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【BL】「そりは"えちぅど"」から 

お題:「なんか変なヤツおる!」Hollow

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 彼の様子が変だと思った。あまりSNSなどには興味を示さず、暇な時でもどこでも、あまり携帯電話は見ないタイプで、俺は彼と話せるのがそれはそれで楽しくはあったが、同時に、今風な見た目や雰囲気で珍しくも思った。ギャップ萌えというやつだろうか。
 
 そういう前振りがあるから、おそらくそれは平均的な若者の頻度として普通のことなのだろうけれども、寂しく感じるわけだ。

 動物の動画でも観ているものかと思っていた。黒が基調の画面に、ピンクの何かが蠢いて見えた。あまり興味はなかったし、いくら付き合っているといっても互いにひとりになる時間は必要で、互いに互いの知らない部分せかいはひとつくらい持っておいたほうがいい。それは俺のお為倒しめいた独り善がりなのかも知れないが……


「なんか変なヤツおる!」
 彼は急に顔を上げて叫んだ。楽しそうに笑って指をさす。

 俺はびっくりした。その指の先を追う。何の変哲もない白い壁だった。
 最初、ゴキブリでもいたのかと思った。だがそれならば、俺に飛びついて泣き言をいうはずだ。では違う。
「大丈夫か……?」
 肩を揺する。彼のことが心配になった。

 翌日も、彼はまたあの黒いUIの動画サイトだ。最近の携帯電話は高性能過ぎる。いつもなら、菓子でも食べて、不毛な話に華を咲かせているはずなのに。
「……なんかヘンナヤツおる……!」
 仰向けに寝転がりながら画面を観ていた彼の身体が、がくりと揺れた。眠っていた人間が墜落の夢を見たときのような。裸足が宙を蹴る。
「大丈夫か?」
 彼は何かしらの疾患を抱えているのではないかと怖くなった。肉体的なものなのか、精神的なものなのか、見当もつかないけれど。

 
 俺は、彼は病院に行くべきだと思う。また、あの黒いサイトを観ている。飯も食わず、眠りもせず、余程面白い動画らしい。ドラマだろうか。一体何を観ているのか。大して気にはならなかった。ただそんな不健康な生活に堕ちた彼が心配だった。
「なんか変なヤツおる!」
 彼は走り出した。玄関を突っ切って、ドアを閉めた。咄嗟に追いかけた俺はふいに目の前に現れた壁に立ち止まるほかない。
 うんざりしながら、玄関扉のノブを開く。だが捻れない。向こう側から押さえられているようである。
 ドア越しに独り言が聞こえる。

 ナンカヘンナヤツオル……シロいフくデ、そコニ、来てル……

 ドアの下から、水溜りが広がってくる。真っ赤な液体が、ドアの下から流れてきている。
<2022.1.13>
ホラーBL(BL要素とゎ)
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