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クエスト
しおりを挟む「ゴブリンかぁ…」
「美紅、やっぱり嫌か?」
「まぁね女の人を襲ったりするのよね…考えただけで気持ち悪いわ」
「私もです…先生はもっと嫌かもしれないけど」
やはり女子ゴブリンに抵抗があるようだ。
ここは現実だ。
切られたら痛いし、もしも襲われたら…。
「大丈夫、絶対守って見せるから」
普段の俺が言ったところで効果は全くないだろう。
逆に不安にさせかねないな。
「今の蒼なら頼れるね…」
「今の、ね…」
「おいおい、二人揃ってなんて言い草なんだよ」
「ははっ、いつものお前とは違うからな!」
そう言って馬鹿にしてくる祐希だが、お前だって油断しなくとももしかしたらゴブリンに殺されるかもしれないんだぞ?全く…。
「そんなこと言ってると助けてやらないぞ~?」
「すまんすまん」
それからゴブリン退治と決まったところで準備に移る。
早朝から動いてるとはいえ今日中にクエストにいくのは向いていないだろう。
装備の点検、アイテムの確保、敵についての情報だって何から何まで分かっていない人が殆どだな。
軽く見積もって準備期間は1日2日程だな。
今日のところは帰宅。
ゴ ブリンについての情報と、ゴブリンが住み着いている森の情報を収集するとしよう。
「えー、今日は勉強みたいだな。異世界来ても机に向かわないといけないのかぁ…」
翔はあんまり賢くなかったがゆえに本を読む事や机に向かって何かをするのが苦手だ。
極力翔にはトレーニングでもさせておけば問題ないか。
結局賢い美紅と祐希と先生は情報収集を、その他は魔法の訓練や剣技を磨いていた。
勿論、美紅と祐希と先生も訓練しないわけにはいかないので2日目から一緒に訓練をし始めた。
先生以外は読み込みが早くすんなりと魔法を使うことに成功したが、先生はそうはいかなかった。
「どうしたらそんなに魔法が使えるのよ…!」
「もっと想像して、魔力を練る感覚を覚えるんですよ。詠唱すると想像しやすくなる分隙が生まれるところがネックですが無詠唱よりも威力が高まる等のメリットもあるんですよ」
「慣れてきたら無詠唱を練習するって感じですいいのかしら?」
「はい!そういう感じですね」
それからは個々で訓練に励み、夕食を食べてお風呂に入った後には既に皆ぐったりとしていて一歩も動けそうにない状態だった。
明日はゴブリン退治だというのに。
まぁいまから寝るならば明日に影響されることはないだろう。
◇
「おはよう」
「おはよう、蒼」
「先生もおはようございます」
「おはよう…」
数名昨日の反動が残ってるようだった。
「うぅ…筋肉痛かも…」
数名と言っても先生だけかもしれない。
黄バッジだけあってステータス値が低いせいで筋肉痛になってるっぽいな。
「私は運動するの久しぶりだったけど案外大丈夫みたい!」
蘭テニス部だったが最近は何故か休みがちだったのだが、急に運動しても問題はなにもなかったようだ。
アバターのステータス値がいいのだろうか。
「先生は少しずつ訓練していったほうがいいですかね【ヒール】」
【ヒール】は中級の魔法技術を必要とし、魔力も初心者であれば魔力を全て使いきってしまうほどの魔法だ。
俺以外の5人は今のところ一人として使えないだろう。
「あ、ありがとうね。羽柴くん」
ここで先生を回復させておかないとゴブリンに襲われた時等に咄嗟に対応できないと思ったからだ。
万が一があると困るからな。
「よし!蒼から貰った装備もよし。準備完了だぜ!」
「じゃあ出発だ!」
人生初めてのゴブリン退治。
そして冒険が始まった。
「くぅぅぅ!いいねぇ!この感じ!」
「日本じゃこんなところないしな、剣とかも持っちゃってさ」
辺りは森か平原しかない。
左には草木が生い茂っていて右には平原、今歩いている道だってただの草道でアスファルト舗装なんかされちゃいない。
そして野生に生きる野兎が先程から良く草原を走り回っている。
そういえば別クエストに野兎50匹の捕獲(狩っても構わない)というクエストがあったな。
それはちょっとショボいが安全なクエストだったのでこれを受けようとすると女子から大ブーイングの嵐ときた。
可愛い野兎を狩るなんて無理!と断固拒否されてるのに強要することなんて出来やしない。
「ここから森に入っていくみたいだな」
看板に左矢印が描かれており、ここからはモンスター出没可能性有り。
とだけ書かれていた。
俺は魔力感知の精度を更に上げられる様に意識して慎重に森へと足を踏み入れた。
「わぁぁ…自然って感じ!」
「どういう意味だよ。はははっ」
「相変わらずの語彙力してるよな」
他愛のない会話をしているところ悪いが、森に入って早々ゴブリン数体が俺達を囲んでるんですが!?全く気が付かないのか?
まだ攻撃を仕掛けるつもりはないようだし、できるだけ自分達で気付けるようになってほしいところだが…。
「何かいる気配がしないか?」
「えっ…なにも感じないけど?」
「ミントっぽい香りがするくらいだな!」
「あと強い香水みたいな?」
おいおい、この時点であることが判明している筈なんだが?
「ちょっと待って、その時点で気づかない?」
なにがだ?とした顔で美紅と祐希の顔をキョロキョロと見ている翔は全く分かってないだろうな。
「あ!わかったぞ!ゴブリンは自身の悪臭を誤魔化すためにミントやハーブみたいな臭いの強い物を持ち歩いているんだった!」
さすがは祐希、だがちょっと気づくのが遅かったか。
「ってことは…!近くにゴブリンが!?」
「残念ながらもう既に囲まれてる」
俺がいなかったら間違いなく奇襲をかけられて全滅しているだろうな。
逸れてしまった他のクラスメイト達は大丈夫なんだろうか。
全滅してたら流石に笑えないぞ。
「焦るな!蒼がいるさ!」
余裕の顔をして翔がそう俺にいうが。
「いや、俺がしたら意味ないだろ。死なない程度に守ってやるからさ」
「ええっ!まじかよ!」
多分切られたら痛すぎてショック死してしまうかもしれないので【神経操作】を使用して痛覚を遮断しておいてやるか。
【神経操作】
ーーー痛覚・味覚・触覚・視覚・嗅覚を操作することができる。
他人に使用するにはそれ相応の技術と魔力を消費してしまう。
切断された四肢などを接合させるときに使用すると何事もなかったかのように神経を繋ぐかとも可能。
今後はこんなことをしなくてもいいようにしないとだな。
流石に完璧に遮断するのはダメだな。
40%残しておけばいいくらいだろう。
「翔!あんた何のために訓練なんかしてきたのよ」
「そうだぞ、ここで俺たちが戦えるように立派にならないと一生蒼に頼りきりになるぞ?」
「うっ…祐希のいう通り、それは俺でもプライドが傷つく…」
理由はともあれ自分達の力でどうしかしてくれそうでよかった。
ゴブリンは馬鹿なりに慎重にこちらの様子をうかがってるのか騒いでいてもまだ攻撃を仕掛けてきたりしてこない。
「じゃあヒントだ。美紅から見て右に大きな木があるだろ?よーくみてみるんだ」
俺のいう通りに美紅は大きな木をじっくりと眺める。
「あっ!枝のところに何かいる!」
「そう。あれがゴブリンだ」
コソコソと隠れて奇襲するのが得意なゴブリンは木の上から良く飛びかかってくるからな。
「うげぇ…本で見たりしてまだマシだけど思ってたより5倍程気持ち悪いね…」
まさしくモンスターなゴブリンはいくら人型と言えど気持ち悪かった。
「よし、こっちから奇襲をしかけてやろう」
攻撃を受ける前にこちらから攻撃してやればゴブリンはテンパって連携すら取れずあっさりと倒すことが出来そうだ。
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