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2章 桜色の春と菫色の空

4.君は大事な

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「えっ日本語をですか?」

「そう、日本語とやらだ。
 後見人がいなくても、俺が、その……」


 今回は覚えていた魔法で何とかなったから良かったが、今後それでは済まない場合があるかもしれない。


「キッチンや、イオリの家の外に出ることがあっても、俺がいる限りは助けられるように……
 最低限の言語と、ゆくゆくは文明の利器の使い方を学びたい」


 血をだらだらと流しながらたんこぶ作って気絶してしまった件は、ヒースクリフさんも相当肝が冷えたらしい。
 本当に申し訳ない……

 ちらりと話題に上がった後見人、葵太さんが家に来るのは、確かに稀だ。多くても二週間に一回くらいだと思う。
 呼べばきっと時間を作って来てくれるが、彼にも仕事がある。
 今だとヒースクリフさんの方と会う回数の方が多いくらいだ。

 確かに、今回のような事は早々起きないとは言え、いつ何が起きるかはわからない。
 ヒースクリフさんが助けてくれるのなら、とても心強い。


「心配なのもあるが……ゆ、友人の世界を知りたいというのも、あってだな」


 少し口ごもりながらも、ヒースクリフさんは真摯に意志を伝えてくれて、思わず頬が緩んでしまう。
 友人だとしっかり伝えてくるのがこんなに嬉しいなんて。

 だけど、残念ながら私は学力には自信がない。ちゃんと教えられるかどうか不安もある。
 それでも、ヒースクリフさんの気持ちに応えたい。


「……教えるの下手かもしれないんですけど、がんばりますね」

「……! ありがとう!」

「それでなんですけど……私も同じように友人の事は守りたいし、知りたいです。
 だから、私にもヒースクリフさんの世界の言葉を教えてもらっていいですか?」


 今度は、ヒースクリフさんの顔が嬉しさと驚きで緩んだ。


「ここや自室で怪我する機会はほとんどないと思うが……」

「万が一風邪を引いた時とか、忙しくてご飯が間に合わない時とかお手伝いできそうかなって」


 ヒースクリフさんは頭がいいし機転も利くけれども、自分の事になると、とても疎い。
 そうか、というような顔でこちらを見つめてくる。


「それは、うれしい……」


 迷惑をかけるが、と言いかけたのを、お互い様ですと返す。

 あとはついでにと、もう一つの提案をしてみる事にした。


「これは、ちょっとした夢なんですが……
 少し言葉がわかるようになったら、ヒースクリフさんの世界に、訪れてみたくて……」

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