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13 月と太陽のような2人4
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彼女に言われたとおり、彼が注意しながら右側に目を向けると、こちらを見ていた日川陽子が視線に入り目があった。すぐに陽子は立ち上がり、2人の席に向かって歩いてきた。
「あら神木君、偶然ね。同じ店にいるなんて。ところで、とてもきれいな女の子と一緒にいるのね。紹介してほしいな。」
苦し紛れに彼がなにか答えようとした瞬間、彼女が話し始めた。
「はじめまして、私の名前は里村夜見です。伊浜市立高校の一年生です。信次君とは幼なじみで、2人の仲は今発展中です。時々大きなイベントも発生しています。お姫様だっこダッシュ事件とか。」
「急上昇する男女の仲は続かないものです。私は信次君と同級生の日川陽子です。学校では毎日、信次君とはずんだ会話を楽しんでいます。今はあなたの立場に遠く及びませんが、必ず追い抜きます。じゃあ。」
陽子は飲んでしまったコーヒーカップを、カウンター横の棚に返してさっさと店を出て行った。
姿が見えなくなった後、彼女がにっこりして話し始めた。
「最初、日川さんの表情を見た時、神木君のことをとても怒っているのかなと思いました。でもよく考えて見ると、神木君は女の子をもて遊ぶような人ではありません。日川さんが近づいて話しかけてきた時、よくわかりました。…
…私の競争相手ですね。しっかりと口攻撃しましたが、あまりダメージを受けなかった感じでした。『信次君』と呼ぶのは、もう少し後の楽しみにしていたのに、攻撃のために使ってしまいました。」
それから彼女は意外なことを彼に言った。
「でも、日川さんは悪い人ではありません。太陽の光のように、相手に暖かさを与える人です。夜を照らす月のような私とは正反対です。」
次の日、彼が登校すると校門の近くで陽子が待っていた。
「神木君、昨日はごめんなさい。2人の時間に割り込んじゃって、史上最低の不法侵入者になっちゃった。」
「いやいや、問題ありません。それに、夜見さんが日川さんのことをとてもほめていましたよ。」
「え、ほんとう。私のことをどんな風に言っていたの。」
「太陽の光のように、相手に暖かさを与える人だと言っていました。それに、夜を照らす月のような夜見さんとは正反対だとも。」
そのことを聞いて陽子はしばらく黙り込んだ後、口を開いた。
「これからやりにくいな。私、彼女のことを好きになっちゃった。昨日、正面から初めて見た時、確かにきれいで絶世の美女だと思ったわ。だけど、近寄りがたい雰囲気ではなかった。」
「どういう意味ですか。」
「なぜだかわからないけれど、嫌みなところが全くない。きっと彼女はおのれを誇ったり、人を見下したりしない。」
「よかったです。夜見さんと日川さんの2人が険悪にならなくて。」
それを聞いて陽子は笑った。
「学校一の秀才も、鈍感な所があるのね。」
「鈍感ですか。」
「基本的には、神木君、夜見さん、それに私は典型的な三角関係だわ。常識的に夜見さんと私は険悪になるのよ。」
「………」
意味がわかった彼は沈黙した。
その様子を見て、陽子は彼に要求を突きつけた。
「神木君、公平な戦いをするためにお願いがあるのだけれど。里村夜見さんのことを『夜見さん』と呼ぶよね。これから、私のことも日川さんではなくて『陽子さん』と呼んでくれないかな。」
「わかりました。」
陽子は思った。
(大苦戦の中、一歩前進できただけで大満足。)
その日の昼休み、中島と坂田が昨日の様子を彼に聞きに来た。
「信次、昨日あの子とDTLに行ったのだろう。どうだった。」
「話が盛り上がったかい。」
「うん。夜見さんといろいろな話ができて楽しかったよ。………一つ疑問があって、陽子さんもDTLに来ていて店の中で鉢合わせたんだ。偶然かな。」
中島が言った。
「陽子さんて誰だ。」
「隣の組の日川陽子さんだよ。」
「あ!!!。」
坂田が驚きの声を上げた。
「昨日の帰り、神木が急いで帰った後、その日川さんがこの組に神木をたずねてきたよ。」
中島が続けた。
「ごめん。もう信次は帰宅したと言った後、余分なことを言っちゃった。」
「どういうこと。」
「勉強に疲れた信次が頭を休めるのは、いつもコーヒーだと。今日あたりは、DTLの濃いアイスコーヒーのLサイズかなって。」
彼は鉢合わせさせようとした友達2人の意図がすぐにわかったが、笑いながら言った。
「そうか。理由がわかってすっきりした。」
「そこですか。」
「神木はおおらかで性格がほんとうにいいな。」
中島が言った。
「日川さんはほんとうに可愛くて性格が良い子で、我が校の女子の中でも常に人気1番を争っている。我々としては、応援せざるを得ない。」
坂田が聞いた。
「ところで、神木はさっき、日川さんのことを『陽子』さんて呼んだね。それに、あの伊浜市立の女の子のことを『夜見さん』で呼ぶよね。」
中島が笑いながら言った。
「月と太陽、違ったタイプの2人と親しくなりつつあるなんて、まるで物語の主人公だな。うらやましい。でも注意しろよ。」
「何を注意するの。」
「物語の主人公になったからには、必ず大きな困難に見舞われるから。」
「………」
「あっ、現実にはそんなことないから、気にすることはないよ。」
「あら神木君、偶然ね。同じ店にいるなんて。ところで、とてもきれいな女の子と一緒にいるのね。紹介してほしいな。」
苦し紛れに彼がなにか答えようとした瞬間、彼女が話し始めた。
「はじめまして、私の名前は里村夜見です。伊浜市立高校の一年生です。信次君とは幼なじみで、2人の仲は今発展中です。時々大きなイベントも発生しています。お姫様だっこダッシュ事件とか。」
「急上昇する男女の仲は続かないものです。私は信次君と同級生の日川陽子です。学校では毎日、信次君とはずんだ会話を楽しんでいます。今はあなたの立場に遠く及びませんが、必ず追い抜きます。じゃあ。」
陽子は飲んでしまったコーヒーカップを、カウンター横の棚に返してさっさと店を出て行った。
姿が見えなくなった後、彼女がにっこりして話し始めた。
「最初、日川さんの表情を見た時、神木君のことをとても怒っているのかなと思いました。でもよく考えて見ると、神木君は女の子をもて遊ぶような人ではありません。日川さんが近づいて話しかけてきた時、よくわかりました。…
…私の競争相手ですね。しっかりと口攻撃しましたが、あまりダメージを受けなかった感じでした。『信次君』と呼ぶのは、もう少し後の楽しみにしていたのに、攻撃のために使ってしまいました。」
それから彼女は意外なことを彼に言った。
「でも、日川さんは悪い人ではありません。太陽の光のように、相手に暖かさを与える人です。夜を照らす月のような私とは正反対です。」
次の日、彼が登校すると校門の近くで陽子が待っていた。
「神木君、昨日はごめんなさい。2人の時間に割り込んじゃって、史上最低の不法侵入者になっちゃった。」
「いやいや、問題ありません。それに、夜見さんが日川さんのことをとてもほめていましたよ。」
「え、ほんとう。私のことをどんな風に言っていたの。」
「太陽の光のように、相手に暖かさを与える人だと言っていました。それに、夜を照らす月のような夜見さんとは正反対だとも。」
そのことを聞いて陽子はしばらく黙り込んだ後、口を開いた。
「これからやりにくいな。私、彼女のことを好きになっちゃった。昨日、正面から初めて見た時、確かにきれいで絶世の美女だと思ったわ。だけど、近寄りがたい雰囲気ではなかった。」
「どういう意味ですか。」
「なぜだかわからないけれど、嫌みなところが全くない。きっと彼女はおのれを誇ったり、人を見下したりしない。」
「よかったです。夜見さんと日川さんの2人が険悪にならなくて。」
それを聞いて陽子は笑った。
「学校一の秀才も、鈍感な所があるのね。」
「鈍感ですか。」
「基本的には、神木君、夜見さん、それに私は典型的な三角関係だわ。常識的に夜見さんと私は険悪になるのよ。」
「………」
意味がわかった彼は沈黙した。
その様子を見て、陽子は彼に要求を突きつけた。
「神木君、公平な戦いをするためにお願いがあるのだけれど。里村夜見さんのことを『夜見さん』と呼ぶよね。これから、私のことも日川さんではなくて『陽子さん』と呼んでくれないかな。」
「わかりました。」
陽子は思った。
(大苦戦の中、一歩前進できただけで大満足。)
その日の昼休み、中島と坂田が昨日の様子を彼に聞きに来た。
「信次、昨日あの子とDTLに行ったのだろう。どうだった。」
「話が盛り上がったかい。」
「うん。夜見さんといろいろな話ができて楽しかったよ。………一つ疑問があって、陽子さんもDTLに来ていて店の中で鉢合わせたんだ。偶然かな。」
中島が言った。
「陽子さんて誰だ。」
「隣の組の日川陽子さんだよ。」
「あ!!!。」
坂田が驚きの声を上げた。
「昨日の帰り、神木が急いで帰った後、その日川さんがこの組に神木をたずねてきたよ。」
中島が続けた。
「ごめん。もう信次は帰宅したと言った後、余分なことを言っちゃった。」
「どういうこと。」
「勉強に疲れた信次が頭を休めるのは、いつもコーヒーだと。今日あたりは、DTLの濃いアイスコーヒーのLサイズかなって。」
彼は鉢合わせさせようとした友達2人の意図がすぐにわかったが、笑いながら言った。
「そうか。理由がわかってすっきりした。」
「そこですか。」
「神木はおおらかで性格がほんとうにいいな。」
中島が言った。
「日川さんはほんとうに可愛くて性格が良い子で、我が校の女子の中でも常に人気1番を争っている。我々としては、応援せざるを得ない。」
坂田が聞いた。
「ところで、神木はさっき、日川さんのことを『陽子』さんて呼んだね。それに、あの伊浜市立の女の子のことを『夜見さん』で呼ぶよね。」
中島が笑いながら言った。
「月と太陽、違ったタイプの2人と親しくなりつつあるなんて、まるで物語の主人公だな。うらやましい。でも注意しろよ。」
「何を注意するの。」
「物語の主人公になったからには、必ず大きな困難に見舞われるから。」
「………」
「あっ、現実にはそんなことないから、気にすることはないよ。」
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