零下3℃のコイ

ぱんなこった。

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手繋いだことある?

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朝。昨日あんなことがあっても朝はくる。
まだ整理つかないけど…とりあえず日下部は同じクラスだし顔を合わせるし。


「風音おはよー!」

「あっ玉木、おはよう」

昨日の話通りなら…僕は今日から雪菜さんにアタックすることに…なるんだよね。しかも日下部がなんか教えるとか言ってたけど。


「はー今日から普通授業とかダルいなー。なぁ?風音」

「…あのさ、玉木って彼女いたことあるんだよな?」

「は?なに急に。あるけど」

「もしさ、その、彼女を…うば…」

「うば?」

「いや、なんでもない…」

昨日、日下部からとりあえず逃げて、玉木と合流したのはいいものの…折角のチーズバーガーセットが喉を通りにくいくらいには、衝撃を受けていた。

玉木に聞いてみようにも、中々こんな話聞けるわけない…。

言うなとは言われなかったけど、日下部もあんな重い話言いふらされたくはないだろう、きっと。

てか、好きじゃないっていつから?
もしかして1年の時からか?
見かける度に雪菜さんに優しく微笑んで話してたのは?

あれは演技ってこと!?

「あーーー…」

「なんだよ、昨日からうんうん唸って。なんか悩み?補習が心配?」

「そっ…それもあるけど」

「じゃあ、やっぱ転んだとこ痛いの?」

「痛いけど大丈夫…」

「じゃあ、なんだよ」

言えない!!相談したいけど、やっぱ言えない!
昨日のも階段で1人でコケて保健室行ってたって話したし…。

「ちょ、ちょっと雪菜さんのこと考えちゃってて…」

「またぁ?あんなにショック受けてたのに?お前ほんとに女々し…一途だな」

「女々しいって言ってるよそれ」

日下部はああ言ってたけど…そうなんだよな、ヘタレで女々しい僕を雪菜さんが好きになるなんて有り得るのか…?

「あ、噂をすれば」

「え?」

「零君と彼女が歩いてるよ、そこ」

「っ!!んなっ」

玉木が指さした方には、まさしく並んで一緒に歩いている日下部と雪菜さんの姿が。

今まで悔しいとしか思ってなかったけど…あんな話を聞くと見方が変わってしまう。

あいつ、日下部は…なんであんな風に笑ってられるんだ?好きじゃないのに別れられないって、ほぼ強制って感じじゃ…

なのに、なんであんな優しい顔で雪菜さんと一緒に居られるんだよ。

「…って、僕が気にするとこそこじゃないよな」

「風音くん、おはよう」

「うっ!?うわ!?」

「あ、玉木くんも一緒だね。おはよう」

「おはよー!零君」

な、な、なんで少し離れたとこにいたのに、日下部が僕の目の前にいるんだよ!

「お、おはよ。お、お前、雪菜さんは…」

「友達見つけたから、話したいから先行くねって言ってきたよ。ちゃんと風音くんの名前言っといた」

「…へ、へぇ」

こいつ、やっぱり昨日のこと本気だ。
雪菜さんにまずは僕のこと覚えさせようとしてる気がする。

「えっなになに、2人仲良くなったの!?いつの間に!?」

「いや仲良くっていうか…」

「だって彼女に話すほど友達って!!何があって?昨日少し話しただけじゃん?え、風音どういうこと?」

うわー…そうだよね。日下部とのことは何も知らない玉木からしたら、昨日初めて話したのに何で?ってなるよ。

しかも雪菜さんの彼氏って僕からしたら、ライバル的な感じなのに…って。

「なになに?連絡先でも交換したとか?」

「い、いやその…」

「あ、ごめんね。僕は人との距離近い方でさ。もうクラスのみんなのこと友達だと思っちゃってて」

僕の隣からスルッとそう言ってフォローしてくれる日下部。

あ、いつもの優しい爽やかな感じに戻ってる。

「いい人ーー!よかったなぁ風音!ライバルとかどうでもいいじゃんもう!あ、じゃあ俺も友達ってことでいいの?」

「うん、もちろん」

「はぁ。玉木、バカ…」

今ので納得するのか。バカでよかったかも。
ライバルって言っちゃってるけど。

てか、なんで僕を真ん中にして3人で肩並べてるんだ。

「おい、くさか…!?」

えっ。なんで。

「てかさ、零君は頭いいの?得意な教科なに!?」

「よくはないけど…全体的にまんべんなくかな。でも数学とか得意だよ」

「まじ!?風音教えてもらえよ!!」

「……っ」

「風音?どした?」

「あぁ!!うん!そうだよな!次補習になったらやばいし!」

こいつ、なんでそんな平然とした顔で話せるんだよ。
だって、だって…!!

なんで僕と日下部は手繋いでるんだ!?

急に手握られた。え、誰かと手繋ぐとか初めてなんだけど…!?
これ玉木に見えてないよな!?ちょうど死角だから見えないよな!?

しかも、力強!!振り解けない…。

「じゃあ、よかったら僕教えようか?」

「へ、あ…?」

「僕の勉強にもなるし、風音くんのためにもなるかなって」

「……っ」

「どう?」

「あーあー!うん!そうだな!うん!!教え、うん!ははは、数学うん!」

「風音なにそのテンションの上がり方(笑)」

「上がってない!!」

いや、待って。

これ、こんなの。男でこんな心臓バクバクいってたら、好きな子と手繋いだらどうなっちゃうんだ?自分。

そもそもなんで手繋いできてるんだよ!こいつ!!

「あ!山田がいる!俺ちょっと行ってくるわ!」

「え?あ、う、うん!!」

玉木が他の友達のとこ走って行った。
た、たすかった…。心臓飛び出るかと思った。

「おい!離せ日下部!何してんだよ!」

「なにが?」

「なにがって…なに手なんか繋いできて…!」

「練習だよ、昨日言ったじゃん。恋愛に慣れてない風音君に僕が色々おしえてあげるって」

「…っそれでも、急にこんなことするなよ!誰かに見られたら!」

「顔真っ赤だね」

「……っ!!」

「男相手に手繋いだだけで、そんなんになっちゃうなら…これからどうなるんだろうね」

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