獰猛な笑顔を浮かべた。
「さぁ……暴れさせとくれよ!」
どぉん! とショットガンの爆風で空へ跳んだミッサを、カーヌマは喜びと呆れでぐしゃぐしゃになりながら見送った。最低限に仲間の被害を考慮できる理性が残っているらしいが、まだまだ危なっかしい火力をぶっ放すのがミッサらしい。生き生きと戦場を飛び回るミッサを見ていると、長きにわたる死闘の結末を予感させた。
「遅刻したが、まあ間に合ったからいいだろう」
不意に、カーヌマの背後から随分と久しぶりな飄々とした声がした。決して声を張っているわけではないのにはっきり聞こえて、カーヌマは幽霊を探すような気分で背後を振り返った。そこには案の定、西の樹海から悠長に歩いてくるドミラスの姿があった。右腕がズタズタに引き裂かれている以外に目立った外傷はなく、なぜか簀巻きにされた謎の美女が肩に担がれている。
「ど、ドミラス隊長!?」
カーヌマは片腕のない女性に度肝を抜かれた。そして隣でわなわなと拳を握りしめていたアークは、顔を真っ赤に茹らせながらドミラスの胸倉に掴みかかった。
「バッカヤロウてめぇ! 大遅刻だクソ討滅者! 任務ほっぽり出して何やってるかと思ったら女かよ!」
「俺はまだ討滅者ではないし、一番欲しい女には逃げられて傷心中だ」
「はぁ!?」
全く脈絡のない話題にぶちっとアークの米神が千切れる音がし、カーヌマは冷や汗を掻きながら先輩狩人と目を合わせた。先輩狩人も目を見開いたままカーヌマを見つめた後、ハンドサインでどうにかしろと指示してきた。いやいや先輩が、いやここは後輩が、と不毛なやり取りをしていると、ドミラスに担がれていた謎の女性がくすくすと笑い出した。
「なるほど……最初からトトを捕まえるために、私の計画を利用していたんだ?」
「察しが早くて助かる」
ドミラスは乱雑に謎の女性を半壊した真東の塔側に放り投げると、アークに簡潔に説明した。
「こいつはバルド村で捕虜にする。放っておいても死にはしないから、全員討伐に戻ってよし」
「おいおい! そんなんで納得できるわけないだろ!」
「問答をしている場合でもない。ヤツカバネを殺した後にでもゆっくり話してやる」
無茶苦茶な話にカーヌマも他の狩人も混乱するしかない。そんな彼らの気持ちを代弁するかのように、アークはドミラスの首を絞めそうな勢いで、より強く胸倉を持ち上げた。
「てめぇは……味方なんだろうな?」
「お前次第だ。百面相」
ドミラスがその単語を口にした瞬間、真っ赤に染まったアークの顔が一瞬で普通に戻った。カーヌマには横顔しか見れなかったが、その時浮かべていた表情は別人のように無味だった。
「カーヌマ! もう平気なのか!?」
「リョーホ兄ちゃんのおかげで、どうにか!」
真っ先にカーヌマを助けようとしてくれた狩人が両腕を広げて出迎えてくれる。カーヌマは彼と強く抱擁を交わしながら、他の狩人によくやったと頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。皆にもみくちゃにされているうちにようやっと生きている実感が湧いてきて、カーヌマの目頭がじんわりと熱くなる。
すると、急に狩人たちがカーヌマから離れ、代わりにアークがゆっくりと進み出てきた。
「カーヌマ、すまねぇな。無理させた挙句、見捨てちまって」
この通りだ、と頭を深く下げるアークに度肝を抜かれたが、カーヌマは大きく深呼吸してから肩を叩いて顔を上げさせた。
「謝る必要はありません。狩人なら当たり前で、的確な判断でした。アーク班長」
アークは渋い顔で口を引き締めると、カーヌマを抱き寄せて力強く背を叩いた。
「次は守る」
最後にもう一発叩いてから、アークはカーヌマから離れていった。短い激励の間にアークの気力が流れ込み、自然と活力が湧いてくる。次はきっと失敗しない。期待に応えて見せる。
カーヌマはふうっと息を吐き、セスタスを装着し直しながら隊列の中に混じった。
そして、アークは鋭い目で顔触れを眺めながら声を張った。
「カーヌマが復帰したところで、もう一度復習するぞ!」
これから始まる作戦は以下の通りだ。
まず、リョーホがヤツカバネを真東の塔まで誘導し、当初の予定通りに斜め上に向けて捕食攻撃を誘発させる。その後に魂凝結晶を総叩きし、さらに背面から別の班がヤツカバネの翼の付け根に猛襲を掛け、スタンを取る。最後はもう一つの北西の塔で二度目の捕食攻撃を行わせ、魂凝結晶を破壊し決着をつけるというものだった。
アークたち率いる第二班は、戦闘中に飛んでくるヤツカバネの攻撃から真東の塔を死守するのが役目となる。
「……と、これ以上の詳しい説明は無理そうだ。野郎ども、武器を構えろ!」
合図が終わった瞬間、塔の反対側で大量の樹木が薙ぎ倒され、純白の飛膜が風船のように膨れ上がるのが見えた。ヤツカバネの首付近には群青色と紫の閃光が入り乱れ、足元では第三班の遠隔能力が弾け続けている。誰もヤツカバネから距離を取ろうとしていないようだ。
「く、喰われるんじゃ……!」
「いんや、ゼンが上手くやるさ」
アークがニヤリと笑うのと示し合わせたように、レブナの笑い声がした方から、鮮血色の巨大な大鎌が出現した。『狂戦士』で溜め込んだ敵の血液をすべて刃に抽出した大技だ。
「おりゃああああああ!」
ぐるん、と半回転した大鎌は周りの木々を輪切りにした後、真っ赤な斬撃を空間に刻むようにしてヤツカバネの首とすれ違った。一拍置いて、ヤツカバネの切り裂かれた傷口から壊れたバルブのように血が吹き出した。レブナの攻撃によって首の角度を無理矢理変えられたヤツカバネは、不協和音の悲鳴を上げながら五百メートル程度の樹海を溶かし、飛膜を虚空に散らした。
「やった!」
カーヌマが思わずガッツポーズをした瞬間、ヤツカバネは長い首をくねらせながら、滅多矢鱈にブレスをまき散らし始めた。
「来るぞ、塔を守れ!」
粘っこくどす黒いブレスが、樹海を横なぎに溶解させながら物凄いスピードでカーヌマ達に迫ってくる。防げと言われても、触れたら死んでしまう攻撃をどうやって防げと言うのだ。
「どけ!」
不意に上からエトロの声が降ってきたと思えば、カーヌマの目の前に巨大な氷が群れを成して降ってきた。氷周辺は肌を刺すほどの冷気に包まれ、雨粒が氷を掠めるたびに雹となって地面に転がり落ちる。だがブレスを凌ぎきるには氷の大きさがまだ足りない。
すると、アークが突然バトルアックスを大地に突き立て、シーソーのように地面を一メートルほど切り出した。
「なんでもいい、ブレスにぶつけてやれ!」
言いながらアークが切り出した地面をバトルアックスで無理やり投擲するのを見て、カーヌマは素早く付近に眼を走らせる。そして、木材を切り出すときにできた無数の廃材の山を見つけ、すぐにその背後に飛び込んだ。セスタスを腰だめに構え、ブレスが接近するタイミングを見計らい、気合の掛け声を上げながら拳を打ち出す。
「せぇい!」
廃材の山の中心部に拳が吸い込まれた瞬間、中で複数の『誘爆』が引き起こされ、木材の破片がすべて弾丸に代わってブレスへ突っ込んでいく。廃材にエネルギーを吸収されたブレスはスカスカになり、規模を小さくしながら氷の壁に衝突した。
ごう! と髪の毛が根こそぎ持っていかれそうなほどの強風が衝突面から発生し、大量の水蒸気がカーヌマ達を包み込んだ。極寒と熱風が渦巻き体感温度がおかしくなりそうだったが、すぐに冷気が高音を掌握し、水蒸気がダイヤモンドダストとなって薄れていく。
「塔はどうなった!」
「無事だ! 一部欠けていますが問題ない!」
状況把握の早い先輩狩人の声にカーヌマは思わず塔を振り仰ぐ。確かに右上部が虫に食われたように欠けているが、倒壊するほどの被害ではない。
「まさか本当に止められるなんて……」
「ぼさっとするな! まだ終わっていない!」
知り合い狩人に怒鳴られ、カーヌマは飛び跳ねながら正面に顔を向けた。ヤツカバネはダイヤモンドダストが煌めく塔の足元を睨みつけると、濁った笛のような威嚇をしながら突っ込んできた。八足が馬のように大地を駆り、巨木を軽々と押しのけて、大地震じみた軍靴が響き渡る。
雷雲を背負い、光を吸い込むほどの黒はまさしく死神だ。抑え込んでいたはずの恐れがカーヌマを縛り付けようとするが、思い切り舌に歯を立てながら前後に両足を広げ、重心を低くした。
それとほぼ同じタイミングで、ヤツカバネは胴体がのけ反るほどに高く前足を持ち上げると、地面を割り砕き、大量の大岩を弾き飛ばしてきた。
上から落ちてくる大岩をアークの斬撃が砕き、咄嗟にカーヌマもセスタスで割り砕く。腕に伝わる衝撃はすべて『誘爆』で相手に返還されるため、カーヌマは飴細工を砕く様な速度で次々に大岩を迎撃した。
「いいぞカーヌマ! 大きい攻撃はお前が砕け! あとは後ろが勝手に捌く!」
「はい!」
アークに褒められて気分が浮かれそうになったが、拳を強く握り込んで砕くことに集中する。
気づけばヤツカバネはもう目の前だ。遠くにいたリョーホ達の姿が、地面にいるカーヌマからでもはっきり見えるようになる。菌糸を煌めかせながら飛翔するリョーホは流星のようで、常にぎりぎりの間合いでヤツカバネの爪や牙を回避し、受け流し、時に的確に鱗の隙間に刃を突き立てる。リョーホが回避しきれずとも、シャルが即座にフォローに回るため前線の均衡は保たれていた。
目が回りそうな激闘を何分、何十分と続けるリョーホの集中力にカーヌマは舌を巻く。そして一時間以上も多彩な『幻惑』でヤツカバネを翻弄するゼンの規格外さも際立っていた。
『グオオオオオオオオオオオ!』
ヤツカバネと全く違う、洞窟に反響する悪魔のような絶叫が雷雲の向こうから轟く。ゼンが生み出した幻の闖入者は、大気を無理やり押しのけるような音と共に蝙蝠の翼をばさりと広げた。落雷の逆光に浮かび上がる、宵闇を内包したような美しい純黒の鱗や、角まで裂けた巨大な口から見える真っ青な舌がチロチロと空気を舐める。
上位ドラゴン、黒竜メンディヴィアだ。ヤツカバネと同系統の捕食能力を持ち、竜王の縄張りを堂々と練り歩く傍若無人の存在である。メンディヴィアは幻と思えぬほど滑らかに旋回すると、自分の縄張りを誇示するかのように塔の天辺に四肢を降ろした。
狩りの最中に乱入者が現れるだけでも目障りだと言うのに、目の前で堂々とくつろぎ始めたらプライドの高い竜王にとって計り知れぬ屈辱だ。
ヤツカバネは無数の歯を鳴らして震えると、喉の奥を大きく広げ、猛々しく吠えながら四つの足を持ち上げた。萎んでた純白のベールが間欠泉のごとく一瞬で膨れ上がり、待ち望んだ捕食攻撃の体勢に入る。
「来たぞ! 退避!」
全員が塔から離れた瞬間、バシャア! と飛膜が高速展開され、塔とメンディヴィアの幻影が純白に飲み込まれる。本来なら滑空するはずの捕食攻撃は、無理な体勢で発動したため後ろ足を地面に突けたまま、ただの固定砲台と化していた。
そしてヤツカバネの真下は捕食範囲に入っておらず、開かれた腹部から急所の魂凝結晶が丸出しになっていた。結晶越しにヤツカバネの巨大な心臓が赤く点滅しているのが見え、その禍々しい形状に畏怖と破壊衝動が臨界点に触れる。
「総攻撃!」
ゼンの大喝が溜まりに溜まった闘志を爆発させ、狩人たちの荒々しい鬨の声がヤツカバネの咆哮を塗りつぶした。巨大な魂凝結晶を囲うように破壊的力を内包した菌糸能力が怒涛となって渦動し、地上で花火をぶちまけたような凄まじい火花が打ちあがる。後先考えず、最後の一滴まで絞りつくすような猛攻は魂凝結晶を撃砕し、内側に隠された心臓が徐々に露になっていく。
しかしあと一歩火力が足りない。臓物を削り取られたヤツカバネは痛ましい絶叫を上げ、浮かせていた四つ足をばたつかせて起き上がり始めた。左右に分かれていた腹の肉が閉じていき、魂凝結晶が上空へ遠ざかって行ってしまう。
「最後に一発、喰らいやがれ!」
寸前、アークの振り下ろしたバトルアックスの先端から斬撃が飛翔し、魂凝結晶を激しく打ち据えた。真っ赤な破片が飛び散り、薄く心臓を守っていた最後の結晶が塵と化す。
「ヒュルアアアアアアアアアア!」
効いている。
「もう一本! 三班!」
「あいあいさー!」
リョーホとレブナの掛け声が交互に響き、
「発射ー!」
北西の塔からヤツカバネのがら空きの背中に向けて、朝焼けを切り取ったような巨大な火球が飛来した。完全な死角から手痛い一撃を食らったヤツカバネは、木枯らしじみた唸り声を上げながら耐えたものの、爆炎に紛れて接近したシャルが、氷の錨を重力操作しながらぶん回し、巨人の鉄槌と同程度の破砕力を叩きつけた。
「ヒュグゥ!?」
ヤツカバネは二度目の不意打ちに失神し、八足を大きく揺らしてスタンに入る。
「一班、飛び乗れ!」
アンリの鋭い命令に合わせ、中距離特化の第一班が巨木の上から弓矢を発射する。アンリの『陣風』で統率を取った矢の雨は、超急角度の曲射を経てヤツカバネの背中を上から叩き潰した。
失神から激痛で叩き起こされたヤツカバネは項垂れていた首をもたげ、ぎょろぎょろと眼球を回しながら咢を広げた。そしてスタン中であるにも関わらず、ヤツカバネは鱗の隙間に紫色の光を巡らせ、口内に眩い破壊粒子を収束させ始める。
「ブレスだ、避けろ!」
誰が叫んだか、アンリ達が回避行動を取った時には極細のブレスが発射されていた。ヤツカバネはブレスの威力を絞ることで、極限状態にいながら反撃する余力を生み出したのだ。
完全に予想外だった反撃に、なすすべもなく第一班の狩人たちがどす黒い紫に飲み込まれていく──。
だが、ブレスが一人の狩人に当たる直前、鏡のような銀色の壁が間に割り込み、すべての攻撃を吸収してしまった。
「な……!?」
どんな物質も黒い粘液へ変えてしまうブレスを受けてもなお、銀色の壁は平然とその場に残っている。と思いきや、自ら糸のようにほどけていき、巨木の枝から流れ落ちてあっという間に消えてしまった。
直後、今度はヤツカバネの鼻先に赤い弾丸が連続で着弾した。
「あれは……ミッサさんの!」
「まあまあ無茶するじゃないか、若造どもが」
重傷を負い、意識不明だったはずのミッサがどん、とカーヌマの肩に腕を乗せる。筋肉質な胸から普段のミッサらしい高い体温が伝わってきて、カーヌマはぶわっと涙を溢れさせた。
「み、ミッサさん! 無事でよかった! 意識が戻らないって聞いて、俺……俺……っ!」
「心配かけたねぇ。けどもう大丈夫だ。こっから先はわたしも戦うよ」
ミッサはカーヌマの頬をうりうりと指でつまんだ後、ショットガンを肩に担ぎながらヤツカバネの方へ歩き出した。
「ゼン! わたしにも線をつけな!」
ゼンは一瞬だけミッサを一瞥すると、紺色の菌糸模様を光らせ幻の線でミッサとヤツカバネの額を繋げて見せた。その光はすぐにカーヌマの目に映らなくなったが、ミッサは線を辿るように顔を上げ、ついさっきまで瀕死だったと思えぬほど獰猛な笑顔を浮かべた。
「さぁ……暴れさせとくれよ!」
どぉん! とショットガンの爆風で空へ跳んだミッサを、カーヌマは喜びと呆れでぐしゃぐしゃになりながら見送った。最低限に仲間の被害を考慮できる理性が残っているらしいが、まだまだ危なっかしい火力をぶっ放すのがミッサらしい。生き生きと戦場を飛び回るミッサを見ていると、長きにわたる死闘の結末を予感させた。
「遅刻したが、まあ間に合ったからいいだろう」
不意に、カーヌマの背後から随分と久しぶりな飄々とした声がした。決して声を張っているわけではないのにはっきり聞こえて、カーヌマは幽霊を探すような気分で背後を振り返った。そこには案の定、西の樹海から悠長に歩いてくるドミラスの姿があった。右腕がズタズタに引き裂かれている以外に目立った外傷はなく、なぜか簀巻きにされた謎の美女が肩に担がれている。
「ど、ドミラス隊長!?」
カーヌマは片腕のない女性に度肝を抜かれた。そして隣でわなわなと拳を握りしめていたアークは、顔を真っ赤に茹らせながらドミラスの胸倉に掴みかかった。
「バッカヤロウてめぇ! 大遅刻だクソ討滅者! 任務ほっぽり出して何やってるかと思ったら女かよ!」
「俺はまだ討滅者ではないし、一番欲しい女には逃げられて傷心中だ」
「はぁ!?」
全く脈絡のない話題にぶちっとアークの米神が千切れる音がし、カーヌマは冷や汗を掻きながら先輩狩人と目を合わせた。先輩狩人も目を見開いたままカーヌマを見つめた後、ハンドサインでどうにかしろと指示してきた。いやいや先輩が、いやここは後輩が、と不毛なやり取りをしていると、ドミラスに担がれていた謎の女性がくすくすと笑い出した。
「なるほど……最初からトトを捕まえるために、私の計画を利用していたんだ?」
「察しが早くて助かる」
ドミラスは乱雑に謎の女性を半壊した真東の塔側に放り投げると、アークに簡潔に説明した。
「こいつはバルド村で捕虜にする。放っておいても死にはしないから、全員討伐に戻ってよし」
「おいおい! そんなんで納得できるわけないだろ!」
「問答をしている場合でもない。ヤツカバネを殺した後にでもゆっくり話してやる」
無茶苦茶な話にカーヌマも他の狩人も混乱するしかない。そんな彼らの気持ちを代弁するかのように、アークはドミラスの首を絞めそうな勢いで、より強く胸倉を持ち上げた。
「てめぇは……味方なんだろうな?」
「お前次第だ。百面相」
ドミラスがその単語を口にした瞬間、真っ赤に染まったアークの顔が一瞬で普通に戻った。カーヌマには横顔しか見れなかったが、その時浮かべていた表情は別人のように無味だった。
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