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スタート

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この翼は余りに目立ちすぎる。
仕方ない、一旦閉じておくか。

「美紅、先生。ちょっと話が」

今頭が回りそうなのはこの2人でいいだろう。

「まずは個々のステータスが見たい、帰れる方法を見つけるにしろ今のところは実力が知りたい」

「ゲームって大抵初期は同じじゃないの?」

「違うんだ、このゲームはな。種族によって得意不得意やステータスに差があるからな」

「そうだったの!?じゃあ私は?」

「見たところエルフだしな、耳のところとか。結構レアな方だしいいと思う。魔力量に長けてるし、エルフ専用の魔法だってあるぞ」

「ステータス?を見ればいいのよね。それはどうやって見るの?」

「えーっと、ステータスオープンだ」

「了解!ステータスオープン…ステータスオープン!」

「どうした?」

「いや……でてこないよ?」

普通ならばボードのようなものが浮かび上がって来る筈だし…ということは!

「まさかメニューまでも無くなった何て言わないよなっ!?」

俺は即座にメニューを確信するが反応しない。

俺の操作方法が間違っているかって?

残念だがそれはない。
予め、操作方法などメニューの開きからからなにまで教えてもらってたからな。
だからこんな異常な感覚を疑ったんだ。

「え…?どういうこと?メニューが開けないの?っていうことは…」

「多分だが…ログアウトもできない…!」

あまりの驚きに大声に出してしまった、そらにより周囲にもこの事実が伝わる。

「不味いな…」



「ーーどう言うことだよ…」

翔に聞こえていたのか翔が聞いてくる。
後からゆっくりと説明すべきだったか…。

「いや…待ってくれ」

俺はふと思った。
今の状況でもしも死ねばどうなる?
ゲームのように復活できるのか?
もしかしたらゲームじゃないのかもしれない。
何故こんなのを〈アルティメア〉が送ってきたんだ?

疑問が山みたいに積もっていく。

「くそっ…今こんなこと考えても仕方ないか」

今一番気になるのはステータス等の確認と、死亡したらどうなるのかだ。

「翔!これはゲームだと思うが、もしかしたら現実と変わらないかもしれない。だから別に死んでもいいかなんて思わないでくれ」

絶望して発狂とかは止めてくれよ…。

「ははっ!正直言ってこんな世界に憧れてたんだよなぁ…魔法も使えて冒険者とかで暮らせる世界に!」

「……え?」

翔が嬉しそうに両手を掲げて喜んでいる。
蘭はちょっと不安そうにしているが過呼吸とまでは至らなかったようだ。

「そうだよ!あんな勉強ばっかりじゃ飽き飽きだからな!俺もこんなに格好良くなってんだしさ!」


アバターの補正によって顔にも影響がでており、不細工になった人や普通のままな人はおらず大抵格好良いか可愛くなっていた筈だ。

「でも…お母さんにもお父さんにも会えないんだよ……」

大和 未来やまと みらいが号泣していた顔を手で拭いながら問いかける。

「…まぁそれはちょっと嫌かもな」

「いいんだよ、どうせ怒られるしかねぇからな!」

「確かにな…」

少しはしゃいでいた翔も落ち着いたように地面へと腰を下ろす。

「ここは憩いの広場という場所だ。そしてもう日も暮れてきたんだし近くの宿に宿をーー」

「ーー失礼」

俺の話を切るように俺の背後から声がかかった。
あり得ない出来事に俺は咄嗟に振り向く。

俺には魔力感知のパッシブスキルがある。
それは先程に使用されていることを確認済みだ。
それに通常のスキルも使用可能だった。
試しに身体強化やファイヤを超微力で使用したからだ。

それなのにも関わらず俺に感知されないまますぐ背後をどうやって…?

「誰だっ!……貴方は!?」

そこに立っていたのは美しく、水色の衣を羽織った女性がいた。
俺のアバターにも並ぶ程に綺麗だとその場の誰もが思っただろう。

「突然失礼しました。この憩いの広場に…いえ各場所に突如生命体が現れました。その確認をしに来たまでです。あなた達がその対象ですね?」

「あ、あぁ。間違いない。突然当たりに眩しくなって気付いたらこんなことに…貴女は管理者ですか?」

「迷い人ですか…。管理者?私は女神テーテルでありその管理者というものではありません」

「女神テーテル?聞いたことない名前だな……」

「ディリメントでは案外信仰されてる女神だと自負してるのですが…迷い人が知る筈もないですよね」

「ディリメント?ここはディメリメント、ゲームの世界だろ?」

「いえ、ここはディリメントという世界です。少なくともディメリメントというものは存じておりません」

最悪の展開だ。
ゲームの中に囚われてるという可能性を信じたかったが、いまの話の通りならばここは別の世界。
異世界ということだ。
この女神とやらが信じれる訳じゃないがな。
ならば帰れる可能性は相当に低いと考えられる。

だが俺は実を言うとこの状況を嬉しがっているというのは皆にはまだ内緒だ。

「じゃあ死んだらどうなるんだ?」

「当たり前のことを聞かないで下さい。誰でも死んだら終わりです。ただし、条件を満たせば蘇生行為は可能です」

蘇生は可能なのか、ディメリメントでも蘇生はあった。
だが復活できるし、あるとしたら軽いデスペナルティくらいだった。

「因みにその条件とは?」

「仕方ないですね、迷い人ということですので幾つかなら答えてあげましょう。それは蘇生の実、それか禁忌魔法【神の雫ゴッドオブライフ】の使用です」

「なっ…なに!?蘇生の実に禁忌魔法!?」

「どうしたんだよ、理解できるのはお前くらいなんだからしっかりしてくれよ?」

「そうよ、しっかりして」

美紅に祐希、それに他の3人も女神の話に聞き入っている。

「蘇生の実…俺でも1つしか持っていないぞ」

蘇生の実、実は2個程持っている。
だがこれはもしもの時用だ。
俺が持ってると皆に言ったとしてもし他の人に使えないときが来たら俺は皆にどんな顔をしたらいいのかわからなくなる。
万が一の保険だ。
自分を守るための…だがな。

「それに禁忌魔法は240時間に1度だけ使用できる。それも自身の魔力全てを使用して漸く使える、正に禁忌魔法だ」

全身から魔力が無くなる、即ち指ひとつとして動かない。
ほぼ瀕死状態だ。

「良くご存じですね、迷い人にも関わらず」

「えぇ、まぁね」

「多分だが……12時間以内に蘇生行為をしないと蘇生不可になる、そうだろ?」

「そこまで知っているとは、あなた何者です?それにその格好…」

「ただの異世界人さ…」

刺さるような鋭い目付きで体を舐める様にみてくるのはあまり嬉しくないな…。
もしも翼を展開していたら面倒なことになっていたかもしれないな。

「じゃあこれからどうしたらいいと思う?」

「さっきから女神様にたいして失礼よ!」

美紅にバシッと頭を叩かれたがこいつが本当に女神なのかもわからないし特に気にしていなかった。
本当に女神なら謝らなきゃだな。

「まぁいいです。まずはこの先にあるブルト王国に行って宿を取ってみてはどうでしょう?冒険者になるもよしです」

「(ブルト王国か…そこは同じなんだな)」

「ブルト王国に入る際に検問がありますが迷い人といえば仮身分証がもらえるでしょう。冒険者ギルドでギルドバッジを作ればそれが身分証となります」

「そこまで教えてもらえるとは、ありがとう」

「「「ありがとうございます」」」

「一応女神ですし、この世界には直接干渉できないのでこれからは自力で頑張ってください。もしかしたら教会でお会いできるやもしれませんが」

礼を言った直後に女神テーテルは消えた。

「落ち着いて聞いてくれ、今の話でこれは現実だということが確定した。しかし、だ!ここは剣と魔法の世界であり可能性は無限大だ!もしかしたら家に帰れる方法もあるかもしれない。絶望してないで自分を磨くのを忘れずにいこう。そしてはぐれた他の皆を探すんだ!」

「「おぉ!」」

男子はやる気に道溢れている。
しかし蘭と未来はやはり今の状況を理解するので一杯一杯という感じが伝わってくる。

教会や冒険者ギルド等がこの世界にも存在するなら鑑定で調べれるかもしれない。
多分精密ではないだろうが…。

俺達は取り敢えず女神に言われたままにブルト王国を目指すことにした。
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