薔薇屋敷の恋人達

キリノ

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薔薇屋敷の恋人達

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およそ人間離れした、美しい人。
それが、彼の第一印象だった。


三年前の春、薔薇に囲まれた、おとぎ話のような家の中で、俺達は初めて顔をあわせた。涼やかな瞳。怜悧な横顔。色素のない青ざめた肌に、絵の具を落としたような唇の赤が、よりその美貌を際立たせている。
 身体の芯に電流が走り、一目で俺は恋に落ちた。
 今をときめく美貌の売れっ子作家と、大学を卒業したての新人編集マン。
 男同士というだけではなく、俺達の恋には立場的な障害もあった。
 だが、俺は諦めなかった。何度も何度も言葉を尽くして口説きあげ、ある日、彼にこう言わせた。
「僕には、誰も知らない秘密がある・・・全てを知ってもそばにいてくれる?」
 勿論、と俺は約束した。
 その日から、今日まで、幸せな日々が続いている。


 休日は、電話線を抜いて、昼過ぎまでベッドで過ごす。
 抱き合ったり、しつこいくらいキスをしたり、スキンシップに飽きたら音楽を聴いてなんでもない時間を共有したり。いつの間にか、それが暗黙の了解になっていた。
 だが、俺が目を覚ました時、もう、彼は起きていて、気替えを済ませ、ベッドサイドの小さなデスクで、カチャカチャとキーボードを叩いている最中だった。
「今回の話は、自伝だよ」
 背中をぼんやりと眺めていた俺に、突然、彼はそう言った。
「二十七で、自伝なんて、早すぎるだろ」
「そうでもないよ。僕はそのうち消えるから」
 彼は手を休めずに続けた。
「もうすぐ・・・迎えがくる」
 キーボードの打鍵音と、ハードディスクの唸り声が、気まずい沈黙を埋めてくれる。
 やがて、彼は
「出来た」
 と、立ち上がった。
「プリントアウトが済んだら、読んでみて。僕は庭で薔薇の手入れをしてくるから」
 ドアがぱたりと閉められ、俺は一人取り残される。
 プリンターが、一枚ずつ、出来上がったばかりの物語を吐き出す様を、俺はぼんやりと眺めていた。

「僕は、吸血鬼なんだ」
 突然告げられたのは、付き合い始めて、すぐだった。
「はあ?」
 俺は、多分かなり間抜けな顔をしていたと思う。
 彼はくすくすと笑いながら、
「と言っても、安心して。人の血なんて吸わなくたって、生きていけるし、今の吸血種は、ほとんど人間と変らないよ・・・普通はね」
 と言った。
「先生が昼間に出歩くところ、俺何回も見てるんだけど」
 敬語はとっくにやめていたが、まだ名前で呼びなれてはなかった俺がそう言うと、彼は「太陽や、十字架や、にんにくが苦手だなんて、ブラム・ストーカーの捏造だよ。僕は、日の光が大好きだ・・・。心の闇を浄化してくれるから」
 と静かに応えた。
 吸血鬼と人間の違いは、唯一、寿命だ、と彼は言った。
 人間の天寿がおおよそ百なら、吸血鬼のそれはほぼ無限である。そのため、一つの場所に長く住むことはできず、十年をめどに、移動を繰り返す必要がある。
「それにね、人間の血を吸ってしまうと、やっぱり相手を殺してしまう。だからよっぽど気をつけなきゃならないんだ」
 大真面目に言われて頷いた。確かに目の前にいる彼の美しさは、これが人間ではなかったといわれてみれば、やっと納得がいくほどだったから。
 だが、淡々とした口調はそこまでだった。
「だけどね、僕は呪われているから、そんなに長生きは出来ないよ」
 彼はそう言うと、突然、静かに涙を零した。
 俺は、彼を抱きしめた。
 涙が俺の箍を外す。
 抱いてもいいか、と聞くと、彼は、はっきり頷いた。
 洋服を脱がせる間中、彼はずっと泣き続けた。
 細い肩が小刻みに震え、睫の先の水玉が、重力に従い頬へと逆流する。
 愛しさで・・・胸がいっぱいになった。
 貫くと、彼は小さな喘ぎを洩らした。
 彼の身体は、透き通るように白く、淡雪のようにはかなげで、やはり氷のように冷たかった。
 だけど、秘めやかな部分は柔らかく溶け、温かく俺を包んでくれたのだ。


 行為が終わって、痺れるように甘く気だるい時間が訪れる。
「これって、ピアス?」
 勇気を出して、尋ねると、彼は、小さく頷いた。
 身体の中心から少し下の、窪んだ部分に、きらりと光る、赤いもの。
 へそにつけるピアスの存在は知っていたが、清冽な彼のイメージにそぐわない。
 男の影を、感じざるを得なかった。
「呪いの証しだよ」
 涙に濡れた目をまっすぐこちらに向けながら、彼は呟いた。
 石の名前はおそらくルビーだろう。血のような赤と「呪い」のフレーズが、たった今聞いたばかりの吸血鬼のストーリーを連想させる。
 それから幾つもの夜を重ねてきたが、赤いピアスは外されることなく、いつも彼の肌の上で、俺を嘲るように輝いていた。
 二人の行く末に、光などない、と言わんばかりに。
 

 プリンターの排出音がやみ、印刷の終了を告げるブザーの音が、俺を現実へと引き戻した。
 俺は何を怖がっているのだろう。
 彼には肌に証しを刻んだ、忘れられない人がいる。だが、それはもう過去の事だ。
 頭を一振りして、不安の芽を追い払う。
 服を着替え、カーテンを開けると、つばの広い帽子を被って、薔薇の手入れをしている彼の姿が見えた。
 汗を拭きながら、枝を切り、花びらの一枚一枚に。除虫液を振り掛けている。
 彼が、好きだ。
 たとえ彼が過去に愛した誰かの事を、今だに思い続けていたとしても。
「もうすぐ迎えがくる」
 謎のような、彼の言葉が蘇ってくる。
 俺はそっとカーテンを閉めると、プリンターから、たった今印字されたばかりの紙の束を手に取った。
 リビングに移動し、お茶を沸かす。
 ビーズクッションに身体を沈ませながら、俺は恋人の初めての自伝を読み始めた。

 私と兄はとても仲のいい兄弟でした。
 吸血鬼には、守るべき秘密が数限りなくあり、生活は途方もなく孤独ですが、兄は、いつもそれらのわずらわしいあれこれから、私を守ってくれていました。。
 兄は私にそっくりで、そして、私など比べ物にならないほど、綺麗な人でした。
 ですが、その美しい顔の下には、恐ろしい欲望が渦を巻き、大きなうねりとなって、今にも溢れそうだったのです。
 ある、嵐の夜。
 兄はまるで別人のように恐ろしい顔で、私の寝室へ忍んできました。
「愛している」
 そう言うと、兄はきつく私を抱きしめて、身に着けていたものを剥ぎ取りました。
 言葉一つで、全てが許される、まるでそう信じているかのようでした。
 私はその夜から何度も犯され、兄の前で身体を開きました。
 私も・・・次第に兄に対して、恋愛感情を抱くようになっていたのです。
 ところが、ある日、おぞましい秘密は、広く仲間達に知られてしまうことになりました。
 人間の世界と同じように、吸血鬼の世界でも、兄弟で契る事は禁じられています。
 私達は引き裂かれ、別な土地で暮らすことになりました。
「俺以外のものを愛した時は、お前を殺す」
 最後の日、私を激しく貫きながら、兄は言いました。
「どこまでも、地の果てまでも追っていき、お前を地獄へと引き摺り下ろしてやる」
 私も兄に陶酔していましたから、その時には、うっとりと、永遠の愛の誓いのように、その言葉を聞いていたのです。見知らぬ地への不安と孤独に苛まれながらも。
 そして数年がたちました。
 自らが紡いだ文章を売って禄を食んでいた私の元に、太陽の化身のような青年が現れたのです。
 明るい笑顔。澄んだよく通る声。
 告白されて胸が震えました。
 恋をしてしまったのです。恐らくは、初めての真実の恋を。
 けれど、私には兄との約束があります。私と別れた後の、兄の悪い噂は、否応なしに耳に届いておりました。私が、他の男と、しかも人間と、恋をしたなどと知ってしまった時、兄の激昂はどれほどのものになるか、想像もつきません。
 破滅はすぐやってきました。
 その日も、嵐の晩でした。
 激しい苛立つようなノックの音に、ドアを開けた私は、驚愕で、倒れそうになりました。
 そこには、兄が、憎しみに燃えた、赤い目をして立っていたのです。
 逃げ惑う私を追い詰めた兄は乱暴に、鋭い凶器と化した自らのものを、秘密の場所に突き立てました。馴らしもせずにいきなり貫かれたそこからは血が流れ、シーツを赤く染めましたが、兄はものともせず、もっと恐ろしい事を始めました。
「俺を裏切った罰をやろう。少し痛いが我慢するのだ」
 手には、なにやら、尖った光るものを持っています。
 恐怖に、冷たい汗が流れました。逃げようにも、串刺しのように兄の男根がびっちりと私の蕾を塞いでいて、身動き一つできないのです。
 兄がそれを私の腹部に突き立てた途端、私は気を失ってしまいました。
 目覚めた時には、まだ兄は私の中にいて、無意識のうちに、散々甘い声をあげさせられていたようでした。
 昨日まで、溢れんばかりだったはずの希望は跡形もなく消え去り、代わりに絶望が私の友となりました。
「愛しいお前への、プレゼントだよ。お前の愛と、俺の愛。どちらの業が深いか、試してみるがよい」
 夜明けを待たずに兄は、自分の棲む町へと帰って行きました。残されたのは、冷たい捨て台詞と、呪いの赤いピアスだけ。
 兄につけられた赤いしるしは、日一日と、私の命を奪っていきます。
 運命から逃れる術はたった一つ。
 愛する人の生血を吸い、この世から葬り去ること。
 数日の後、新しい恋人に初めて抱かれた私は、幾度も甘い声を上げながら、彼の逞しい首筋や、喉仏に、喰らいつく自分を思い浮かべました。
 私はまだこの明るい世界で生きていたい。
 光の中にいたいのです。
 ですが、真夜中に、私を抱きしめて、隣で穏やかな寝息をたてる恋人の寝顔を見ていると、ふと浮かんだ邪な思いなど、すっかりどこかへ消えてしまいました。
 この人のいない世界になど、留まったところで、何の価値がありましょう。
 もし、兄の呪いがなかったとしても、あと十年もたてば、私は彼の前から姿を消す運命だったのです。
 兄は既に地獄に渡り、この私を待っています。
 地獄は、ここと変りはないと聞いています。
 ただ、愛する人、彼がどこを探してもいないというだけの事。
 今私の心は果てしなく澄み渡っています。
 最後は、大好きな薔薇と、愛する人に見守られて逝きたい。
 それだけが、罪深い私の唯一の望みです。

 自伝という割には分量が少なく、彼がこれを出版するつもりがないのは明らかだった。 俺は、テーブルに原稿を揃えて置いた。
 やがて、彼が手に薔薇を抱えて入ってきた。
「読んだんだ」
 小さく微笑み、
「どうだった?」
 と、首を傾げた。
 俺は立ち上がり、彼を後ろから抱きしめる。
 そっと、薔薇の刺が、彼を傷つけないないように。
「いつでも俺はお前に殺されてやるよ」
 耳もとにそう囁いた。
「血が必要なら、飲め。今すぐ」
 彼の細い肩が、ぴくりと震える。
 そして、
「ありがとう・・・」
 小さく笑った。

「多分、今日が君と過ごす、最後の日だ。この家は君に任せるよ。出来れば君が住み続けるか、薔薇の好きな人に売ってほしい」
 やけにさばけた表情で、彼は言った。
「おい、おい、別れるなんて、嫌だぜ。何言ってんだ」
 俺は、わざとに明るく言い返す。
「僕だって、嫌だよ。でも、あれを読んだだろ? 僕は呪われていて、きっと今日兄さんが迎えに来る」
 彼はきっぱりと言った。
「赤いルビーが・・・うずくんだ」
 その言い方が、あまりにも哀しげだったので、俺は、何も言い返せなかった。
「最後に、君に、会えて、恋が出来て、良かった。君との思い出があるから、新しい場所でも、きっと僕はやっていける」
 じゃあ、支度をしてくるね、と彼は、寝室へと消えた。

 再び現れた彼は、白い、シルクのシャツに着替えていて、まるで、異国の王子のようだった。
 リビングの真ん中に大きな枕を敷き、薔薇を抱いて、横になる。一番お気に入りの場所で、行きたいのだ、と彼は説明した。
「僕が消えちゃっても、哀しまないでね」
「薔薇なんか抱いて、寝てしまうのか」
 俺が笑うと、彼は、
「僕が行く世界にはきっと花なんて、ないからね」
 と言った。
「お休み」
 彼の頭を撫でる。
 彼は、最後に、にっこり笑うと、満足そうに瞳を閉じた。

 全ての謎が解けた気がした。

 彼には幼い頃、生き別れた兄がいる。
 誘拐か、殺人か。
 かなり大掛かりな捜索が行われたが、手がかりはなく、事件は迷宮入りしてしまった。 その悲劇が、彼の精神に、多大な負担を強いたのは、間違いないと思う。
 自分を吸血鬼に見立て、兄は、地獄に生きている。
 それが彼の編み出した酷すぎる現実からの逃避方だったのだ。
 兄は、おそらくもう、この世にはいないだろう。
 なのに、自分は生きていて、あまつさえ恋までしている。その罪悪感に耐え切れず、彼は自ら赤い戒めをつけたのだ。

 犯罪の被害に合ったものが、どれほどの苦しみの中で生きていかねばならないのか、俺にはきっと一生わからない。
 だが、彼の苦しみを丸ごと抱きしめて、隣で、生きていきたい、と心から思った。

 規則正しい寝息が聞こえてくる。
 白黒のタイルの上で、薔薇を抱いて眠っている姿は、まるで一枚のポートレートのようだ。
 俺は、頭を突き合わせてるようにして寝転がり、彼の頭をすっと撫でた。
 窓の隙間から入り込んたそよ風が、腕の中の薔薇の数本を床へと散らす。
 俺は、どこかできっと彼を見守っている、そっくりだという、彼の兄に、心の中で手を合わせた。

 眠りは静かに訪れて、そして急激に破られた。
 物質がふれあい、壊れる音や、空気を切る、風の音。
 目を開けると、部屋の景色が変っているのに、驚く。
 窓は全て開け放たれ、そこから雨が吹き込んでいる、
 彼は・・・と見ると、眠りに落ちたときと同じポーズのまま。死んだように眠り込んでいる。薔薇の花束は無残に花弁を散らし、リビングに散らばっていた。
 まくれあがったシャツからのぞく、赤いしるしが、まるで血玉のように見える。。
 不吉な予感に、胸が震えた。
「髪が・・・」
 異変に気がつき、俺は手を延ばした。
 栗色だったはずの彼の髪が、すっかり色をなくしている。
 頬は、蝋のように白く、指先に伝わる、死人のような冷たさに息を呑む。。
 抱き起こそうとして、はっとした。彼は。息をしていなかった。
「お、おい、ふざけるな・・・起きろよ!」
 強く揺さぶるが、華奢な身体は、人形のように、がくがくと揺れるだけだった。

「僕はもうすぐいなくなる。迎えが来るんだ」
 哀しげな、彼の呟きが頭の中にこだまする。
 逃げよう。
 ふと思いついて、彼を抱き上げ、立ち上がる。
 次の瞬間、
 さらさらと、砂の落ちるようなかすかな音が聞こえてきた。
「なっ・・・」
 信じられない光景に、目を疑う。
 俺の腕の中で、彼が、その姿を変えていた。
 華奢な腕が、カモシカのような足が、光輝くような彼の全てが、砂になって、腕から床へと毀れていた。
 最後の砂が、掌を滑り落ちていき、俺は。砂の小山の上に、へたへたと座り込む。
 その時、一際大きな風が吹き、かつては彼の身体だった砂を空中へと舞い上げた。
 「------」
 彼の名を呼ぶ惨めな俺を、あざ笑うかのように、風は、一際激しく部屋の中で暴れ、そして、全ての痕跡を攫っていく。
 チリン、と固い音がして、目を向けると、あの、ルビーのピアスが、薔薇の残骸に混じって転がっていた。
 主を失った小さな石は、心なしか、普段の輝きを失っているように見える。
 悲しみが波のように押し寄せてきた。
 身を捩ってなき続ける俺の身体を、ドアから差し込んだ日の光が包む。
 嵐は、嘘のように姿を消していた。
 俺は赤い小さな石をを握り締めながら、これから途方もなく永遠に続いていく、痛みと苦しみに、押しつぶされそうになっていた。

「康ちゃん、康ちゃん」
 名前を呼ばれてはっとした。
 目の前には、恋人がいて、面白そうに、俺の顔を覗き込んでいる。
 涼やかな瞳。怜悧な横顔。色素のない青ざめた肌に、絵の具を落としたような唇の赤。 喫茶店で、二人向かい合わせに座っている今も、周囲のものがちらちらと彼に視線を送っている。
 美しい、俺の恋人。
「また、妄想してたんでしょ。新作出すの?」
 尋ねられて、頷いた。
「今度も、俺がモデル? いい加減、ワンパターンだって、読者からそっぽを向かれるよ」
 彼はそういいながらも。まんざらでもなさそうだ。
「今度の話は、ホラーで、お前は吸血鬼なんだよ」
 説明すると、彼は不思議そうにこちらを見た。
「だけど、まだ、主人公達の名前が決まってなくってね。なんて名前にしようかと考えてたんだ」
「リオじゃ駄目かな」
「本名は、なしだ」
 恋人は舌を出す。悪戯っぽい仕草が可愛くて、俺は、リオに微笑みかけた。
 人気作家の俺と、デザイナーリオの恋物語は、マスコミも、黙認している。リオにそっくりな双子の兄は健在で、カメラマンとして世界を飛び回っていた。
 薔薇屋敷も、ルビーのピアスも、全ては俺の、想像の出来事。
 俺達の愛は揺るがない。
 引き裂くものなど何もない。俺さえ、自重していれば。
 リオの細くて白い首に、目をやった。
 そこに唇を近づけて、牙を刺しこみ、暖かな赤い液体を思い切り吸い上げる。それが、俺の毎晩見る夢だと知れば、この美しい恋人は、脅えて、すすり泣くだろうか。
 全身の生血を抜かれながら、腕の中で冷たくなっていく、リオの姿。だが、それは、永久の愛の誓いの儀式でもあるのだ。
 出来るわけがない。
 たとえその行為が、かつてない快感を約束してくれたとしても。
 苦笑した俺に、
「また、妄想が始まったでしょ」
 リオは呆れた顔をしてみせる。
 叶えるつもりのない欲望は、全てが夢だ。
 休日の午後の一時を、愛するものと笑って過ごすこと。
 それが、今の俺には最大の喜びになる。
 新しい小説の、もっと詳しい内容について、俺は静かに語り始めた。

                
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