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イケメン霊能者③

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 顔にモザイク?
 正確にはボカシのことだろうけど、一体何のために?

「これって、もしかすると、ヤラセ?」

 会議室の空気が一瞬で凍った。
 ド素人が無知ゆえに口にした、現場NGワードだったのだ。

「台本のセリフは、取材に基づいてんだよっ! ホストクラブ常連客の、生の言葉だっ! セリフの捏造なんざ、するわけねぇだろっ!」
 毒島さんは真っ赤になって唾を飛ばす。けど、納得できるわけがない。
「だったら、その取材した人で、撮影すればいいじゃないですか」
「それができねぇから、こうしてんだろがっ! 誰だ、こんなド素人を連れてきたのはよぉ!」

 毒島さんが投げた台本が、私の身体スレスレに通り過ぎた。
 思い通りにいかないと怒鳴ったり、勝手な言い分を押し通したり、平気で約束を破ったり、まるで駄々っ子じゃないか。
 はっきり言って、テレビ業界の人たちって非常識だ。
 私は、そんな業界人の言うことに振り回されたり、流されたりしないように、気をつけている。

 あ、でも、言ってる本人が大遅刻をしているんだから、世話がないか。
 はい、遅刻した件は、素直に反省します。

「君、テレビ業界に向いていないんじゃない? どうして制作会社に入ったんだよ」と、桐生さん。

 それは、高校時代にテレビドラマにハマったからだ。当時の私は、ヒロインのセリフが1日24時間、頭の中でグルグル回っていた。
 シナリオライターになって、面白いテレビドラマが作りたい。
 もし、テレビドラマが作られるなら、何だってやってやる。そう思った。

 大手テレビ制作会社には門前祓いにされたけど、中堅制作会社には、どうにか潜り込むことができた。
 シナリオライターを目指す者が一つの足がかりとする、リサーチャーという仕事も任された。
 このまま頑張っていれば、いつかはチャンスがめぐってくる。
 そう思っていたのだ。今ふりかえれば、お人よしにもほどがあるのだが。

 長々と回想をしてしまったが、ここらで毒島Dとのトラブルに話を戻そう。

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