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<現代:魔猿とキジトラ猫>

話が噛み合わん……

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「行ってきまーす♪」
ハー、今日もお仕事かー。
あれ?
佐竹さんの玄関の前に何か落ちてるけど……あれ神社の御守りなんじゃぁ?

あまり親しくないおうちの玄関先に行くのって、チョット気が引けるけど、心配なので確認。
あっ!やっぱりだ。
安産祈願の御守り。
きっとあの子、玄関先で落としたのね。
結構しっかりしてる様に見えたけど、まあ未だ小さいもんね、おっちょこちょいしちゃう事もあるよ。
しゃぁない、おねいさんが届けてやるか♪
ついでに、昨日遅く成っちゃった言い訳もしてあげよう。

ピンポーン!

チャイム鳴らしてからあれなんだけど、もう起きてるよね、九時過ぎだし……。
でも、お正月だし、寝正月してるとか……う、羨ましい。
どうしよう、も一回チャイム鳴らして出なかったら取り合えずポストに入れとくか?

「はーい」
奥から女性の声。
良かった、起きてたみたい。
暫く待つと、ドアが開く。
昨日神社で見かけた、お腹の大きい女の人が現れる。

「はい、どちら様でしょうか……ああ、アナタは確か小野さん処のお嬢さんよね?」
「はい、お早う御座います。小町と言います」
「どうかしました?」
「朝こんな時間にすみません。実はさっき佐竹さんのおうちの前を通りがかったら、玄関先にお守りが落ちてたの見かけたもんで」
「はい」と御守り渡すと、なんか怪訝な顔で御守り眺めてる。

「あら?こんなお守り有ったかしら……?」
ああ、そっか、あの子お母さんに渡す前に、玄関先で落としちゃったって事だもんね。
「それ、昨日お子さんが篁神社たかむらじんじゃで買っていったものですよ。私、昨日神社でアルバイトしてて、巫女の恰好で社務所でお守りとか売ってたんですけど、その時にお子さんが買ったものですよ」
「えっ、何を仰って……うちには子供はいませんよ!」
え?どう云う事?
しかも、何かチョット怒ってるみたい。

「あのー、四、五歳くらいの男の子なんですけどー。昨日一緒に神社に来てませんでした?確かあの時、手を振ってくれるお子さんに、私も手を振ってたら、お母さんもそれに気づいて会釈を返してくれましたよね?」
「えっ、確かに昨日アナタが手を振ってくれたのは覚えてるけれど……あれは、私にじゃ無かったの?てっきり、引っ越してきたばかりの私に気を使ってくれて、手を振ってくれたんだとばかり……」
あれ?おっかしいなー、話が噛み合わん……。

じゃあ、あの子誰よ?
「御免なさい。私が早とちりしちゃったせいで、勘違いさせちゃったかも知れないわね。アナタが手を振った子は他所の子よ。だって今は私には子供が居ないもの。でも……あの時、小さな男の子なんて居たかしら?」
うーん、そうだとするとあの時、他に妊婦さんが居ないと辻褄が合わなくなるのよね。
それとも、あの子のイタズラで、知らない妊婦さんの為に、安産祈願の御守りを買ったってこと……?
でも、あの子の雰囲気を思い出すと、そんな感じじゃ無かったし、あんなおっかない猿相手に、御守り取り返そうとする必要も無いハズよ。
それに、昨日は佐竹さんまで送って来たのは事実だから、あの子と佐竹さんが無関係って事は考え難いわ。

ん?
下駄箱の上にある写真……あっ!あの子と目の前の女性が映ってる!
どう云う事?

そう云えばさっき、妙な言い回しをして無かった?
確か「今は私には子供が居ないもの」って、この「今は」って言うのは、もうすぐ赤ちゃんが生まれて来るから「今は」って意味もあるんだろうけれど、前はお子さんが居たと言うことじゃ……。
それって、つまり……成るほど!
複雑な家庭の事情ってやつね。

多分あれだわ、あの子は別れた元旦那さんの元に居て、昨日は今の旦那さんや、別れた旦那さんに内緒で合ってたとか。
それだと、周りにばれちゃ不味いから、私に嘘を言って胡麻化そうとしてるって言うシチュエーションが成り立つわ。
で、あの子は御守り渡しそびれて、遅くなったから、玄関先に置いて帰った……ん?ちゃんと帰れたかなぁ……?心配だわ。

でも、どうしよう……、空気を読むなら、「何だ勘違いか」って引き下がるのが良いかもだけど、それだと、せっかくの御守りがお母さんに渡らなく成る……。
やっぱりあの子の事を思うと、正直に言うのが正解よ。
「あの、その男の子なんですけど、其方そちらの下駄箱の上の写真の子でしたよ」
「えっ!優弥ゆうやが……」
優弥ゆうやくんて言うんですね。めっちゃ笑顔の可愛い、良い子ですね♪」
「う、う、う、うわぁーーーーー!」

ど、ど、ど、どう云うこと!
突然しゃがみ込んで泣き出したんですけど……何か不味いこと言ったか?
うーーーん、参ったなー、どうしよう……?
何が引き金になったか分からないけど、多分私が泣かしちゃったのは間違いないわけで、とにかく平謝りしまくるしか無いわね。
「ゴメンなさい!ホント御免なさい!、何か悪い事言っちゃったみたいで、ホントにすみませんでした!」
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