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雪景色に踊る港の暴風
#7
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楽しい宴から二日、今日で年も終わりです。
新聞にも年の終わりに関する記事が並び、一年の話題をまとめたものになっています。
今年の後半はラナディムッカの話題で賑わいを見せましたが、前半はユメノ様のニュースが多かったと記憶しております。
そのはずなのですが、グリフォン脱走の件や王太子殿下の活躍で発展した辺境の都市の話などはありますが……不自然なほどユメノ様の事が書かれてません。
何かの思惑があるように感じてしまいます。
更に記事を読み進めていたら、恐ろしい記事が目に入りました。
『リストランテ・ロッソに現れたディーボ、麗しの楽士と共にアリアを熱唱』
……私の写真が掲載されています。
いつの間に撮られたのでしょうか……
この日は髪型を変えていたので、すぐに記事の楽士がモウカハナのバリスタだと気づく方はいないでしょう。
また、ミケーノ様の計らいにより打ち上げに参加した私を誰か知っているのは、同じテーブルにいた皆様とジャン様のみです。
ですがこれは失態です、しばらくは大人しく過ごした方が良さそうですね。
───────
空は雪模様、夜空から静かに舞い落ちる雪が穏やかな年の終わりを告げています。
今年最後のバー「モウカハナ」の開店です。
今日は店の入口前の邪気祓いの結界を少し厚く掛けておきます。
一応の警戒と、ご来店くださるお客様への祝福を込めています。
通年通りなら、来客は新年が開けて少ししてから増えます。
しばらくは調理場に籠り、年明けに振る舞うオセチの準備を進めましょう。
一通りの下拵えが済み、ダテマキを焼こうとしていた時。
来客を告げるベルが鳴りました、想定より早いご来店にお出迎えの用意が少し遅れます。
手を洗い、急ぎ店内に入ります。
そこに居たのは、深呼吸をしているメル様です。
「いらっしゃいませ、メル様。お好きなカウンターの席へどうぞ」
「こんばんは……キーノスさん」
すぐに暖かいタオルと水を用意します。
メル様はカウンターの端に席に腰掛け、タオルと水を受け取ります。
先程から気にはなっていましたが、顔色がとても悪いように見えます。
「ご注文は何になさいますか?」
「グラスホッパーを下さい」
「かしこまりました」
注文を受け、シェイカーとリキュールを用意します。
「差し出がましい質問ですが、もしかしてユメノ様と遭遇なさいましたか?」
「……はい。キーノスさんなら気付きますよね」
「酷い顔色をなさってます、カクテルも良いですが……」
私はカウンターの下の引き出しから、普段タバコの香り付けに使用している乾燥ハーブと香炉を取り出します。
香炉にハーブを加えたあと、左手の指を鳴らします。
ーーパチンッ
ハーブの温度を上げ、メル様の席の前へ起きます。
「術の打ち消しや気持ちを落ち着かせる効果がハーブです」
「ありがとうございます、いい香りです」
この後すぐにお出ししたカクテルを半分ほど飲んだところで、メル様の顔色が少し回復したように見えました。
「本当にありがとうございます、やっと鼻から抜けてきました……」
「それは何よりです」
「久しぶりに遭遇して……前より話の通じなさとニオイの度合い上がってて」
「本日もお店は営業なさってたのですか?」
「いえ、ミケーノさんのお店の打ち上げが今年最後の営業日でした」
「そうでしたか、では街中でお会いしたのですか?」
「……はい。ニオイがいつもより強くて、市場のどこにいたかまでは分からなかったんです」
───────
夜、メルクリオは年越しを部屋に篭って過ごす為、作り置きの料理や簡単に食べられる物を多めに買うため市場に来ていた。
同じ考えの人は多く、いつもより少しだけ混雑していた。
王都中でしている例の悪臭がいつもより強く、かなり近い位置に彼女がいるのは分かっている。
最近は少しずつニオイが強くなっている気がする。
近くにいる事が多いというより、力が強くなっている印象だ。
しばらく市場を周り、欲しいものを手に入れることが出来たので帰路に着く。
強いニオイに麻痺してたせいで警戒が薄くなっていたのは事実だが、市場を抜けた瞬間背後から腕を掴まれるとは思わなかった。
「あなた、あの店の店員さんですよね?」
この声、間違いない!
「ねぇ、新聞に乗ってたディーボってあなたの店の店長さんでしょ? あなたもその場にいたんじゃないですか?」
恐る恐る振り返ると、やはり彼女だ。
掴んだ腕を離す気配もなく、メルクリオも仕方なく市場の人混みの中で立ち尽くす。
「すみません、とりあえずあっちへ……周りの人の邪魔になります」
市場前の広い場所、人が少ない辺りを指さして移動を促した。
「そんな事より、あの新聞の話などが大事だと思うんですよぉ~」
そんな事よりって。
掴んだ腕を離さなそうなので、彼女を引きずるように人の少ない場所へ移動する。
「教えてくださいよ~、ディーボって店長さんですよね?」
「今朝の新聞ですよね? それなら確かにそうです」
写真が載っているし、知ってる人なら誰はすぐに分かる。
……後ろの楽士はともかく。
髪型がいつもと全く違うし、写真にも小さく写っているのでまず彼とは分からない。
記事も打ち上げから一日過ぎた後にも関わらず、カーラとその歌声に関してしか詳しく書かれていなかった。
「後ろの楽士さんの事も知ってますかぁ?」
「え? 楽士ですか?」
「そうです! あの超イケメン楽士! 誰か知ってます~?」
「いや、僕はちょっと分からないです」
「ウソ! 絶対知ってますよね?」
「本当に知らないんです、僕行ってないですし」
「正直に答えてください! 記事を知ってるなら知ってますよね? あの楽士の人!」
「店長の記事だから知ってるけど、楽士さんの事までは知りませんよ」
「本当の事を教えてください! アタシとあの楽士さんは運命で繋がってるんです!」
「え?」
突然出てきた運命という単語に何のことを言ってるのか分からなくなる。
会話が通じてないというより、何か噛み合っていない。
「運命だって思ったから今日ずっと探してたんです! 噴水に座ってたらあなたが通りかかったんです!」
「確かに僕はそこを通りましたけど、ここからはかなり遠いですよ?」
「追いかけていったら楽士様に会えるって思ったのに!」
なんで?
「そしたら市場から出てきちゃうし! 楽士様はどこにいるんですか?」
「分からないですよ、店長も知ってるかどうか……」
「じゃあ店長さんはどこなの? 今日お店やってないから会えないし! どこにいるの?」
「分かりませんよ、僕はただの従業員ですから」
ギリッと、腕を掴む手に強い力が入る。
こんな細い腕のどこにこんな力が……
「そろそろ教えてくださいよ~、楽士様がどこにいるか知ってますよね?」
「本当に知りませんよ……僕はあの場にいなかったんだから、僕も新聞以上の事は知らないんです」
「アタシ運命の人の為に公務員だったんですね、私か弱いから冒険者にもなれなくって! みんな酷いんですよォ?」
「え、え?」
本格的に何を言っているのか分からない……彼女から離れた方が良い。
体を捻って腕から離れようとしたら、もう片方の手で荷物を持つ手を掴まれた。
───────
「あの、信じられないかも知れませんが……本当に凄く強くて。腕をもかなり痛かったんですけど、手を思い切り握られて……」
メル様の手には痛々しい赤い痣がありました。
ずっと隠していたのか今まで見えませんでした。
私は調理場から洗浄された布を湿らせ、小さめのボウルに氷を入れて店内に戻りました。
「冷やすものしかございませんが、気休めになれば」
メル様に持ってきた物をお渡しします。
「ありがとうございます……」
メル様は氷に布を巻き、赤い部分にあてます。
「冷たいけど、暖かいです」
メル様は少し落ち着かれたようで、話の続けます。
───────
手を掴まれてから、おかしな事が起きた。
「楽士様もアタシに会えば分かると思うんです、運命だって。だから教えてくださいよ~」
耳にはこう聞こえる。
それなのに、全然違う言葉として頭に入ってくる。
"ほんっと使えないわねこのクソガキ! アタシはイケメンにモテるためにここにいんのよ! アンタも悪くないけど、あの楽士が良いのよ! 隠してないでさっさと出しなさいよ!"
「……え?」
自分に起きた事が分からず混乱してると、彼女が更に言葉を重ねる。
「本当に知りませんか? 公務員じゃないんですよアタシ、運命の為に店長さんでも良いんです~」
"これ以上隠すんなら本気で締めるよ! 公務員クビにされたせいでもう名前だけ分かっても住所調べらんないし、ほんっと腹立つ!! あの濃い顔したオッサンでも良いから出せ! 早く言えよ!"
「は……」
「お願いしますぅ~」
"これ以上黙ってんなら市場に隠した爆弾に火を付けるから!!"
「は!?」
「"ちょ、ちょっと何よ"」
音と頭の中が一致する。意味が何となく分かった。
「ねぇ、爆弾ってどこにあるの!?」
「えっ」
彼女が手を離した。さっきまで頭の中に入ってきてた言葉が消える。
「ねぇ、どこにあるの!?」
「ちょ、ちょっと意味がわからないこと言わないでよ!」
彼女は少し後退した後、走りながらメルクリオを突き飛ばして去っていった。
───────
「すぐに近くにいた騎士団の人に声を掛けて相談したんですけど、相手にされなくて……」
「探して頂けなかったんですね」
「僕の頭に聞こえてるだけで、証拠は何もないんですよね」
「確かにそうですが……」
メル様の理解によるものでしょう。
その声は私もビャンコ様と聞いているので、間違いないと思います。
「それで……折り入ってキーノスさんに相談があるんです」
「爆弾を探すんですね」
「はい! それから隠しちゃうんです!」
「……それだけ良いんですか?」
「僕、良いアイデアあるんです! 良かったら協力してくれませんか?」
新聞にも年の終わりに関する記事が並び、一年の話題をまとめたものになっています。
今年の後半はラナディムッカの話題で賑わいを見せましたが、前半はユメノ様のニュースが多かったと記憶しております。
そのはずなのですが、グリフォン脱走の件や王太子殿下の活躍で発展した辺境の都市の話などはありますが……不自然なほどユメノ様の事が書かれてません。
何かの思惑があるように感じてしまいます。
更に記事を読み進めていたら、恐ろしい記事が目に入りました。
『リストランテ・ロッソに現れたディーボ、麗しの楽士と共にアリアを熱唱』
……私の写真が掲載されています。
いつの間に撮られたのでしょうか……
この日は髪型を変えていたので、すぐに記事の楽士がモウカハナのバリスタだと気づく方はいないでしょう。
また、ミケーノ様の計らいにより打ち上げに参加した私を誰か知っているのは、同じテーブルにいた皆様とジャン様のみです。
ですがこれは失態です、しばらくは大人しく過ごした方が良さそうですね。
───────
空は雪模様、夜空から静かに舞い落ちる雪が穏やかな年の終わりを告げています。
今年最後のバー「モウカハナ」の開店です。
今日は店の入口前の邪気祓いの結界を少し厚く掛けておきます。
一応の警戒と、ご来店くださるお客様への祝福を込めています。
通年通りなら、来客は新年が開けて少ししてから増えます。
しばらくは調理場に籠り、年明けに振る舞うオセチの準備を進めましょう。
一通りの下拵えが済み、ダテマキを焼こうとしていた時。
来客を告げるベルが鳴りました、想定より早いご来店にお出迎えの用意が少し遅れます。
手を洗い、急ぎ店内に入ります。
そこに居たのは、深呼吸をしているメル様です。
「いらっしゃいませ、メル様。お好きなカウンターの席へどうぞ」
「こんばんは……キーノスさん」
すぐに暖かいタオルと水を用意します。
メル様はカウンターの端に席に腰掛け、タオルと水を受け取ります。
先程から気にはなっていましたが、顔色がとても悪いように見えます。
「ご注文は何になさいますか?」
「グラスホッパーを下さい」
「かしこまりました」
注文を受け、シェイカーとリキュールを用意します。
「差し出がましい質問ですが、もしかしてユメノ様と遭遇なさいましたか?」
「……はい。キーノスさんなら気付きますよね」
「酷い顔色をなさってます、カクテルも良いですが……」
私はカウンターの下の引き出しから、普段タバコの香り付けに使用している乾燥ハーブと香炉を取り出します。
香炉にハーブを加えたあと、左手の指を鳴らします。
ーーパチンッ
ハーブの温度を上げ、メル様の席の前へ起きます。
「術の打ち消しや気持ちを落ち着かせる効果がハーブです」
「ありがとうございます、いい香りです」
この後すぐにお出ししたカクテルを半分ほど飲んだところで、メル様の顔色が少し回復したように見えました。
「本当にありがとうございます、やっと鼻から抜けてきました……」
「それは何よりです」
「久しぶりに遭遇して……前より話の通じなさとニオイの度合い上がってて」
「本日もお店は営業なさってたのですか?」
「いえ、ミケーノさんのお店の打ち上げが今年最後の営業日でした」
「そうでしたか、では街中でお会いしたのですか?」
「……はい。ニオイがいつもより強くて、市場のどこにいたかまでは分からなかったんです」
───────
夜、メルクリオは年越しを部屋に篭って過ごす為、作り置きの料理や簡単に食べられる物を多めに買うため市場に来ていた。
同じ考えの人は多く、いつもより少しだけ混雑していた。
王都中でしている例の悪臭がいつもより強く、かなり近い位置に彼女がいるのは分かっている。
最近は少しずつニオイが強くなっている気がする。
近くにいる事が多いというより、力が強くなっている印象だ。
しばらく市場を周り、欲しいものを手に入れることが出来たので帰路に着く。
強いニオイに麻痺してたせいで警戒が薄くなっていたのは事実だが、市場を抜けた瞬間背後から腕を掴まれるとは思わなかった。
「あなた、あの店の店員さんですよね?」
この声、間違いない!
「ねぇ、新聞に乗ってたディーボってあなたの店の店長さんでしょ? あなたもその場にいたんじゃないですか?」
恐る恐る振り返ると、やはり彼女だ。
掴んだ腕を離す気配もなく、メルクリオも仕方なく市場の人混みの中で立ち尽くす。
「すみません、とりあえずあっちへ……周りの人の邪魔になります」
市場前の広い場所、人が少ない辺りを指さして移動を促した。
「そんな事より、あの新聞の話などが大事だと思うんですよぉ~」
そんな事よりって。
掴んだ腕を離さなそうなので、彼女を引きずるように人の少ない場所へ移動する。
「教えてくださいよ~、ディーボって店長さんですよね?」
「今朝の新聞ですよね? それなら確かにそうです」
写真が載っているし、知ってる人なら誰はすぐに分かる。
……後ろの楽士はともかく。
髪型がいつもと全く違うし、写真にも小さく写っているのでまず彼とは分からない。
記事も打ち上げから一日過ぎた後にも関わらず、カーラとその歌声に関してしか詳しく書かれていなかった。
「後ろの楽士さんの事も知ってますかぁ?」
「え? 楽士ですか?」
「そうです! あの超イケメン楽士! 誰か知ってます~?」
「いや、僕はちょっと分からないです」
「ウソ! 絶対知ってますよね?」
「本当に知らないんです、僕行ってないですし」
「正直に答えてください! 記事を知ってるなら知ってますよね? あの楽士の人!」
「店長の記事だから知ってるけど、楽士さんの事までは知りませんよ」
「本当の事を教えてください! アタシとあの楽士さんは運命で繋がってるんです!」
「え?」
突然出てきた運命という単語に何のことを言ってるのか分からなくなる。
会話が通じてないというより、何か噛み合っていない。
「運命だって思ったから今日ずっと探してたんです! 噴水に座ってたらあなたが通りかかったんです!」
「確かに僕はそこを通りましたけど、ここからはかなり遠いですよ?」
「追いかけていったら楽士様に会えるって思ったのに!」
なんで?
「そしたら市場から出てきちゃうし! 楽士様はどこにいるんですか?」
「分からないですよ、店長も知ってるかどうか……」
「じゃあ店長さんはどこなの? 今日お店やってないから会えないし! どこにいるの?」
「分かりませんよ、僕はただの従業員ですから」
ギリッと、腕を掴む手に強い力が入る。
こんな細い腕のどこにこんな力が……
「そろそろ教えてくださいよ~、楽士様がどこにいるか知ってますよね?」
「本当に知りませんよ……僕はあの場にいなかったんだから、僕も新聞以上の事は知らないんです」
「アタシ運命の人の為に公務員だったんですね、私か弱いから冒険者にもなれなくって! みんな酷いんですよォ?」
「え、え?」
本格的に何を言っているのか分からない……彼女から離れた方が良い。
体を捻って腕から離れようとしたら、もう片方の手で荷物を持つ手を掴まれた。
───────
「あの、信じられないかも知れませんが……本当に凄く強くて。腕をもかなり痛かったんですけど、手を思い切り握られて……」
メル様の手には痛々しい赤い痣がありました。
ずっと隠していたのか今まで見えませんでした。
私は調理場から洗浄された布を湿らせ、小さめのボウルに氷を入れて店内に戻りました。
「冷やすものしかございませんが、気休めになれば」
メル様に持ってきた物をお渡しします。
「ありがとうございます……」
メル様は氷に布を巻き、赤い部分にあてます。
「冷たいけど、暖かいです」
メル様は少し落ち着かれたようで、話の続けます。
───────
手を掴まれてから、おかしな事が起きた。
「楽士様もアタシに会えば分かると思うんです、運命だって。だから教えてくださいよ~」
耳にはこう聞こえる。
それなのに、全然違う言葉として頭に入ってくる。
"ほんっと使えないわねこのクソガキ! アタシはイケメンにモテるためにここにいんのよ! アンタも悪くないけど、あの楽士が良いのよ! 隠してないでさっさと出しなさいよ!"
「……え?」
自分に起きた事が分からず混乱してると、彼女が更に言葉を重ねる。
「本当に知りませんか? 公務員じゃないんですよアタシ、運命の為に店長さんでも良いんです~」
"これ以上隠すんなら本気で締めるよ! 公務員クビにされたせいでもう名前だけ分かっても住所調べらんないし、ほんっと腹立つ!! あの濃い顔したオッサンでも良いから出せ! 早く言えよ!"
「は……」
「お願いしますぅ~」
"これ以上黙ってんなら市場に隠した爆弾に火を付けるから!!"
「は!?」
「"ちょ、ちょっと何よ"」
音と頭の中が一致する。意味が何となく分かった。
「ねぇ、爆弾ってどこにあるの!?」
「えっ」
彼女が手を離した。さっきまで頭の中に入ってきてた言葉が消える。
「ねぇ、どこにあるの!?」
「ちょ、ちょっと意味がわからないこと言わないでよ!」
彼女は少し後退した後、走りながらメルクリオを突き飛ばして去っていった。
───────
「すぐに近くにいた騎士団の人に声を掛けて相談したんですけど、相手にされなくて……」
「探して頂けなかったんですね」
「僕の頭に聞こえてるだけで、証拠は何もないんですよね」
「確かにそうですが……」
メル様の理解によるものでしょう。
その声は私もビャンコ様と聞いているので、間違いないと思います。
「それで……折り入ってキーノスさんに相談があるんです」
「爆弾を探すんですね」
「はい! それから隠しちゃうんです!」
「……それだけ良いんですか?」
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