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溺れる身体⑪
しおりを挟むほとんどの人は孤独を忌み嫌うけど、僕はそうは思わない。コミュニケーション・チャネルは狭いながらも確保しているのだから、孤独であっても文句はあるまい。
ただ、世間はこれから正月休みに入る。この部屋を訪れる者は皆無だろう。もし孤独でなければ、大人数の忘年会を催して、この状況は免れていたかもしれない。
21歳男性の孤独死、という見出しが思い浮かぶ。いや、拘束された状態なのだから、犯罪に巻き込まれた、と見なされるだろう。僕の顔に付着したカズの体液は、有力な物証になる。やがて、メールリストと通信履歴からコールボーイであることも発覚する。
いや、そんな問題は些細なことかもしれない。最悪なのは、あの人に見られてしまうことだ。カズの罠にはめられ、辱められた無様な姿を。
ネガティブ・シンキングはすべきではない。不運や不幸を引き寄せてしまうから。
僕はこともあろうに、自分の身でそれを実証してしまう。誰かが玄関ドアを開けた音がした。次いで、おそるおそる廊下を歩く足音。この部屋の鍵をもっていて、オートロックのパスワードを知っている人間は一人しかいない。
「……シュウくん」
そう言ったきり絶句したのは、やはり、レイカさんだった。考えてみれば当然だ。前にも言ったように、この部屋は『キャッスル』の寮なのだから。
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