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奇跡
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そのまま4人相手に抵抗できず、教室から離れた所にある古い備品室に連れ込まれてしまった。
この人達が誰かも知らないし、何がしたいのか知らないけど、とりあえず落ち着いてもらわないと……。
「いたた…っ!」
「えー本当にこいつなの?なんか普通じゃね?」
「でも風音って名前だしこいつだろ」
この備品室の中、埃っぽいし壊れたガラクタばかりだし……もうほとんど使われてないんだ。
人が来ないからここに……?
「あ、あの……あんた達だれ?何がしたいんですか……」
強く掴まれた腕をさすりながらそう聞くと、4人の真ん中にいた派手な金髪の男がニヤニヤと笑って近づいて来た。
「んーいや?お前が日下部零の好きな風音くんなんだろ?」
「……えっ」
何で日下部の名前が……!?
ていうか、好きって……なんで?
「いやー、まさかあのモテる日下部クンがわざわざ男好きになるとか思わなかったわ」
「え、あの……それは……」
「この前さー、北校舎にサボりに行った時にたまたま聞いちゃったんだよねー。日下部と彼女が別れ話してるの」
えっ!??それって、僕がファイル取りに行った時にあの屋上で話してたやつ?
あの時こいつらが反対側に歩いて行ったの見てたのに…なんで!?
もしかして、僕が行った後に屋上の方まで戻ってきたのか…?
「いやーたまたま屋上の鎖外れてるの見つけて気になっちゃってさ。サボれるかと思って上がってったらまさかの修羅場だし?まあ聞いちゃうよねー」
金髪の男に続いて、他の3人もニヤニヤしながら同調してる。
「それで……?」
「いや話聞いてたらさ、日下部に本気で好きな人が出来たから別れたいとか言ってるし、そんで彼女の雪菜ちゃんはショックで泣いてるし?しかもその相手が男だって言うじゃん?」
「そーそー、それで思いついたんだよねー」
「俺さー日下部の彼女狙ってたんだよね。だから日下部の好きな相手の男を痛めつけて諦めさせて、彼女に俺が諦めさせてやったってとこ見せようかなって。
そしたらー、彼女は俺に感動して惚れてくれんじゃね?みたいな」
「普通にアプローチするよりインパクトデカいよなー!俺って天才!男なら気にせずボコれるし」
「いやそれ思いついたの俺だからー!」
「お前、美人とヤるだけが目的のくせによ!」
「てか日下部零もバカだよなー。あんな美人連れて歩けるのに男に走るとかーゲイだったんか?あいつ」
は……?こいつら次から次へと何言ってんの?
雪菜さんと日下部のことを…なに面白がって話してんの?
恐怖から一気に何かが冷めて、スーッと肩が落ちた。
馬鹿みたいに目の前で盛り上がってる所を見てたら、フッと笑いが込み上げてくる。
「…は?何笑ってんだお前」
「そんなことしても…雪菜さんがお前に惚れるわけないだろ、バカなの?」
「お前今からボコられるんだぞ?態度考えろよな」
1人に胸ぐらを思い切り掴まれて、鋭く睨まれる。
前までだったらビビりすぎて震えてただけかもしれないのに…
今は怒りしか湧かないし、こんな状況なのにひどく落ち着いてる自分がいる。
「…っそれで好きになってもらえると思ってるお前らがバカすぎて、態度もクソもないから」
「テメェ…!!!!」
バキッ!!!!
「……っ!!!いっ、」
やっぱり殴られた。
分かっててぎゅっと目を閉じた。
その衝撃で、僕の体は床へと音を立てて倒れ込む。
「…っ、」
「おおー、まじ殴り痛そー」
「おいおい、手加減してやれよー。ひ弱そうなんだから」
頬が痛くて熱くて、ジンジンする…。
結構勢いよく殴られたみたい…。
あーもう、大人しくついてきた僕もバカだ。
でも…今は逃げようとかよりも、こいつらに負けたくないし、屈したくない。
「…っあの2人は、本気で悩んで本気で恋愛してるだけなんだ、みんな…葛藤しながら迷いながら頑張ってるんだ、」
「は?何言ってんだこいつ」
「僕だって…、迷いもあったけど、本気で好きになったから…諦めたくないって思った」
血が滲む唇を袖で拭いて、何とか足に力を入れて立ち上がる。
「そんなバカみたいな理由で…簡単に惚れてもらえるとか思うなよ、好きな人が自分を好きになってくれるなんて…奇跡なんだから…っ」
「なにこいつ、ポエマー?(笑)」
「早くボコしちゃえよ」
「お前らなんか…惚れてもらえる訳ないし、日下部をバカにする権利もない!!日下部の足元にも這いつくばれない汚い最低野郎が!!」
「…ッチ、このクソ野郎…!!ひ弱だと思って手加減してやったのに調子こきやがってよ!!」
「……っ」
また殴られる……そう思って、固く目を閉じた。
体と足に力を入れて……
「………っ」
あ、あれ……?
何もこない……?
「……ぐっ」
力を入れて耐えていたけど、頬にあの衝撃はこなくて……
ゆっくり目を開けると、そこには……
「…えっ、く、日下部、?」
なぜか目の前に日下部がいて……さっき僕を殴った金髪男は、日下部に首を思い切り掴まれて苦しんでいる。
「……ぐっっ、ぁ、、」
なんで…そんな都合よく来てくれるわけがないのに…なんで来てくれたの…?
「………お前ら、風音君になにしてるの?」
この人達が誰かも知らないし、何がしたいのか知らないけど、とりあえず落ち着いてもらわないと……。
「いたた…っ!」
「えー本当にこいつなの?なんか普通じゃね?」
「でも風音って名前だしこいつだろ」
この備品室の中、埃っぽいし壊れたガラクタばかりだし……もうほとんど使われてないんだ。
人が来ないからここに……?
「あ、あの……あんた達だれ?何がしたいんですか……」
強く掴まれた腕をさすりながらそう聞くと、4人の真ん中にいた派手な金髪の男がニヤニヤと笑って近づいて来た。
「んーいや?お前が日下部零の好きな風音くんなんだろ?」
「……えっ」
何で日下部の名前が……!?
ていうか、好きって……なんで?
「いやー、まさかあのモテる日下部クンがわざわざ男好きになるとか思わなかったわ」
「え、あの……それは……」
「この前さー、北校舎にサボりに行った時にたまたま聞いちゃったんだよねー。日下部と彼女が別れ話してるの」
えっ!??それって、僕がファイル取りに行った時にあの屋上で話してたやつ?
あの時こいつらが反対側に歩いて行ったの見てたのに…なんで!?
もしかして、僕が行った後に屋上の方まで戻ってきたのか…?
「いやーたまたま屋上の鎖外れてるの見つけて気になっちゃってさ。サボれるかと思って上がってったらまさかの修羅場だし?まあ聞いちゃうよねー」
金髪の男に続いて、他の3人もニヤニヤしながら同調してる。
「それで……?」
「いや話聞いてたらさ、日下部に本気で好きな人が出来たから別れたいとか言ってるし、そんで彼女の雪菜ちゃんはショックで泣いてるし?しかもその相手が男だって言うじゃん?」
「そーそー、それで思いついたんだよねー」
「俺さー日下部の彼女狙ってたんだよね。だから日下部の好きな相手の男を痛めつけて諦めさせて、彼女に俺が諦めさせてやったってとこ見せようかなって。
そしたらー、彼女は俺に感動して惚れてくれんじゃね?みたいな」
「普通にアプローチするよりインパクトデカいよなー!俺って天才!男なら気にせずボコれるし」
「いやそれ思いついたの俺だからー!」
「お前、美人とヤるだけが目的のくせによ!」
「てか日下部零もバカだよなー。あんな美人連れて歩けるのに男に走るとかーゲイだったんか?あいつ」
は……?こいつら次から次へと何言ってんの?
雪菜さんと日下部のことを…なに面白がって話してんの?
恐怖から一気に何かが冷めて、スーッと肩が落ちた。
馬鹿みたいに目の前で盛り上がってる所を見てたら、フッと笑いが込み上げてくる。
「…は?何笑ってんだお前」
「そんなことしても…雪菜さんがお前に惚れるわけないだろ、バカなの?」
「お前今からボコられるんだぞ?態度考えろよな」
1人に胸ぐらを思い切り掴まれて、鋭く睨まれる。
前までだったらビビりすぎて震えてただけかもしれないのに…
今は怒りしか湧かないし、こんな状況なのにひどく落ち着いてる自分がいる。
「…っそれで好きになってもらえると思ってるお前らがバカすぎて、態度もクソもないから」
「テメェ…!!!!」
バキッ!!!!
「……っ!!!いっ、」
やっぱり殴られた。
分かっててぎゅっと目を閉じた。
その衝撃で、僕の体は床へと音を立てて倒れ込む。
「…っ、」
「おおー、まじ殴り痛そー」
「おいおい、手加減してやれよー。ひ弱そうなんだから」
頬が痛くて熱くて、ジンジンする…。
結構勢いよく殴られたみたい…。
あーもう、大人しくついてきた僕もバカだ。
でも…今は逃げようとかよりも、こいつらに負けたくないし、屈したくない。
「…っあの2人は、本気で悩んで本気で恋愛してるだけなんだ、みんな…葛藤しながら迷いながら頑張ってるんだ、」
「は?何言ってんだこいつ」
「僕だって…、迷いもあったけど、本気で好きになったから…諦めたくないって思った」
血が滲む唇を袖で拭いて、何とか足に力を入れて立ち上がる。
「そんなバカみたいな理由で…簡単に惚れてもらえるとか思うなよ、好きな人が自分を好きになってくれるなんて…奇跡なんだから…っ」
「なにこいつ、ポエマー?(笑)」
「早くボコしちゃえよ」
「お前らなんか…惚れてもらえる訳ないし、日下部をバカにする権利もない!!日下部の足元にも這いつくばれない汚い最低野郎が!!」
「…ッチ、このクソ野郎…!!ひ弱だと思って手加減してやったのに調子こきやがってよ!!」
「……っ」
また殴られる……そう思って、固く目を閉じた。
体と足に力を入れて……
「………っ」
あ、あれ……?
何もこない……?
「……ぐっ」
力を入れて耐えていたけど、頬にあの衝撃はこなくて……
ゆっくり目を開けると、そこには……
「…えっ、く、日下部、?」
なぜか目の前に日下部がいて……さっき僕を殴った金髪男は、日下部に首を思い切り掴まれて苦しんでいる。
「……ぐっっ、ぁ、、」
なんで…そんな都合よく来てくれるわけがないのに…なんで来てくれたの…?
「………お前ら、風音君になにしてるの?」
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