家に帰りたい狩りゲー転移

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3章

(6)虚構

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 エトロ、と呼びたかった。
 だが、俺の口からは音のない空気しか出なかった。

 野戦病院で見つけた時は素直に無事を喜べたのに、今は彼女を前にするだけで怖気づいてしまった。言わなければならないことはたくさんあるのに、いくら頭をひねっても言葉が見つからない。

 息をするには苦しすぎる沈黙の後、エトロが俺から目を逸らすことなく口を開いた。

「ハウラ。リョーホを連れてきてくれてありがとう。すまないが、二人きりになりたい」
「……分かりました」

 ハウラは逡巡しながらも目を伏せて、足早に公園を後にした。エトロはそれを確認した後、顎をしゃくるようにして俺を呼んだ。
 
「リョーホ。少し歩こうか」

 エトロの声色には覇気がなく、俺と同じぐらい疲れているように見えた。俺は一瞬断ろうと思ったが、ハウラの後ろ姿がいつもより小さいことに気づいてしまい、黙ってエトロの方へ歩き出した。
 
 二人だけで、ひび割れた『逢魔落としの階段』を黙々と上り続ける。広場の方からは復興作業に勤しむ人々の楽しげな騒ぎ声が聞こえ、俺の足を何度も引き留めようとしてきた。

 それでも気力だけでエトロを追いかけていたが、不運なことに、階段の途中は瓦礫で塞がれて進めなくなっていた。さしものエトロでも瓦礫を登ってまで頂上を目指したいわけではないらしく、瓦礫から十メートル以上離れた階段で足を止めた。

「ここなら人も来ないな」

 エトロはそう言って、瓦礫に背を向けて階段に腰を下ろした。
 
 俺は乾ききった口を閉じながら、エトロの数段下で背を向けるように座った。

 こうして長い階段を前にすると、バルド村の中を談笑しながら歩いていた日々を思い出してしまう。

 俺はいつも最後尾で、真ん中にはアンリ、列の先頭にはエトロがいた。エトロは器用に後ろ向きで階段を上りながら、足の遅い俺をしょっちゅう揶揄うのが趣味だった。煽りに弱い俺は強がって一気に階段を上って、結局エトロに追いつけずにバテるのがお決まりだった。その後はアンリに腕を引っ張られて、やっとギルドの入り口に到着するのだ。

 そんな数日前の出来事ですら、俺の中ではすでに色褪せてしまった。

 騙された。殺されかけた。俺のせいで大勢死んだ。様々な体験が、俺の積み上げたものを片っ端から薙ぎ倒してしまい、何も残っていない。

 それでも以前の自分を取り繕うべく、俺は声を振り絞った。すると、口腔からえずくような空気しか出せず、諦めて苦笑した。
 
「……無事だったのだな」

 エトロの声色は想像していたよりも柔らかかった。急に空気の通りが良くなって、俺はようやくまともな声を出せるようになった。
 
「エトロも無事でよかった。昨日は全然見当たらなかったからさ」

 すぐに会話が途切れた。

 俺は地面に両手をついて、ぼんやりと空へ目を向ける。水色に浮かんだ鱗雲は、夕日を真横から浴びて影の凹凸が際立って見えた。

 数秒の空白の後、エトロが半笑いの吐息を漏らした。
 
「里の狩人が言っていたぞ。リョーホは英雄の卵だと」
「はは……誰が言い出したんだろうな。大したことはできなかったんだけどなぁ」

 いきなり英雄の卵だと持て囃されても、俺には自分に成り済ました誰かが評価されているように感じられて、純粋に喜べなかった。
 
「英雄は、なろうと思ってなれるものじゃない。もっと胸を張れ。お前も一応はレオハニーの弟子なのだから」
「……そうだな」

 俺はエトロの返答に軽い落胆を覚え、静かに顔を俯けた。前のエトロなら謗って笑い話にしてくれただろうに、と浅ましい比較が止まらない。

 俯けた視界の中で、小さな蟻が足元で右往左往している。俺は蟻を避けるように足を二段下へ投げ出した。ふくらはぎが階段の角に食い込んで痛かった。

 どれほどの時間が経過しただろうか。不意にエトロが核心に迫る発言をした。

「お前をベアルドルフの餌にすると、先に言い出したのは私だ」

 俺は口の中で舌を転がした後、当たり障りがないように言葉を紡いだ。
 
「……酷い闘いだったな」
「ああ」
「大勢人が死んだ」
「ああ」
「俺も何度か死にかけたよ」
「……ああ」
「……巻き込んだら、俺が死ぬかもしれないって思わなかったか?」
「……思っていた」
「でも止めなかったな」

 事実を突きつけると、エトロの返事がついに途切れる。話している間に自分でも何がしたいのか分からなくなり、俺はポツポツと胸の内を明かした。
 
「悪い。なんでだろうな……こんなことされたら普通は怒るんだろうけどさ、本当に、何も怒りが湧いてこないんだ。裏切られたって気がしないし、俺が一方的に仲間だと思ってただけだ。恨む筋合いもないって言うか……」
「いいや。怒る価値もないと思っているんだよ、お前は」
「……そうなのかな」

 落ちるような声でエトロに指摘されたものの、俺はいまいちしっくりこなかった。乾き切った口の中に唾を送り込んで、ゆっくりと瞬きを繰り返しているうちに、やっとそれらしい理由が思い浮かぶ。

「……俺は、お前に殺したいぐらい嫌われてると思わなかったんだ。それが一番キツいわ」
「違う。私はお前を嫌っていない。……少なくとも殺したいほどじゃない」
「じゃあ、説明してくれたってよかったじゃないか。復讐で俺が必要なら、手伝ってくれって一言ぐらい言えただろ」
「お前が人殺しを許容できるような男に見えなかった。だから黙っていたんだ」
「それで俺が死んだらどうするつもりだったんだ? レオハニーになんて言い訳する気だよ」

 語気を強くして問い詰めると、エトロは押し黙ってしまった。俺が死んだ後のことは何も考えていないかのような態度だ。一瞬かぁっと頭の奥が熱くなったが、言葉を探すうちにその熱も冷め切ってしまった。

 黙り込んだ俺に、背後でエトロが投げつけるように言ってくる。

「……八つ当たりぐらいしたらどうだ」

 俺は、ため息すら吐けなかった。

 エトロのことがどうでもいいわけではない。いくら頑張っても感情を形にできないだけだ。強いて今の状況を客観視するなら、諦念だ。

 俺はずっと真面目にこの世界で生きる気はなかった。守護狩人になってレオハニーから帰る方法を聞いたら、さっさと異世界からおさらばするつもりだった。俺がいくら弱くても、レオハニーの後ろ盾があれば決して見捨てられないと言う慢心もあった。

 そうして他者の心に踏み込むのを躊躇い、自分のためだけに努力してきた結果、俺はエトロにとって、その辺のモブと同じ存在に成り下がってしまった。全て俺が産んだ結果だ。こんな人間なら、エトロに見限られても仕方ない。

 無言で時間が過ぎるのを待っていると、背後で徐にエトロが立ち上がる気配がした。

「アンリたちが探しているんだったな。先に戻ってる」
 
 エトロは俺の横を通り過ぎ、靴音を鳴らしながら一段一段遠ざかっていった。

 途中、麓の方から風が吹き上がり、エトロのうなじが曝け出された。よく見てみれば、エトロの髪はエラムラに来る前よりもかなり短くなっており、白い首筋には浅く斬られたような傷跡が残っていた。

 俺は指先に一瞬青い燐光を纏わせたが、結局エトロに癒しの力を流さないまま霧散させた。

 代わりに、勇気を振り絞って少し踏み込んだ問いを投げる。

「一応聞いておきたい。俺になんか、言うことないか?」
「謝罪の言葉が欲しいのか?」

 エトロは俺を振り返らずに嘲笑したが、即座に荒く息を呑んで口を塞いだ。
 
「……すまない。今のは謝る気がないと言うわけではなくて……いや、意地を張るのは止そう」

 エトロは口から手を下ろすと、硬い動作でこちらに振り返った。奇しくも、彼女の目線は座っている俺と並んでいた。

「巻き込んですまなかった。リョーホ」

 謝罪の言葉を聞いても、俺の心は満たされなかった。むしろ、揺らぎ一つなかった水面が、今になって沸々と泡立ち始める。
 
「……俺のこと信用できなかったのか」
「リョーホは好き好んで人を殺したい男でもないだろう。シャルがいなければ、お前ならすぐにエラムラから逃げ出したはずだ」
「……ああ。その通りだよ。昨日はどうやったら人を殺さずに済むかずっと考えて、逃げたくてたまらなかった。……でも、一言ぐらい、相談して欲しかったよ」

 戦慄くような声で吐き捨て、俺は勢いよく立ち上がった。できるだけ冷静であろうと思いつつも、吹き上がる不満の勢いは止められなかった。
 
「なぁ、俺ってそんなに頼りないか? どれだけ強くなったらお前の仲間になれるんだよ。どんな覚悟があればお前は納得してくれるんだ。最初から俺を仲間にする気がないなら、最初からそう言ってくれよ!」
「やめてくれ!」

 エトロの声に遮られ、俺は目を見開きながら硬直した。
 
「お前の言葉を聞いていると惨めになる。一人で復讐を成し遂げられると驕って、結局お前に助けられた自分の間抜けさに反吐が出る……!」

 俯きがちに俺を睨みつけるエトロの瞳は青々と燃え盛っていたが、異世界生活初日で見た時よりどす黒く、目を背けたくなるような憎悪に満ち満ちていた。

「お前は英雄の卵と持て囃されても、私には何もない。師匠の一番弟子は私だったのに、何もかもお前のものになるんだ。お前さえいなければと、何度思ったか……!」
「……やっぱり、俺のこと嫌いじゃねぇか」

 俺の言葉にエトロは小さく肩を揺らすと、顔を背けたまま荒々しく言い捨てた。
 
「……ああそうだ。レオハニー様の寵愛をあっさりと手に入れたお前が嫌いだ。狩人になったばかりの癖に強くなっていくお前が嫌いだ。命を弄ばれたのに、私を罰しようともしない偽善者なお前が、大嫌いだ」

 薄々予想できたくせに、いざ面と向かって言われると胸が切り裂かれるように痛かった。俺は怯む自分を鼓舞し、あえて決定的な答えを求めた。

「たったそれだけの理由で、俺がどうなろうが、お前にはどうでも良かったんだな?」
「……そうだ。私は復讐さえ遂げられればどんな犠牲も厭わない。そういう人間なんだ」
「…………よく分かった」

 エトロが俺と付き合っていたのは、レオハニーに言い付けられていたから。俺のことは仲間ですらない。死んでいようが生きていようが、所詮は背景の賑やかしだ。

 何もかもが馬鹿らしい。

 そう思った途端、焼け付くような怒りが完全に冷め切った。

 俺はエトロを見下ろすと、彼女から目を逸らすように頭を下げた。
 
「今まで気づけなくて悪かった。もう迷惑はかけないようにするから」
「……リョーホ。私は」
「先に行っててくれ」

 俺はエトロの声を遮ってまで追い払うように手を振った。

 彼女は数秒立ち止まってから、静かに歩き去っていった。

 俺は地面を茫然と見下ろしたあと、不意に目眩がしてその場に落ちるように座り込んだ。

 これからバルド村に帰る準備をしなければならないが、その先のことを想像するだけで胸が掻きむしられるようにイライラする。手当たり次第に暴言を吐いて壊しまくりたいが、残った理性が歯止めをかけるせいで、余計に腹の中の不快感が膨らんでいった。

 今日はもうダメだ。せめてほんの少しの間だけでも一人にならなければ。

 俺は立ち上がると、アンリたちとの待ち合わせ場所を迂回するように脇道へ逃げた。だが向かう先で復興作業に精を出すエラムラの人々を見つけてしまい、俺は廃墟の陰に隠れて足を止めた。

 完全に一人になりたいなら、里の外に出てしまえばいい。なのにそうできないのは、誰かに構ってほしいと言う幼稚な欲求があるからだった。

「……くそっ!」

 行き場のない感情を壁にぶつけてみるが、拳の皮膚が弾けただけで全く気分は晴れなかった。早く帰らなければならないのに、俺は日差しが赤く染まるまで、ずっとそこから動けなかった。
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