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心酔③
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買い物を終えて、家に帰ってきてから、僕はキッチンでご飯を作り始めた。憂くんはソファに座ってテレビを見ながら待っててもらって。
さっき聞いた話…憂くんは子供の時から、こうやって家でご飯を作ってもらうことなかったらしい。だから僕なんかの料理でよければ、少しでも喜んでもらえたらいいな…。
「くっ、形がどうしても難しい…、あ!崩れた…」
「なにか手伝うことある?」
「へ!!あ、大丈夫だよ全然!あっちで待ってて!」
「分かった」
形は多少崩れても、味は大丈夫なはずだ!!
「憂くん!おまたせ!」
「うん」
そして、作り始めてから約40分後。なんとか全てのメニューが完成した。キノコのハンバーグと白ご飯と、ネギと豆腐の味噌汁。そして大量のやみつきキュウリ。
テーブルに2人分並べて、ちょっとでも綺麗にできた方を憂くんの前に置く。
「ご、ごめん…ハンバーグの形崩れちゃって…」
「ううん、大丈夫。いただきます」
「い、いただきます!!」
どうしよう、緊張する。自分が作った料理を家族以外の人に食べたもらうなんて、初めてだ。しかも好きな人に…。
ハンバーグを大きく切り取って、口へ運んで咀嚼した憂くんをじーっと凝視してしまう。
「…どう?大丈夫?」
「うん。美味しいよ」
「!!ほ、ほんと!?よかった…」
リアクションはなくても、その一言が十分に嬉しい。ホッとして僕もご飯をかきこみ始めると、憂くんは黙々と食べ進めていった。モリモリご飯を食べてる所を見て安心した。
「…味噌汁、温かい」
「え、あ!うん!温かくて美味しいね」
「…そうだね」
大学のカフェで見るよりも、食べるスピードが少し早い気がする。そう思ってたら、茶碗と箸を持ったまま憂くんがこっちを覗き込んできた。
「叶羽くん、ありがとう」
「…いえいえ!こんなのでよければ、また作るよ」
「…うん。また食べたい」
よかった、少しは喜んでもらえたかな。なにか感じれてたらいいな…。
「ふぅー、ご馳走様でした」
「ごちそうさま」
食べ始めてから、ものの数分で2人とも完食してしまって、たくさんあったキュウリも味噌汁もほぼ無くなった。
「憂くん、紅茶飲む?」
「あ、うん」
「テレビ、他に何もやってないなー。DVDでも見よっか?」
「……」
「……ん?どうかした?」
食べ終わって、紅茶を飲みながら僕がリモコンを操作しながらそう言うと、憂くんはまた下を向いて黙ってしまった。
さっき大学で見た時と同じ感じだ。
「憂くん…?」
「叶羽くんは…」
「へ?」
「俺に色々してくれてるの、本当は傷付いてる?」
「な、なんのこと…?」
「俺と居たら、叶羽くんはもっと傷付くのかな」
急にどうしたんだ…?やっぱり、今日はいつもより様子がおかしい。
「なんでそんな事言うの?僕は傷付いてなんかないよ?」
「俺が何も分からないから、叶羽くんを傷付けるのかな」
「…え、」
「一緒にいてくれたら、危ないことしないって言ったのは俺だし、叶羽くんといたら何か感じるかもって思ったけど…叶羽くんにとっては何も得はないのに、なんで俺と一緒にいてくれるの?」
「……それは」
それは…そんなの、得とか得じゃないとか関係なくて、ただ好きだから…。
心配だから。支えたいと思ったから。
「…っ」
「……俺は、叶羽くんの友達だよね?」
「えっ…」
やっぱり言えない…。憂くんは、僕のこと友達としか思ってないよ。そんなの当たり前だ。
大体、憂くんの恋愛対象は女の子だし、前に自分のこと恋愛対象に入る?って聞いてきたのも、きっとただの興味。
「……叶羽くん?」
「……っあ、ごめ」
「泣いてる…?なんで?」
「ううん、何でもない…!」
泣くつもりなかったのに、気付いたら溢れてた。目が熱くて、言葉を発したらどんどん止まらなくなりそう。
「ちょっと、トイレ…」
「…っ」
「わっ一一一一!!?」
涙を引っ込めてこようと立ち上がったのに、座っていた憂君に腕を掴まれ、そのまま引っ張られてしまった。
さっき聞いた話…憂くんは子供の時から、こうやって家でご飯を作ってもらうことなかったらしい。だから僕なんかの料理でよければ、少しでも喜んでもらえたらいいな…。
「くっ、形がどうしても難しい…、あ!崩れた…」
「なにか手伝うことある?」
「へ!!あ、大丈夫だよ全然!あっちで待ってて!」
「分かった」
形は多少崩れても、味は大丈夫なはずだ!!
「憂くん!おまたせ!」
「うん」
そして、作り始めてから約40分後。なんとか全てのメニューが完成した。キノコのハンバーグと白ご飯と、ネギと豆腐の味噌汁。そして大量のやみつきキュウリ。
テーブルに2人分並べて、ちょっとでも綺麗にできた方を憂くんの前に置く。
「ご、ごめん…ハンバーグの形崩れちゃって…」
「ううん、大丈夫。いただきます」
「い、いただきます!!」
どうしよう、緊張する。自分が作った料理を家族以外の人に食べたもらうなんて、初めてだ。しかも好きな人に…。
ハンバーグを大きく切り取って、口へ運んで咀嚼した憂くんをじーっと凝視してしまう。
「…どう?大丈夫?」
「うん。美味しいよ」
「!!ほ、ほんと!?よかった…」
リアクションはなくても、その一言が十分に嬉しい。ホッとして僕もご飯をかきこみ始めると、憂くんは黙々と食べ進めていった。モリモリご飯を食べてる所を見て安心した。
「…味噌汁、温かい」
「え、あ!うん!温かくて美味しいね」
「…そうだね」
大学のカフェで見るよりも、食べるスピードが少し早い気がする。そう思ってたら、茶碗と箸を持ったまま憂くんがこっちを覗き込んできた。
「叶羽くん、ありがとう」
「…いえいえ!こんなのでよければ、また作るよ」
「…うん。また食べたい」
よかった、少しは喜んでもらえたかな。なにか感じれてたらいいな…。
「ふぅー、ご馳走様でした」
「ごちそうさま」
食べ始めてから、ものの数分で2人とも完食してしまって、たくさんあったキュウリも味噌汁もほぼ無くなった。
「憂くん、紅茶飲む?」
「あ、うん」
「テレビ、他に何もやってないなー。DVDでも見よっか?」
「……」
「……ん?どうかした?」
食べ終わって、紅茶を飲みながら僕がリモコンを操作しながらそう言うと、憂くんはまた下を向いて黙ってしまった。
さっき大学で見た時と同じ感じだ。
「憂くん…?」
「叶羽くんは…」
「へ?」
「俺に色々してくれてるの、本当は傷付いてる?」
「な、なんのこと…?」
「俺と居たら、叶羽くんはもっと傷付くのかな」
急にどうしたんだ…?やっぱり、今日はいつもより様子がおかしい。
「なんでそんな事言うの?僕は傷付いてなんかないよ?」
「俺が何も分からないから、叶羽くんを傷付けるのかな」
「…え、」
「一緒にいてくれたら、危ないことしないって言ったのは俺だし、叶羽くんといたら何か感じるかもって思ったけど…叶羽くんにとっては何も得はないのに、なんで俺と一緒にいてくれるの?」
「……それは」
それは…そんなの、得とか得じゃないとか関係なくて、ただ好きだから…。
心配だから。支えたいと思ったから。
「…っ」
「……俺は、叶羽くんの友達だよね?」
「えっ…」
やっぱり言えない…。憂くんは、僕のこと友達としか思ってないよ。そんなの当たり前だ。
大体、憂くんの恋愛対象は女の子だし、前に自分のこと恋愛対象に入る?って聞いてきたのも、きっとただの興味。
「……叶羽くん?」
「……っあ、ごめ」
「泣いてる…?なんで?」
「ううん、何でもない…!」
泣くつもりなかったのに、気付いたら溢れてた。目が熱くて、言葉を発したらどんどん止まらなくなりそう。
「ちょっと、トイレ…」
「…っ」
「わっ一一一一!!?」
涙を引っ込めてこようと立ち上がったのに、座っていた憂君に腕を掴まれ、そのまま引っ張られてしまった。
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