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4章:ブルーフラワーズ

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「……今理さん、一旦落ち着きましょう。
 ほら、あっちの日陰にベンチがあるのでそこへ」

「……はい」


 幸人に手を引かれ、今理はベンチへ座った。
 とても悔しいし、自分が情けない。どんな言葉が返って来るか怖いが、幸人に追加されたルールを伝えなければいけない。
 項垂れていると、幸人はさっと自販機のジュースを買ってきて渡してくれた。
 缶を開け、瑞々しい葡萄味を飲み込んで少し気分を落ち着け、覚悟を決める。


「……青いバラは、染めたもの、ダメだそうです」

「そう、ですか……」


 まずは、難易度が跳ね上がってしまった事。
 具体的に言わずとも、幸人はしっかりと意図を把握している。


「それと、その……本当にごめんなさい。
 失敗したら幸人さんにも不幸が降りかかると、あの」

「そのあたりは大丈夫ですよ。
 想定内です」

「えっ」


 最悪罵られるかもしれないと思っていただけに、今理は拍子抜けしてしまった。
 どんな不幸が降りかかるかもわからないが、悪い事には違いないのに。


「手伝うと決めたのは俺ですし、今理さんが気に病む事じゃないです」

「で、でも……」

「大丈夫。なんといいますか……
 プレッシャーをかけるわけではないのですが、今理さんとならクリアできる気がするんです」


 全く具体的に言えなくて申し訳ありません。直感です。そう付け加えて、幸人は笑った。
 その言葉に理屈はない。だが、嘘でもない。

 拍子抜けから一転して嬉しい感情が沸き上がって止まらない。今理は悔し涙とはまた別の涙が零れそうになったが、

(あ……そういう?)

 同時にふと、大魔女の言っていた言葉が急に腑に落ちてしまい、代わりに長いため息が出た。


「……いや、はぁ、なるほど。あぁーそういうこと。はぁ……」

「ど、どうしました?」

「急にすみません……私は全然成長しないなぁと、自分自身に呆れてしまって……」


 幸人からの信頼は嬉しいが、今の自分には応えられない。能力が制限されている。
 無意識の内に能力だけでクリアしようとしていた。


「全部を能力でわかっちゃ世話ない。限度を考えろ……とも、忠告されたんです。
 その通りだなぁって」


 身体も頭も働かせているが、それはすべて能力で知った結果を元にしている。


「……そういう事の繰り返しで痛い目あってきたっていうのに」

「差し支えなければ、例えば?」

「かいつまんで話しますね」


 色々ありますが、大きな出来事だけ。
 今理は自嘲気味な笑顔を浮かべながら、記憶をさかのぼっていく。
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