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イカピラフくん探し②
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おそるべし幻の缶。マニアさん捜し以上に難攻不落だよ。
「その幻の缶と引き換えに、とびっきりのマニアさんがテレビに出てくれるんでしょ。探しのプロって見込まれたんだから、ミルコは期待に応えないとね」
デスクで考え込んでいると、真希さんから声をかけられた。
自分のリサーチ作業を進めながら、愚かな新人の一部始終を見ていたらしい。
「あと、どこを探せばいいでしょうか?」と、謙虚に先輩の知恵を拝借することにした。
「空き缶マニアがこれまで探してきたところや探しそうな場所、それ以外を当たってみればいいんじゃない」
「だから、それはどこなんでしょう?」
「そこに行けば幻の缶があるかもしれないけど、マニアたちが普通探したりはしない場所。それって、どんなところだと思う?」
「わかりません」
「諦めが早すぎる。少しは考えてみなよ」
「……見当もつきません」
「あのね、怒るよ。インスピレーションを働かせてごらんって」
でも、私の困り果てた顔を見かねたのだろう。
「ほら、こんな新聞記事を見つけた」
と、真希さんがパソコンのモニターを示した。〈70年代のゴミ発掘〉という大見出し。ネットで引っ張り出した全国紙地方版の三面記事だ。奥多摩山中の工事現場から、30年以上前に不法廃棄された大量のゴミが見つかったという。冷蔵庫やテレビなどの家電用品、自動車に古タイヤ、そして何と大量の缶!
ここに行けば、イカピラフくんに会えるかも!
「ま、ゴミの山を漁って探すなんて、ありえないけどね」
真希さんの声は耳に入らなかった。
「いってきます!」
私は携帯電話をバッグに突っ込むと、事務所を飛び出していた。
奥多摩に来たのは初めてだった。早速、最寄り駅の駅員やコンビニの店長さんたちから情報収集。「ゴミの山発見」は現地で深刻な社会問題らしく、私がテレビの仕事で調べていると言うと、誰もが親切に対応してくれた。
「ありゃあ氷山の一角で、まだまだ大量のゴミに埋っているぜ」
「テレビで大きく取り上げて、行政を動かしておくれよ」
「でも、そのために税金を高くなるのはゴメンだ」
と、いうのが地元の方々の見解だった。
「その幻の缶と引き換えに、とびっきりのマニアさんがテレビに出てくれるんでしょ。探しのプロって見込まれたんだから、ミルコは期待に応えないとね」
デスクで考え込んでいると、真希さんから声をかけられた。
自分のリサーチ作業を進めながら、愚かな新人の一部始終を見ていたらしい。
「あと、どこを探せばいいでしょうか?」と、謙虚に先輩の知恵を拝借することにした。
「空き缶マニアがこれまで探してきたところや探しそうな場所、それ以外を当たってみればいいんじゃない」
「だから、それはどこなんでしょう?」
「そこに行けば幻の缶があるかもしれないけど、マニアたちが普通探したりはしない場所。それって、どんなところだと思う?」
「わかりません」
「諦めが早すぎる。少しは考えてみなよ」
「……見当もつきません」
「あのね、怒るよ。インスピレーションを働かせてごらんって」
でも、私の困り果てた顔を見かねたのだろう。
「ほら、こんな新聞記事を見つけた」
と、真希さんがパソコンのモニターを示した。〈70年代のゴミ発掘〉という大見出し。ネットで引っ張り出した全国紙地方版の三面記事だ。奥多摩山中の工事現場から、30年以上前に不法廃棄された大量のゴミが見つかったという。冷蔵庫やテレビなどの家電用品、自動車に古タイヤ、そして何と大量の缶!
ここに行けば、イカピラフくんに会えるかも!
「ま、ゴミの山を漁って探すなんて、ありえないけどね」
真希さんの声は耳に入らなかった。
「いってきます!」
私は携帯電話をバッグに突っ込むと、事務所を飛び出していた。
奥多摩に来たのは初めてだった。早速、最寄り駅の駅員やコンビニの店長さんたちから情報収集。「ゴミの山発見」は現地で深刻な社会問題らしく、私がテレビの仕事で調べていると言うと、誰もが親切に対応してくれた。
「ありゃあ氷山の一角で、まだまだ大量のゴミに埋っているぜ」
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「でも、そのために税金を高くなるのはゴメンだ」
と、いうのが地元の方々の見解だった。
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