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視線を

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何気なく見ていたら、風紀委員の女の先輩の後ろに、背の高い男の先輩がいた。制服をピシッと着ていて同じく委員のバッジを付けている。そして少しくせっ毛のある黒髪の…。

バチッ

そこまで思った所で、那月の視線はこちらを向いたその男の先輩と重なった。0.5秒ほどの素早さで那月は慌てて視線を逸らす。

「ん?なに、どうしたの?」

「い、いや、何でもない。ちょっと男の先輩と目が合っちゃって」

一一一しまった、分かりやすく逸らしてしまった。
一一一これではまた相手の気分を悪くしてしまうんじゃないか。

後悔しながら、恐る恐る視線を廊下の方へ戻すが、もうそこには先輩達の姿はない。委員会の見回りだろうから、もう歩いて行ってしまったんだろう。

男子と言うだけでも怖いと思ってしまうのに、年上となると余計だ。もっとどうしたらいいか分からなくなる。

でもせめて、目くらいは合っても動揺しないようになりたいと那月はため息をつきながら思った。

「那月、あんたもさ。可愛らしい顔してるんだから、ちょっとは自信持って笑え!とりあえず目が合ったらニコッてしとけ」

「いやいや、え!?可愛らしいとかないよ…ていうか無理だよ!そんなニコッてするなんて…」

「できる!ちょっと笑ってみて」

「……へへ?こう?」

「うん、やめとこう」

「ひ、ひどい……」

どんなひどい顔をしていたのかと、拗ねて頬をぐいぐい引っ張る那月を見て明衣は茶化すように笑う。

那月が落ち込んでいるのに気付いて、和ませてくれたのかもしれない。

「あ、そういえば今日さ、私掃除当番だから先帰っててね」

「うん、分かった。頑張って」

「はー、掃除だるー」

授業が始まるチャイムが鳴り、明衣は自分の席へと戻って行った。クラスの皆が騒がしく席へ着く中、那月はぎゅっと拳を握りしめる。今日は昨日よりも、この恐怖を克服できますようにと願いながら。
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