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3章 小悪魔ロッキン
友人
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「あれ……伸ちゃんだ」
学園の敷地の森の中には、小さな公園がある。
いつもの休日なら多少の賑わいをみせる公園だが、大型連休の今日は人影もまばらだ。
そんな中、圭は隅のコンクリートの上で、ラジカセを鳴らして踊っている、一人の少年を見つけた。
浮田伸。2つ年上のダンス部のリーダーであり、寮長として後輩からの絶大な信頼を寄せられている18歳だ。
浅黒いが、整った菩薩のような顔。初めて出あった3年前は、か細い少女のような容姿だったが、そのうち筋トレに目覚め、みるみるうちに、マッチョな男へと変貌してしまった。
だが、シャイで、決め細やかな優しさは変らない。
流れているのは、セプテンバー。親世代のダンスナンバーだが、のりの良さで、若者にもファンは多い。去年の発表会で取り上げた曲だった。
振りは、圭が考えた。得意のロックダンス。伸の指が、ぴたりと左のポイントを指す。くるりと手を回して胸を使って動きを止める。かっちりしているけれど、退屈じゃない、圭の一番好きな動きだった。
「伸ちゃん、入れて!」
圭は叫んで、背負っていたリュックをベンチに放り投げた。
伸が驚いて振り向いた。形のいい唇が笑みの形を作る。
「おっと、圭大先生じゃん、いいとこに来た。俺にトゥエルのコツを教えてくれよ」
「……無視」
そう言うと、伸は、圭の頭を可愛くてたまらない、というようにぐしゅぐしゅとかき回した。
「ねえ、曲巻き戻していい」
「いいよ。休日に圭とロックがやれるなんて、ラッキーだったな」
伸はそう言うと、神々しいばかりの笑顔を見せた。
「あー、俺もう駄目。これ以上無理」
ひとしきり踊った後、圭はベンチに倒れこんだ。筋肉の差なのか、伸は涼しい顔をして、自販機に向かうと、二人分のコーラを手に戻ってくる。
炭酸の蓋を開けながら、圭は疑問を口にした。
「伸ちゃん、なんで、こんなとこでわざわざ踊ってんの。スタジオ開放してるのに」
「んー、そうなんだけどさ」
伸は、缶を口につけながら、照れたようにくすりと笑う。
「来月、ほら、路上ライブやるだろ」
「うん」
「俺ってさ、ほら、路上いつも緊張して失敗するじゃん。だから、今のうちに人前でやって、度胸つけとこうと思って、休みはいつもここに来てたんだ」
太い喉仏をびくりと動かしながら、穏やかな声で伸は答える。
「そんなら、もっと人のいるところでやれば。駅前の広場とか。ここって普段から子供以外いないじゃん」
圭は公園を見渡した。数人はいたはずの子供達も、昼食を摂りに帰ったのだろう。今は姿を消してしまっている。
「そうなんだけど……勇気がなかった」
恥ずかしそうに、伸は小声で言った。
「駄目じゃん」
圭は呆れた。
そして、二人で顔を見合わせて、笑い合う。
「そうだ。桔梗、とうとう告白したんだって。おめでとう」
ふいに真面目な顔をして、伸がそう言った。
「桔梗から、メールがあった。あいつ、舞い上がってたよ。もうずっと前から、圭にぞっこんだったからな」
優しい声。
寮で生活している事と、圭と友人である事以外は、共通項のない伸と桔梗。
だが、二人はとてもうまが合うらしく、よく、学外でつるんでいた。
観覧車での告白シュミレーションにまで、つきあった伸が、桔梗から、報告メールを受け取っていたとしても無理はない。
顔を曇らせた、圭に気がついたのだろう。伸は顔を覗き込むようにすると
「返事はまだ、もらってないって言ってたけど、勿論オーケーするんだろ」
と、確かめるように言った。
圭はゆっくりと首を横に振る。
「……俺、桔梗とはつきあわない……帰ってきたら、真っ先に、そう言うつもりだったんだ」
そう。洋介の部屋を出た時から決めていた事。
それは、桔梗との別れだった。
「って、ちょっと驚いたな。俺、圭も桔梗の事、好きなんだとばかり思ってたから」
動揺した声で、伸は言った。
「好きだよ」
圭はあっさりと肯定する。
「あの顔を思い浮かべたら、泣きたくなっちゃうくらい、好き。大好き」
「だよな。桔梗を嫌う奴なんて、絶対にいないと思う」
なのに、なんで、とくっきりとした二重の目が物語っている。
圭は、首をすくめた。
「俺、洋介と……洋介先輩と寝ちゃった」
「えっ」
思わず、伸が、口に含んでいたコーラを噴出す。
漫画みたいな光景に、圭は、片方だけのえくぼを見せて笑った。
「伸ちゃんって、見た目は、完璧二枚目なのに、時々めっちゃぼけるよね」
「うるさいな」
恥ずかしそうに、伸は、掌で唇を押さえると、
「それって、どういう事」
とたたみかける。圭は、昨日とおとといの、二つの夜の出来事を、この優しい先輩に、少しずつ話し始めた。
全部話し終わった後は、沈黙が落ちる。しばらくして、伸が、静かな声で、ぽつりと呟いた。
「黙ってろよ。桔梗には」
「え」
「黙って、あいつとつきあえばいい」
「そんなの無理だよ」
圭は、徐にTシャツの裾を捲り上げた。
白い身体に転々とつけられた、蚊に噛まれたような跡が顕わになる。
何故か顔を赤らめた伸に、圭は投げやりな調子で言った。
「こんなにどこもかしこもキスマークだらけなんだもん。すぐにばれるって」
「桔梗だって、似たような事したんだろ。大丈夫だよ」
圭は、Tシャツを戻すともう一度、頭を振った。
「違うんだ。本当は、ばれるとかそういうんじゃなくて、俺の気持ちが、無理なんだ」
「圭…………」
「桔梗に抱かれて、その後すぐに、洋介先輩に抱かれて、しかも俺、先輩の事も好きだったんだ。最初は怖かったけど……されるのも全然いやじゃなかった」
「…………」
「俺、身体だけじゃなくって、気持ちも桔梗を裏切ってるんだ」
何か言おうとする伸を遮るように、圭は続けた。
「俺、また先輩に迫られたら、きっと流されちゃう……こんな気持ちのまま、桔梗と付き合い続けるなんで出来ないよ」
「圭」
「だから、さよならするんだ。寮を出るよ。桔梗は、めっちゃいい奴だから、余計にこれ以上、裏切れない」
きっぱりと言い切って、前を向いた圭を、伸は身体を傾けて覗き込む。頑なな表情から圭の意思が固い事を悟ったのだろうか、ふっと、大きなため息をつくと、ベンチの背もたれに両肘を乗せて空を見上げる。
つられて圭も上を見た。
雲ひとつない空が、ちっぽけな圭を見下ろしていた。
「ねえ、伸ちゃんと桔梗って、親友だよね」
「ああ、俺はそう思ってる」
「……教えてほしいことがあるんだけど」
「何? 俺の知ってることかな」
「ん……多分」
圭はごくりと息をのんだ。
「桔梗って、誰とつきあってたの」
「ん? 」
口ごもりながら切り出した圭に、伸は、いぶかしげな視線を向ける。
「俺は全然知らなかったんだけど、桔梗、恋人がいたんだろ」
伸はふっと笑った。
「あいつは圭一筋だよ。女の影は全然ないから安心しろ」
「嘘だ」
間髪いれずに圭は否定した。
「だったら、何であんな……いろんな事知ってんだよ。初めてで、あんなに手馴れているわけがないじゃん」
「ふうん。あいつって、そんなに手馴れてたんだ」
伸は、圭の顔を覗き込んで、にやにや笑った。照れくさくて、圭はぷんと横を向く。
ははっと笑いながら、伸は圭の頭を軽く叩くと
「本当に恋人なんていなかったよ。第一、こないだまで中坊だったんだぜ。修行を積める年齢じゃないだろう」
と安心させるように言った。
「ウインドだって、ヘッドだって、俺がちょっとコツを教えただけで、あいつ、出来るようになったじゃん。多分、相当器用なんだよ。野生的なカンって言うのかな……そんなんが発達してるんだと思う」
「ふうん」
「俺は頭で考えすぎるから……あいつの天才的なとこ、尊敬してるんだ」
伸の説明に、ちょっと顔が崩れてしまう。別れの決心は固いはずなのに、ほんの少しでも桔梗を褒められると、嬉しくてたまらなかった。
「ちょい待ち……桔梗って、ヘッド出来るようになったの?」
「ああ。あいつ言わなかった? もしかして圭に気を使ったのかもな」
圭がもう1年以上もヘッドスピンに挑戦していて、半端な1回転しか果たせていない事を桔梗は知っているはずだった。
「決めた!俺もヘッド今日完成させる。伸ちゃん、メット貸して」
圭は勢いよくベンチから立ち上がった。
「元気なやつだな」
伸は呆れたように言った。
それでも、コンクリート敷きの地べたに置いた大きめのスポーツバックから、専用のヘルメットを取り出し、渡してくれる。
「部員でもない桔梗に負けてるなんて悔しいじゃん。俺が桔梗に勝てるところなんてダンスくらいしかないのに」
そう。例え、恋人同士ではなくなっても、桔梗とはずっと友達でいたい。
優しくて、明るくて、大好きな桔梗と、ずっと肩を並べていたかった。
だけど……。
「目がまわるー。首痛いー。手が痛いー」
30分もしないうちに、圭はすっかり根をあげてしまった。
学園の敷地の森の中には、小さな公園がある。
いつもの休日なら多少の賑わいをみせる公園だが、大型連休の今日は人影もまばらだ。
そんな中、圭は隅のコンクリートの上で、ラジカセを鳴らして踊っている、一人の少年を見つけた。
浮田伸。2つ年上のダンス部のリーダーであり、寮長として後輩からの絶大な信頼を寄せられている18歳だ。
浅黒いが、整った菩薩のような顔。初めて出あった3年前は、か細い少女のような容姿だったが、そのうち筋トレに目覚め、みるみるうちに、マッチョな男へと変貌してしまった。
だが、シャイで、決め細やかな優しさは変らない。
流れているのは、セプテンバー。親世代のダンスナンバーだが、のりの良さで、若者にもファンは多い。去年の発表会で取り上げた曲だった。
振りは、圭が考えた。得意のロックダンス。伸の指が、ぴたりと左のポイントを指す。くるりと手を回して胸を使って動きを止める。かっちりしているけれど、退屈じゃない、圭の一番好きな動きだった。
「伸ちゃん、入れて!」
圭は叫んで、背負っていたリュックをベンチに放り投げた。
伸が驚いて振り向いた。形のいい唇が笑みの形を作る。
「おっと、圭大先生じゃん、いいとこに来た。俺にトゥエルのコツを教えてくれよ」
「……無視」
そう言うと、伸は、圭の頭を可愛くてたまらない、というようにぐしゅぐしゅとかき回した。
「ねえ、曲巻き戻していい」
「いいよ。休日に圭とロックがやれるなんて、ラッキーだったな」
伸はそう言うと、神々しいばかりの笑顔を見せた。
「あー、俺もう駄目。これ以上無理」
ひとしきり踊った後、圭はベンチに倒れこんだ。筋肉の差なのか、伸は涼しい顔をして、自販機に向かうと、二人分のコーラを手に戻ってくる。
炭酸の蓋を開けながら、圭は疑問を口にした。
「伸ちゃん、なんで、こんなとこでわざわざ踊ってんの。スタジオ開放してるのに」
「んー、そうなんだけどさ」
伸は、缶を口につけながら、照れたようにくすりと笑う。
「来月、ほら、路上ライブやるだろ」
「うん」
「俺ってさ、ほら、路上いつも緊張して失敗するじゃん。だから、今のうちに人前でやって、度胸つけとこうと思って、休みはいつもここに来てたんだ」
太い喉仏をびくりと動かしながら、穏やかな声で伸は答える。
「そんなら、もっと人のいるところでやれば。駅前の広場とか。ここって普段から子供以外いないじゃん」
圭は公園を見渡した。数人はいたはずの子供達も、昼食を摂りに帰ったのだろう。今は姿を消してしまっている。
「そうなんだけど……勇気がなかった」
恥ずかしそうに、伸は小声で言った。
「駄目じゃん」
圭は呆れた。
そして、二人で顔を見合わせて、笑い合う。
「そうだ。桔梗、とうとう告白したんだって。おめでとう」
ふいに真面目な顔をして、伸がそう言った。
「桔梗から、メールがあった。あいつ、舞い上がってたよ。もうずっと前から、圭にぞっこんだったからな」
優しい声。
寮で生活している事と、圭と友人である事以外は、共通項のない伸と桔梗。
だが、二人はとてもうまが合うらしく、よく、学外でつるんでいた。
観覧車での告白シュミレーションにまで、つきあった伸が、桔梗から、報告メールを受け取っていたとしても無理はない。
顔を曇らせた、圭に気がついたのだろう。伸は顔を覗き込むようにすると
「返事はまだ、もらってないって言ってたけど、勿論オーケーするんだろ」
と、確かめるように言った。
圭はゆっくりと首を横に振る。
「……俺、桔梗とはつきあわない……帰ってきたら、真っ先に、そう言うつもりだったんだ」
そう。洋介の部屋を出た時から決めていた事。
それは、桔梗との別れだった。
「って、ちょっと驚いたな。俺、圭も桔梗の事、好きなんだとばかり思ってたから」
動揺した声で、伸は言った。
「好きだよ」
圭はあっさりと肯定する。
「あの顔を思い浮かべたら、泣きたくなっちゃうくらい、好き。大好き」
「だよな。桔梗を嫌う奴なんて、絶対にいないと思う」
なのに、なんで、とくっきりとした二重の目が物語っている。
圭は、首をすくめた。
「俺、洋介と……洋介先輩と寝ちゃった」
「えっ」
思わず、伸が、口に含んでいたコーラを噴出す。
漫画みたいな光景に、圭は、片方だけのえくぼを見せて笑った。
「伸ちゃんって、見た目は、完璧二枚目なのに、時々めっちゃぼけるよね」
「うるさいな」
恥ずかしそうに、伸は、掌で唇を押さえると、
「それって、どういう事」
とたたみかける。圭は、昨日とおとといの、二つの夜の出来事を、この優しい先輩に、少しずつ話し始めた。
全部話し終わった後は、沈黙が落ちる。しばらくして、伸が、静かな声で、ぽつりと呟いた。
「黙ってろよ。桔梗には」
「え」
「黙って、あいつとつきあえばいい」
「そんなの無理だよ」
圭は、徐にTシャツの裾を捲り上げた。
白い身体に転々とつけられた、蚊に噛まれたような跡が顕わになる。
何故か顔を赤らめた伸に、圭は投げやりな調子で言った。
「こんなにどこもかしこもキスマークだらけなんだもん。すぐにばれるって」
「桔梗だって、似たような事したんだろ。大丈夫だよ」
圭は、Tシャツを戻すともう一度、頭を振った。
「違うんだ。本当は、ばれるとかそういうんじゃなくて、俺の気持ちが、無理なんだ」
「圭…………」
「桔梗に抱かれて、その後すぐに、洋介先輩に抱かれて、しかも俺、先輩の事も好きだったんだ。最初は怖かったけど……されるのも全然いやじゃなかった」
「…………」
「俺、身体だけじゃなくって、気持ちも桔梗を裏切ってるんだ」
何か言おうとする伸を遮るように、圭は続けた。
「俺、また先輩に迫られたら、きっと流されちゃう……こんな気持ちのまま、桔梗と付き合い続けるなんで出来ないよ」
「圭」
「だから、さよならするんだ。寮を出るよ。桔梗は、めっちゃいい奴だから、余計にこれ以上、裏切れない」
きっぱりと言い切って、前を向いた圭を、伸は身体を傾けて覗き込む。頑なな表情から圭の意思が固い事を悟ったのだろうか、ふっと、大きなため息をつくと、ベンチの背もたれに両肘を乗せて空を見上げる。
つられて圭も上を見た。
雲ひとつない空が、ちっぽけな圭を見下ろしていた。
「ねえ、伸ちゃんと桔梗って、親友だよね」
「ああ、俺はそう思ってる」
「……教えてほしいことがあるんだけど」
「何? 俺の知ってることかな」
「ん……多分」
圭はごくりと息をのんだ。
「桔梗って、誰とつきあってたの」
「ん? 」
口ごもりながら切り出した圭に、伸は、いぶかしげな視線を向ける。
「俺は全然知らなかったんだけど、桔梗、恋人がいたんだろ」
伸はふっと笑った。
「あいつは圭一筋だよ。女の影は全然ないから安心しろ」
「嘘だ」
間髪いれずに圭は否定した。
「だったら、何であんな……いろんな事知ってんだよ。初めてで、あんなに手馴れているわけがないじゃん」
「ふうん。あいつって、そんなに手馴れてたんだ」
伸は、圭の顔を覗き込んで、にやにや笑った。照れくさくて、圭はぷんと横を向く。
ははっと笑いながら、伸は圭の頭を軽く叩くと
「本当に恋人なんていなかったよ。第一、こないだまで中坊だったんだぜ。修行を積める年齢じゃないだろう」
と安心させるように言った。
「ウインドだって、ヘッドだって、俺がちょっとコツを教えただけで、あいつ、出来るようになったじゃん。多分、相当器用なんだよ。野生的なカンって言うのかな……そんなんが発達してるんだと思う」
「ふうん」
「俺は頭で考えすぎるから……あいつの天才的なとこ、尊敬してるんだ」
伸の説明に、ちょっと顔が崩れてしまう。別れの決心は固いはずなのに、ほんの少しでも桔梗を褒められると、嬉しくてたまらなかった。
「ちょい待ち……桔梗って、ヘッド出来るようになったの?」
「ああ。あいつ言わなかった? もしかして圭に気を使ったのかもな」
圭がもう1年以上もヘッドスピンに挑戦していて、半端な1回転しか果たせていない事を桔梗は知っているはずだった。
「決めた!俺もヘッド今日完成させる。伸ちゃん、メット貸して」
圭は勢いよくベンチから立ち上がった。
「元気なやつだな」
伸は呆れたように言った。
それでも、コンクリート敷きの地べたに置いた大きめのスポーツバックから、専用のヘルメットを取り出し、渡してくれる。
「部員でもない桔梗に負けてるなんて悔しいじゃん。俺が桔梗に勝てるところなんてダンスくらいしかないのに」
そう。例え、恋人同士ではなくなっても、桔梗とはずっと友達でいたい。
優しくて、明るくて、大好きな桔梗と、ずっと肩を並べていたかった。
だけど……。
「目がまわるー。首痛いー。手が痛いー」
30分もしないうちに、圭はすっかり根をあげてしまった。
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