上 下
48 / 294
その他ジャンル(架空取材、架空レポート)

お題「あなたと同期しました。」シンパシーサイド

しおりを挟む
「超優秀な人型ロボットってのがいたんだわ。あったんだわ、か。いけない、いけない。超優秀だけあって、存在感というか、まぁ、質感とか喋り方も人間みたいなんだわな。抑揚とかニュアンスを上手いこと学習するんだわ。表情解析なんかも高性能でよ。

 ロボットっていうと、人の気持ちの機微が分からんってイメージでしょうが、所詮は人間も化学と数字、物理の塊に過ぎませんや。電流で脳味噌を誤魔化せば、恋愛感情だっていじれるんじゃないんか。そんないい加減な人間同士だって様々なのに、画一化された金属の塊にどう太刀打ちしろってんだ。でも意外と、感情が邪魔になる場面ではそういう金属のお人形に頼るってことも必要なもんだ。意外……ではないな。

 それで、そのめちゃくちゃ優秀なロボットってやつの仕事だがよ、とある大学生の監視だったんだよ。何かあってふさぎ込んじまって……だらしのねぇ。それで、孤独だろうってんでそいつの親父さんってのが巨額注ぎこんで開発したってワケだな。なにせ人間には心を開かないっつーのに、ロボットってていでは、どれだけ人間みたいでもすんなり受け入れちまうんだからゲンキンよ。まぁ、最初は盗聴されている、監視されているって発狂していたがな。あながち間違ってはいないわな。監視も兼ねていたさ。

 まぁ、じっくり時間をかけて、やがてそいつはロボットに今まであったことを語りかけ、肯定と同意、都合の良い受け答えをするロボットをすっかり精神の支柱にしやがりやがった。

 多くの人間てやつは、或いは多くの場面では他人に呑まれる。気持ちなり距離なり、近ければ勝手に悲しみ、勝手に喜び、勝手に怒れる。それができるから上手く回ってられる部分もあるんだろうぜ。ただな、呑まれねぇやつもいて、そうでないやつにも呑まれない分野ことがある。それはそれで才能だ。有用活用できる場面があるものだけを才能というのならな。いわば搾取だ。消費だよ。才能と名付けないと上手く使い潰せねぇんだから。まぁいい、そんなことは……

 それでな、その優秀なロボットはあまりにも多数派の人間を真似すぎて、呑まれることすら覚えやがった。いわば血肉も人権もねぇのに呑まれる側の人間ってやつになっちまった。大学生を理解して……しまいにはロボットのほうがその金属の体をアスファルトへ叩きつけに行ったってワケだ。するとどうなる?大学生もその身体をアスファルトを叩きつけに行ったのさ。あれはオレよりも兄弟してたんじゃねぇかって思うんだが、同時に、くだらねぇとも思う。どうして弟だからってアレを理解してやらねぇといけないのかと思う。あのロボットは兄貴の奴隷だったのさ。そのために開発された。それなら人間を真似て、人間を解する機能なんてつけてやるべきじゃなかった。ああ。オレまで感化されてるな……結局あれの優しさはデータ化されたものでそこに感情なんかあるワケないのによ」
<2022.1.23>
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...