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第九十四話

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 優希にフェラで抜いてもらった後、俺たちは冷えた体を浴槽で温めてから風呂を後にした。

 あれ以上いればのぼせてしまいそうだし、優希はすでに少しだけのぼせてしまっていた。

 扇風機の前でくてっと倒れる優希の為に麦茶を用意して持っていくと、彼女はそれを一気に飲み干してしまった。

「ぷはぁっ、やっぱり風呂上りはこれだね」

「オッサンかよ……」

 まだほのかに濡れた髪を無造作に束ねた優希は、こうやって見ると普通に女の子だった。

 しかも、結構な美少女に入るレベルの。

 そりゃあこんな子が相手では、思春期の男子は一緒に遊ぶのに抵抗を持つだろう。

 仲間外れにすることを正当化する訳ではないけど、俺にもそんな時代があったなとしみじみ思う。

 そう思うとなんだか自分がオッサンになったようで、若干の悲しさがあるが……。

 ともかくそうやってくつろいでいると、ふと優希がなにかを思い出したように声を上げた。



「そうだ、兄ちゃん。ちょっと質問があるんだけど」

「なんだよ?」

「兄ちゃんって、エロ本とか持ってない?」

「ぶふっ!?」

 突然の発言に、俺は盛大に麦茶を吐き出してしまった。

「なんてことを聞くんだっ!」

「だって、大人だったらエロ本くらい持ってるもんじゃないの?」

 まぁ、何冊かあるにはあるけど。

 だけどちゃんと隠してあるし、今の所は誰にも見つかっていない、はずだ。

 とは言え、今はそう言うことを言っている場合じゃない。

「……持ってたとして、どうするんだよ?」

 優希の発言の意図が分からずに尋ねると、彼女は這いながら俺に近づいてきた。

 まだ服が乾いていなかったから俺のTシャツを着ている優希がそんな体勢を取ると、緩んだ首元から直線的な身体のラインが丸見えになってしまう。



 さっき風呂で飽きるほど見たが、こうやって日常の偶然で見えるような肌はまた違った良さがある。

 なんてことを考えて股間を熱くしていると、優希は俺のすぐ近くにまで迫って来ていた。

「あるんなら、ちょっと見せてよ」

「……なぜ?」

 ぐいっと顔を近づけるように迫ってくる優希にたじろぎながらも、俺は辛うじてそう答える。

 そのまま優希の肩を掴んで引き離すと、ぺたんっと女の子座りをした優希は未だに俺を見つめてくる。

「男の子と女の子の違いはさっき教えてもらったから、次は男の子が好きな物を知りたいんだ」

「それで、エロ本?」

「うんっ」

 元気よく頷く優希の瞳には、純粋な色しか映っていない。

 どうやら本気で言っていることは明らかだ。

「でも、なんでエロ本なんだよ。別に他の物で良いだろ」

「他の物なら後で調べられるけど、こんなことを頼めるのなんて兄ちゃんだけなんだよ」

 まぁ、そりゃあそうだろ。

 子供にエロ本を見せてと言われても普通なら見せないだろうし、仮に見せる奴がいたとしてもそいつはヤバい奴だろう。

 それくらいの分別はつくのか、それともただ俺に懐いているからなのかは分からないが、他の奴に聞こうとしないだけマシだろう。



 どうやって断ろうか考えていると、優希は頬を膨らませながら呟く。

「兄ちゃんが見せてくれないなら、河原で探すから良いもんっ」

「河原って、もしかしてあの橋の下とかか?」

「あれ? 兄ちゃんも知ってるの?」

 もちろん、知っている。

 高校生の時に祖父さんから何故か紹介された、ここらで一番エロ本が捨てられている場所だ。

 遊びに来た孫になんて場所を教えるんだと文句を言いながらも、興味本位で確認しに行ったこともある。

 そしてそこは、ホームレスや不良のたまり場にもなっている。

 そんな所に女の子が、しかもエロ本を探しに行けばどうなるかは火を見るより明らかだ。

「……はぁ、分かったよ。見せればいいんだろ」

 結局俺は、優希を守るためにエロ本を差し出すしかなかった。



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