犯罪者と博士

ナマケモノ

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犯罪者

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「博士、根拠はないのですが同じ人物に思えるのです。 この犯罪者は他にも犯罪を起こしていて、手口をいくつも持っているんじゃないですかね」
「ふむ、可能性はあるね。 この犯罪者は今見ているので3通りはできる。 凍死と転落死、毒殺だ。凍死は限られてくるだろうし、やらないだろう。 残りは転落死と毒殺は簡単だ」
 国仲刑事は私に否定されないことに喜んでいるようだ。
 口の端がほころんでいる。
「今回の場合であれば、毒殺は睡眠薬。 転落死はどこでも高いところでもいいわけですね」
 私は首を縦にふる。
 国仲刑事の説を考えるとしよう。
 手口はもうひとつ加わる。
 絞殺だ。 これは力を使う作業ともなる。
 ターゲットを直接首を絞める方法と間接的に道具を使う方法がある。
 前回のは道具を使ったほうだ。




 待って、被害者は使っていたか。
 資料をもう1回読みなおす。
 被害者は睡眠薬を処方してもらっている。
 家にあった1ヶ月分の薬が無くなっている。
 この被害者はもしかして、自殺をしようとしたのか。
 だとしたら、犯罪者は1ヶ月分の薬を自分で入手することなく、手にいれるのができた。
 犯罪者はこう口にしたのではないか。
 “辛いよね。 自殺を手伝うよ”と言われてターゲットは素直にうなずいたのだろう。
 犯罪者は死に至る量をあげなかった。
 眠るのに充分な量を渡すだけでいい。
 ターゲットは量が少なくてもどうでもいいはずだ。
 ターゲットの心理だと犯罪者は自分の命を落とすのを手伝うものである。
 眠らされた後に死んでもいいと考えたはず。
 ターゲットは楽に命を落とすことができるのだから。




 ターゲットは願ってもないチャンスが来た。
 犯罪者にとっても、好都合なのだ。
 犯罪者の心理だと抵抗することなく、相手は命を投げ出してくれる。
 それから殺害に至った。
 私の頭の中でひとつが浮かび上がったのだ。
 しかし、裏付けるものはない。
 被害者は死人だ。
 死人の口、自ら聞けはしない。
「博士、笑っていますよ」
 国仲刑事は小声で忠告した。
「あぁ、すまない。 私はもしかしたらふたつの事件はつながっているのではないかと思うんだよ。 どちらも睡眠薬が使われているはずだ。 前回のは結果は出ているよね?」
「ええ、関係なのかと思い、伝えなかったんですがそうです。 前回のは微量です。 博士、なぜ分かったんですか?」
「それは勘みたいものだ」




 新人刑事は予想した答えとは違ったと思ったのか、ぽかんとしている。
「睡眠薬でピンときたよ。 前回の遺体は殺害方法は分かったものの過程がわからなかった。 睡眠薬をやれば、スムーズにできるよね。 いちいち、起きた状態でやるのは負担がかかる。 だけどね、ふたつの事件を結びつけるのは弱いね」
 国仲にとって、とんだ考えであり難しいだったのか難しい顔をした。
 無理もないだろう。
 今の説明では説得力もないのだ。
 さて、証拠はどこにあるだろうか。
 証拠さえあれば、正しいのが証明できる。
 国仲刑事は現場を少し歩く。
 彼女は目を光らせる。
 犯人がいるのではないかと考えたのだろう。
 携帯をチェックすると井岡から連絡がきていた。
 現場に入らしてほしいとメールがある。 
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