マリーゴールドガーデンで待ち合わせ 〜穏やか少女と黒騎士の不思議なお茶会

4章 マリーゴールドガーデンでいつまでも

14.会のその前のこと

　誕生日会の前日、お世話になっているスーパーで、ナッツとドライフルーツをカゴに入れる。
　途中から来るかもしれないエドワール様を入れて全部で5人分。どれだけ必要になるかわからないけど、多めに買っておくのに越したことはない。
　余ったらゼリーやケーキにもできるからと、更に追加した。

　そうして他の常備菜を買っていくうちに、あるコーナーへたどり着き、置いてある瓶を見てちょっぴり唸ってしまった。

　明日、必要なものなんだけど……

（……念のため、明日までは買わないでおこうかな）

　買ったことはあるけれども用途もサイズも違うし、一応、初めての事にあたるから緊張する。
　きっと顔馴染みのレジの人はお目溢ししてくれて、何だったらお祝いの言葉もくれそうだけども、言葉をもらうなら明日でもいいし、不安もない。

（明日買おう……あと、つけあわせも考えておこう……）

　野菜や果物と一緒に、勢いで買うということで、この場は落ち着いた。

　……そして、次の日。誕生日であり、会の当日の朝。
　約束はお昼過ぎからなので、まだ時間がある。準備のために予定通りに起きて、予定通り買い物に繰り出したわけだけど……
　また昨日唸ったコーナーの前で、唸ってしまった。

（いざ買うってなるとやっぱり緊張するなぁ）

　唸りながらも恐る恐る瓶を手に取ると、見かけ以上にずっしりと重い気がした。
　背高な瓶に透き通った液体がたぷんと揺れる。

（はじめてのお酒……）

　用意しようとしているもののレシピを改めて調べてみたところ、結構度数の高いお酒を使用する事がわかって、内心どうなるかわからなくて自信がない。
　でも、レシピ通り再現して味を確かめてみたいという好奇心もある。

（……念のため、度数が低くなるレシピ用のものも買っておこうかな）

　いざアルコールがキツそうだとわかったら、度数が低い方のレシピに切り替えればいいし……
　ヘクターさんはお酒好きそうだったし、多分大丈夫……
　結局ビクビクとソワソワを折衷して、手に持った瓶と冷えた缶のお酒コーナーで、3本ほどカゴに入れた。

（あとは……野菜コーナーと果物コーナーと……スパイスかな？）

　メインの材料と、付け合わせの材料のめもを見ながら、どんどんとカゴに入れていった。
　レジでちょっとしたお祝いの言葉を受けて、ささっと帰って、すぐに準備に取り掛からなければ！

　小走りで家まで戻り、キッチンに買ってきたものを並べ、手際よく調理を開始する。
　
　約束の時間まで後一時間ほど。
　グラス5つ分にカットした材料を入れていき、そのうち一つを味見用として一回ちゃんと作ってみる。

　グラスの底には、カットしてちょっと潰したライムとミントとお砂糖。
　そこへ……

（うー……ドキドキする）

　ラム酒をレシピ通り量り入れて、更に上から炭酸水とトニックウォーターを半々で注ぎ込む。
　最後にマドラーで混ぜて、完成！


「本物の、モヒート……」


　今日ヘクターさんが来るのなら折角だし約束をと……そして、夏の終わりかけにも合って、みんなの口に合いそうな爽やかなドリンクとして、いつもとちょっと違った飲み物を出したかった。

（さて、味見を……）

　味は想定通りだと思う。問題はアルコール。
　おばあちゃんはお酒に強かったと思うから大丈夫だとは思う。
　……多分。

　緊張しながら一口含めば、爽やかな口当たりで美味しさにかまけているうちに、するすると喉を通り抜けて行き……

　胃のあたりが、カッと熱を持った。