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最終話「ずっと会いたかった」

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 3年経って、大学4年生になった。
 バイトはやめた。

 人混みの中、ゆきやんが走ってくる。
「大ちゃーん! ごめん、遅くなって。教授に卒論についてあれこれ言われて時間かかった」
 駅前で待たされて30分。普通ならとっくに帰ってるところだ。スマホをズボンのポケットに押し込んで、
「いいよ、オレもさっき来たところ」
「本当に~。そんなこと言って、俺に気ぃつかってる?」
 なぜか嬉しそうにニヤニヤするゆきやんにオレは呆れた目で「すぐそこの本屋にいた」と返したら、これまたがっくりしてオレの肩にもたれかかってきた。
「大ちゃーん、そこはさー・・・って、ビリッときた!」
 ぴょんっと飛び跳ねてオレから離れた。
「? 静電気?」
「そう! 冬でもないのに大ちゃんに触ると静電気が起きるんだよねー。不思議だよねー。ていうか、見て! ふざけて大ちゃんに抱きついた時にできたやつ! 火傷の跡みたいになってない? これってマジで静電気?」
 そう言って右腕の内側を見せられる。
「本当だ。わりとデカい跡がある」
「うーん、ビリッときたところまだなんか熱い」
「はいはい」
 どうでもいいとばかりに駅から出て家へと歩き出す。
「あ、大ちゃん待って! 帰りコンビニかスーパー寄りたい!」


 いつからか不思議な現象がオレに起こるようになった。
 ひとつめは今さっきゆきやんが言ってた『オレに触れると静電気?』が起こるらしい。(オレはなんともない)
 ふたつめは誰かに見られてるような・・・気配を感じる時がある。でも、別に怖いとか気持ち悪いとか思わないのがまた不思議だ。むしろ見守られてるようなそんな気になる。
 ゆきやんに話したら「霊に憑かれてるんじゃん?」と言われた。
 
 帰り道にあるスーパーに寄って夕飯用のお弁当とお菓子やら飲み物などを買ってふたりしてオレの家に帰った。
「大ちゃん、俺先にシャワー浴びていい? 大学から走ったから汗だくでさー。電車ん中きっと汗臭かったと思う」
「最悪。きれいに使ってよ。母さんにまた怒られる」
「りょーかい! 大ちゃん匂いに敏感だもんねー。特に臭い系」
「誰だって無理でしょ」
「いやいや、大ちゃんの場合なんかトラウマっぽいのを感じる」
 探るような目でオレを見るゆきやんに「さっさと行け」と促すと、風呂場まで啓礼しながら行った。(アホゆきやん)
 オレは大量のお菓子と飲み物を一度自分の部屋に持って行き、そのあとキッチンへ行って買ってきたお弁当をレンジにかける。

 ゆきやんとゲームを作ることにしたあの日。
 話が思ったより盛り上がって勢いのまま実行し作った。最初の完成度はいろいろ荒かったけどそれなりに友人の評価が良くて、調子にのってプレイした動画をネットに流したら一気にバズった。
 そこからはもうあれよあれよという間にアプリゲーとして売り出したり、ゲーム会社に声をかけてもらったりと・・・。大学生にして契約までこぎつけてしまった。(ゆきやん天才)
 毎日のようにオレかゆきやんの部屋に入り浸ってゲームの製作に励んだり、自作のゲームの動画を配信している。
 平凡な大学生活、適当な就職・・・のつもりだったのにこれはこれで刺激があって楽しんでいる。
 ゆきやんとも仲直りしたあとは前よりももっと一緒にいることが増えた。というか、大学以外はほとんど毎日一緒。特にゆきやんがやたらべったりしてくる。
 オレも「うざい」とか言いながらもゆきやんと一緒にいるのは楽で居心地がいい。
 充実しててこれはこれでいい。だけど、何か忘れてるような・・・。間違い探しの絵をいくら見ても間違いを見つけられない時みたいな。見てるのに見えてない。そんなモヤモヤがずっと心に残っている。

「大ちゃーん。あ、ここにいた」
 風呂上がりのゆきやんが首にフェイスタオルをかけながらリビングに入って来た。(下着以外オレが貸した服)
「ゆきやんもお弁当温めるだろ」
 カウンター越しに話しかける。
「サンキュー。大ちゃんはまだ風呂入らないよね? 換気付けちゃったけど」
「うん、オレはあとでにする」
 ピッとレンジのスイッチを押す。
「大ちゃん、今日泊ってっていい? ついでにこっちで配信したい」
 カウンターの椅子に座りながら話しかけるゆきやん。
「・・・いいけど、多分、父さんと徹夜でドラ〇ンボールのアニメ観ると思う」
「え! なんで」
「新シリーズが始まるから1話から見直したいんだって。なぜかオレまで付き合うはめになった」
「さすがおじさん! 明日も平日なのに。仕事大丈夫なの?」
 さぁ。と肩をすくめるオレ。アニオタの両親を持つとこんなの日常茶飯事だ。
「兄弟がいれば分散されるんだけど、付き合えるのオレしかいないし」
「おばさんは?」
「母さんはセー〇ームーン派だから」
「なるほど・・・。ていうか、俺も一緒に観ようかな!」
「そうしてくれると助かる」
 やれやれとため息をつきながら温まったお弁当をオレのお弁当の上に重ね、棚から二人分のコップを出してゆきやんに持たせ、2階の部屋へと向かった。


 オレの部屋で少し早めの夕飯を取りながら自作ゲームの話をしたり気になる同類さんの動画配信やゲームを観て談義したり。
 いつもの時間を過ごしているとゆきやんが唐突に、
「大学卒業したら一緒に住まない?」
「・・・なんで? 家近いじゃん」
 ちょっとびっくりした。
「そーだけど、一緒に住んだ方がもっと楽じゃん。配信もしやすいし、お互いの親のこと気にしなくていいし。ね、どう?」
「うーん・・・べつにいいけど、オレ、男好きっぽいけどそれでもいいなら」
「え! 大ちゃん男好きなの?!」
「・・・多分。つーか引くところなのになんで嬉しそうなの?」
 突然の幼なじみのカミングアウトにゆきやんが意外にも動じなかった。
「全然引かないよ! 嬉しいっていうか・・・嬉しいんだけど」
 後半は照れながら言うゆきやんのせいで良く聞こえなかった。
「いつから?」
「わからん。3年前かも」
「だいぶ前じゃん! なんで言ってくれなかったんだよ」
「んーなんか男だからってわけでもなくて、範囲狭いっていうか」
「どーゆうこと?」
「こーゆう系の男にドキッとする」
 スマホで保存してある画像をゆきやんに見せると、
「えぐっ! めちゃくちゃイケメンじゃん! え?! 大ちゃん面食いだっけ???」
「違う。むしろ顔いい奴ムカつくんだけど、なぜかドキッとするんだよな」
「目がアーモンドみたいじゃん。つーかこれ、外国人? ハーフ?」
「ちなみに男同士のH動画観たけど吐いた」
「観たんだ」
「うん、反応するか確認しないと」
 だよね、とゆきやんが同情しつつ、よしよしと頭を撫でてくれた。が、静電気が起きてすぐ終わった。

「俺は大ちゃんが男好きでも全然気にしないから。むしろウエルカムだから! 一緒に住もう!」
 立ち上がってバッとゆきやんが両手を広げてハグ待ちする。
 なんかプロポーズみたいで、ぷっと吹いて笑った。
「ウエルカムってなんだよ!」
 はははと豪快に笑う。
「えーいいじゃん、ここはオレと大ちゃんの熱いハグしようよー」
「嫌だ。つーか、強めの静電気で跡が残るんだろ? やめたほうがいい」
 平気平気と言いつつ、ちょっとビビるゆきやん。
「一緒に住んでもいいって思う人、ハグしてください」
 めげずにゆきやんが手を広げる。
 くすっと笑みがこぼれる。
 こうやってオレのことなんでも受け止めてくれるんだよな。そう思ったらこの先もゆきやんと一緒にいたいと思った。
「しょーがないな。一緒に住んでやってもいいよ」
「マジで!」
「うん」
 立ち上がって両手を広げながらゆきやんに一歩近づいた、その時。
 急に床が青白く光り魔法陣のような円が浮かび上がった。
「なんだこれ?!」
 ゆきやんが驚く。
「・・・これ」
 オレも初めて見るはずなのに、初めての気が、しない?
 魔法陣からぬっと手首が出てきて迷いなくオレの右足を掴んだ。
「?!!」
 抵抗する暇もなく魔法陣の中に勢いよく引きずり込まれる。
「大ちゃん!!」
 助けようと手を伸ばすゆきやんの手をつかめないまま、視界がぼやけ意識が消えた。










 


 目を覚ますと、必死な顔でオレを見下ろすイケメンすぎる男がいた。(エグッ)
「ダイヤッ」
 勢いよく片手で抱き寄せられ、見覚えのある匂いに包まれる。
「・・・ロウッ」
 両腕を伸ばしてロウの首にしがみつく。

 ずっと会いたかった。

 いくら目を凝らしても見えなかった目の前が、一気に視界がクリアになり何もかも思い出した。
 ずっとずっと会いたかった第一王子・・・ロウが目の前にいる。
 オレ、異世界にまた来たんだ。
 ロウが治める国、アリッシュにまたこれたんだ。
 嬉しすぎて感動で胸がいっぱいになる。
 ロウも両手でオレをギュッと強く抱きしめ、
「おまえがいないとつまらない」
 懐かしいイケボが耳元でそう言った。
「ロウ・・・」

 それってどういう意味だ?
 
 首に回した手を放し、ロウを見上げる。
 3年ぶりに再会したロウはあの頃とまったく変わってない。エグいくらいのイケメンだ。(ムカつく)
 髪の色が赤い。魔法を使ったのか?
 
 ロウもオレの背中に回している手の力を緩め、見つめ返す。
 アーモンドの形をした二重の赤い瞳がオレを映す。
 見つめ合っているとロウの瞳が少しずつ近づいている・・・ような。
「コホンッ」と咳払いが少し離れたところから聞こえ、ハッと我に返る。
 
 辺りを見回すと薄暗いどこかの地下室みたいだ。以前召喚された城の地下室よりも狭く壁がレンガだ。
 わざとらしく咳払いした人が長い木の杖を持って少し離れたところで立っていた。
 ロウソクの灯りと、自身が淡く光ってる。
 白髪なのに背はロウと同じく180くらいありそうだ。顔は少しだけしわがあって60代くらいに見える。手にもしわが。
 
 ん?
 どこかで見たことあるような・・・。

 と、思っていたら顔だけ急に若返って20代くらいになった。(どういうこと?!)
 そしたら魔物研究所でフォ・ドさんが紹介してくれた天文研究所のコトリさんだと気づく。(あれ?黒髪じゃなかった?)
 オレが口をあんぐり開けていると、
「ロウ、約束どおり召喚を手伝いましたよ。例のものを」(例のもの?)
「わかってる」
 そう言ってロウはズボンのポケットから小さい小瓶を取り出しコトリさんに投げた。
 それを受け取るとコトリさんは少しよろけながら、
「用が済んだのでわたしはこれで」
 チラッとオレに視線を向け、
「召喚と若返りを同時にしたので副作用があるかもしれません。今日のところは安静に」
「?」
 ぺこりとお辞儀するコトリさんに同調してオレもぺこりと頭を下げた。
 どういうことだ?
 頭にはてなを浮かべている間にコトリさんは部屋から出て行った。

「コトリがあーいうんだ。とりあえずベッドでひと眠りするといい」
「召喚はわかるんだけど、若返りって?」
 そういえば、コトリさんは時間を操る魔法が使えるとフォ・ドさんが言ってた。その魔法で肉体を若返らせることができると・・・。
 ハッとしてまだオレにひっついてるロウを突き飛ばし、自分の身体を見回すと変化がないようで・・・あった!
 この3年間体がなまるからってプールに通ったり筋トレをかかさずやっていたおかげで筋肉がついたり体がひきしまっていたのに、それがない。
「え?! 3年前に戻ってる?!」
「コトリに頼んで3年前のダイヤに戻してもらった」
「なんで?! え、そしたら顔も3年前ってこと?」
「たいして変わってないけどな。あ、髪があの頃の長さだ」
 ツンッとロウが耳にかかる髪を引っ張った。触ると確かに急に伸びている。先週切ったのに。
「ダイヤは自分の世界に帰ってから3年経ってるけど、こっちの世界は3ヶ月しか経ってない」
「え?! マジで?! だからロウ、全然変わってないんだ!」
「同じ日を2回以上召喚することができない。時空になんらかの影響がでるらしい。だから、3ヶ月待った」
 じっと強い目でオレを見つめるロウ。オレも、
「オレなんか3年だ」
 忘れてたとはいえ、ずっと引っかかってた。
 ずっとロウのこと。

 ちらっと召喚される時のことを思い出す。
 消された記憶を全部思い出したけど、消されていた3年間の記憶もちゃんとある。
 ゆきやん・・・。
「おい、一緒にいたゆきやんに魔法陣見られてるぞ!」
「記憶は消した。今頃忘れてる」
 なるほど。とホッとする。
 ついでにもうひとつ思い出した。
「また手首が現れた! 初めての召喚の時と同じかはわかんないけど、今回は完全にオレを狙ってた。あれは・・・いったい誰なんだ?」
 眉間にしわをよせるオレにロウが、
「俺の手首だ」

 ん?!

「え。ロウの?」
 困惑するオレにロウはケロッとした顔で、
「魔法陣の中に手を突っ込んでおまえを引き寄せた。そのほうが確実だからな」
「な。じゃねーよ。え?」
「ダイヤは聖女を助けてこっちに来たって言ってるけど、あれも俺がやった」

 んん?!!!

「え。なんで?」
「国王候補の王子は女神から聖女候補を報告され、異世界を映す特殊な魔石で召喚するまで監視しなきゃならない」
「か、監視・・・」
「ルノーは聖女に対して崇拝信が強いからオレがやることになったんだが・・・面倒だった」
「おい」
「やっててあることに気づいたんだ。聖女と一緒にときどき映る人間がいることに」
「それって、まさかオレ?」
「あぁ。状況で兄弟だということは把握したが、それ以外はさっぱり。そんで、魔がさした。聖女の召喚の日、このまま召喚するのはつまらんと思って興味本位でおまえを召喚をした」
「・・・マジか」

 オレ、全然悪くなかったーーーーーーーーーーーーー。
 つーか、召喚する前から桃花のこと知ってんじゃん!! オレのことも顔だけは知ってんじゃん!

「興味本位で召喚するなよ!」
「なんでだ? 魔がさしたとはいえ、俺はおまえに会ってみたかった。聖女の監視はつまらないものだったが、ダイヤの観察は楽しかった」
「・・・観察って、おい」

 あれ。ロウってまさかオレのこと好きじゃん?
 無自覚ってやつですか?

 気づいたらぶわっと顔が熱くなってきた。

 スッとロウの手が伸びてきて迷いなくパシッとはたいた。不満顔のロウ。
「なんだよその顔。つーか国の王がなにしてんだよ。も、桃花と結婚したんだろ。その、うまくやれてんの?」
 気になるのに視線をそらしてしまった。
「・・・なんのことだ?」
「はぁ? 伝承なんだろ。国の王と聖女が結ばれるとか結婚しないと国が平和にならないとか」
 思い出したくもないことまで思い出してイライラする。
 突然、ガツッと両手で顔をつかまれ無理やり視線をロウに合わされた。
「な、なにすんだよ!」
 振りほどこうとするけど力が強くてびくともしない。
「オレが遠征に行ってる間に何を吹き込まれたか知らんが、オレが言うことだけ信じろ」
「・・・それって・・・桃花とは結婚して、ない?」
「してない。興味がないと言ってるだろ。聖女はこの国にいるだけで役目を十分果たしてる」
「でも、ルノーが王と聖女が結婚するのは習わしだって」
「王は聖女の守護と世話をするから結婚した方が手っ取り早いってだけだ。べつにしなきゃいけないわけじゃない。初代の聖女は一生独身だった」
「マジで?!」
「マジだ」
「・・・。じゃ、じゃぁ、桃花のために作った別邸にロウのコレクションのはく製が置いてあったけど・・・」
 上目づかいで恐る恐る聞いてみる。
「・・・あぁ、ジジイが魔物の死骸の置き場所が欲しいからって城の奴らに引き取らせたらしい。探すのに苦労した」
「引っ越しは?」
「引っ越しはしてない。ダイヤが魔物のはく製が怖いというから部屋の模様替えと、ついでに大幅に改築した」
「・・・ルノーが別邸の話をしたらロウがノリノリだったって」
「? 改築の参考に聞いた時か?」
「聖女に興味がないとか言いながらオレに妹のことを聞いたのは? 似てるか聞いてきたよな! つーか、顔はもう知ってるから性格が似てるか聞いてきたのか?!」
「・・・聞いたか?」
 はてな顔をするロウに、思いつきで聞かれたんだとガクッと肩が落ちる。
「聖女とダイヤ、全然似てないな」
「そぉ?」
「わがまますぎて手に負えん」
「・・・マジか」
 やっぱりと思い、2度がっくりする。

 他に気になることがあるかと質問してくるロウに、オレはもう心底疲れた。
 3年前とはいえ、誤解が解けてよかったような、もうどうでもいいような。

「冒険はもういいのか?」
「それ聞く? だってオレ、魔物苦手だし。結局、魔物克服できなかったし」
「魔物に会わずに冒険すればいいだろ? というか、錯覚魔法で倒せるんだからそれで問題ないだろ」
「・・・ロウ、魔物好きじゃん」
「魔物よりダイヤと一緒に冒険したい。おまえは?」
「・・・オレも。つーか、その返しはずるいんだが」
 フッと鼻で笑うロウ。
「俺は冒険なんて本当はどうでもいい」
「今更?!」
「言っただろ。おまえがいないとつまらないって。ダイヤがこの世界に残るなら理由なんてなんでもいい」
「だーかーらー、それがずるいんだって」
「なにがだ?」
 本気ではてな顔をするロウにイラつきながらも照れる気持ちを隠すのに必死だ。

 つーか、もう両想いだ、絶対。
 ただ、魔物しか頭にないロウには「好き」という感情に気づいてないのかもしれない。
 自分から言うのは負けだとか思ってたけど、ロウから言わせるのは無理そうだ。
 これ以上こじらせるのはアホらしいからもう言った方が勝ちということにしてやる。というか、もう限界だ、オレが。

「もういい、オレが言いたいのは・・・」
「ダイヤが好きだ」
 オレが言うまえにロウに言われた。まっすぐな瞳で。そのあと肩をすくめながら、
「おまえの世界ではこれを言うのが基本なんだろ?」
 誰に聞いたのか。(桃花? まさか)どうやらアリッシュでは「好き」を伝えるのはマイナーらしい。
「そうだよ!」
 ぐぃっと胸ぐらをつかんで引き寄せ、ロウの口に触れる程度のキスをしてやった。
「オレも、好き、だ」
 て、照れる。
 思わずうつむくと、ドサッと柔らかいものの上に倒された。顔を上げると目の前にロウの顔が。
 
 ん?!

 視界だけ周りを見渡すといつの間にかどこかの部屋に移動していた。ちなみに、ベッドの上にいるっぽい。(移動魔法か)見覚えのある天窓が。
 オレに乗っかってるロウがフッと鼻で笑った。
「もう魔物のはく製は飾ってないから安心しろ」
 ということは、ロウの部屋か。
「それって、どういう意味だよ」
 ロウの首に腕を回しながら聞くオレに、こつん、とひたいをくっつけてくるロウ。
 すっかり焦げ茶色に戻った髪がくすぐったい。
 また鼻で笑いながら、
「聖女に興味はないが、聖女の兄には興味がある」
 そう言って、口にキス。
「国王が言うセリフじゃない」
 甘いキスに照れながら、聖女の兄で良かったなんて思ってみたり。




 おわり。




*あとがき*
 読んでくださりありがとうございました。完結しました。
 ここまでおつきあいくださり本当に感謝です。たくさんのいいねをありがとうございました!とってもはげみになりました(喜)
 ファンタジーものは今まで1作品しか完結したことがなく、今回も挫折するかもと思いながら書きました。
 難しかったですが、楽しかったです!また挑戦したいです。
 第一王子のロウは、初期設定ではツンデレだったのですがクーデレにハマりまして、急遽クーデレに変えたのですが・・・ただの天然キャラ?になってしまいました。(汗)クーデレにもまた挑戦したいです。
 
 またご縁がありましたら読んでくださるとありがたいです。
 
 たっぷりチョコ



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