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生まれて初めて③

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「…っうん、」

「今まで嬉しいとか思ったことなかったのに…こういうことかって分かるの、すごい」

「そうだよ…、これからはそういう気持ちをもっともっと…感じてほしいよ。楽しいことも、嬉しいことも全部…」

ていうか僕の方が嬉しくて、どうにかなりそうだよ。こうして、これからも憂くんと一緒にいていいんだって思ったら…

「俺さ…メンタルやられて感情も、昔のことも忘れてたはずなのに、母さんから離れようとしたり、叶羽君に一緒にいてくれって言ったの…自分でも分からなかったけど」

「うん…」

「たぶん、本能ってやつかな?心のどっかで、叶羽くんを必要としてたんだと思う」

抱きしめていた体を離して、肩に手を置くと、憂くんは僕を見上げて微笑んだ。

「ふふ、叶羽くん涙でぐしゃぐしゃだね」

「…っうん、あの、憂くん」

「ん?」

「最近元カレに言われて気付いたんだけど…その、僕ちょっと付き合うと重いらしくて…」

「重い?愛情が重いってこと?」

「そ、そう…みたい。だから、たぶん今まで元カレに振られてたんだと思うんだけど…もし重くてウザいと思ったら、振る前に言ってほし…一一一」

全部言い切る前に、僕の口は強制的に閉じられた。

憂くんの唇が…温かくて柔らかい。僕の唇に優しく触れる。

「……っん、う!!!憂くん、、?」

「叶羽くんの重い愛を独り占めできるなら、そんな幸せなことないよ?」

「…っえ」

「むしろ、俺の方が重いかも。だから叶羽くんも覚悟してね」

「!!!は、はい」

どうしよう、顔が熱い。頭まで血が登りそう…。
前は僕からほっぺにキスしたけど…今のは不意打ちだし、初めて憂くんとキスを…!

「なんで下向くの?」

「…っ、そ、その、恥ずかしくて」

「前は叶羽くんからキスしてくれたのに?」

「そっそれは!あの、ごめん…」

「謝らなくていいから、もっかい口にしてくれる?今度は叶羽くんから」

「へ!!?」

あわあわ動いて焦ってる僕を見て、憂くんは意地悪そうに笑ってる。そんな表情も全部一つ一つ拾い集めてしまって、ドキドキが止まらない。

「んー、じゃあこっちの体勢の方がいいかな?」

「うわわわ!!」

顔を上げれなくなった僕の両脇に手を入れて、座ってる憂くんの膝の上に乗せられる形になってしまった。

向かい合わせだし、跨っちゃってるし…見上げられるの余計に恥ずかしい…。

「して?」

「…っうん」

でも、キスを待ってる憂くんが可愛くて…これはなんだろう。愛しいっていうのかな。胸をくすぐられる感覚。

僕は目を閉じた憂くんの唇に、ゆっくり自分の唇を重ね合わせた。

こんな夢みたいなこと…まだ実感が湧かない。

「!!んん…一一一!」

そんなことを思っていたら、突然唇の隙間から憂くんの舌が侵入してきた。びっくりして口が開いた瞬間に、更に奥へ入ってきて、そのまま口内を侵す。

「んっ……は、ぁ、、」

くちゅくちゅと舌が混じり合う音と、2人の吐息だけが聞こえてきて、沸騰してしまいそう…。

「んぁっ、、は…」

「…っはぁ、叶羽くん」

「っはぁはぁ…、へ?」

「ごめん、俺…今もっと触りたくてしょうがない」

「あ、えっと、それって…」

つまり、そういう事だよね…?でもまさか、今日そうなるなんて思ってなかったから心の準備が…。

心の準備っていっても僕はよくて、憂くんの方が心配で…。

「え、で、でも憂くん、男初めてだよね?そ、その…いきなりは難しいんじゃないかなって…。ちょっと不安もあって…」

「…だめ?叶羽くんが辛くないように、頑張るよ」

「あ!いや、そうじゃなくて…」

「そうじゃなくて?なに?」

「その、なんていうか…今いきなりそういう事して、僕で萎えさせたらどうしようって…」

「……え?」

「だ、だから、その……うわっっ!!?」

また話を遮るかのように、今度は宙に浮いた僕の体。憂くんが、抱きしめた状態のまま僕を抱えて立ち上がった。

「ちょちょ!なにしてんのっ!!」
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