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行動
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自分とは真逆の性格の明衣だが、那月はそんな明衣がいるおかげで辛いことがあっても保っていられるのだろう。違う意味で落ち着いた2人は、またベンチに並んで座った。
「で?その助けてくれた先輩にセーターを返したいんだっけ?」
「うん…でも3年生で、」
「3年生!?へぇ……年上かぁ」
「この前、教室にいた時に明衣に注意してきた人の後ろにいた…男の先輩で。バッジつけてたし同じ風紀委員だと思う」
「ん?あー…風紀委員で?男で3年って言ったら、あの人しかいないか」
「えっ!明衣知ってるの……」
そうだ、と思い出した。明衣が掃除当番の時、彩世先輩と話していたなと。だから知っているのか、さすがよく覚えている。喧嘩っ早くて一見不良っぽく見えても、明衣は人のことをよく見ている。
「知ってる知ってる。確か、いろ…なんとかって人。黒髪で背高い人でしょ?」
「え、そうそう!彩世って呼ばれてたから…その人!」
「あーそんな感じの名前だ。ふーん。彩世先輩ね~」
「うん、偶然でもその人が来てくれたから、助かったんだ…。でも、やっぱり怖くてお礼も言えなかったから…」
那月の脳裏に浮かんでいたのは、覗き込まれた時の前髪がかかった顔と大きな手、セーターを投げてきた時の背中。そして鼻には残っている先輩の匂い。襲ってきた男子達の顔はほとんど覚えていないのに、彩世先輩の印象だけは強く焼き付いていた。
だけど、やはり男だと実感するとどうしても怖さで背筋がぶるっと冷えてしまう。
「じゃあ、那月。明日行け、いや行こう」
「えっ!?」
「早めの方がいい。あたしもついてってあげるから。自分でセーター返して、お礼を言うの。ちょっと頑張ってみよ」
「明衣…ほ、ほんと?一緒に来てくれるの?ありがとう…」
「もちろん!!それに、男と話してみるいい機会だ!あの先輩は真面目そうだし、たぶん優しい方だと思う!」
言われてみれば、那月が言葉に詰まった時も責めたり急かすことはなかった。手を振り払ってしまった時も、セーターを貸してくれた。きっと優しい人なんだろうと思う。
せめて、せめて直接お礼が言えるように。あの時救われた気持ちを伝えられるように。
一一一頑張りたい。目を見て、逸らさずに、しっかりお礼が言いたい。
「…僕頑張ってみる。明日、先輩の所に行くよ」
「よーし!那月なら大丈夫!明日の朝、学校来たらホームルーム前に3年の階に行くぞ!」
「う、うん!!」
一一一明日、先輩に会いに行く。大丈夫、きっと頑張れる。気持ち悪がられても、ウザがられても頑張るんだ。
「で?その助けてくれた先輩にセーターを返したいんだっけ?」
「うん…でも3年生で、」
「3年生!?へぇ……年上かぁ」
「この前、教室にいた時に明衣に注意してきた人の後ろにいた…男の先輩で。バッジつけてたし同じ風紀委員だと思う」
「ん?あー…風紀委員で?男で3年って言ったら、あの人しかいないか」
「えっ!明衣知ってるの……」
そうだ、と思い出した。明衣が掃除当番の時、彩世先輩と話していたなと。だから知っているのか、さすがよく覚えている。喧嘩っ早くて一見不良っぽく見えても、明衣は人のことをよく見ている。
「知ってる知ってる。確か、いろ…なんとかって人。黒髪で背高い人でしょ?」
「え、そうそう!彩世って呼ばれてたから…その人!」
「あーそんな感じの名前だ。ふーん。彩世先輩ね~」
「うん、偶然でもその人が来てくれたから、助かったんだ…。でも、やっぱり怖くてお礼も言えなかったから…」
那月の脳裏に浮かんでいたのは、覗き込まれた時の前髪がかかった顔と大きな手、セーターを投げてきた時の背中。そして鼻には残っている先輩の匂い。襲ってきた男子達の顔はほとんど覚えていないのに、彩世先輩の印象だけは強く焼き付いていた。
だけど、やはり男だと実感するとどうしても怖さで背筋がぶるっと冷えてしまう。
「じゃあ、那月。明日行け、いや行こう」
「えっ!?」
「早めの方がいい。あたしもついてってあげるから。自分でセーター返して、お礼を言うの。ちょっと頑張ってみよ」
「明衣…ほ、ほんと?一緒に来てくれるの?ありがとう…」
「もちろん!!それに、男と話してみるいい機会だ!あの先輩は真面目そうだし、たぶん優しい方だと思う!」
言われてみれば、那月が言葉に詰まった時も責めたり急かすことはなかった。手を振り払ってしまった時も、セーターを貸してくれた。きっと優しい人なんだろうと思う。
せめて、せめて直接お礼が言えるように。あの時救われた気持ちを伝えられるように。
一一一頑張りたい。目を見て、逸らさずに、しっかりお礼が言いたい。
「…僕頑張ってみる。明日、先輩の所に行くよ」
「よーし!那月なら大丈夫!明日の朝、学校来たらホームルーム前に3年の階に行くぞ!」
「う、うん!!」
一一一明日、先輩に会いに行く。大丈夫、きっと頑張れる。気持ち悪がられても、ウザがられても頑張るんだ。
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