聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ

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「第一王子の気持ちは」

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 次の日、今回は魔物の魔毒に当てられたということで、医者と調合師に診てもらい合格点をもらってからの完全復帰になった。
 心配性のルノーに言われ魔力に効くポーションも飲んだ。
「よし、これで準備万端! メイドさん、3日間看病してくれて本当にありがとうございました。今回も助かりました」
「とんでもございません。これもわたくしの務めでございます。完治されて心より安心しております」
 静かに微笑むメイドさんだったけど、オレが見てもわかるくらい顔色があんまよくない。
「聖女の準備で忙しいみたいですけど大丈夫ですか? あまり無理はしない方が」
「お気遣いありがとうございます」
 ニコッと静かに微笑んでから一礼したあと部屋を出て行った。

 聖女はオレの妹だ。
 正直、あんなやつのためにたくさんの人が無理してまで準備をするのはなんか申し訳ない。
 そういえば、この部屋はもともと桃花のために用意したと、ルノーが最初に言ってたな。ということは、オレも早くこの部屋を出た方がいいのかも。

 ふむ、とちょっと考えてから、その前に・・・と深呼吸する。
「フォ・ドさんに養子の件をお願いする前に第一王子がオレのことどう思ってるか確かめないと」

 数秒間があき、

 確認とは?!
 
「オレから告るなんて絶対嫌だ!! 第一王子に負けた気がしてなんか嫌だ!」

 好きになった方が負けだとかよく言うけど、口にした方が負けな気がする。(勝手な自論)
 ということは、告らずに第一王子がオレのことをどう思ってるのか聞き出す方法・・・とは?
 フォ・ドさんにそれとなく聞いてみる・・・とか? でもそれってフォ・ドさんに恋バナすることになるよな。なんか複雑。ていうか、ちょっと恥ずいし、気まずい。
 いや、その前に、この世界は男同士の恋愛はタブーなのかオッケーなのか、そこが問題だ!

 自分と話し合った結果、ピンッと頭の上に電球が光った。そんで、これからやることが決まった。

「よし、第一王子がどう思ってるかはめちゃくちゃ気になる、けども! まずはこの世界の同性愛の理解度を知るべきだよな。フォ・ドさんに協力してもらうにも、第一王子に告るにも、(オレは告らん)下手したらドン引きどろか軽蔑されるかもしれないし、養子の件もパーなんてことも!」
 人魚が男好きっていうのはまぁ・・・例外としておこう。(魔物だけに)

 意気揚々部屋を出て行くも、数秒で戻って来た。

「同性愛ってどうやって調べるんだよぉー!! つーか、ファンタジー世界にもスマホは必要じゃないんですかぁぁ!!」

 振り出しに戻ってしまった。

 


 気を取り直して城内の図書室に行ってみたけど、どの本に書いてあるのかさっぱりだし、人に聞くにも聞きずらくて結局すぐに出た。その足で魔物研究所へ向かった。

「フォ・ドさーん、こんにちはー。あのーちょっと聞きたいことが。調べものをしたい時って図書室以外に・・・」
 リビングにしている部屋に入ると、そこにいたのはフォ・ドさんじゃなくて第一王子だった。
 振り返った第一王子と目が合い、思わず「あ」と声が出る。

 ドキッと心臓が大きく跳ねた。
 4日ぶりの第一王子に緊張が一気に走る。
 会いたかったし、会えてめちゃくちゃ嬉しいけど、言い過ぎたことを思うと気まずくて視線をそらす。

「もういいのか? 出歩いて」
 無視されるかと思っただけに、第一王子から声をかけられてびっくりしたのと、ホッとした。
 フォ・ドさんにもはやく仲直りしろと言われてるし、ここは素直に返事しなくては。
「あー・・・うん。平気」
 第一王子の目を見るどころか顔も上げられん。しかも、今の返事なんだよ、下手か。
 つーか、気まずい以前にさっきから心臓がバクバクいって尋常じゃない。

 4日ぶりの第一王子がかっこよすぎて直視無理!(顔面エグいんだよ!)

 よし、帰ろう。
 この部屋にはフォ・ドさんはいないみたいだから用はない。第一王子と一緒にいたらオレの身が持たん。

 回れ右をして部屋を出ようとしたところで第一王子に首根っこを捕まれる。
「おい、態度がまだ変だぞ。後遺症でもあんのか」
「いやいやないから。オレ、フォ・ドさんに用があるから探しに行ってくる」
「ジジイなら他の研究所の奴に呼ばれてそっちに行ってる」
「他の?」
 あ。うっかり振り返ってしまった。第一王子とばっちり目が合ってしまった。(ひぃ)
 とっさに顔ごとそらすと、大きい手でガッツリ頬を捕まれ力づくで戻される。
「おい、さっきからなんなんだ。やましいことでもあるのか」
「ろ、ロウこそっ! 手ぇはなへ!」(手を放せ)
 振り払おうとしても力が強すぎてびくともしない。同じ男として地味にショック。

 タコ顔のオレを数秒眺めて満足したのか、パッと手を放した。
 びくともしなかったわりに、つかまれた顔は特に痛くなかったけど、第一王子の手の感触と体温が残って余計に心臓がうるさい。
 でも、今の行動で分かった気がする。

 第一王子は、オレのことなんとも思ってない。

 普通、好きな奴の顔をつかむか?! 首根っこ持って引っ張るか?!
 結界の話でフォ・ドさんに言われてうっかり感動しちゃったけど、よく考えればオレは聖女の兄なわけで、心配で気にかけるとかじゃなくて、監視みたいなものかもしれない。
 そう考えると、ひとりでドキドキしてるのがちょっとアホに思えてきた。
 こいつの顔面がエグイのは今に始まったことじゃないし、しっかりしろ、オレ。

「調べものってなんだ?」
「え?」
 唐突に聞かれ、はてな顔をするオレに「部屋に入ってきた時に言ってただろ」と言われる。
「オレの世界だと、調べたいことはスマホっていう電気道具?で簡単に調べられるんだけど、こっちは図書室以外にないのかなーって」
「人に聞くくらいだろ。で、調べたいものってなんだ」
 あくまで内容を知りたがる第一王子はテーブルの椅子に座った。聞くまで動く気ゼロだ。
 オレは、キッチンのカウンターに寄りかかる。
 どう言おうか頭を悩ませるも、第一王子の「早く言え」オーラにだんだん面倒くさくなり、
「この世界はお、男同士の恋愛ってどうなのかなー・・・て」
 視線をさ迷わせながらもチラッと第一王子を見る。いつもの平静顔だ。
「そんなことが知りたいのか」
「に、人魚が男好きみたいだったから、こっちの世界は同性愛って普通? ていうか、ありというか」
 キッチンのカウンターから放れて、身振り手振りしながら言い訳をしてみたり。(くそ、ダサすぎる、オレ)
「ダイヤの世界は普通じゃないのか」
「んー難しいっつーか。なしじゃないんだけど、認めてない国もあるっていうか」
「ダイヤは」
「は?」
「おまえ、男の人魚に誘惑されないってまったく疑ってなかったよな。だからか?」
「だからって??」
 なんか尋問みたいな鋭い目つきで睨まれビビる。
「・・・。生理的に受けつけない奴もいるが、国関係なくこの世界は同性同士の恋愛は認められてるし、普通だ。アリッシュは一夫多妻、一婦多夫が認められてるからその辺はだいぶ自由だ。本人同士の問題だな」

 そうだ、複数の結婚が認められてるんだった!!

「それって、異性同性関係なく結婚できるの?」
「わける必要があるのか? ダイヤの考えはつまらないな。貴族ほど親同士が決めた結婚はざらにある。結婚しなきゃいけない奴と好きで結婚したい奴、このふたりと結婚すればいい」
「え? そこ、一緒にしちゃってケンカとかなんないの?」
「なんでケンカするんだ? 円満だろ」
「・・・」

 結婚とは?

「でも、それじゃぁ、相手が可哀そうとかなんない?」
「同意があれば問題ないだろ」
「そうゆう問題か」
「?」
 珍しく第一王子の頭にはてなが浮かんでるみたいだ。少しして開き直ったのか、
「ま、複数と結婚なんて面倒なだけだから俺はごめんだ」

 ピクッとオレの耳が反応する。
 それはつまり、第一王子は一夫多妻はしないってこと?!(嬉しい)

「ち、ちなみに第一王子は男同士の恋愛とか、は・・・」
 勢いで口から出たものの、声が小さくなった。視線もそれる。
「興味ない」
「・・・」

 第一王子は魔物が好きだもんな。

 一瞬、何かを期待しかけた自分を笑ってやりたい。
「一緒にいたい奴に男も女も関係ないだろ」
「!」

 その言葉に思わずキュンッとする。

 第一王子のそういうところ好きだっ。
 と、思ったけど、それって、一緒にいたいなら魔物でもいいってことなんじゃ・・・。

 人を好きになると上がったり下がったりと感情が忙しい。久々の片思いの感覚にげっそりしていると、椅子から立ち上がった第一王子がオレの肩に肘を置く。
「冒険、行くんだろ」
 ニッと不敵な笑みを浮かべる。

 かっこよくてムカつく。(好き)
 
「あたりまえだろ。絶対行く」
 フンッとそっぽむいて顔が赤くなるのを隠した。

 オレばっかり好きなのはムカつくけど、今のところ第一王子の心の中には誰もいないみたいで安心した。
 『第一王子と冒険に行く』オレがこの世界に残る理由にするには十分だ。

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