お題アリ掌編集。

その他ジャンル(架空取材、架空レポート)

お題「……」夢宙人。

「……」
　あーしは好きピをぐるぐる巻きにした。口にはマスクみたいにガムテを貼り付けて。キャトられないように椅子に縛り付けて、鎖もたくさん巻いておいた。あーしのこと睨みつけてる。そういうとこもすごくかわいい。でもどうしよう？目も塞いでおくべき？
　あーしは許せなかった。あーしの好きピと交換なんだって。あーしの好きピは宇宙人とあーしたちみたいな地球人のハーフなんだって。それでうちゅ人が迎えに来るらしいよ。でも好きピは地球で育ったんだよ。それに好きピは帰りたくないって言ってた。今は「……」しか言わないけど。宇宙と交信してんじゃない？どうせあーしのことチクってんでしょ。好きピはホントは帰りたくないのに、帰らないなら地球を侵略するってママンとパパンがいってるらしいよ。ママンとパパンというかそういうのあるのか知らないけど。フツーにムカつかない？あーし、好きピと遊んでるときに見たことあるけど、宇宙人はタコに似てた。いっぱい紐グミみたいな足があった。8本くらい。目が少女漫画の絵みたいにでっかくて、眼鏡とかコンタクトレンズとかどうしてるんだろ？
「……」
　好きピがあーしのことをまた睨む。身動きとれないから疲れちゃった？キャトる力の方が強いと思っていっぱい巻いたし、交信しないように頭にアルミホイルも被せたんだけど。
「ねぇ、直接脳に語りかけてるの？届かないんだけど」
　好きピが地球のために宇宙人のところに帰るとかイヤなんだけど。なんで地球の全人類のために好きピが人生台無しにしなきゃならないワケ？
　あーしは腹が立ってきた。せっかく宇宙人のサーチシステムを掻い潜れる特殊加工のシェルターを作ったのに、そっちがやる気ならあーしもやってやるからね。許せなすぎて許すまぢなんだけど。許さねぇわマヂで。
　あーぢは宇宙ステーションにいって、地球に近付くUFOにソーラーレイをぶちかました。ゲーセンのシューティングゲームみたいだった。宇宙空間に浮遊するタコどもを回収して焼いて食べたら美味しかったから小麦粉に混ぜて焼いて売ったら、地球で爆売れ、あーしはインフルエンサーになったはいいんだけど、バズりすぎて宇宙人は絶滅しちゃった。
「……」
　好きピはずっと空を見上げて相変わらず宇宙と交信してたんだけど、宇宙人とのハーフってことがバレちゃって、結局、あーしの目の前で密漁者に頭かち割られちゃった。
「……」
　だからあーしも「スキダヨ」って最期、直接脳みそに語りかけた。

<2021.9.4>