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最もセクシーな仕事⑨
しおりを挟む「悩み事の大半は、思い悩むことのみに囚われて、ただ、同じ場所をクルクル回っているだけ。問題の本質をおざなりにしているの」
「なるほど、そうかもしれませんね」
「ポイントを明らかにすれば、おのずと糸口が見えてくる。問題の半分は解決できたも同然よ」
「何となくわかるような気がします」僕は少し気が楽になる。「家に帰ったら、早速紙に書き出してみますよ」
もっとも、僕の問題を解決する方法は、実は、とっくにわかっていた。極めて単純な解決法だ。レイカさんを失ってできた心の穴を埋めるには、レイカさんと同じくらい魅力的な女性と新たに出会うしかない。
その後、仕事の打ち合わせを少しして、ココナさんと別れた。湯島のマンションへの帰り道、つらつらと考えた。
コールボーイとして出会う女性とは、基本的に一期一会だ。常連さんの方々も、最初にお相手をして気に入っていただけたから、何度もお会いすることができている。
僕を求めてもらえることは素直にうれしいし、お相手を務めている時は、その方に誠心誠意、全身全霊で愛情を注ぎ込んでいる。
ただ、その一方で、どこかむなしさを覚えることも確かだ。理由はわかっている。コールボーイがお客様と愛情を交わす行為は、一時的なものであり、どんなに想いが深くても永遠には続かないからだ。
ココナさんによると、ソープ嬢がお客様を好きになることは少なくないという。お店に内緒で店外デートをするようになり、真剣に付き合うようになって、中には結婚にまで至った同僚もいたという。
もちろん、そんなことはレアケースだろう。ほとんどの場合、恋人や家族には内緒であり、墓場までもっていく秘密である。僕の全人格、つまり、コールボーイをしていることを含めて、僕を求めて愛してくれる人は限られている。
端的に言ってしまえば、僕のお客様か店の関係者しかいない。そう考えると、レイカさんに魅かれたきっかけは、彼女がコールボーイクラブの経営者であり、僕を見出してくれたからだ、と思い至る。
もしかしたら、多くの女性に愛情を提供する仕事をしておきながら、たった一人の女性を愛することはできないのかもしれない。このジレンマは永遠に解消できないだろう。
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