43 / 94
4
何をしに
しおりを挟む
ーーー今日の昼は、先輩いるかな。
あれから時間が経ち昼休憩。1人弁当を抱え中庭にやって来た那月。今となっては、彩世がいるかどうかを当たり前に気にするようになっている。周りを気にしながら中へ入るが、誰かいる気配はないようだ。
「……いなかった」
那月は肩を落としてベンチへ座った。ざわざわと葉が揺れるほど風が吹いているが、さすがに6月なのもあり外は暑くなってきた。木の影のおかげで、まだ中庭はマシな方かもしれない。
「ん……?」
そして弁当を開けようとした時、突然那月の目の前の草がガサガサと激しく揺れた。それと共に草に覆われていたフェンスがガチャガチャと揺れる音も聞こえてくる。
明らかに、外から何者かが揺らしているような音だ。
一一一なに!?なになに!?めちゃくちゃ葉っぱ揺れてる!なんか向こう側でフェンス登ってきてる!?猫!?犬!?
「ひぃ…!!!」
突然の事態に、那月は弁当を抱えて後退りをする。そしてガシャンッと音を立ててフェンスが激しく揺れると、その登ってきていた何かが顔を出した。
「うわぁ!!」
「あ!!やっぱりここが中庭かー」
「…へ?」
フェンスを登ってきたであろうその何かは、猫でも犬でもなく人だ。それもその人は、那月が見た事のある男の顔。
「ん?いろはいないなぁ。あれ…?ていうか、そこの君って、もしかして…」
「…っあ、あ、あなたは、えっと、この前の…」
「あー!そうだ!この前、学校の前でぶつかった人!」
那月を指差しでそう言った彼は、あの時の金髪でピアスをたくさんつけた彩世の幼なじみ、「なつ」だった。
なぜフェンスを登ってきたのかは分からないが、とりあえず彩世の幼なじみだと気付いた那月は、呼吸を落ち着かせた。
「……っあ、あの、何を、しに…何をしてるんですか?」
夏希はフェンスに掴まったまま、那月をじーっと舐めるように見て入ってこようとはしない。那月が声をかけると、その問いかけに「ああ」と気が付いた。
「あのねー、背高くてちょっとくせっ毛の黒髪の…真面目そうな男子生徒って来てないー?」
「えっ…」
「幼なじみがここ通っててさー、3年生なんだけどー、学校抜けて会いに来ちゃったの!それで最近よく中庭行くって聞いたからー、とりあえずここ覗いてみたんだ」
一一一幼なじみ…もしかしなくても、よく考えなくても彩世先輩のことだ。学校抜けて会いに来た…って大丈夫なの?それ…。そんなに先輩に会いたいんだこの人…。
「…い、いや、今日ここには僕以外いない、みたいです」
「えーー、なんだー!いないのかぁ」
口を尖らせて拗ねる夏希はフェンスをよじ登り、中庭側へ足を踏み入れ、軽々とジャンプをして地面へ着地した。
「え、うわぁぁぁ!!!!」
「あっごめん、びっくりさせちゃった?俺夏希っていうんだけどー君は?あと何年生?」
「…っあ、え、な、那月です。い、1年生…」
「えー!1年!?俺と一緒!?しかも名前も似てるしすげー!!」
あれから時間が経ち昼休憩。1人弁当を抱え中庭にやって来た那月。今となっては、彩世がいるかどうかを当たり前に気にするようになっている。周りを気にしながら中へ入るが、誰かいる気配はないようだ。
「……いなかった」
那月は肩を落としてベンチへ座った。ざわざわと葉が揺れるほど風が吹いているが、さすがに6月なのもあり外は暑くなってきた。木の影のおかげで、まだ中庭はマシな方かもしれない。
「ん……?」
そして弁当を開けようとした時、突然那月の目の前の草がガサガサと激しく揺れた。それと共に草に覆われていたフェンスがガチャガチャと揺れる音も聞こえてくる。
明らかに、外から何者かが揺らしているような音だ。
一一一なに!?なになに!?めちゃくちゃ葉っぱ揺れてる!なんか向こう側でフェンス登ってきてる!?猫!?犬!?
「ひぃ…!!!」
突然の事態に、那月は弁当を抱えて後退りをする。そしてガシャンッと音を立ててフェンスが激しく揺れると、その登ってきていた何かが顔を出した。
「うわぁ!!」
「あ!!やっぱりここが中庭かー」
「…へ?」
フェンスを登ってきたであろうその何かは、猫でも犬でもなく人だ。それもその人は、那月が見た事のある男の顔。
「ん?いろはいないなぁ。あれ…?ていうか、そこの君って、もしかして…」
「…っあ、あ、あなたは、えっと、この前の…」
「あー!そうだ!この前、学校の前でぶつかった人!」
那月を指差しでそう言った彼は、あの時の金髪でピアスをたくさんつけた彩世の幼なじみ、「なつ」だった。
なぜフェンスを登ってきたのかは分からないが、とりあえず彩世の幼なじみだと気付いた那月は、呼吸を落ち着かせた。
「……っあ、あの、何を、しに…何をしてるんですか?」
夏希はフェンスに掴まったまま、那月をじーっと舐めるように見て入ってこようとはしない。那月が声をかけると、その問いかけに「ああ」と気が付いた。
「あのねー、背高くてちょっとくせっ毛の黒髪の…真面目そうな男子生徒って来てないー?」
「えっ…」
「幼なじみがここ通っててさー、3年生なんだけどー、学校抜けて会いに来ちゃったの!それで最近よく中庭行くって聞いたからー、とりあえずここ覗いてみたんだ」
一一一幼なじみ…もしかしなくても、よく考えなくても彩世先輩のことだ。学校抜けて会いに来た…って大丈夫なの?それ…。そんなに先輩に会いたいんだこの人…。
「…い、いや、今日ここには僕以外いない、みたいです」
「えーー、なんだー!いないのかぁ」
口を尖らせて拗ねる夏希はフェンスをよじ登り、中庭側へ足を踏み入れ、軽々とジャンプをして地面へ着地した。
「え、うわぁぁぁ!!!!」
「あっごめん、びっくりさせちゃった?俺夏希っていうんだけどー君は?あと何年生?」
「…っあ、え、な、那月です。い、1年生…」
「えー!1年!?俺と一緒!?しかも名前も似てるしすげー!!」
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話
さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ)
奏音とは大学の先輩後輩関係
受け:奏音(かなと)
同性と付き合うのは浩介が初めて
いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる