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第九十五話

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「ほら、持って来たぞ」

「わぁっ、待ってました!」

 秘密の隠し場所から秘蔵のエロ本を数冊持って来た俺を、リビングで待っていた優希は満面の笑みで迎える。

 そのなんとも言えない意味不明な展開に、俺は苦虫を噛み潰した表情を浮かべて立ち尽くした。

 何が悲しくて、ロリに対してエロ本を晒さないといけないんだ。

 しかも、出来るだけマシな物を選んだとはいえ、その多くはロリ系の女優の写っている者ばかりだ。

 性癖だから仕方ないとはいえ、こんなことならカモフラージュ用にもう少し熟女ものとかを用意しておくんだった。

 いや、こんな展開を予想する事なんて絶対にないんだけど。

 ともかく俺のエロ本を目の当たりにした優希は、興味津々といった様子でその一冊を手に取った。

「うわぁ、これはエロ本なんだ。初めて見た……」



 性知識に疎い優希なら当然だろうが、そもそも小学生で見ることなんてほとんどないだろう。

 捨ててあるエロ本を小学生が見る光景なんて、昭和の良き時代くらいにしかない。

 まぁ、この街ではまだマナー違反者が河川敷に捨てているらしいが。

 雑誌はちゃんと、指定されたゴミの日に出そう。

 そんな現実逃避をしていると、寝転んでエロ本を真剣に読んでいた優希は首を傾げる。

「ねぇ、なんでこんなにぼやけてるの? 不良品?」

 そして、モザイクのかかっているちんぽを指差しながら俺に尋ねかけてきた。

 どうやら優希は、エロ本は無修正なのだと思っていたようだ。

「そりゃあ、普通は隠してるもんなんだよ」

「なんで? だって、普通に自分にもある物なのに」

「まぁ、大人にはいろいろあるんだよ」

 俺も詳しいことは知らないが、修正をしておかないと出版できないってことだけは知っている。



 誤魔化すようにそう言うと、優希は納得していない様子で頷くと再びエロ本に視線を落とした。

 そしてページをパラパラと捲った後で、つまらなそうにエロ本を閉じてしまった。

「これじゃ分かんないよ。なんで男子はこんなのを見て面白いの?」

「いや、それを俺に言われても」

 男は妄想する生き物だからこれだけでも十分オカズになるのだが、どうやら優希には良く分からなかったようだ。

 相変わらずつまらなそうにしている優希は、他のエロ本もパラパラと眺めるだけで反応は芳しくない。

「そもそも、これっていったいなにやってるの?」

 そしてその中の一枚の写真、男女が絡み合ってセックスをしている場面を俺に示しながらそんな質問をしてくる。

「えっと、それは……」

 どうやって答えるのが正解だろうか。

 真実を言うべきか、それとも適当にごまかすべきか……。

 なんてことを考えていると、優希は俺ににじり寄ってくる。

「ねぇ、教えてよ」

「えっと……。優希は、セックスって分かるか?」

「せっくす? なにそれ?」



 どうやら、本当のことを言っても分からないらしい。

「ねぇ、ねぇ。なにそれ? どういうことをするの?」

「口で説明するのは難しいなぁ」

「じゃあ、やって見せてよ」

「それはもっと難しい」

 優希とやる訳にもいかないし、そもそも見せるのなら優希以外の女の子が一人必要だ。

 そんなことを言って優希を宥めていると、店の方から小さな声が聞こえてきた。

「こんにちはー。お兄さん、居ますかー?」

 声と共に襖が開いて、そこから杏里ちゃんが顔を覗かせた。

 そして俺と優希の姿を見て固まってしまう。

「や、やぁ、杏里ちゃん」

 何ともタイミング悪く俺を訪ねてきた杏里ちゃんに向かって、俺は引きつった微笑みを浮かべて挨拶を返すしかなかった。



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