36 / 185
雪景色に踊る港の暴風
#9
しおりを挟む
ハナビを打ち上げた後、私はメル様と分かれ店へ戻りました。
入口には変装したビャンコ様が待機しており、私を見るなり
「あれ、分かってんね?」
と言い、空を指しました。
大分お怒りのようです。
私はビャンコ様に先程のハナビで使用した薬品の瓶をお見せしました。
「詳細をお話します。何かお出ししますので、店内へどうぞ」
私は店の表示はそのままに、ビャンコ様を店内へ促しました。
店内でグリーンティをお出しし、先程までの一連の流れをご説明しました。
彼にはハナビにした正直な理由も。
「……次はもう少し慎重にね」
「申し訳ありません」
「久々に暴走見たわ、サチさんも笑ってんよ多分」
「……それならば光栄です」
ビャンコ様はクスクスと笑っていらっしゃいます。
「ま、でもお陰でユメノ捕獲の方法思いついたから感謝しとく」
「それは何よりです、こちらの瓶は持っていかれますか?」
「そうだね、証拠の一つとして貰っとくわ」
ビャンコ様はポケットに瓶をしまうと、テーブルの上のグリーンティを飲み干します。
「じゃ、用も済んだし帰るわ。ハナビ、オレがやった事にしとくで良いよね?」
「ありがとうございます、今度何かお礼をさせていただきます」
「別にいいよ。良いもん見れたし、相変わらずのキーちゃんの暴れっぷり見れたし」
「申し訳ありませんでした」
「ここのお客さんの影響かね、オレは良い傾向だと思うよ」
ビャンコ様は笑いながら答えたあと、席を立ってお店を後にされました。
お見送りついでに店の表示をAPERTOへと切り替え、新たなお客様を待つことにします。
───────
年が明けて三週間は過ぎた頃。特に大きな事件もなく平和な日々が続きました。
新聞にて「年始のプレゼント」としてハナビが紹介され、ビャンコ様へ褒賞があったようです。
私はユメノ様がどうなったのか気にしながらも、今夜もモウカハナでお酒や料理を振舞っておりました。
ニュースは、夜遅くにご来店なさったミケーノ様から聞くことができました。
どうやら王国の騎士が彼女を捕まえたようです。
その場に偶然居合わせたミケーノ様が、ユメノ様の行動の数々に衝撃を受けたようです。
「あれはすごいな、金切り声ってあぁいうの言うんだろうな」
「あの声で会議室で叫ばれると耳が割れるよ」
ミケーノ様より前からご来店されていたカズロ様が、苦笑いで答えます。
本日はすりおろしたラディッシュとショーユをモチにかけたものを召し上がっております。
「今まで話にしか聞いてなかったが、目の当たりにすると違うな」
「あの感じで殿下に抗議したんだよ、違う方向で尊敬するよ」
「そういやそうだった……お前本当に大変だったな」
───────
夜の市場は年末から賑わいも落ち着いてきたが、警備をしていた騎士も何人かいた。
その内の一人と暗いコートを着た女性が何か揉めているのが聞こえた。
「お願いです、アタシの木箱なくなっちゃったんです! 誰かが盗んだに違いないんです!」
「落ち着いてください、いつ頃の話ですか?」
「盗まれたんです! ないんです!」
「それは分かりましたから、まずは詳しい事を話してください」
声も大きく会話が響く。
女性の慌てた様子から大層なものが木箱中にあったのだろうと、遠巻きに眺めていた。
「去年からずっと準備して置いといたのに……盗むなんて酷すぎます! 犯人を探してください!」
「え? 去年から?」
「はい、波止場に置いといたんです!」
その時、誰かが呼んだらしい港の管理部員が騒ぎに参加した。
「どうした、市場で騒ぎが~って呼ばれて来たが一体どうした?」
「これはわざわざご足労をすみません。何でも去年から波止場に木箱があったとかで」
「木箱?」
「そうです! すっごく大事な物が入ってたんです!! それが盗まれたんです!」
「あぁ、もしかしてそれコーヒー入ってた箱か?」
「え! ひっどーーい! 勝手に開けるなんて!!」
「勝手にって……バカ言っちゃいけねぇよ、正体不明の荷物あったら中身を確かめるに決まってんだろ」
「プライバシーの侵害! 信じらんない!」
女性が管理部員の胸倉を掴みがくがくと揺する。
「とにかく今すぐ返して!!」
「か……返せって……アレなら……ちゃんと引き取りに来た奴が……持ってったぞ……」
「ハァ!?」
胸倉から手を離し、同時に突き飛ばす。
管理部員は尻もちもつき、掴まれていた胸元を軽くさする。
「そんな訳ないじゃない! アレの持主はアタシなのよ!? 適当な嘘つかないでよ!!」
「嘘じゃねぇよ、手続きも済んでるし記録もある」
「できるわけないでしょ!? 持ち主のアタシが許可してないんだから!」
「ちゃんとした身元の人が引き取りのサインしてるよ。でけぇ声で言い張ってるが、アレがアンタのもんだって証拠がねぇだろ」
「とにかくそんなサイン無効よ! アタシのサインしか認めないわ!!」
言ってることが無茶苦茶だ……
モウカハナで聞いた異世界人みたいな奴他にもいるんだな……
ん? まさかあれ、ユメノか!?
管理人は尻を手で叩きながら立ち上がり、面倒くさそうに言う。
「ったくなんなんだよ。ずっと外に置きっぱなしだったコーヒーだぞ? なんだってそんなに欲しがるんだよ?」
「だからアタシのなの! 返してよ!」
「あのなぁ、だからもう持ち主が持ってったっつってんだろ」
「アタシのなの!」
埒が明かないやりとりに騎士が割ってはいる。
「一応お伺いしますが、その持ち主の方は手続きをされてるんですよね?」
「当たり前だ、サインの入った引き取り書類もある。管理室にあるから見るか?」
「そうですね、一応確認させていただきます」
かなりの注目を浴びているのを気にした騎士が、場所の移動をさせようとしたところで、彼女がわなわなと震え出す。
「分かったわ……アイツだ! あの顔だけしか取り柄がなさそうなあの店員が持ってったんだ! そうなんでしょ、答えなさいよ!」
「ま、まぁまぁ一旦この場から……」
「うるさい! アンタは関係ない!」
今度は宥めようとした騎士を突き飛ばす。
流石に尻もちはつかないが、一歩後ろへと下がる。
「信じらんない! 許せない! 出てきなさいよ、どうせ見てるんでしょ!?」
「ちょ、ちょっと! そろそろいい加減にしてください!」
───────
「アレはすごいな、ウチに来る外国人の方が話通じると思うぞ」
「相変わらずだね……」
彼女が公務員だった頃の事を思い出しているのでしょう。
ユメノ様の話から逸らしたいのか、カズロ様が違う方面のご質問をされました。
「その木箱ってずっと放置さてたみたいだけど、そういう荷物って結構あるの?」
「倉庫に入り切らない荷物を外に置いとく奴はいるな。傷もうが自己責任だ」
「自己責任か……港の管理部が預かってくれたりしないの?」
「頼めば共用倉庫に置かせてもらえるが、手数料がかかるな。外は短時間ならタダ。まぁ、そもそも管理部は出入荷の把握がメインで倉庫はついでだ」
ミケーノ様がアツカンを一口飲み、一息吐きます。
「入らない荷物なんかは、知り合いに倉庫の間借りを頼むのが普通だな」
「横の繋がりが強いんだね」
「お互い様って考え方だな。共用倉庫の手数料安くねぇし」
ちなみに当店は店内の倉庫まで運んで頂いてます。
主にお酒がその対象です。
ミケーノ様はお酒をちびりと飲み、言葉を続けます。
「それと市場に管理部の店にたまに出るだろ? あれ、手数料の未払い品を並べんだよ」
「へぇ、あれってそうだったんだ」
「港の掲示板で店出す日程が載って、その日程の前日が一斉処分の日でな。掲示板に出店の報せが乗ると、次の日は管理部に料金慌てて払いに行くやつが殺到するぞ」
「なるほどね。放置された荷物も把握はされてるのかな?」
「放置って言っても外に置いとくのにも申告が必要でな。申告なしの場合中身を確認されて、掲示板に張り出されんだよ。物によっては騎士団が呼ばれてるな」
申告する際には港の地図を渡され、置く場所に印を付ける仕組みです。
馬車に載せ替えに時間がかかる場合によく使われます。
実際のところ、荷物を放置し続ける方はあまりいらっしゃいません。
自分のものだったり、商品にする物を野ざらしにしたい方は少ないですからね。
「例のコーヒーの持ち主が誰かは分かんねぇけど、中身知られてたなら不明の荷物だったんだろうよ」
「じゃあ掲示板にあったのか」
「多分、な。それで盗まれたって大騒ぎすんだから、管理のヤツも災難だったなぁ」
「なるほどね……統計上の数字なら分かるけど、実際はルールがけっこうあるんだね」
カズロ様がモチを頬張りながらうんうんと頷きます。
「しかし……なんであんなにあのコーヒー欲しがったんだ? アイツそんなにコーヒー飲むのか?」
「統計局にいた時はいつも果物のジュースだったかな」
カズロ様がふと、疑問に思ったことを口になさいます。
「あれ、彼女捕まったんだよね? 本人が言うにはコーヒー盗まれた被害者みたいだけど」
「あぁ、あの暴言吐きまくったあと市場のど真ん中で大暴れよ。あの辺の屋台のもの掴んじゃ投げ、椅子は蹴倒すわ、近くにいた騎士に殴りかかって踏みつけて」
「どこからそんな力が……」
「周りのヤツらが避難した辺りで、追加の騎士がアイツを地面に組み伏せてなんとか片付いた」
「結局、木箱と逮捕は関係ないみたいだね」
「あんだけもの壊せばな……」
結果として彼女は捕まったわけですが、これがビャンコ様の言ってた捕獲方法なのでしょうか?
私には彼女が勝手に自滅したようにしか見えません。
しかしあの薬品は私とメル様が処分しなくとも、ユメノ様が手に入れる未来は訪れなかったようですね。
市場に並んでコーヒーと勘違いされたお客様の口に入らなかったのがせめてもの救いです。
入口には変装したビャンコ様が待機しており、私を見るなり
「あれ、分かってんね?」
と言い、空を指しました。
大分お怒りのようです。
私はビャンコ様に先程のハナビで使用した薬品の瓶をお見せしました。
「詳細をお話します。何かお出ししますので、店内へどうぞ」
私は店の表示はそのままに、ビャンコ様を店内へ促しました。
店内でグリーンティをお出しし、先程までの一連の流れをご説明しました。
彼にはハナビにした正直な理由も。
「……次はもう少し慎重にね」
「申し訳ありません」
「久々に暴走見たわ、サチさんも笑ってんよ多分」
「……それならば光栄です」
ビャンコ様はクスクスと笑っていらっしゃいます。
「ま、でもお陰でユメノ捕獲の方法思いついたから感謝しとく」
「それは何よりです、こちらの瓶は持っていかれますか?」
「そうだね、証拠の一つとして貰っとくわ」
ビャンコ様はポケットに瓶をしまうと、テーブルの上のグリーンティを飲み干します。
「じゃ、用も済んだし帰るわ。ハナビ、オレがやった事にしとくで良いよね?」
「ありがとうございます、今度何かお礼をさせていただきます」
「別にいいよ。良いもん見れたし、相変わらずのキーちゃんの暴れっぷり見れたし」
「申し訳ありませんでした」
「ここのお客さんの影響かね、オレは良い傾向だと思うよ」
ビャンコ様は笑いながら答えたあと、席を立ってお店を後にされました。
お見送りついでに店の表示をAPERTOへと切り替え、新たなお客様を待つことにします。
───────
年が明けて三週間は過ぎた頃。特に大きな事件もなく平和な日々が続きました。
新聞にて「年始のプレゼント」としてハナビが紹介され、ビャンコ様へ褒賞があったようです。
私はユメノ様がどうなったのか気にしながらも、今夜もモウカハナでお酒や料理を振舞っておりました。
ニュースは、夜遅くにご来店なさったミケーノ様から聞くことができました。
どうやら王国の騎士が彼女を捕まえたようです。
その場に偶然居合わせたミケーノ様が、ユメノ様の行動の数々に衝撃を受けたようです。
「あれはすごいな、金切り声ってあぁいうの言うんだろうな」
「あの声で会議室で叫ばれると耳が割れるよ」
ミケーノ様より前からご来店されていたカズロ様が、苦笑いで答えます。
本日はすりおろしたラディッシュとショーユをモチにかけたものを召し上がっております。
「今まで話にしか聞いてなかったが、目の当たりにすると違うな」
「あの感じで殿下に抗議したんだよ、違う方向で尊敬するよ」
「そういやそうだった……お前本当に大変だったな」
───────
夜の市場は年末から賑わいも落ち着いてきたが、警備をしていた騎士も何人かいた。
その内の一人と暗いコートを着た女性が何か揉めているのが聞こえた。
「お願いです、アタシの木箱なくなっちゃったんです! 誰かが盗んだに違いないんです!」
「落ち着いてください、いつ頃の話ですか?」
「盗まれたんです! ないんです!」
「それは分かりましたから、まずは詳しい事を話してください」
声も大きく会話が響く。
女性の慌てた様子から大層なものが木箱中にあったのだろうと、遠巻きに眺めていた。
「去年からずっと準備して置いといたのに……盗むなんて酷すぎます! 犯人を探してください!」
「え? 去年から?」
「はい、波止場に置いといたんです!」
その時、誰かが呼んだらしい港の管理部員が騒ぎに参加した。
「どうした、市場で騒ぎが~って呼ばれて来たが一体どうした?」
「これはわざわざご足労をすみません。何でも去年から波止場に木箱があったとかで」
「木箱?」
「そうです! すっごく大事な物が入ってたんです!! それが盗まれたんです!」
「あぁ、もしかしてそれコーヒー入ってた箱か?」
「え! ひっどーーい! 勝手に開けるなんて!!」
「勝手にって……バカ言っちゃいけねぇよ、正体不明の荷物あったら中身を確かめるに決まってんだろ」
「プライバシーの侵害! 信じらんない!」
女性が管理部員の胸倉を掴みがくがくと揺する。
「とにかく今すぐ返して!!」
「か……返せって……アレなら……ちゃんと引き取りに来た奴が……持ってったぞ……」
「ハァ!?」
胸倉から手を離し、同時に突き飛ばす。
管理部員は尻もちもつき、掴まれていた胸元を軽くさする。
「そんな訳ないじゃない! アレの持主はアタシなのよ!? 適当な嘘つかないでよ!!」
「嘘じゃねぇよ、手続きも済んでるし記録もある」
「できるわけないでしょ!? 持ち主のアタシが許可してないんだから!」
「ちゃんとした身元の人が引き取りのサインしてるよ。でけぇ声で言い張ってるが、アレがアンタのもんだって証拠がねぇだろ」
「とにかくそんなサイン無効よ! アタシのサインしか認めないわ!!」
言ってることが無茶苦茶だ……
モウカハナで聞いた異世界人みたいな奴他にもいるんだな……
ん? まさかあれ、ユメノか!?
管理人は尻を手で叩きながら立ち上がり、面倒くさそうに言う。
「ったくなんなんだよ。ずっと外に置きっぱなしだったコーヒーだぞ? なんだってそんなに欲しがるんだよ?」
「だからアタシのなの! 返してよ!」
「あのなぁ、だからもう持ち主が持ってったっつってんだろ」
「アタシのなの!」
埒が明かないやりとりに騎士が割ってはいる。
「一応お伺いしますが、その持ち主の方は手続きをされてるんですよね?」
「当たり前だ、サインの入った引き取り書類もある。管理室にあるから見るか?」
「そうですね、一応確認させていただきます」
かなりの注目を浴びているのを気にした騎士が、場所の移動をさせようとしたところで、彼女がわなわなと震え出す。
「分かったわ……アイツだ! あの顔だけしか取り柄がなさそうなあの店員が持ってったんだ! そうなんでしょ、答えなさいよ!」
「ま、まぁまぁ一旦この場から……」
「うるさい! アンタは関係ない!」
今度は宥めようとした騎士を突き飛ばす。
流石に尻もちはつかないが、一歩後ろへと下がる。
「信じらんない! 許せない! 出てきなさいよ、どうせ見てるんでしょ!?」
「ちょ、ちょっと! そろそろいい加減にしてください!」
───────
「アレはすごいな、ウチに来る外国人の方が話通じると思うぞ」
「相変わらずだね……」
彼女が公務員だった頃の事を思い出しているのでしょう。
ユメノ様の話から逸らしたいのか、カズロ様が違う方面のご質問をされました。
「その木箱ってずっと放置さてたみたいだけど、そういう荷物って結構あるの?」
「倉庫に入り切らない荷物を外に置いとく奴はいるな。傷もうが自己責任だ」
「自己責任か……港の管理部が預かってくれたりしないの?」
「頼めば共用倉庫に置かせてもらえるが、手数料がかかるな。外は短時間ならタダ。まぁ、そもそも管理部は出入荷の把握がメインで倉庫はついでだ」
ミケーノ様がアツカンを一口飲み、一息吐きます。
「入らない荷物なんかは、知り合いに倉庫の間借りを頼むのが普通だな」
「横の繋がりが強いんだね」
「お互い様って考え方だな。共用倉庫の手数料安くねぇし」
ちなみに当店は店内の倉庫まで運んで頂いてます。
主にお酒がその対象です。
ミケーノ様はお酒をちびりと飲み、言葉を続けます。
「それと市場に管理部の店にたまに出るだろ? あれ、手数料の未払い品を並べんだよ」
「へぇ、あれってそうだったんだ」
「港の掲示板で店出す日程が載って、その日程の前日が一斉処分の日でな。掲示板に出店の報せが乗ると、次の日は管理部に料金慌てて払いに行くやつが殺到するぞ」
「なるほどね。放置された荷物も把握はされてるのかな?」
「放置って言っても外に置いとくのにも申告が必要でな。申告なしの場合中身を確認されて、掲示板に張り出されんだよ。物によっては騎士団が呼ばれてるな」
申告する際には港の地図を渡され、置く場所に印を付ける仕組みです。
馬車に載せ替えに時間がかかる場合によく使われます。
実際のところ、荷物を放置し続ける方はあまりいらっしゃいません。
自分のものだったり、商品にする物を野ざらしにしたい方は少ないですからね。
「例のコーヒーの持ち主が誰かは分かんねぇけど、中身知られてたなら不明の荷物だったんだろうよ」
「じゃあ掲示板にあったのか」
「多分、な。それで盗まれたって大騒ぎすんだから、管理のヤツも災難だったなぁ」
「なるほどね……統計上の数字なら分かるけど、実際はルールがけっこうあるんだね」
カズロ様がモチを頬張りながらうんうんと頷きます。
「しかし……なんであんなにあのコーヒー欲しがったんだ? アイツそんなにコーヒー飲むのか?」
「統計局にいた時はいつも果物のジュースだったかな」
カズロ様がふと、疑問に思ったことを口になさいます。
「あれ、彼女捕まったんだよね? 本人が言うにはコーヒー盗まれた被害者みたいだけど」
「あぁ、あの暴言吐きまくったあと市場のど真ん中で大暴れよ。あの辺の屋台のもの掴んじゃ投げ、椅子は蹴倒すわ、近くにいた騎士に殴りかかって踏みつけて」
「どこからそんな力が……」
「周りのヤツらが避難した辺りで、追加の騎士がアイツを地面に組み伏せてなんとか片付いた」
「結局、木箱と逮捕は関係ないみたいだね」
「あんだけもの壊せばな……」
結果として彼女は捕まったわけですが、これがビャンコ様の言ってた捕獲方法なのでしょうか?
私には彼女が勝手に自滅したようにしか見えません。
しかしあの薬品は私とメル様が処分しなくとも、ユメノ様が手に入れる未来は訪れなかったようですね。
市場に並んでコーヒーと勘違いされたお客様の口に入らなかったのがせめてもの救いです。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!
ユウ
ファンタジー
トリアノン公爵令嬢のエリーゼは秀でた才能もなく凡庸な令嬢だった。
反対に次女のマリアンヌは社交界の華で、弟のハイネは公爵家の跡継ぎとして期待されていた。
嫁ぎ先も決まらず公爵家のお荷物と言われていた最中ようやく第一王子との婚約がまとまり、その後に妹のマリアンヌの婚約が決まるも、相手はスチュアート伯爵家からだった。
華麗なる一族とまで呼ばれる一族であるが相手は伯爵家。
マリアンヌは格下に嫁ぐなんて論外だと我儘を言い、エリーゼが身代わりに嫁ぐことになった。
しかしその数か月後、妹から婚約者を寝取り略奪した最低な姉という噂が流れだしてしまい、社交界では爪はじきに合うも。
伯爵家はエリーゼを溺愛していた。
その一方でこれまで姉を踏み台にしていたマリアンヌは何をしても上手く行かず義妹とも折り合いが悪く苛立ちを抱えていた。
なのに、伯爵家で大事にされている姉を見て激怒する。
「お姉様は不幸がお似合いよ…何で幸せそうにしているのよ!」
本性を露わにして姉の幸福を妬むのだが――。
実力主義に拾われた鑑定士 奴隷扱いだった母国を捨てて、敵国の英雄はじめました
薄味メロン
ファンタジー
*第13回ファンタジー小説大賞〈読者賞〉〈優秀賞〉ダブル受賞。
*コミカライズ連載中
*書籍1,2,3巻 発売中
鑑定師だった俺は、寝る間もないほどの仕事量に死にかけていた。
「このくらい終わらせろ、平民!」
日々のノルマに、上司の理不尽な暴言や暴力。
頭痛や目眩、吐き気が襲い来る日々。
「我々なら、君を正しく評価出来る。帝国に来ないか?」
そんな日常から逃げ出した俺は、いつの間にか、優秀な人材に慕われる敵国の英雄になってました。
こんなとき何て言う?
遠野エン
エッセイ・ノンフィクション
ユーモアは人間関係の潤滑油。会話を盛り上げるための「面白い答え方」を紹介。友人との会話や職場でのやり取りを一層楽しくするヒントをお届けします。
【完結】可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~
Rohdea
恋愛
特殊な力を持つローウェル伯爵家の長女であるマルヴィナ。
王子の妃候補にも選ばれるなど、子供の頃から皆の期待を背負って生きて来た。
両親が無邪気な妹ばかりを可愛がっていても、頑張ればいつか自分も同じように笑いかけてもらえる。
十八歳の誕生日を迎えて“特別な力”が覚醒すればきっと───……そう信じていた。
しかし、十八歳の誕生日。
覚醒するはずだったマルヴィナの特別な力は発現しなかった。
周りの態度が冷たくなっていく中でマルヴィナの唯一の心の支えは、
力が発現したら自分と婚約するはずだった王子、クリフォード。
彼に支えられながら、なんとか力の覚醒を信じていたマルヴィナだったけれど、
妹のサヴァナが十八歳の誕生日を迎えた日、全てが一変してしまう。
無能は不要と追放されたマルヴィナは、新たな生活を始めることに。
必死に新たな自分の居場所を見つけていこうとするマルヴィナ。
一方で、そんな彼女を無能と切り捨てた者たちは────……
【欧米人名一覧・50音順】異世界恋愛、異世界ファンタジーの資料集
早奈恵
エッセイ・ノンフィクション
異世界小説を書く上で、色々集めた資料の保管庫です。
男女別、欧米人の人名一覧(50音順)を追加してます!
貴族の爵位、敬称、侍女とメイド、家令と執事と従僕、etc……。
瞳の色、髪の色、etc……。
自分用に集めた資料を公開して、皆さんにも役立ててもらおうかなと思っています。
コツコツと、まとめられたものから掲載するので段々増えていく予定です。
自分なりに調べた内容なので、もしかしたら間違いなどもあるかもしれませんが、よろしかったら活用してください。
*調べるにあたり、ウィキ様にも大分お世話になっております。ペコリ(o_ _)o))
追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す
散士
ファンタジー
役立たずの烙印を押されパーティを追放された少年、ルカ。
しかし、彼には秘められたスキルと目標に向けて努力するひたむきさがあった。
そんな彼を認め、敬愛する新たな仲間が周囲に集まっていく。少年は仲間と共に冒険者の最高峰を目指す。
※ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる