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「高宮」
 肩がびくりと震えた。
「衣澄と今、すれ違った。変なコトされなかったか?・・・・・・・・神津にも」
 股間が疼いていた。

「柳瀬川・・・君・・・・」
 
 上半身を起こす。保健室に入ろうにも入れないようで、入り口で突っ立っている。保健の先生はいない。
「・・・・・高宮、入ってもいいか?」
 弱々しい表情だ。モデルのような体型で、モデルのような顔立ちの彼がそんな表情を見せたら女性は一発で落ちるだろう。
「・・・・・・うん・・・・・」
 高宮は頷いた。徐に柳瀬川は高宮の寝ているベッドに寄ってくる。焦げ茶色の瞳に吸い込まれそうになって、高宮は身体を竦める。
「高宮、ごめんな」
「いや・・・・あそこで覗いてたの、オレだから・・・・」
 柳瀬川はミントの匂いがした。どこか衣澄と同じ雰囲気に気分が落ち着いた。
「ごめんな・・・・・」
 そう言って、高宮の布団を剥ぐ。脈絡のない行動に高宮は驚き、え、と声を上げた。
「どうしたの・・・・?」
「衣澄とか・・・・・神津には・・・抜いてもらったのか・・・・?」
 柳瀬川は俯いて、顔を真っ赤にして、たどたどしく訊いてきた。
「え・・・?なんで・・・・」
「高宮・・・・勃ったまま・・・・でしょ・・・?」
 恥ずかしくなって肯定も否定も出来なくなって、俯いた。一度は鎮まったものを、また想像してしまい熱くさせてしまった。

「お、俺の、責任だから、俺、が・・・・抜く・・・・よ・・・・」
 柳瀬川が苦笑しなながら言った。

「えぇ!?いいよ・・・・柳瀬川っ・・・君・・・!」
 スラックスの中に手が侵入していく。高宮の肩に腕を回して背凭れをつくった。
「ひぁっ・・・・柳瀬川・・・・」
 スラックスの下のトランクスの中に、緊張しているのか冷たい手が差し込まれる。
「ごめんな。高宮」
 冷たい手が高宮自身に触れた。
「んんっ…あ…」
 力が抜けて柳瀬川の腕に身体を預ける。

「ごめん、高宮…」
 高宮のを握って、上下に扱いていく。
「あぁっ」
 他人に触られるのは初めてだった。そして柳瀬川は、上手い。
「巻き込んじまって悪い」
 耳元で囁かれる甘い声にも身体が反応してしまう。忙しかったため、ここ数日間は自ら抜こうとしなかったせいか、感じやすいのかもしれない。
「や・・・なせ・・・がわ・・・・んんっ」
「高宮・・・高宮・・・・かわいい・・・」
 一昨日神津からされた手付きとは違い、優しく、甘く、肉体とは別の意味で気持ちよかった。
  
「あぁああっは・・・・・やなせがっ・・・・」


 自分の名前を呼ぶ高宮が可愛く思え、首筋を舐めたと同時に高宮は柳瀬川の手の中で果てた。
 


――――・・・・早いな・・・・

 柳瀬川はスラックスから手を出し、掌に広がった液体を見つめてそう思った。

「・・・・ごめん、ごめん、柳瀬川君・・・」
 情けなくなって視界が滲んでくる。
「ごめんな、高宮」
 柳瀬川はそう言ってティッシュに手を伸ばす。適当に拭き取って、丸めた。
「やなせ・・・がわ・・・・・くん・・・・?」
 
「・・・・・じゃぁな」

 顔色を伺うように高宮は柳瀬川を見つめるが、柳瀬川は目を合わせようとせず、保健室を出て行った。

 射精後独特のだるさを堪え、高宮は寮に戻った。頭を支配することは柳瀬川のことだった。
 情けない姿を晒して、嫌われてしまったのか。柳瀬川とはあまり関わったことがないけれど、それは寂しくて、悲しいことだ。







――――柳瀬川君に、嫌われたのかな・・・・



 

 寮に戻ると、高宮はそんなことを考えながら制服を脱いだ。そして私服に着替える。

 

 ヴー ブー ヴー
 
 ポケットの中が鈍い音を立てて振動する。メールの音ではない。電話だろう。知らない電話番号だったけれど、高宮は通話ボタンを押した。



『高宮・・・・?』
 冷たい声が鼓膜を震わせた。電話の相手に殴られた頬が疼いた。
「神津君・・・・?」
『電話番号をもらった。明日、3時限目終わったら屋上に来い』
 返事はいらなかった。選択肢は一つしかなかったのだから。高宮は電話を切った。気絶している間に番号を奪われたのだろう。
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