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魂の戯れ part.4 前編
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「恋人が欲しいです」
「もっとお金があれば」
「あいつより早く出世できますように」
ここは天国だ。ということは、地上のやることが筒抜けだったりする。今、この瞬間もだ。私たちは、地上から飛んでくる願い事を横目に見ていた。
神社や、神聖な場所(これを地上では、パワースポットと呼ぶらしいが)での願い事が天まで飛んでくるのだが、強固な物は天使や、神と呼ばれる存在がキャッチして叶えに下りに行く。
そういう願いは、どんなものかというと、徳を積んだ人間の願いや、人の役に立つ願いだったりする。
私たちには、それらの言語が視覚イメージとして入るため、どれが叶う願いかは一目瞭然だった。そうしたものほど、クリアで、軽いのだが、しっかりしている印象があった。
当然、欲が強過ぎたり、悪果を招いたり、願う人間にそぐわない内容のものは叶わないことが多い。それらは、黒ずんでいて、重い。一度は跳躍するが、そのものの重みで地に落ちたりするのだ。
そんな様子を私たちは、見ていた。地上は年末で、来年に向けての願い事が飛び交っている。
「一つ聞きたいんだが」
ロウが言う。
「どうした? 」
「お賽銭ってあるだろ」
「ああ」
「神様や、天使もお金に興味があるんだろうか」
「さあな。ただ、入れる金額によってその人の本気度を測っているとは思うが。さすがに、命を助けて下さいの願い事には、五円じゃ動かないだろ」
願い事はたくさん宙を舞っているので、目立つためには願い方にも個性を出す必要があるらしい。
目的がはっきりしていたり、時代の流れに沿ったものは、神様の方に向かってキャッチボールをするが如く、綺麗に飛んで行くこともあるそうだ。
「あ、あの人はダメね。欲が強過ぎ。
あ、あの人はもうちょっと努力すれば叶うかも。あ、あの人は永久に叶わないわね。それが叶ったら悪影響だもの。どうして、気付かないのかしら」
ふと、横から声が聞こえて来た。その方向には、まだ十にも満たない少女が地上を見て嘆息していた。
「あー私が地上に下りれたら、あの人に手助け出来るのに。あ、天使様が向かっていった。やっぱり、私、見る目あるかも♪」
今度ははしゃぎ始めた。私たちが彼女の方を見ていると、向こうもこっちの視線に気付いた。
「お兄さんたち、何か用? 」
こちらを向いた少女は、髪形はショートボブで毛先が整えられており、現代的なイメージを与えた。しかし、目には年齢にそぐわないほどの大きな意志を感じさせるものがあった。
「お嬢ちゃんも、ここの住人なのかい? 」
私がそう尋ねると、少々機嫌を損ねたような表情で、彼女は答えた。
「その呼び方、あまり好きじゃないわ。それに私、地上に下りた回数ならあなたちより多いのよ」
そう誇らしげに言ったが、すぐに反省をし始めた。
「いっけない。あたし、天使を目指してるのに、また、しょうもない自慢しちゃった」
それから気を取り直したかのようにこちらを振り向いた。表情には、数秒前の自信の無さはなく、気を取り直してたのか、気品さえ漂っている。
「あたし、前世で早く病気で亡くなったから、ここに来れたの。天使様のお情けね」
「そうなのか」
「で、お兄さんたちは何か用? 」
「俺も地上に興味があってね。それで、君のしてることが気になったんだが」
「ああ、あたしもそういう理由から、天使様を目指してるの。で、今は地上の人たちで助けるに値する素質の人を探すところから始めてるの。自分だったら、どの人を助けるかってね」
「へえ、立派だな」
私は素直に言葉を出していた。地上にわざわざ下りるのは物好きだとしか思っていないために、そうした論理を乗り越えて行動出来るのは尊敬出来る。
「でも、あたしが助けたい人を見かけても力不足を実感するだけだわ。そして、ここは満たされていて、高みから見ている自分のしていることはただの自己満足じゃないのかって思うことがあるわ」
そう言って、彼女が苦笑した。その表情は、年齢にそぐわないあまりにも大人びた内面を感じさせた。
ふと、地上から真っ直ぐに願い事が飛んで来た。それは、まるでロウの方を狙って飛んで来たかのようだった。
「もっとお金があれば」
「あいつより早く出世できますように」
ここは天国だ。ということは、地上のやることが筒抜けだったりする。今、この瞬間もだ。私たちは、地上から飛んでくる願い事を横目に見ていた。
神社や、神聖な場所(これを地上では、パワースポットと呼ぶらしいが)での願い事が天まで飛んでくるのだが、強固な物は天使や、神と呼ばれる存在がキャッチして叶えに下りに行く。
そういう願いは、どんなものかというと、徳を積んだ人間の願いや、人の役に立つ願いだったりする。
私たちには、それらの言語が視覚イメージとして入るため、どれが叶う願いかは一目瞭然だった。そうしたものほど、クリアで、軽いのだが、しっかりしている印象があった。
当然、欲が強過ぎたり、悪果を招いたり、願う人間にそぐわない内容のものは叶わないことが多い。それらは、黒ずんでいて、重い。一度は跳躍するが、そのものの重みで地に落ちたりするのだ。
そんな様子を私たちは、見ていた。地上は年末で、来年に向けての願い事が飛び交っている。
「一つ聞きたいんだが」
ロウが言う。
「どうした? 」
「お賽銭ってあるだろ」
「ああ」
「神様や、天使もお金に興味があるんだろうか」
「さあな。ただ、入れる金額によってその人の本気度を測っているとは思うが。さすがに、命を助けて下さいの願い事には、五円じゃ動かないだろ」
願い事はたくさん宙を舞っているので、目立つためには願い方にも個性を出す必要があるらしい。
目的がはっきりしていたり、時代の流れに沿ったものは、神様の方に向かってキャッチボールをするが如く、綺麗に飛んで行くこともあるそうだ。
「あ、あの人はダメね。欲が強過ぎ。
あ、あの人はもうちょっと努力すれば叶うかも。あ、あの人は永久に叶わないわね。それが叶ったら悪影響だもの。どうして、気付かないのかしら」
ふと、横から声が聞こえて来た。その方向には、まだ十にも満たない少女が地上を見て嘆息していた。
「あー私が地上に下りれたら、あの人に手助け出来るのに。あ、天使様が向かっていった。やっぱり、私、見る目あるかも♪」
今度ははしゃぎ始めた。私たちが彼女の方を見ていると、向こうもこっちの視線に気付いた。
「お兄さんたち、何か用? 」
こちらを向いた少女は、髪形はショートボブで毛先が整えられており、現代的なイメージを与えた。しかし、目には年齢にそぐわないほどの大きな意志を感じさせるものがあった。
「お嬢ちゃんも、ここの住人なのかい? 」
私がそう尋ねると、少々機嫌を損ねたような表情で、彼女は答えた。
「その呼び方、あまり好きじゃないわ。それに私、地上に下りた回数ならあなたちより多いのよ」
そう誇らしげに言ったが、すぐに反省をし始めた。
「いっけない。あたし、天使を目指してるのに、また、しょうもない自慢しちゃった」
それから気を取り直したかのようにこちらを振り向いた。表情には、数秒前の自信の無さはなく、気を取り直してたのか、気品さえ漂っている。
「あたし、前世で早く病気で亡くなったから、ここに来れたの。天使様のお情けね」
「そうなのか」
「で、お兄さんたちは何か用? 」
「俺も地上に興味があってね。それで、君のしてることが気になったんだが」
「ああ、あたしもそういう理由から、天使様を目指してるの。で、今は地上の人たちで助けるに値する素質の人を探すところから始めてるの。自分だったら、どの人を助けるかってね」
「へえ、立派だな」
私は素直に言葉を出していた。地上にわざわざ下りるのは物好きだとしか思っていないために、そうした論理を乗り越えて行動出来るのは尊敬出来る。
「でも、あたしが助けたい人を見かけても力不足を実感するだけだわ。そして、ここは満たされていて、高みから見ている自分のしていることはただの自己満足じゃないのかって思うことがあるわ」
そう言って、彼女が苦笑した。その表情は、年齢にそぐわないあまりにも大人びた内面を感じさせた。
ふと、地上から真っ直ぐに願い事が飛んで来た。それは、まるでロウの方を狙って飛んで来たかのようだった。
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