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余談集
紅が散る春の渚:キーノスの回想録
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これは私の回顧録です。
もっと言うと、反省しなければならない事です。
今でも、夢に見ることがあります。
最近は楽しい夢ばかり見ていましたが、久しぶりに骨折などしたせいでしょう。
一番見たくない夢を見ます。
「お願いだから、死なないで……俺を、俺が代わりになるから」
私はベッドの上の彼女の手を握りしめて訴えます。
「俺を一人にしないでくれ……この世界は優しいけど、一人は……」
泣きながら、無茶な要求をしています。
サチ様はご高齢、事故での負傷を回復するだけの体力はもうありません。
もう術などでも、どうにもならないのも理解していました。
私のようなオーガとは加齢や怪我の回復の速度が違うのは当たり前です。
「この歳なら大往生よ、悔いはないわ」
サチ様は穏やかな口調で仰います。
事故の後で体の様々な場所が痛むはずなのに、涙を流し続ける私に気を使って笑顔で答えてくださいます。
「それに、一人じゃないでしょ? 人に優しく……丁寧に……」
他でもない、あなたがいないのが嫌なんです。
「お店は頑張るから、遊びに来て、ほしい……だから、お願いだから……」
この頃始めたバー『モウカハナ』は、サチ様の郷土料理を作って、彼女に食べて笑顔になってもらう為に始めました。
「お空から見守ってるわ……お友達と、仲良く……」
サチ様はそれだけ言うと目を閉じました。
私はしばらく泣きながら手を握る事しか出来ず、その後のことはよく覚えていません。
サチ様がお亡くなりになった後は、しばらく同じ夢ばかり見ていました。
当時の私は……酷いものでした。
何度も夢に見れば、現実を受け入れざるをえません。
それでも、サチ様の残したリモワやモウカハナの中にいない彼女を見ていました。
人との関わりを避ける生活に戻らなかったのは、サチ様の最後の言葉を忘れないためでした。
でも、友人などいないと思っていました。
私と関係性を築いた方々はいます。
ビャンコ様やイザッコ、それに術の手解きをしてくれた師匠と……。
でも、友人とは言えないでしょう。
彼らは私が術士だったり力が強かったりするのを知っているからです。
利用される関係は友人とは言わないと、サチ様から教わっています。
サチ様の遺言を守るには、相手を利用せず丁寧な態度で優しく接する事しか思いつきませんでした。
そんな風に思ってました。
ユメノ様がオランディに現れたと知った時、彼女をサチ様の代わりのように思ったのでしょう。
彼女の事が知りたいと思いました。
幸い飲食店を経営してますから、話は耳に入ってきます。
そうして興味を持った状態でお客様の話を聞いた分かったのは、お客様が私に対して利用せず丁寧に優しく接してくださっていたことです。
それで、私が思っていた以上に人に恵まれていた事に気付けました。
サチ様はきっとご存知だったのでしょうね、私は二十年もかかってしまいました。
イザッコとビャンコ様は二十年も私と関わりを持とうとしてくれたのかと考えると、申し訳なく思います。こんな言葉では足りないとは思いますが。
今でも雨は嫌いです。
春の雪解けの道も嫌いです。
自分の容姿も嫌いですが、人のような姿であった事でサチ様と出会えたのなら、それは良かったと思います。
容姿で目を背けられる事が多く、私とまともに会話をしてくださる方はほとんどいません。
店に来るお客様が私を見る事が出来るのは、照明が暗く顔がよく見えていないからだと思っています。
だから彼らは街の中の人とは違い、不気味だと目を逸らす前に慣れてくれているのだと思っています。
彼らは違うとどうして気付かなかったのか……私に原因がありますね。
私は、料理を作るのもリモワの街並みも好きです。
それはまだ私がサチ様に縛られているからかもしれませんが、私を明るい気持ちにしてくれる物に変わりありません。
でも今は、私と向き合って普通に会話をしてくれる彼らも好きです。
彼らが友人と呼べるかは分かりませんが、大切にしたいと思える方々です。
今は、彼らも含めたリモワがより好きになりました。
ただ、それだけです。
でも、私は変わったと思います。
こんな事を術の師匠が知ったら、変化の使い手の癖にと馬鹿にされそうです。
もっと言うと、反省しなければならない事です。
今でも、夢に見ることがあります。
最近は楽しい夢ばかり見ていましたが、久しぶりに骨折などしたせいでしょう。
一番見たくない夢を見ます。
「お願いだから、死なないで……俺を、俺が代わりになるから」
私はベッドの上の彼女の手を握りしめて訴えます。
「俺を一人にしないでくれ……この世界は優しいけど、一人は……」
泣きながら、無茶な要求をしています。
サチ様はご高齢、事故での負傷を回復するだけの体力はもうありません。
もう術などでも、どうにもならないのも理解していました。
私のようなオーガとは加齢や怪我の回復の速度が違うのは当たり前です。
「この歳なら大往生よ、悔いはないわ」
サチ様は穏やかな口調で仰います。
事故の後で体の様々な場所が痛むはずなのに、涙を流し続ける私に気を使って笑顔で答えてくださいます。
「それに、一人じゃないでしょ? 人に優しく……丁寧に……」
他でもない、あなたがいないのが嫌なんです。
「お店は頑張るから、遊びに来て、ほしい……だから、お願いだから……」
この頃始めたバー『モウカハナ』は、サチ様の郷土料理を作って、彼女に食べて笑顔になってもらう為に始めました。
「お空から見守ってるわ……お友達と、仲良く……」
サチ様はそれだけ言うと目を閉じました。
私はしばらく泣きながら手を握る事しか出来ず、その後のことはよく覚えていません。
サチ様がお亡くなりになった後は、しばらく同じ夢ばかり見ていました。
当時の私は……酷いものでした。
何度も夢に見れば、現実を受け入れざるをえません。
それでも、サチ様の残したリモワやモウカハナの中にいない彼女を見ていました。
人との関わりを避ける生活に戻らなかったのは、サチ様の最後の言葉を忘れないためでした。
でも、友人などいないと思っていました。
私と関係性を築いた方々はいます。
ビャンコ様やイザッコ、それに術の手解きをしてくれた師匠と……。
でも、友人とは言えないでしょう。
彼らは私が術士だったり力が強かったりするのを知っているからです。
利用される関係は友人とは言わないと、サチ様から教わっています。
サチ様の遺言を守るには、相手を利用せず丁寧な態度で優しく接する事しか思いつきませんでした。
そんな風に思ってました。
ユメノ様がオランディに現れたと知った時、彼女をサチ様の代わりのように思ったのでしょう。
彼女の事が知りたいと思いました。
幸い飲食店を経営してますから、話は耳に入ってきます。
そうして興味を持った状態でお客様の話を聞いた分かったのは、お客様が私に対して利用せず丁寧に優しく接してくださっていたことです。
それで、私が思っていた以上に人に恵まれていた事に気付けました。
サチ様はきっとご存知だったのでしょうね、私は二十年もかかってしまいました。
イザッコとビャンコ様は二十年も私と関わりを持とうとしてくれたのかと考えると、申し訳なく思います。こんな言葉では足りないとは思いますが。
今でも雨は嫌いです。
春の雪解けの道も嫌いです。
自分の容姿も嫌いですが、人のような姿であった事でサチ様と出会えたのなら、それは良かったと思います。
容姿で目を背けられる事が多く、私とまともに会話をしてくださる方はほとんどいません。
店に来るお客様が私を見る事が出来るのは、照明が暗く顔がよく見えていないからだと思っています。
だから彼らは街の中の人とは違い、不気味だと目を逸らす前に慣れてくれているのだと思っています。
彼らは違うとどうして気付かなかったのか……私に原因がありますね。
私は、料理を作るのもリモワの街並みも好きです。
それはまだ私がサチ様に縛られているからかもしれませんが、私を明るい気持ちにしてくれる物に変わりありません。
でも今は、私と向き合って普通に会話をしてくれる彼らも好きです。
彼らが友人と呼べるかは分かりませんが、大切にしたいと思える方々です。
今は、彼らも含めたリモワがより好きになりました。
ただ、それだけです。
でも、私は変わったと思います。
こんな事を術の師匠が知ったら、変化の使い手の癖にと馬鹿にされそうです。
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