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第二十一話

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「ねぇ、アニキ。起きてってばぁ!」
 ゆさゆさと身体を揺さぶられて、俺の安眠は妨げられた。
 ゴールデンウィークも最終日になって、今日くらいは一日中寝てても罰は当たらないと思っていたのに。
「美海ちゃん、眠いからもう少しだけ寝かせて……」
「はぁ? 美海ちゃんって誰?」
 あれ、美海ちゃんじゃないのか?
 そうなると、俺の家に入ってくるような女の子は杏里ちゃんしかいないけど。
 だけど、杏里ちゃんはこんな乱暴な言葉は使わない。
 だんだんとはっきりしてきた思考回路で答えを考えていると、突然お腹に重い衝撃が走った。

「ぐぇっ!?」
「ほら、いつまでも寝ぼけてないでさっさと起きるっ!」
 推測するに、声の主が俺のお腹の上にダイブしてきたようだ。
 お前、本当に誰だよ……。
 いくら親しくても、こんな起こし方していいのは二次元の妹だけだぞ。
 若干苛立ちながら顔をあげると、そこには随分と見知った顔があった。
「ゆ、唯香ゆいか!?」
「あ、やっと起きた? 久しぶり、アニキ。あなたの恋人の唯香だよ」
「誰が恋人だよ……」
 お腹の上で可愛らしくポーズを決める唯香に呆れながら、とりあえず起きあがる。
「キャッ!? いったーいっ」
 そうすると必然的に、俺の上に乗っていた唯香は落ちて床に転がる。

 スカートが捲れて、その中に黒い下着が見えたのは、見なかったことにしよう。
 子どもがなんてもん穿いてるんだ。
 頭を押さえながら起きあがる唯香だったけど、捲れたスカートには気が付いていないようで綺麗な太ももがチラチラ見えている。
「ちょっと、酷過ぎない?」
「酷いのはそっちだろ。なんでお前がここに居るんだ?」
「なに? 居ちゃ悪い?」
「悪いって事はないんだけど」
 強気の目で見つめられると、何も言えなくなる。

 本当に、俺はコイツのこういう目に弱い。
「ゴールデンウィークも最後で予定はないし、一人で寂しくしてるだろうと思ってアニキの様子を見に来てあげたんだよ」
「余計なお世話だ。そんな理由で遠くから来たのか?」
「うん、悪い?」
「だから悪くないって。そうやってすぐにケンカ売る癖やめろよ」
「大丈夫。アニキにだけだから」
 余計悪いわ。
「はぁ、お前の相手してたら眠気が覚めてきたわ」
「良かったじゃん。アタシのおかげだね」
 悪びれることなく言い放つ唯香に、もうなにも言えなくなる。
 コイツのポジティブシンキングは、いったいどこから出てるんだ?
 寝起きには少しきつい唯香のテンションが、俺の眠気を完全に水平線の彼方へ吹き飛ばしてしまった。
 とりあえず、着替えるか。

「アニキ、着替えるの? 手伝ってあげる」
「いや、出てけよ」
 俺のツッコミを無視して手伝おうとする唯香を部屋から押し出して、やっと落ち着いた俺はズボンを脱いだ。
 アイツ、もしかして一日中居るつもりだろうか?
 こうして俺のゴールデンウィーク最終日は、台風のような姪っ子唯香に掻き乱されることが決定したのだった。

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