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小さな友は嵐と共に
#1
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モウカハナ閉めてから帰路は、コートが欲しくなりつつあります。
日が昇ってすぐのこの時刻は一日の中で一番寒く、冬がすぐそこに来ていることに気付かされます。
先日師匠から近い内にオランディを去ると伝達がありました。
冬の前までと言っていたので時期的には合ってますが、予定を少し早めるとの事です。
理由は書かれていませんでしたが恐らく最新の新聞を読んだからでしょう。
「頼むから一緒にヴァローナ行こうよ、オレ一人であの人の世話とか無理だって!」
「断る」
「もう睨まれるの慣れたよ、ビビんねぇぞそんなんじゃ!」
「早く帰れ」
「どうせあの人寝てるし昼頃までなら大丈夫だって」
この彼は最近本格的に暇なようで、閉店まで居座るようになりました。
師匠の帰国まであと数日、彼ともようやく離れることができます。
「さっさと帰れ、昼に金払うんだろ」
「もう流石に金がヤバい、貯金けっこうあったのに」
「自分の財布から出してるのか?」
「え?」
「部屋に来るならあの人の財布から渡せば良い」
「いや、そんな事……え、やばくないか?」
「想像以上に善人だな、元暗部とか嘘じゃないか?」
「嘘じゃないけど、え?」
「昼飯代と宿代もお前が出してるのか?」
「そりゃあ、まぁ」
「請求書残しとけ、あとで多く払われてその倍の恩を売られる」
「う、そだろ……」
意外と人が良いですね。
師匠は私生活はともかく金回りの精算はしっかりしています。
それだけに手品師の請求の基準が未だに謎です。
「つかそれ、教えてくれても良いだろ? ここずっとアンタんとこ来てるんだし」
「いつも『帰れ』と言ってる」
「ハァ……どうしたらまともに相手してくれるかね」
する訳ないでしょう、かなりハッキリと態度に出しているつもりですが気付かないのでしょうか。
私がもっと理性的になるべきかもしれませんが、親しくしたい人で脅迫された上で丁寧に接したいとはとても思えません。
「今日こそアンタんとこ泊めてもらって良いよね、今までそんなお得な情報黙ってたんだし」
「知るか、じゃあな」
「今日はついてくよ、しばらくお別れだし良いだろ」
「俺はお前が嫌いだ」
「オレはアンタ好きだけど」
「どうでもいい」
「じゃあついてくよ? 良いよね」
良いわけありませんが、このまま私の部屋まで本当について来そうです。
軍事国家の元暗部なら巻くのも容易ではありませんし、仕事帰りにそんなことをするのはごめんです。
「昼には帰るんだな?」
「お! 行っていいの?」
「質問に答えろ」
「帰る帰る!」
私はため息をつき、歩いていた道を引き返します。
この様子なら店で昼まで粘る方が良いでしょう。
───────
「それ飲んだら寝ろよ」
「カモミールとかオシャレだね、流石!」
「飲んだら帰るか寝ろ」
「ハァ……もうメル君使って脅す理由ないの分かってんだろ? そろそろ仲良くしてよ」
「仲良くする理由もない」
彼をソファ席に案内してお茶を出しました。
私は彼の斜め前に座り、自分のために用意したジンのロックを口にします。
彼は深いため息をついてからお茶を口にします。
彼が通うようになってそろそろ二週間、少しだけ人となりが分かった部分もあります。
彼は頭の切り替えが早く、常に利益を優先して考え行動します。
良くいえば非常に合理的な思考の持ち主です。
彼自身の考え方や性格には好感が持てる部分もありますが、理由が出来れば適切な手段を選ぶ冷徹さもあると思え、警戒を解く気にはなれません。
メル様を使って脅迫するのが適切と判断すればまたやるでしょう。
「じゃあ良い情報一つ教えてやるよ」
私は黙ってタバコに火をつけます。
早く寝てくれませんかね、弱めの睡眠導入剤でも入れておけば良かったかもしれません。
「アンタの師匠がいきなり帰るって言い出したのってオレからの情報なんだよね」
「……」
「リュンヌからくる使節団のメンバーの情報、マルモワの頃から使ってる伝手で手に入れてさ」
「良いのかそれ?」
「個人的な付き合いだからね、こういうのないと暗部なんてやってらんねぇの。そう思うと……」
お茶のカップをテーブルに置き、頬杖をついて私を見ます。
「アンタの情報マジで手に入んねぇのな。写真の一枚もない前歴も不明、リモワでバー始める前の情報マジで出てこねぇ。騎士団長から色々聞けるから一旦警戒解いたけど、結局術士だし? オレの留学中の苦労マジ返せっての」
「知るか」
「ま、失敗したお陰でマルモワから出れたから良いけど」
どうやら新聞の楽士の話やここによく来るお客様経由の情報は手に入らなかったようですね。
やはり皆様信頼できる方々です。
「それでリュンヌの使節団のメンバー、知りたい?」
「別に」
「んだよ、まぁ聞けって。ミヌレ公爵っていうかなりの貴族らしいってのと」
「……ミヌレ?」
「なんだ知ってんの?」
「少しだけなら」
「術士では有名な家門なんだってね、岩? 土? の術だっけ」
「そんな訳は」
「先祖は使えたらしいね。あと適齢期の娘がいるらしいってのまで分かった」
「……まさかその娘が来るとか」
「そ、あと夫人と子飼いの子爵。最低でも三人は確定みたいだってさ」
マルモワの関税率も目当てではあるのでしょう、けど。
ミヌレという名前は私がまともに覚えている貴族の方です。
よりにもよって、という気持ちがとても強いです。
「師匠がいる事を知ってるのか?」
「多分知らないと思うね、ヴァローナの術士がいるなんてオレでも驚いたし」
「じゃあ」
「局長さん大人気だね」
「その情報、どのくらいまで広がってる?」
「この国で知ってんのオレらくらいじゃね?」
彼の情報が正しいなら、私も師匠と一緒に一時的にヴァローナに行くのも良い気がしてきます。
「師匠に気に入られた理由がよく分かった」
「お、じゃあ少しは仲良くしてくれる?」
「もう一度言う、本当にもう何もしないんだな?」
「しないってか、アンタ相手には無理だからやりたくてもできねーよ。オレは無駄な殺しはしねーよ」
彼がくれた情報はとても有益です。
彼らはオランディに入国出来次第術士を探して回るでしょうから、メル様も危険です。
私の考えを察してか、彼が得意げに言葉を続けます。
「オレが使ってた術士探しの石あったろ? あれリュンヌで作られた奴だからアンタとメル君も危ないね」
「知ってる」
「じゃあさ~、ついでにその石の回避方法も教えてやろうか?」
「あるのか?」
「もちろん、効かない条件あったら意味ないからね。事前に調べといた」
「情報の対価は?」
「前みたいに仲良くしてほしいっす!」
「……そんなことか?」
「その価値があるって思ってるからね」
「なるほど」
無駄な事はしないと思ってましたが、私に構ってくるのも何か理由があるのでしょうか。
私とメル様の安全と引き換えるなら問題ではありません。
「分かりました、では石の回避方法を教えてください」
「やったー! 仲良くしてくれんのね!」
「多少でしたら。それで、教えていただけますか?」
彼が意味ありげに咳払いをして言葉を続けます。
「オレは術士じゃないからわかんねぇんだけど、術使う時魔力? っての使うんだろ?」
「はい」
「それが術士ってのから少しだけ漏れてるらしくて。術使う時にはハッキリ出るんだっけね」
「その通りです」
「あの石ってそれに反応して光るんだってよ」
思ったより簡単な原理ですね。
そう言えば彼の目の前で破壊した石の残骸をカウンターの下にしまってあります。
私はタバコの火を消してから立ち上がり、カウンターの中へ入ると棚からその石と台座を取り出します。
これを残しておいた理由は、彼が置いていったあとも大きい欠片が光っていたため何かに使えると思ったからです。
欠片を手にして再びソファに戻ります。
「お、持ってたんだ」
「この石はどういうものなのですか?」
「貴族から手に入れたって聞いたな。よく分かんねぇけど、なんかの術でも掛かってんじゃねぇの?」
「それはないでしょう、術が掛けられているなら今光っている理由に説明がつきません」
「さぁな、その辺はオレにはさっぱり」
術で砕いたからでしょうか?
いや、そんな訳はないですよね。
「上着を着てください」
「え、何また帰れっての?」
「いえ、暖房を落とします」
「なんでよ」
「とりあえず上着を着ていただけますか?」
「えー、しゃあねぇな」
彼は渋々といった様子で上着をきます。
私は指を鳴らして店内で使っている術を解き、テーブルの小さなロウソク以外の証明が落ちます。
その上で幻術を駆使して大量の花を生み出し、その花が微かに光ります。
「うわ、すっご……」
五分程生み出し続けた辺りで私の魔力がつきます、軽い眠気を覚えながら石を見ると……
「お、消えた! 魔力ってのに反応すんのはホントなんだなー」
「師匠は指輪を持っていませんでしたか?」
「あーどうだろ、見てないな」
「分かりました、これなら対策を取れそうです」
まだ実験をしてませんが、魔力をなんとかすれば良いならハーブか指輪を使用して解決できるかもしれません。
「ヴァローナに共に避難する事も考えましたが、必要なさそうです」
「え! そんなこと考えてたの!?」
「はい、ヴァローナへはお二人でお帰りになってください」
「あー! 言わなきゃ良かった!」
彼は根が悪い人にはなりきれないようですね。
使節団が来るまでにメル様とビャンコ様と会う機会があれば良いですが、なかった場合お二人に会えるよう出向くことにしましょう。
日が昇ってすぐのこの時刻は一日の中で一番寒く、冬がすぐそこに来ていることに気付かされます。
先日師匠から近い内にオランディを去ると伝達がありました。
冬の前までと言っていたので時期的には合ってますが、予定を少し早めるとの事です。
理由は書かれていませんでしたが恐らく最新の新聞を読んだからでしょう。
「頼むから一緒にヴァローナ行こうよ、オレ一人であの人の世話とか無理だって!」
「断る」
「もう睨まれるの慣れたよ、ビビんねぇぞそんなんじゃ!」
「早く帰れ」
「どうせあの人寝てるし昼頃までなら大丈夫だって」
この彼は最近本格的に暇なようで、閉店まで居座るようになりました。
師匠の帰国まであと数日、彼ともようやく離れることができます。
「さっさと帰れ、昼に金払うんだろ」
「もう流石に金がヤバい、貯金けっこうあったのに」
「自分の財布から出してるのか?」
「え?」
「部屋に来るならあの人の財布から渡せば良い」
「いや、そんな事……え、やばくないか?」
「想像以上に善人だな、元暗部とか嘘じゃないか?」
「嘘じゃないけど、え?」
「昼飯代と宿代もお前が出してるのか?」
「そりゃあ、まぁ」
「請求書残しとけ、あとで多く払われてその倍の恩を売られる」
「う、そだろ……」
意外と人が良いですね。
師匠は私生活はともかく金回りの精算はしっかりしています。
それだけに手品師の請求の基準が未だに謎です。
「つかそれ、教えてくれても良いだろ? ここずっとアンタんとこ来てるんだし」
「いつも『帰れ』と言ってる」
「ハァ……どうしたらまともに相手してくれるかね」
する訳ないでしょう、かなりハッキリと態度に出しているつもりですが気付かないのでしょうか。
私がもっと理性的になるべきかもしれませんが、親しくしたい人で脅迫された上で丁寧に接したいとはとても思えません。
「今日こそアンタんとこ泊めてもらって良いよね、今までそんなお得な情報黙ってたんだし」
「知るか、じゃあな」
「今日はついてくよ、しばらくお別れだし良いだろ」
「俺はお前が嫌いだ」
「オレはアンタ好きだけど」
「どうでもいい」
「じゃあついてくよ? 良いよね」
良いわけありませんが、このまま私の部屋まで本当について来そうです。
軍事国家の元暗部なら巻くのも容易ではありませんし、仕事帰りにそんなことをするのはごめんです。
「昼には帰るんだな?」
「お! 行っていいの?」
「質問に答えろ」
「帰る帰る!」
私はため息をつき、歩いていた道を引き返します。
この様子なら店で昼まで粘る方が良いでしょう。
───────
「それ飲んだら寝ろよ」
「カモミールとかオシャレだね、流石!」
「飲んだら帰るか寝ろ」
「ハァ……もうメル君使って脅す理由ないの分かってんだろ? そろそろ仲良くしてよ」
「仲良くする理由もない」
彼をソファ席に案内してお茶を出しました。
私は彼の斜め前に座り、自分のために用意したジンのロックを口にします。
彼は深いため息をついてからお茶を口にします。
彼が通うようになってそろそろ二週間、少しだけ人となりが分かった部分もあります。
彼は頭の切り替えが早く、常に利益を優先して考え行動します。
良くいえば非常に合理的な思考の持ち主です。
彼自身の考え方や性格には好感が持てる部分もありますが、理由が出来れば適切な手段を選ぶ冷徹さもあると思え、警戒を解く気にはなれません。
メル様を使って脅迫するのが適切と判断すればまたやるでしょう。
「じゃあ良い情報一つ教えてやるよ」
私は黙ってタバコに火をつけます。
早く寝てくれませんかね、弱めの睡眠導入剤でも入れておけば良かったかもしれません。
「アンタの師匠がいきなり帰るって言い出したのってオレからの情報なんだよね」
「……」
「リュンヌからくる使節団のメンバーの情報、マルモワの頃から使ってる伝手で手に入れてさ」
「良いのかそれ?」
「個人的な付き合いだからね、こういうのないと暗部なんてやってらんねぇの。そう思うと……」
お茶のカップをテーブルに置き、頬杖をついて私を見ます。
「アンタの情報マジで手に入んねぇのな。写真の一枚もない前歴も不明、リモワでバー始める前の情報マジで出てこねぇ。騎士団長から色々聞けるから一旦警戒解いたけど、結局術士だし? オレの留学中の苦労マジ返せっての」
「知るか」
「ま、失敗したお陰でマルモワから出れたから良いけど」
どうやら新聞の楽士の話やここによく来るお客様経由の情報は手に入らなかったようですね。
やはり皆様信頼できる方々です。
「それでリュンヌの使節団のメンバー、知りたい?」
「別に」
「んだよ、まぁ聞けって。ミヌレ公爵っていうかなりの貴族らしいってのと」
「……ミヌレ?」
「なんだ知ってんの?」
「少しだけなら」
「術士では有名な家門なんだってね、岩? 土? の術だっけ」
「そんな訳は」
「先祖は使えたらしいね。あと適齢期の娘がいるらしいってのまで分かった」
「……まさかその娘が来るとか」
「そ、あと夫人と子飼いの子爵。最低でも三人は確定みたいだってさ」
マルモワの関税率も目当てではあるのでしょう、けど。
ミヌレという名前は私がまともに覚えている貴族の方です。
よりにもよって、という気持ちがとても強いです。
「師匠がいる事を知ってるのか?」
「多分知らないと思うね、ヴァローナの術士がいるなんてオレでも驚いたし」
「じゃあ」
「局長さん大人気だね」
「その情報、どのくらいまで広がってる?」
「この国で知ってんのオレらくらいじゃね?」
彼の情報が正しいなら、私も師匠と一緒に一時的にヴァローナに行くのも良い気がしてきます。
「師匠に気に入られた理由がよく分かった」
「お、じゃあ少しは仲良くしてくれる?」
「もう一度言う、本当にもう何もしないんだな?」
「しないってか、アンタ相手には無理だからやりたくてもできねーよ。オレは無駄な殺しはしねーよ」
彼がくれた情報はとても有益です。
彼らはオランディに入国出来次第術士を探して回るでしょうから、メル様も危険です。
私の考えを察してか、彼が得意げに言葉を続けます。
「オレが使ってた術士探しの石あったろ? あれリュンヌで作られた奴だからアンタとメル君も危ないね」
「知ってる」
「じゃあさ~、ついでにその石の回避方法も教えてやろうか?」
「あるのか?」
「もちろん、効かない条件あったら意味ないからね。事前に調べといた」
「情報の対価は?」
「前みたいに仲良くしてほしいっす!」
「……そんなことか?」
「その価値があるって思ってるからね」
「なるほど」
無駄な事はしないと思ってましたが、私に構ってくるのも何か理由があるのでしょうか。
私とメル様の安全と引き換えるなら問題ではありません。
「分かりました、では石の回避方法を教えてください」
「やったー! 仲良くしてくれんのね!」
「多少でしたら。それで、教えていただけますか?」
彼が意味ありげに咳払いをして言葉を続けます。
「オレは術士じゃないからわかんねぇんだけど、術使う時魔力? っての使うんだろ?」
「はい」
「それが術士ってのから少しだけ漏れてるらしくて。術使う時にはハッキリ出るんだっけね」
「その通りです」
「あの石ってそれに反応して光るんだってよ」
思ったより簡単な原理ですね。
そう言えば彼の目の前で破壊した石の残骸をカウンターの下にしまってあります。
私はタバコの火を消してから立ち上がり、カウンターの中へ入ると棚からその石と台座を取り出します。
これを残しておいた理由は、彼が置いていったあとも大きい欠片が光っていたため何かに使えると思ったからです。
欠片を手にして再びソファに戻ります。
「お、持ってたんだ」
「この石はどういうものなのですか?」
「貴族から手に入れたって聞いたな。よく分かんねぇけど、なんかの術でも掛かってんじゃねぇの?」
「それはないでしょう、術が掛けられているなら今光っている理由に説明がつきません」
「さぁな、その辺はオレにはさっぱり」
術で砕いたからでしょうか?
いや、そんな訳はないですよね。
「上着を着てください」
「え、何また帰れっての?」
「いえ、暖房を落とします」
「なんでよ」
「とりあえず上着を着ていただけますか?」
「えー、しゃあねぇな」
彼は渋々といった様子で上着をきます。
私は指を鳴らして店内で使っている術を解き、テーブルの小さなロウソク以外の証明が落ちます。
その上で幻術を駆使して大量の花を生み出し、その花が微かに光ります。
「うわ、すっご……」
五分程生み出し続けた辺りで私の魔力がつきます、軽い眠気を覚えながら石を見ると……
「お、消えた! 魔力ってのに反応すんのはホントなんだなー」
「師匠は指輪を持っていませんでしたか?」
「あーどうだろ、見てないな」
「分かりました、これなら対策を取れそうです」
まだ実験をしてませんが、魔力をなんとかすれば良いならハーブか指輪を使用して解決できるかもしれません。
「ヴァローナに共に避難する事も考えましたが、必要なさそうです」
「え! そんなこと考えてたの!?」
「はい、ヴァローナへはお二人でお帰りになってください」
「あー! 言わなきゃ良かった!」
彼は根が悪い人にはなりきれないようですね。
使節団が来るまでにメル様とビャンコ様と会う機会があれば良いですが、なかった場合お二人に会えるよう出向くことにしましょう。
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