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2 彼は彼女と出会う
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伊浜市の中心部にある伊浜北高校へ電車通学することが決まった時、神木信次が最初に考えたのは混雑を避けることだった。
彼は、性格的に人口密度が高い場所がきらいだった。
それで、山間部にある家に近い東鹿島駅から三州鉄道の始発に乗る時、必ず先頭車両に座っていた。
数分でも貴重な朝の通勤通学時間、先頭車両は終点の伊浜駅の乗降階段から一番遠いので、人気がなく座る人が少なかったからだった。
通学し始めてから3週間目のことだった。
その日も彼は先頭車両に乗り込んだ。発車してから3駅目に電車が停まろうとしていた。
「次はきさらぎ駅、きさらぎ駅です。出口は右側です。」
アナウンスが終わり、電車が停まると扉が開いた。これまで彼の通学時間に乗車する人はほとんどいなかった。
しかし今日の朝は、いつもと同じようにのんびり構えていた彼を、心の底から驚かせることが起きた………
1人の女子生徒が乗ってきて向かいに座った。
色白でほっそりとした顔、視線はうつむいていたが瞳が大きくて美しいことがわかった。そして、悩み事を抱えているような悲しげな表情が、強い印象を与えていた。
彼はおもわず見とれてしまい、完全に固まってしまった。
(いけない。きれいな女の子をじっと見るなんて、変なやつだと思われる。他の車両に逃げちゃったりして………今日は朝から散々な日になるのかな。)
ところが、見とれていた彼には気がつかなかったのか、彼女はそのまま鞄から本を出して読み始めた。
(今どき本が好きなのか。きっと静かで穏やかな性格なんだ。)
それから彼は必死に、外の景色を見ているように自分の顔を固定させた。
どうしても彼女の方に視線を向けたかったが、彼は耐えに耐えて終点の伊浜駅まで姿勢を無理矢理維持させた。
「神木、神木信次。今日は体の調子が悪いのか。ずっと頭を抱えて、黒板を見ないな。」
歴史の授業中、彼は教師に注意された。
「先生、基本的に体の調子には問題ありません。ただ、首筋が痛くて痛くてたまらないだけです。」
「そうか、でも神木はまだ15歳だろう。首筋がそんなに痛くなるような老化が始まるのは早いな。」
教室の中が大爆笑に包まれた。
昼休みになって、中島広樹が声をかけてきた。高校に入って最初に話しかけてきて、ごく自然に親しくなれた彼の一番の友人である。
「信次、どうした。とても気になったけど、授業中ずっと異常な体勢だったよ。」
「今日来るとき、電車の中で長時間異常な体勢を維持した結果だよ。」
「どういう体勢を続けたんだよ。ここでやってみ。」
「こんな風にだよ。いててて。」
「はーん、神木信次くん。きみは電車の中で、向かいの席の誰かを見ないように、わざと右上の窓の外の景色を見続けたのか。しかも、異常な力を使って首を固定させて。」
それから彼は中島に、今日の朝、電車の先頭車両で悲しげな表情をした美しい女子生徒と出会ったことを話した。
中島は言った。
「どういう制服だった。」
彼は答えた。
「そういえば、毎日よく見るような制服だったよ。」
「もしかして、伊浜市立じゃない。」
「あ、そうだ。」
伊浜市立高校とは、彼が通う伊浜北高校と細い道を挟んで隣にある女子高校だった。当然、バス停も同じだから、北高校の生徒は市立高校の制服をよく見るのだった。
「信次、もしかしたら大ラッキーだよ。これから毎日、朝と夕方、その女子と同じ電車に乗れるじゃないか。そして自然に知り合いになるんだよ。がんばれ。」
彼は、性格的に人口密度が高い場所がきらいだった。
それで、山間部にある家に近い東鹿島駅から三州鉄道の始発に乗る時、必ず先頭車両に座っていた。
数分でも貴重な朝の通勤通学時間、先頭車両は終点の伊浜駅の乗降階段から一番遠いので、人気がなく座る人が少なかったからだった。
通学し始めてから3週間目のことだった。
その日も彼は先頭車両に乗り込んだ。発車してから3駅目に電車が停まろうとしていた。
「次はきさらぎ駅、きさらぎ駅です。出口は右側です。」
アナウンスが終わり、電車が停まると扉が開いた。これまで彼の通学時間に乗車する人はほとんどいなかった。
しかし今日の朝は、いつもと同じようにのんびり構えていた彼を、心の底から驚かせることが起きた………
1人の女子生徒が乗ってきて向かいに座った。
色白でほっそりとした顔、視線はうつむいていたが瞳が大きくて美しいことがわかった。そして、悩み事を抱えているような悲しげな表情が、強い印象を与えていた。
彼はおもわず見とれてしまい、完全に固まってしまった。
(いけない。きれいな女の子をじっと見るなんて、変なやつだと思われる。他の車両に逃げちゃったりして………今日は朝から散々な日になるのかな。)
ところが、見とれていた彼には気がつかなかったのか、彼女はそのまま鞄から本を出して読み始めた。
(今どき本が好きなのか。きっと静かで穏やかな性格なんだ。)
それから彼は必死に、外の景色を見ているように自分の顔を固定させた。
どうしても彼女の方に視線を向けたかったが、彼は耐えに耐えて終点の伊浜駅まで姿勢を無理矢理維持させた。
「神木、神木信次。今日は体の調子が悪いのか。ずっと頭を抱えて、黒板を見ないな。」
歴史の授業中、彼は教師に注意された。
「先生、基本的に体の調子には問題ありません。ただ、首筋が痛くて痛くてたまらないだけです。」
「そうか、でも神木はまだ15歳だろう。首筋がそんなに痛くなるような老化が始まるのは早いな。」
教室の中が大爆笑に包まれた。
昼休みになって、中島広樹が声をかけてきた。高校に入って最初に話しかけてきて、ごく自然に親しくなれた彼の一番の友人である。
「信次、どうした。とても気になったけど、授業中ずっと異常な体勢だったよ。」
「今日来るとき、電車の中で長時間異常な体勢を維持した結果だよ。」
「どういう体勢を続けたんだよ。ここでやってみ。」
「こんな風にだよ。いててて。」
「はーん、神木信次くん。きみは電車の中で、向かいの席の誰かを見ないように、わざと右上の窓の外の景色を見続けたのか。しかも、異常な力を使って首を固定させて。」
それから彼は中島に、今日の朝、電車の先頭車両で悲しげな表情をした美しい女子生徒と出会ったことを話した。
中島は言った。
「どういう制服だった。」
彼は答えた。
「そういえば、毎日よく見るような制服だったよ。」
「もしかして、伊浜市立じゃない。」
「あ、そうだ。」
伊浜市立高校とは、彼が通う伊浜北高校と細い道を挟んで隣にある女子高校だった。当然、バス停も同じだから、北高校の生徒は市立高校の制服をよく見るのだった。
「信次、もしかしたら大ラッキーだよ。これから毎日、朝と夕方、その女子と同じ電車に乗れるじゃないか。そして自然に知り合いになるんだよ。がんばれ。」
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