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汚れたクリスマス⑫
しおりを挟む国道から脇道に入り、薄暗い坂道を上ると、目指すホテルが視界に入ってきた。いつもは重厚でシックなイメージの老舗ホテルだけど、今晩はクリスマスモードで、華やかにライトアップされていた。
僕は浮かれた足取りでロビーへと歩を進める。大きなシャンデリアが下がった天井の高いフロアには、ドレスアップをした人たちが思い思いの時間を過ごしていた。大きなパーティがいくつも行われるのだろう。
人混みは苦手なので、壁沿いにウロウロしていたら、一人の女性が眼に飛び込んでいた。ライトグレーのムートンコートをセンスよく着こなした、とても立ち姿の美しい女性である。
驚いたことに、それは冬子さんだった。近づいていくと、向こうも僕に気づいてくれた。無言で笑顔を交わす。楽しいイブにしましょうね、そう言われたような気がした。
同感である。僕たちはチェックインを済ますと、恋人同士のように腕を組み、エレベーターホールへと向かう。混雑した箱を二回見送ったが、少しも苛立たなかった。時間はたっぷりあるのだ。焦ることはない。
〈ポリネシアンセックス〉は、スローセックスともいうらしい。あくせくしたセックスがファーストフードなら、僕たちの目指すのは懐石料理だろうか。ゆったりした気持ちでイブの夜を味わいたい、と思う。
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