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クラスメイト

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その後2人で教室へ行くと、人がバラバラと集まっている中で1人那月を見つけ慌てて歩み寄ってきた人物がいた。

「篠井くん!」
「あっ…!あ、相野くん…!お、おはよう」

相野は那月の顔を見るなり、心配そうな表情を浮かべて様子を伺う。

「おはよ。もう熱は治ったの?大丈夫?」
「う、うん!もう回復したよ。風邪でもないし知恵熱…みたいな感じだった」
「そっか、よかった」

ホッと息をついた相野に、那月は手を胸の前で握りしめながら話す。

「あっ!あの、ありがとう。この前は保健室まで…あと荷物も、持ってきてくれて…」
「いいよ、そんなの。それよりさ、あの保健室に来た3年生の人…風紀委員だっけ?あの人と仲良いの?」
「えっ!あ、ああ…彩世先輩?う、うん。入学してすぐに知り合って…」
「ふーん、そうなんだ」

那月の言葉を聞いて、少し口角を引き結び下を向いた相野。那月は首を傾げながら顔を覗き込んだ。

「…?あ、あの?」
「先輩でそんな仲良い人がいるなんて知らなかったよ。よかったね」
「え?う、うん…!」
「そうだ。1限目、古典だね。準備しなきゃ」
「そ、そうだね!」

意味深な笑顔と言葉を残して、相野は自分の席へと戻っていく。那月はそれを少し不思議に思いながらも、前よりも順調に話せたということでいっぱいだった。

一一一相野くん、ちょっと変だったけど元気なかったのかな…?でも他の人と普通に話してる。よかった。

そして授業が始まり、休んでいた分の普通教科は明衣にノートを見せてもらい何とか追いつくことができたが…

「あー次、数学かぁ。班分けじゃん」

最近始まった人数を分ける教科の時は明衣と離れているため受けている範囲が違う。やっと話せるようになった相野とも離れている。

一一一そうだ。休んだ所どうしよう。明衣は班が違うからダメだし…。誰か他の人に見せてもらわないと…。

ぞろぞろと教室を移動して生徒が半分になった部屋の中。那月は周りをチラチラと見渡し、誰かに休んだ範囲を見せてもらおうと決心した。

一一一今こそ…、前の席の男の子に声をかけて見せてもらおう…。前の席は浜野くんだよね。話しかけるチャンスだ、僕は変わったんだ。大丈夫大丈夫、できる…!

「あっ、あの…!は、は、は、浜野くん!!」
「……?ん?」

那月は思い切って前の席にいる浜野という茶髪の男子生徒に声をかけた。

「す、すいません。あの…、僕、昨日休んでて…その…休んだ分のとこ、み、見せて貰えないですか…!?」

振り向いた浜野に声を振り絞ってそう言うと、「あー俺?」と目線を外しながら頭を掻く。

一一一あ、やっぱり…ダメだったかな…。

「俺は字汚いから、こいつに見せてもらった方がいーよ。なぁ、市早~!篠井にノート見せてやって。昨日の分」
「えっ…」

浜野はその隣にいたメガネ男子に那月を指さしながらそう話しかけた。そのメガネ男子は「ああ、いいよ」と言って那月にノートを差し出す。

「あっ!え!!ありがとう、ございます…!!い、市早くん…!」
「てか篠井って普通に喋れるんだ。初めて喋った気がするー。ビビられてるかと思って話しかけなかったけど」
「えっ!あ…」
「まあ人見知りな奴もいるし、最初は知らない奴と話すのビビるだろ。特にお前見た目チャラいし」
「は!?別にチャラくねーし!なぁ?」

浜野と市早は仲が良いらしく、那月の方を向きながら小競り合いを繰り広げる。

「……っ」

那月はノートを握りしめながら自分の変化を感じ、初めてクラスメイトの男子に話しかけれたことと彩世とはまた違った同級生の優しさを感じ、噛み締めながら少し目頭が熱くなった。

一一一先輩が言ってくれたことが胸にあるから勇気を出せた。僕はダメじゃなかった、何回も失敗したからって諦めなくてよかったんだ。それに、自分が変われば周りにもきっと伝わる…。きっと伝わってくれる人はいる。

「え、なんか涙目になってね!?どうした!?」
「…いや、だ、大丈夫です!き、緊張するけど…こうやって話せたのが、嬉しくて…」
「なにそれ!篠井ピュアすぎ~!これからノート写せなかったからこいつに見せてもらえばいーよ!俺もそうだし!」
「おい、うるさいぞ。まったく…篠井悪い。こいつ、すぐ調子乗るから」
「いいいえ!そ、そんな…」
「まあ、困ったら言ってくれればいつでも貸すよ。お前には貸さねーけどな」
「なんでだよー!!俺にも見せろ!ていうかさ、篠井なんで敬語なの?ウケるんだけど!タメ口で話そーよ!」

落ち着いた雰囲気の市早と明るくお調子者の浜野。2人は那月に微笑みかけて頷いた。

「…っうん!ありがとう、浜野くん、市早くん」
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