27 / 36
イケメンディレクター④
しおりを挟むさて、審判の時がやってきた。
私は期待と不安に包まれて、イケメンDの引き締まった口が開くのを待つ。今は、小会議室に二人きり。私が作り上げた入魂資料に、目を通してもらっているのだ。ワクワク。
「御苦労様、たった1日でここまでやってくれるとは思わなかった。君に頼んで大正解だったよ。これからはボクの右腕になって、知恵を貸してくれないか」
なぁんて、言われたらどうしましょ。考えただけで頬が火照ってしまう私です。
イケメンDの感想は、たった一言だった。
「却下」
哀れ、入魂資料はテーブルにポイッと投げ出され、私の背負っていた「ワクワク」の文字にはヒビが入り、あっけなく崩壊した。ど、どうして?
バラ色の笑みを浮かべたまま、イケメンDは言う。
「これって雑誌記事をまとめただけじゃない。これじゃ、君の感性が全く見えないよ」
「感性、ですか?」
「昨日言ったでしょ。ボクらが求めているのは新鮮な素材と切り口だって。こういう借り物の情報じゃなくて、君自身のフレッシュな目と耳で、とびきりのネタを探してほしいんだ」
「……はぁ」
「わかっていると思うけど、ただ何かを大量に集めているだけのマニアじゃ、番組は全然成立しないんだよ。オタクっぽい連中は散々やりつくしたし、難解な専門知識が必要なお勉強系や、刀剣や瓦版といった歴史系も数字がとれないことがわかっている。では、次に取り上げるべきなのは、何か? 何なのか?」
「……」
「そこで、君の出番だ。若い女性ならではの視点で、ボクたちのインスピレーションをビンビン刺激してくれないかな。こんなマニアさん、今までは取り上げていないけどいかがでしょうか、という感じにさ」
イケメンDの言葉は続く。
「いや、何も特殊なことや難しいことを求めているわけじゃない。君が面白いと思うマニアさんで充分なんだ。ただね、誰もがすぐに思いついて視聴者にとってありふれたもの、よその番組でやりつくして手垢のついた情報は、ネタとして価値が低いというか……」
「……」
「はっきり言うと、あまり価値がないんだよ」
ああ、やっぱり価値がなかったのか。
さらば、私の入魂資料。さらば、一日分の作業。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
今日はパンティー日和♡
ピュア
ライト文芸
いろんなシュチュエーションのパンチラやパンモロが楽しめる短編集✨
おまけではパンティー評論家となった世界線の崇道鳴志(*聖女戦士ピュアレディーに登場するキャラ)による、今日のパンティーのコーナーもあるよ💕
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
狗神巡礼ものがたり
唄うたい
ライト文芸
「早苗さん、これだけは信じていて。
俺達は“何があっても貴女を護る”。」
ーーー
「犬居家」は先祖代々続く風習として
守り神である「狗神様」に
十年に一度、生贄を献げてきました。
犬居家の血を引きながら
女中として冷遇されていた娘・早苗は、
本家の娘の身代わりとして
狗神様への生贄に選ばれます。
早苗の前に現れた山犬の神使・仁雷と義嵐は、
生贄の試練として、
三つの聖地を巡礼するよう命じます。
早苗は神使達に導かれるまま、
狗神様の守る広い山々を巡る
旅に出ることとなりました。
●他サイトでも公開しています。
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~
Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。
おいしいご飯がたくさん出てきます。
いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。
助けられたり、恋をしたり。
愛とやさしさののあふれるお話です。
なろうにも投降中

純情 パッションフルーツ
坂本 光陽
ライト文芸
大学生の深水駿介は、マザコンを自覚している。幼馴染の香里にからかわれても気にしない。何といっても、女手一つで育ててくれたのだ。日頃はそっけない態度をとるものの、エリさんのことは心から尊敬している。そんな駿介に、とても気になる女性が現れた。作家であるエリさんの担当編集者,魅子さんである。彼女は7つも年上だけど、天然気味で、小動物のように可愛らしい。ただ、実は、片想いになることが運命づけられた相手だったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる