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<大正:英国大使館の悪魔事件 後編>

明日、決着を付けましょ

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「なんと!では、小町ちゃん!!」
「ですけれど……わたくしの推理が正しいとすれば、少々、危険な状態かも知れませんわね。犯人が自棄やけを起こす事を想定して、万全の対策で挑む必要があるかも、ですわ」
「危険な状態とは?それに自棄やけを起こすとは……一体?」
「恐らくですけれど、犯人はウェンディゴに呪われておりますわ」
「しかし、小町ちゃん。先ほどの彼の話では、そのトーテムを奪った男はウェンディゴに呪われないと?」
「ええ、でもそれは、ウェンディゴに姿を変えるのが、一日に一度までなら、と云う事ですわ」
「なんと……では、その犯人はその禁忌を犯したと……」
「ええ、恐らくは」

「イシャイニシュスさん、もし御存じなら教えて頂きたいのですけれど、ウェンディゴに呪われた者が変異する、何か肉体的な予兆の様な物は御座いませんかしら?例えば痣が浮かび上がるとか、爪が黒く変色するとか、その様な何かですわ」
「ウェンディゴの一族の者に聞いたことが有る、両肩に黒紫色の発疹が有る者は、ウェンディゴに呪われているかも知れん。だから、気を付けろと。本当かどうかは、確かめた分けじゃ無い」
両肩とは……いまいち分かり難いところだわ……まず、見せてと言って、見せて貰えなさそうですわね。
まあ、明日問い詰めて、その反応を見るしか無さそうだわ。

「では上村さん、諏訪さん、明日この事件に決着を付けると致しましょう。帝都に散らばる眷属……ウェンディゴに呪われたモノ達に関しては、泰晴やすはる叔父様に頑張って頂くしか御座いませんけれど。その元凶と成った者だけでも、ですわ」
「承知しました。それでは、明日英国大使館で皆様に集まって貰って、と言う事で宜しいですかな」
「ええ、上村さん」

「私も了解したわ。それでさっき、万全の対策で挑む必要がある、と言ってたけれど、魔技取締分隊わたしたちはどうすれば良いの?」
「木像……ウェンディゴのトーテムは、まだその方の手に有りますわ」
「つまり、また公使の時の様に成るかも、と言う事ね」
「ええ、もしもの場合でも、アレを帝都に放つことが無い様にお願いしますわ。例えそう言う事態に成ったとしても、大使館の中で決着を付けるとしましょう」

「では、今晩中に関係各所への根回しをしておいた方が宜しいですな。大事おおごとに成るやも知れませんからな」
「そうね、そうなると魔技取締分隊わたしたちも、人員が足りないわ。中佐にはお気の毒ですけれど、また、他の部隊に頭を下げて回って貰う事に成るわね」
「人員が足りないのでしたら、警視庁にも要請しては如何ですかな。警部補殿も書類と睨めっこしているよりはと、きっとこころよく協力して下さると思いますよ。ハッハッハ」

そう言えば、変死体の報告書と睨めっこしているとか、仰っていたわね……。
「そうそう、警部補殿と言えば、一つ大事な事を忘れておりましたわ。とても重要な事ですわ」
「大事な事……何か有りましたかな?」
「上村さん、覚えてらっしゃるかしら?大使館の厨房でのことですわ。三浦さんとメイドさんが言い争っておられた件ですわ」
「うーん、厨房で……三浦とメイドさんが……ああ、思い出しました!確か、警部補殿が事件当時使われていた食器を、薬物検査しようとされていた事ですな。確か、小町ちゃんは、案外、思いもよらない何かが出て来るかも、と仰っていましたな……。では、その思いもよらない何かが出て来ると?」
「ええ、恐らくは。事件を解決する為の最後のピースに成ると思いますわ。ですけれど……検査の方は、もうお済に成っているのかしら?」
「分かりました。その件に付いても、警部補殿に確認しておきましょう」

丁度、洋館の敷地の外に、何台かの車が停車する音が聞こえる。
諏訪さんが要請した増援が到着した様ね。
洋館ここの事は後は諏訪さんや隊の皆さんにお任せして、そろそろおいとまさせて頂こうかしら。
明日に備えて、念の為に猫召喚の御札の補充をしないといけないし、それに、まさか今日一日で猫手の御札を四枚も消費するとは思わなかったわ。
此方こちらも、何枚か補充しませんと。

でも、その前に……。
「諏訪さん、上村さん、わたくしはそろそろ、今日の処はお暇させて頂こうかと思うのですけれど、それで、この方はどう成りますの?ワンちゃんでしたら、蘆屋家うちで飼おうと思っていたのですけれど……」
「そうね、取り合えず、憲兵司令部か宿舎で保護するのが妥当かしら」
「うーーん、そう言う事でしたら……ふふふ♪良い事を思いつきましたわ」
「どうしたの、小町ちゃん?」
「明日の事で、チョットしたイタズラを思いつきましたの♪まあ、彼が承諾下さればの話ですけれど♪それと、この方かなり匂いますわ。お風呂に入った方が宜しいわ。まあ、それも踏まえて、蘆屋家わがやでお預かりすると言うのは構いませんかしら?」
「小町ちゃんさえ良ければだけれど……まあ、栗林さんも居るから、彼が何か不埒な事が出来るとも思えないしね」
「では、それで決まりですわね」
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