125 / 144
4章 マリーゴールドガーデンでいつまでも
26.陰で一人駒をすすめ
しおりを挟む
やっと出た外の風は、一度も嗅いだことのない花の匂いと魔力が薄い湿気まじりの風だった。
エドワールさんは遠くを見ながら優しく微笑む。
「本来、ベルディグリのどこか、本当部屋の外に出るだけの機能があればよかったんだけど、なんでかこう…力が強すぎてね」
気付いたらこの世界のどこかもわからない花畑だったんだよ……」
眩い黄金を思わせる花々の中心で、何もできないまま佇んで、
「どこに行こうにもアテがないし、魔力切れで動けなくなっちゃってぼんやりしてたらね……」
閉じ込められて死ぬよりマシだけど、呆気ない幕切れかなぁと思っていた。
そこへ若い頃のおばあちゃんが慌ててやってきて、エドワールさんを慌てて助けようとしてくれたと、
「何者かも知れない僕を必死で助けて看病してくれて……天使かと思った。
まぁ……それで色々、色々あったのさ。
話すと長いからここはいずれね」
気になることはいくつもある。
時と場合さえ違えばわくわくするような話だろうけど、今は何故何もしてやれなかったかを重点においてを伝えたいからと、エドワールさんは首を振った。
「この力でここに来た時点で、違う世界に渡る術ができてしまったから……
僕とヘクターはこの扉の存在を隠すことと、先代王をどうにかしようと動くことにした。
なるべく穏便に、時間をかけてね」
身内での骨肉の争い、城の派閥間での争いを避け、他国とも戦争を起こさず、新しい悲劇を起こさないため。
と、一つ一つ口にしていって、
「……というのはまぁ大きな建前で、コトネがいる世界との繋がりを残しながら、なんとか問題を解決したかった」
結局、僕の自己満足でしかないと、エドワールさんは笑った。
無数の可能性がある中で、どこかに一つでも火種あれば、紆余曲折を経てまたこの世界へ目が行きかねない。
その中でも、今良い形に変化していく差別の解消などはそのまま進めていきたい。
欲と、八方美人とも言える大きな建前を叶えるために、遠大な計画をヘクターさんと一緒に考えた。
「まず、僕はもう数個ドアを作って、魔力を空にした状態でこの世界へ本格的に亡命した。
そうすれば魔力を辿って僕を探すとかもできない。
コトネにもちゃんとその辺り説明をして、こちらで慎ましい生活を一緒に過ごしてもらった。
その後ヘクターがドアを管理して、先代王が死ぬまで待ちながら、ヘクターが次の王様になれるようちょくちょく運を仕向けた」
魔力は回復し切らないけれども、世界と世界の間……曖昧な空間に隠れて、ベルディグリの王城に勤める人々の気運を少しずつ変えて、運命をねじ曲げて、
「で、先代王が安らかに亡くなられた後、本格的に向こうに戻って仕事をしなければならなくなったのさ。
こっちの世界で加賀美蓮介は死んだことにして」
嫌々王座を継いだヘクターさんの治世が安定するまで、陰から障害をずっと片付け続けてきた。
時に暗殺や地方貴族の反乱を抑え込み、王やその一族を守るための騎士たちを育て上げ、組織して、ずっと……
「……ともかく、先代王の思想を静かに根絶やしにした。
怖いし、恐ろしいし、ともかく一生懸命働いて、そんなことしてたらもう、何十年か経ってた」
侵略の可能性の他に、この世界で出来たエドワールさんの家族が、下賜や政略結婚などの駒としてに危害が及ぶ可能性もある。
ふと脳裏にはシェラーナ様の顔が浮かんだし、お母さんや、その兄弟、その息子、娘……
(わ、私も……?)
また頭がくらっとしてきた。
エドワールさんは遠くを見ながら優しく微笑む。
「本来、ベルディグリのどこか、本当部屋の外に出るだけの機能があればよかったんだけど、なんでかこう…力が強すぎてね」
気付いたらこの世界のどこかもわからない花畑だったんだよ……」
眩い黄金を思わせる花々の中心で、何もできないまま佇んで、
「どこに行こうにもアテがないし、魔力切れで動けなくなっちゃってぼんやりしてたらね……」
閉じ込められて死ぬよりマシだけど、呆気ない幕切れかなぁと思っていた。
そこへ若い頃のおばあちゃんが慌ててやってきて、エドワールさんを慌てて助けようとしてくれたと、
「何者かも知れない僕を必死で助けて看病してくれて……天使かと思った。
まぁ……それで色々、色々あったのさ。
話すと長いからここはいずれね」
気になることはいくつもある。
時と場合さえ違えばわくわくするような話だろうけど、今は何故何もしてやれなかったかを重点においてを伝えたいからと、エドワールさんは首を振った。
「この力でここに来た時点で、違う世界に渡る術ができてしまったから……
僕とヘクターはこの扉の存在を隠すことと、先代王をどうにかしようと動くことにした。
なるべく穏便に、時間をかけてね」
身内での骨肉の争い、城の派閥間での争いを避け、他国とも戦争を起こさず、新しい悲劇を起こさないため。
と、一つ一つ口にしていって、
「……というのはまぁ大きな建前で、コトネがいる世界との繋がりを残しながら、なんとか問題を解決したかった」
結局、僕の自己満足でしかないと、エドワールさんは笑った。
無数の可能性がある中で、どこかに一つでも火種あれば、紆余曲折を経てまたこの世界へ目が行きかねない。
その中でも、今良い形に変化していく差別の解消などはそのまま進めていきたい。
欲と、八方美人とも言える大きな建前を叶えるために、遠大な計画をヘクターさんと一緒に考えた。
「まず、僕はもう数個ドアを作って、魔力を空にした状態でこの世界へ本格的に亡命した。
そうすれば魔力を辿って僕を探すとかもできない。
コトネにもちゃんとその辺り説明をして、こちらで慎ましい生活を一緒に過ごしてもらった。
その後ヘクターがドアを管理して、先代王が死ぬまで待ちながら、ヘクターが次の王様になれるようちょくちょく運を仕向けた」
魔力は回復し切らないけれども、世界と世界の間……曖昧な空間に隠れて、ベルディグリの王城に勤める人々の気運を少しずつ変えて、運命をねじ曲げて、
「で、先代王が安らかに亡くなられた後、本格的に向こうに戻って仕事をしなければならなくなったのさ。
こっちの世界で加賀美蓮介は死んだことにして」
嫌々王座を継いだヘクターさんの治世が安定するまで、陰から障害をずっと片付け続けてきた。
時に暗殺や地方貴族の反乱を抑え込み、王やその一族を守るための騎士たちを育て上げ、組織して、ずっと……
「……ともかく、先代王の思想を静かに根絶やしにした。
怖いし、恐ろしいし、ともかく一生懸命働いて、そんなことしてたらもう、何十年か経ってた」
侵略の可能性の他に、この世界で出来たエドワールさんの家族が、下賜や政略結婚などの駒としてに危害が及ぶ可能性もある。
ふと脳裏にはシェラーナ様の顔が浮かんだし、お母さんや、その兄弟、その息子、娘……
(わ、私も……?)
また頭がくらっとしてきた。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる