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<大正:氷の迷宮事件>
デパート二階 【調達】
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サク、サク、サク。
雪を踏みしめる様な……足音かしら?
何かが近付いて来る!
咄嗟に、陳列棚の後ろに身を潜め、様子を伺う。
雪だるまだわ。
どうやら、私に気付いているふうでは無さそう。
サク、サク、サク。
マネキン達の残骸の上を、意に介する事無く飛び跳ねる様に越えていく。
雪だるまには知性や感情までは無い様。
まあ、当然ね。
体当たり攻撃で、侵入者を氷漬けにするのが彼らの役目。
感情や知性とかは、自爆攻撃には無用ですもの。
サク、サク、サク……。
「ふぅ~、どうやら、行ったみたいですわね」
そう言えば先ほどの闘い、妙だったわ……あのマネキン達が、では無く私の方が、よ。
氷の礫を放った積りが、氷柱に……。
確か、一階の方でも雪だるまを飛び越える時に使った突風も、いつもより強かった。
危うく、頭を天井にぶつける所でしたもの。
まるで、セクメトの慧眼をハメている時の様……と迄は行かないけれど、私の魔力が上がっている。
何故かしら?
数日に渡りセクメトの慧眼を使ったから。
それとも、ティル・ナ・ノーグのリンゴを戴いたからかしら。
若しくは、その相乗効果と言うことも……。
まあ、良いわ。
制御できない程の力と言う分けでも無いし、寧ろ今は好都合ですもの。
でも、それを踏まえたとしても、戦力不足は否め無い。
ともかく、今の内に何か戦力の増強を考えましょ。
一番手っ取り早いのは、ノワールとブランの召喚だけれど。
今は未だ、単独で行動した方が雪だるま達に見つかり難そうだわ。
お札を何枚か描こうかしら。
そうね、そう言う事なら、この間の猫手の御札が良いかも♪
持ってきた巾着袋を開けて、白紙の御札と羽ペン、インクを取り出す。
最近は、念の為持ち歩く様にしていますの。
「あら?このインク……凍り付いていますわ……」
諏訪さんはマイナス四十度と仰っていたわ。
私自身はマナちゃんのお陰で寒くは無いのだけれど……困ったわ。
「何か使えそうな物は無いかしら」
巾着袋の中を漁ると……猫手の御札が二枚。
そう言えばこの前、ウェンディゴと戦う前に猫手の御札を十枚用意して、使ったのは八枚。
これは、その余りの御札ね。
でも、二枚では心もとない。
どうも、このデパートに巣食う何者かは、数で押してくるタイプみたいだもの。
手数が欲しいわ……。
ん?
「そう言えば此処、文房具売り場の様ですわね」
もしかすると、何か使えそうな物は無いかしら?
でも、この売り場の棚……ただ霜が降りてるだけでは無い。
「凍り付いてる」
雪だるま達に氷漬けにされたのだわ。
でも、何で?
「あら?これは、拳銃……」
売り場の床に氷漬けに成って、床に張り付いている。
勿論、取れそうに無いし、勿論、取れたとして、撃つ気はさらさら有りませんわ。
でも……ここに銃が有ると云う事は、此処で戦闘に成ったのだわ。
そして、雪だるまに氷漬けに……だとすれば、持ち主の方は?
辺りを見回しても、誰も居ない。
お逃げに成られたのかしら。
「ともかく、御無事で有って欲しいですわ」
残念ながら、その戦闘で棚の文房具も氷漬けに成ってしまったのね。
取り出せそうなものは殆ど……あら?
恐らくその戦闘の余波かしら。
棚の商品が、幾つか床に散らばっている。
消しゴム、定規、ハサミ。
「ハサミ、これは使えそうですわ♪」
少し、床に張り付いていたけれど、どうにか剥がす事が出来た。
「他に、何か無いかしら……ん?これは……クレヨン、しかも白ですわ……」
ですけれど、このクレヨンで、御札を描けないかしら?
「今の状況ですもの、試してみて損は無いわ。やってみましょ」
白紙の御札に、クレヨンで魔法陣をカキカキ……あら、上手く描けませんわね。
クレヨンも、凍り付いてるのかしら、紙の上を滑って上手く描け無い。
ハァー、ハァー。
クレヨンを両手で包む様にして息を吹きかけ、温める。
「もう一度よ」
再び白紙の御札に魔法陣をカキカキ。
今度は、何とか描けてる様だけれど、白紙に白のクレヨンだと、上手く描けているか良く判りませんわ……。
それでも、どうにか御札が一枚完成よ。
一応、ウィルオウィスプの魔法陣を描いた積りなのだけれど……。
「白紙にしか見えませんわね」
ウィルオウィスプの魔法陣を描いたのは、一番お手軽な魔法陣と言う事も有るのだけれど、上手く使えば雪だるま達に対する武器に成るかも、と考えたから。
屋内で、火を使って攻撃するなんて、普段は絶対にしませんけれど、これだけ氷に囲まれた状況なら、まず火事の心配は無用よ。
刀印を結んで、御札に魔力を注ぐ。
御札が白く輝き、そして……。
ボッ!
火が付きましたわ……一瞬だけ……。
御札は灰に成って崩れ去る。
「はぁ~、失敗ですわ」
やはり白紙に白のクレヨンだと、上手く魔法陣が発動し無いわ。
雪を踏みしめる様な……足音かしら?
何かが近付いて来る!
咄嗟に、陳列棚の後ろに身を潜め、様子を伺う。
雪だるまだわ。
どうやら、私に気付いているふうでは無さそう。
サク、サク、サク。
マネキン達の残骸の上を、意に介する事無く飛び跳ねる様に越えていく。
雪だるまには知性や感情までは無い様。
まあ、当然ね。
体当たり攻撃で、侵入者を氷漬けにするのが彼らの役目。
感情や知性とかは、自爆攻撃には無用ですもの。
サク、サク、サク……。
「ふぅ~、どうやら、行ったみたいですわね」
そう言えば先ほどの闘い、妙だったわ……あのマネキン達が、では無く私の方が、よ。
氷の礫を放った積りが、氷柱に……。
確か、一階の方でも雪だるまを飛び越える時に使った突風も、いつもより強かった。
危うく、頭を天井にぶつける所でしたもの。
まるで、セクメトの慧眼をハメている時の様……と迄は行かないけれど、私の魔力が上がっている。
何故かしら?
数日に渡りセクメトの慧眼を使ったから。
それとも、ティル・ナ・ノーグのリンゴを戴いたからかしら。
若しくは、その相乗効果と言うことも……。
まあ、良いわ。
制御できない程の力と言う分けでも無いし、寧ろ今は好都合ですもの。
でも、それを踏まえたとしても、戦力不足は否め無い。
ともかく、今の内に何か戦力の増強を考えましょ。
一番手っ取り早いのは、ノワールとブランの召喚だけれど。
今は未だ、単独で行動した方が雪だるま達に見つかり難そうだわ。
お札を何枚か描こうかしら。
そうね、そう言う事なら、この間の猫手の御札が良いかも♪
持ってきた巾着袋を開けて、白紙の御札と羽ペン、インクを取り出す。
最近は、念の為持ち歩く様にしていますの。
「あら?このインク……凍り付いていますわ……」
諏訪さんはマイナス四十度と仰っていたわ。
私自身はマナちゃんのお陰で寒くは無いのだけれど……困ったわ。
「何か使えそうな物は無いかしら」
巾着袋の中を漁ると……猫手の御札が二枚。
そう言えばこの前、ウェンディゴと戦う前に猫手の御札を十枚用意して、使ったのは八枚。
これは、その余りの御札ね。
でも、二枚では心もとない。
どうも、このデパートに巣食う何者かは、数で押してくるタイプみたいだもの。
手数が欲しいわ……。
ん?
「そう言えば此処、文房具売り場の様ですわね」
もしかすると、何か使えそうな物は無いかしら?
でも、この売り場の棚……ただ霜が降りてるだけでは無い。
「凍り付いてる」
雪だるま達に氷漬けにされたのだわ。
でも、何で?
「あら?これは、拳銃……」
売り場の床に氷漬けに成って、床に張り付いている。
勿論、取れそうに無いし、勿論、取れたとして、撃つ気はさらさら有りませんわ。
でも……ここに銃が有ると云う事は、此処で戦闘に成ったのだわ。
そして、雪だるまに氷漬けに……だとすれば、持ち主の方は?
辺りを見回しても、誰も居ない。
お逃げに成られたのかしら。
「ともかく、御無事で有って欲しいですわ」
残念ながら、その戦闘で棚の文房具も氷漬けに成ってしまったのね。
取り出せそうなものは殆ど……あら?
恐らくその戦闘の余波かしら。
棚の商品が、幾つか床に散らばっている。
消しゴム、定規、ハサミ。
「ハサミ、これは使えそうですわ♪」
少し、床に張り付いていたけれど、どうにか剥がす事が出来た。
「他に、何か無いかしら……ん?これは……クレヨン、しかも白ですわ……」
ですけれど、このクレヨンで、御札を描けないかしら?
「今の状況ですもの、試してみて損は無いわ。やってみましょ」
白紙の御札に、クレヨンで魔法陣をカキカキ……あら、上手く描けませんわね。
クレヨンも、凍り付いてるのかしら、紙の上を滑って上手く描け無い。
ハァー、ハァー。
クレヨンを両手で包む様にして息を吹きかけ、温める。
「もう一度よ」
再び白紙の御札に魔法陣をカキカキ。
今度は、何とか描けてる様だけれど、白紙に白のクレヨンだと、上手く描けているか良く判りませんわ……。
それでも、どうにか御札が一枚完成よ。
一応、ウィルオウィスプの魔法陣を描いた積りなのだけれど……。
「白紙にしか見えませんわね」
ウィルオウィスプの魔法陣を描いたのは、一番お手軽な魔法陣と言う事も有るのだけれど、上手く使えば雪だるま達に対する武器に成るかも、と考えたから。
屋内で、火を使って攻撃するなんて、普段は絶対にしませんけれど、これだけ氷に囲まれた状況なら、まず火事の心配は無用よ。
刀印を結んで、御札に魔力を注ぐ。
御札が白く輝き、そして……。
ボッ!
火が付きましたわ……一瞬だけ……。
御札は灰に成って崩れ去る。
「はぁ~、失敗ですわ」
やはり白紙に白のクレヨンだと、上手く魔法陣が発動し無いわ。
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