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2章:ズーズー・ア・ゴーゴー

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「ま、待て、待ちな!
 暇つぶしもそうなんだが、があるんだよ!」


 命乞いのような勢いで猿投山は叫ぶと、
  

「幸人さん、ストップ」

「えっ」


 今理が手のひらを返し、幸人を止めた。
 問答無用で猿投山を俵担ぎして撤収しようとしてた幸人だったが、一旦止めざるを得なかった。


「……仕方ない」

「そうこなくっちゃ」

「た、だ、し! 暇つぶしはナシ!
 保管依頼終わらせたら、家で! 原稿やってください。
 さっさと終わらせますよ!」

「ちぇっ」


 真面目ちゃんなんだからと猿投山はぶーたれたが、今理に睨みつけられてそれ以上は口をつぐんだ。
 
 幸人が運んでいた鞄を開け取り出されたのは、作業道具だけではなく、【預けたい物】も入っていた。
 風呂敷に包まれた大きな画集程の本を取り出し、カウンターテーブルにぽすんと置いた。


「……一応、幸人さん向けに説明しますと、ウチは魔道具の貸倉庫的もやってるんですよ」

「魔道具の、貸倉庫……?」

「魔道具って一般に流通しているわけではないんですけど、もしも手に入れてしまった場合、そのまま放置していると結構危ないんです」

 本来、魔道具は魔女と魔法使いの間でしか取り扱われないが、稀に一般人の手に渡ることもある。
 知り合いに魔女がいるだとか、偶然だとか、様々な理由があるが、大体の物は不可思議な現象を勝手に引き起こし、ちょっとした事故が起こすのだ。

 時にそれは、オカルト雑誌で幽霊や宇宙人の仕業だと取り上げられたり、運がなければ大恥かいたり、怪我をしたり、酷い目にあう事もある。


「だから、安全のために無効化の魔法を施した倉庫で保管するのが通例でして。
 魔道具一個預かるごとに利用料を頂いている感じです」

「ほう、封印的な……」

「そうです!
 まぁ、直接危害を加える兵器や呪物にあたるものや、災害を引き起こすような強力な物って、作る事自体そもそも禁止されてますし……
 今流通してるような魔道具は、滅多な使い方をしない限りお遊び程度な物ばっかりですけどね」

「なるほど」

「あとは、魔女と魔法使いたちの共通認識として、信用できる人にしか自分たちや魔法の存在を明かしたくないんですよ。
 その一環でもあります」


 ごく一部の一般人だけが、魔女魔法使いたちの信用を勝ち得ることで、個人の思い出や蒐集目的のために魔道具を持てる。
 魔法や魔道具の濫用を避けたい。不躾な干渉を受けないようにしたい。
 そういった願いの上で、開示する人物を見極めてきた。

 猿投山からつながった縁だが、今理が信用に足ると思ってくれたから、

(ありがたい事だ……)

 今、元気を取り戻せた自分がいる。担当の仕事の延長とはいえ、好きだと思える場所に来れる。
 非常に運がよかったのだと、幸人は幸福を嚙み締めた。
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