裸のプリンス【Ｒ１８】

淫らな果実⑧

　奇抜な場所がもたらす緊迫感によって、スリリングな快感が生じることを初めて知った。プラスαの味わいというのだろうか。もっとも、公衆トイレの独特なアンモニア臭には閉口したけれど。

「ねぇ、公衆便所みたいな女だって思うでしょ」そんな自虐的なことを言っていた。

「あなたが公衆便所なら、僕は便器にたかる銀バエですよ」そんな自虐返しをしたはずだ。

　たった今まで忘れていたのに、彼女の裸を見たら、細かいことまで鮮明に思い出してしまった。その日かぎりの関係のつもりだったから、彼女の連絡先も名前も聞かなかった。その彼女が今、目の前に全裸で佇んでいる。

　レイカさんによると、良恵さんは僕の写真を見て、「元カレに似ている」と言ったらしい。４年前に自分を抱いた高校生だと気づいて、暗示めいたことを言ったのか？　それとも本当に元カレに似ていて、僕だとは気づいていないのか？

　……わかるわけがない。良恵さんの裸を見て数秒のうちに、とりとめもなく雑多な情報が、頭の中を駆け巡った。

「シュウくんも裸になって。それとも、私が脱がさないといけない？」

　いつもなら、リスク回避の判断を下していたかもしれない。けれど、今はリスクより好奇心が勝っていた。蒸し暑い部屋の中で、僕は全裸になった。