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2章 桜色の春と菫色の空
16.ベルディグリ語とセナ文字
しおりを挟むヒースクリフさんが勉強道具を並べている間に、いつもの紅茶のおかわりと、ヒースクリフさんが持ってきてくれたマカロンのようなお菓子を並べる。
その後にノートと筆記用具を出して席に戻ると、丁度ヒースクリフさんも準備が整い終わった。
「では、会話はできる状態にするが、文字の通訳は停止させよう」
ヒースクリフさんが指をパチンと鳴らすと、暖かい空気が庭を覆っていくような感覚がした。
絵本を見やれば、表題の【星を食む】と書かれた日本語が、どろりと解ける。
一度インクの水溜りのようになった後、じわじわと、タペストリーに織られる模様のような、美しい文字に作り替えられていった。
「綺麗な文字ですね!」
「ベルディグリ語で使うセナ文字というものだ。
全部で28文字。
大文字と小文字の概念がある」
「例えばなんですけど……
大文字は文章の一番初めの文字や、人名とかの一番最初の文字に使われたりしますか?」
「その通りだ。
もしかして日本語の文字も似たようなルールなのか?」
「いえ、日本語じゃなくて、外国の文字のがそんな感じで」
中高で勉強しただけの知識だけど、まだ基本は忘れてなかった。よかった……
文字数も、アルファベットよりもちょっと増えているだけ。
まだ何とか覚えられそう。
「そうか、大きなコミュニティごとに言語が違うのか。
こちらの言語は、大陸中ほぼ統一されていてな。
大体基本さえ覚えてしまえばどこでも通じる」
ヒースクリフさんの国は、大陸全てを支配する大国家。
ベルディグリ語は、その第一言語という扱いらしい。
元々利用されていた言語については、現地のコミュニティごとに保存され、その中でちゃんと継承されていっているという。
だから独自の発展を遂げた亜人や、地方出身者で、とくに若者はバイリンガルやトリリンガルが多いらしい。
「ヒースクリフさんもベルディグリ語以外お話しできたりするんですか?」
「実はもう忘れてしまって久しいが……
日本語をマスターすれば再びバイリンガルだ」
心意気が強い……とっても生き生きとした顔でいらっしゃる。
前々から思っていたけれども、ヒースクリフさんは新しい知識を取り入れたりとか、仕組みを理解するのが好きなんだと思う。
(しっかりと楽しめるようにお教えできたらいいな……)
自分が教える番になったら、今日は基本のひらがなと音だけ教えて終わりそうだけど、そこでちょっと様子をみて考えてみよう。
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