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16.再会
しおりを挟む「さぁ、始めようか」
「えぇ、何時でもどうぞ」
剣を抜き、お互いに睨み合っているが、どちらも一歩も動かない。
しかし、次の瞬間。国王陛下が動いた。
「でやぁぁっ!」
いきなり【縮地】を使用し、俺の目の前へに現れ、剣を振るうが俺も【縮地】を使用し後ろに下がる。
「避けられるか…まぁ、そうでないと困るな」
「そう簡単にはやられませんよ」
攻撃を仕掛けるタイミングを見計らうが、本当に勝ってもいいのかと少し戸惑う。
【独創魔法】を使えば恐らく一本くらいは取ることが出来るだろう。
「なにを渋っている、もしかして手を抜いている等と言わぬな。それならば私も許さんぞ」
心を読まれているのかとドキッとしたが、そうではなさそうだ。
「分かりました…父さんから1本取った技を御見せ致しましょう」
俺は【縮地】を使用し、接近する。
だがこれはもう見せているし、基本のことだ。動揺することはない、だが──。
「ここからですよ【偽りの視界】」
相手が気付かぬうちに背後に回り込む。
「何をしたかわからんが…ふんっ!」
国王陛下は俺の残像を斬るが、霧のように消えていき、手応えがない。
咄嗟に距離を取るために前に【縮地】して俺の姿を確認する。
だが俺の姿を捉えることは出来なかった。
あと少しのところで決着を付け損ねてしまった。だが、次は外さない。
「終わりです【現実か幻想か】」
この一瞬だけ実態を現すことの出来る魔法でチェックメイトだ。
「ふははっ、見たことない技を仕掛けてくるようだな。だがっ!」
偽の俺の2撃を抑え、更に【縮地】を使い念には念を入れて決着を付けようと国王陛下はするが──。
「負けだ、居るんだろ俺の後ろに」
国王陛下の目の前にはまだ現送の俺が確りと立ち、剣を構えているが直ぐに消え去った。
父さんでも消え去るまで気が付かなかった技をよくも見破ったものだ。
「スゴいですね、斬らずに見破るとは」
「はっはっは、背を取られてどこが見破れたとな。完敗だ。ここまでとは思わなかった」
「いえいえ、お褒め頂けて光栄です」
パチパチとテレサが拍手をしながら駆け寄ってきた。最高の試合でしたと。
テレサも相当な才能を秘めてはいるが、まだ開花までには至っていない。
「流石です、お父様もアレン君も」
「いやいや、2回目は敵いそうにないね」
「だが、あれで終わり等とは言うまい」
「ははっ、まだ今のうちは内緒です」
ルーカスは国王陛下にまで一本取ったところを見てまた魂を抜けたような顔をしていた。
スゴい間抜けな顔だ。
「ルーカス、ルーカス!なにボサッとしてるんだ」
俺の目ではこの国王陛下は悪い奴ではなさそうだ。テレサの父親だしな、そうであってほしい。
「アレンよ、私に勝ったのだ。何か願いはないか?簡単な事なら叶えて見せよう」
願いか、まさか勝つことで何か願いを聞いてもらえるとは思いもしなかった。
「そう…ですね、確か国王陛下の契約霊は銀龍シルディム様だとか。一度お会いできませんかね?」
「ほぅ、シルディムを知っていたか。それくらい容易いことだが…。ゴルダリアには会ったのか?」
ゴルダリンとは〔金龍ゴルダリア〕俺の父さんの契約霊の事だ。
金龍と銀龍は兄弟で、父さんのグランと国王陛下、カイルも血は繋がってはいないが兄弟だ。
「いえ、父さんはまだ見せてくれたことがなくて…」
「そうなのか…契約霊は相棒だ。見せることくらい容易いものを」
「我に答えよ───シルディム」
訓練場が少し揺らいだ。地震かとも思ったが、違うようだ。
空から銀の鎧を着たような頑丈そうな鱗を身に纏った龍が訓練場に降り立った。
『何用だ、カイルよ』
「シルディム、用がないと呼んではならんのか?」
『ふっ、まぁいい。で、こやつらは?』
「俺の娘…は知ってるだろ。その友達のアレンとルーカスだ」
『ほぅ…アレンとな───』
火花が散ったような感覚がシルディムの頭を流れた。
ビクッとよろめいたシルディムはそのまま頭を垂れた。
「ど、どうしたのだ!シルディム?!アレンよ、何か魔法でもかけたとは言うまいな!」
「いえ!何もしてはいません」
『ここにお出ででしたか』
なにも状況を把握できない一同は何も言えずに只、固まっていた。
ルーカスは勿論の事、テレサも久しぶりに見たシルディムに圧巻され、動けずにいた。
「…?誰にも頭を垂れない誇り高きお前がどうしたんだ!」
『カイル、一度我は戻る。急遽報告することが出来た。だが直ぐに戻るここに残っていてくれ』
契約霊は自分の縄張りを持っているが、中には主人と共に行動している契約霊もいる。
だがそれはとても懐いていないと取らない行動だろう。
当然俺にも何が起こっているかなんて分かる筈もない。国王陛下さえ戸惑っているのだから。
「えーっと…これは一旦シルディム様の言う通りにしますか」
『私に畏まる必要ない』
その一言だけを言い残しシルディムは飛び去っていった。
「ど、どう言うことなのだ。いつもならこんなことはなかった筈なのに…アレンよ、原因が何かわかるか?」
「俺にも理解できませんね…」
「うーむ、どうしたというのだ…」
まだルーカスとテレサはボーっとした顔をみせていた。
「おーい」
「──はっ!一体何が…」
驚きすぎて2人は記憶が曖昧になっているようだ。意識が飛ぶ程でも無かったと思うが。
ルーカスは契約霊に強い憧れを持っていたからか。
「何がなんだか…」
◇
シルディムに言われた通りに只待つこと5分。誰も何も話さずに待っていると、上空から強大な魔力を感じて空を見上げるとシルディムらしき影ともう一つの影があった。
真っ白の翼をはためかせ、太陽の光の影響か虹色にも見える姿はまさに神の様だった。シルディムよりも一回り大きい巨体はシルディムに続いて急降下してきた。
「何なんだあれは…シルディムよりも大きいだと?」
なにもしなくとも混乱していた国王陛下だが、謎の龍の出現により更なる混乱を招いたのだった。
『お待たせ致しました。我が王の主よ。
カイルも待たせたな』
「対応の仕方が違いすぎやしないか?」
国王陛下はシルディムにそういうがなんの反応も示さない。
これが所謂ツンデレ……でもなさそうだ。
シルディムが到着し、それを追ってくる龍は何かを言ってる様な気がした。
『──ナ…ルド!レオナルドー!はっ、違った。アレンー!』
「(前世の俺の名前…?聞き間違いかそれにこの声は…)」
シルディムに続いた虹色にも光る龍は未だに光続けている。
折角元に戻ったルーカスとテレサ。特にルーカスが間抜け顔に戻されてしまった。
するとその龍が口を開いた。
『間違いない!主だぁ!』
「───ディスタメア?」
思わぬ再会をしてしまったらしい。
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