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<現代:魔猿とキジトラ猫>
少年の思い、母の思い
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どうにか彼女が泣き止み、落ち着いたところで、どう云う分けか家に上げてもらった。
旦那さんはお出かけしている様だ。
リビングに案内され、紅茶を入れてくれる。
香りもよくて、美味しい、ダージリンだ。
蘆屋小町なら、摘まれた季節や、その気に成れば何処の農園の茶葉なのか当てる自身が有るけど、小野小町にそんな芸当は無理。
「御免なさいね。取り乱しちゃって」
「いえ、何か言っちゃいけない事を言っちゃったみたいで、こちらこそホントにすみませんでした」
「実はね、優弥は三か月前に死んだの。交通事故で……」
えっ?どう云う事?昨日は手を繋いだり、抱きしめたりしたよ……。
「近所の公園からの帰り……、居眠り運転だったらしいわ」
それから、佐竹さんの奥さんは色々話してくれた。
優弥くんがどんな子だったか、産まれてくる赤ちゃんをどれほど楽しみにしていたか。
そして、辛い出来事を忘れる為に、この街に引っ越してきた事も……。
……それなのに、昨日優弥くんに合っただなんて言われりゃ……そりゃ取り乱すよね……凄い罪悪感。
「ゴメンなさい!私、知らなくって……勘違いしてました……」
本当は勘違いなんかじゃない、あの子は優弥くんだわ。
幽霊なんて陳腐な言葉は使いたくないけれど、優弥くんの魂と会話し、手を繋いで、抱きしめたんだ。
現代の世界でこんな心霊体験したのは初めてだし、そんな現象が起こるとも思わなかった……。
わたしのお節介で、この人をこれ以上苦しめちゃいけない、だけどこのお守りだけは……。
「でも……このお守りは、誰かが佐竹さんの為に……その……買ったものじゃ無いかって……思うの」
うまい言葉が思いつかないよぉー……。
「いいえ、……アナタは勘違いなんかしていないわ。そうでしょ♪」
「え?」
「アナタは本当に優弥に合ったの、そしてあの子に御守り売ってくれたのよ」
「あのー、どうしてそう思うんです?」
「そうね、どうしてかしらね。あなたが嘘言ってる様に見えないって言うのもあるけれど、やっぱり、私がそう信じたいからかな。それに、アナタの巫女姿がとても似合ってたのもあるかしら♪」
「じゃあ、あのー、御守りは……?」
「ええ、大事にするわ♪」
そのあと、優弥くんの御位牌にお線香をあげさせて貰って、佐竹さんのお家を後にした。
大正の世界で、お爺様に聞いた事が有る、人が死ぬとその魂は幽世の世界へ向かう。
そこがどう云う場所なのか、それはお爺様も知らないと言っていた。
だけどお爺様の推測では、その場所は、魂に安寧と休息をもたらし、来世へと向かわせる、魂の為のヤドリギの様な場所じゃないかと。
でも、この世に強い思いや未練が残ると、この世に留まり彷徨うことに成るとも言っていた。
そして、その思いや未練と云うのは、善悪美醜限らずとも……。
優弥くんには、お母さんや、産まれてくる赤ちゃんへの強い思いが有って、この世に留まっているんだわ。
御守りを無事に渡せたからと言って、優弥くんが幽世の世界へ向かうとは限らない。
多分、未だこの世界に留まってるんだと思う。
「あの子は、いつかちゃんと、輪廻の輪に戻ることが出来るだろうか……?」
「出来るよね!良い子だったし♪」
それに、いざと成れば大正の世界から、何かそう言う魔道具を持ってくれば良いしね。
本当に持って来れるか、持って来れたとして、現代の世界で使えるかどうかは分からないけれど。
まあ、急ぐ事じゃ無いから、おいおい考えてあげれば良いよ。
優弥くんも赤ちゃんの顔を見たいだろうし、その後も見守りたいだろうしね♪
「あっ、ヤバいもう十時過ぎてんじゃん!」
神社に着いたのは十時半を回っていた。
急いで社務所で着替えて、売り場に行くと正兄が私の代わりに売り場に座っていた。
「正兄ゴメン遅くなっちゃった」
なんか今日は謝ってばかりだ……。
「あ、お早うこまっちゃん。気にしなくて良いよ。なんか昨日猿に襲われたんだって、大変だったね。今日は来てくれ無いんじゃないかって、親父が心配してたよ」
「ホント、昨日はチョー怖かったよー。だけど遅くなったのは、落とし物を届けてたからなんだ」
そう言えば一つ気になることが有る。
今まで、現代の世界には超常現象とか魔法とかそういうものは無いと思ってた。
大正の世界で覚えた魔法陣を、厨二病みたいで恥ずかしい思いをしながら、試した事も有るけど、当然の様に魔法が発動しなかった。
だけど、優弥くんが見えたと言う事は、つまり、現代の世界にも、そうゆう力や現象が存在すると云う事……。
「ねえ正兄、幽霊とか見た事有る?」
「え?唐突だなー。残念ながらそ言うのは見たこと無いな」
「じゃあ、妖刀とか、髪が伸びる人形とか、開けると人が死んじゃう箱とか、そう云う呪われアイテムが持ち込まれて、叔父さんがお祓いしたりとかは?」
「ああ、そう言うのだったら有るよ」
「えっ!どんな呪われアイテムだったの?」
「まあ、良くある奴さ、さっきこまっちゃんが言ったような、髪が伸びる人形とか、あと心霊写真とか。俺は心霊現象とかは見たこと無いから真相は分から無いけどね。じゃあ、そろそろ親父を手伝ってくるよ」
うーーむ、参考に成らん!
旦那さんはお出かけしている様だ。
リビングに案内され、紅茶を入れてくれる。
香りもよくて、美味しい、ダージリンだ。
蘆屋小町なら、摘まれた季節や、その気に成れば何処の農園の茶葉なのか当てる自身が有るけど、小野小町にそんな芸当は無理。
「御免なさいね。取り乱しちゃって」
「いえ、何か言っちゃいけない事を言っちゃったみたいで、こちらこそホントにすみませんでした」
「実はね、優弥は三か月前に死んだの。交通事故で……」
えっ?どう云う事?昨日は手を繋いだり、抱きしめたりしたよ……。
「近所の公園からの帰り……、居眠り運転だったらしいわ」
それから、佐竹さんの奥さんは色々話してくれた。
優弥くんがどんな子だったか、産まれてくる赤ちゃんをどれほど楽しみにしていたか。
そして、辛い出来事を忘れる為に、この街に引っ越してきた事も……。
……それなのに、昨日優弥くんに合っただなんて言われりゃ……そりゃ取り乱すよね……凄い罪悪感。
「ゴメンなさい!私、知らなくって……勘違いしてました……」
本当は勘違いなんかじゃない、あの子は優弥くんだわ。
幽霊なんて陳腐な言葉は使いたくないけれど、優弥くんの魂と会話し、手を繋いで、抱きしめたんだ。
現代の世界でこんな心霊体験したのは初めてだし、そんな現象が起こるとも思わなかった……。
わたしのお節介で、この人をこれ以上苦しめちゃいけない、だけどこのお守りだけは……。
「でも……このお守りは、誰かが佐竹さんの為に……その……買ったものじゃ無いかって……思うの」
うまい言葉が思いつかないよぉー……。
「いいえ、……アナタは勘違いなんかしていないわ。そうでしょ♪」
「え?」
「アナタは本当に優弥に合ったの、そしてあの子に御守り売ってくれたのよ」
「あのー、どうしてそう思うんです?」
「そうね、どうしてかしらね。あなたが嘘言ってる様に見えないって言うのもあるけれど、やっぱり、私がそう信じたいからかな。それに、アナタの巫女姿がとても似合ってたのもあるかしら♪」
「じゃあ、あのー、御守りは……?」
「ええ、大事にするわ♪」
そのあと、優弥くんの御位牌にお線香をあげさせて貰って、佐竹さんのお家を後にした。
大正の世界で、お爺様に聞いた事が有る、人が死ぬとその魂は幽世の世界へ向かう。
そこがどう云う場所なのか、それはお爺様も知らないと言っていた。
だけどお爺様の推測では、その場所は、魂に安寧と休息をもたらし、来世へと向かわせる、魂の為のヤドリギの様な場所じゃないかと。
でも、この世に強い思いや未練が残ると、この世に留まり彷徨うことに成るとも言っていた。
そして、その思いや未練と云うのは、善悪美醜限らずとも……。
優弥くんには、お母さんや、産まれてくる赤ちゃんへの強い思いが有って、この世に留まっているんだわ。
御守りを無事に渡せたからと言って、優弥くんが幽世の世界へ向かうとは限らない。
多分、未だこの世界に留まってるんだと思う。
「あの子は、いつかちゃんと、輪廻の輪に戻ることが出来るだろうか……?」
「出来るよね!良い子だったし♪」
それに、いざと成れば大正の世界から、何かそう言う魔道具を持ってくれば良いしね。
本当に持って来れるか、持って来れたとして、現代の世界で使えるかどうかは分からないけれど。
まあ、急ぐ事じゃ無いから、おいおい考えてあげれば良いよ。
優弥くんも赤ちゃんの顔を見たいだろうし、その後も見守りたいだろうしね♪
「あっ、ヤバいもう十時過ぎてんじゃん!」
神社に着いたのは十時半を回っていた。
急いで社務所で着替えて、売り場に行くと正兄が私の代わりに売り場に座っていた。
「正兄ゴメン遅くなっちゃった」
なんか今日は謝ってばかりだ……。
「あ、お早うこまっちゃん。気にしなくて良いよ。なんか昨日猿に襲われたんだって、大変だったね。今日は来てくれ無いんじゃないかって、親父が心配してたよ」
「ホント、昨日はチョー怖かったよー。だけど遅くなったのは、落とし物を届けてたからなんだ」
そう言えば一つ気になることが有る。
今まで、現代の世界には超常現象とか魔法とかそういうものは無いと思ってた。
大正の世界で覚えた魔法陣を、厨二病みたいで恥ずかしい思いをしながら、試した事も有るけど、当然の様に魔法が発動しなかった。
だけど、優弥くんが見えたと言う事は、つまり、現代の世界にも、そうゆう力や現象が存在すると云う事……。
「ねえ正兄、幽霊とか見た事有る?」
「え?唐突だなー。残念ながらそ言うのは見たこと無いな」
「じゃあ、妖刀とか、髪が伸びる人形とか、開けると人が死んじゃう箱とか、そう云う呪われアイテムが持ち込まれて、叔父さんがお祓いしたりとかは?」
「ああ、そう言うのだったら有るよ」
「えっ!どんな呪われアイテムだったの?」
「まあ、良くある奴さ、さっきこまっちゃんが言ったような、髪が伸びる人形とか、あと心霊写真とか。俺は心霊現象とかは見たこと無いから真相は分から無いけどね。じゃあ、そろそろ親父を手伝ってくるよ」
うーーむ、参考に成らん!
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